spnet保安-のぞき・盗撮犯を現行犯逮捕するには-軽犯罪法と迷惑防止条例



店長のための 「保安のイ・ロ・ハ」


その 5

のぞき ・ 盗撮を現行犯逮捕するには





1. 前回の続きで、場面は同じです。



『 前回は 事実の錯誤 と 法律の錯誤 に時間をとられて、あなたの近況を聞くことができませんでしたね。』


G『 いやいや、私が 「 思い違いによる現行犯逮捕 」 について質問したからです。』


『 今、どんな仕事をしているのですか?』


G『 あの警備会社はクビになりました。今はこのショッピングセンターに “ 保安担当 ” として直接雇われています。』


『 いわゆる “ 渉外部長 ” ですね。』


G『 名刺の肩書が “ 部長 ” なので、ちょっと恥ずかしいです。』


『 普通 この仕事は警察OBがやっていますね。元警視 ・ 元警察署長 がやっている場合もありますよ。』


G『 仕事の内容が、万引き検挙だけでなく、脅迫 ・ 恐喝 ・ 営業妨害 ・ 青少年の迷惑行為防止 など一気に拡がりました。』


『 ショッピングセンターの治安維持すべてをやるのが “ 渉外部長 ” ですからね。』


G『 教えてもらいたいことがあるのですが‥。』


『 何ですか?』


G『 今 悩まされているのが “ 盗撮 ” と “ のぞき ” なのです。

     法律はいろいろ調べました。しかし、今まで 盗撮犯人や のぞき男 を捕まえたことがないので不安なのです。』


『 分かりました、それでは 盗撮 ・ のぞき にかんする法律と 実際の対処方法について確認していきましょう。』


G『 お願いします!』



2. 盗撮 ・ のぞき を禁止する法令



a. 盗撮 ・ のぞき の種類



『 どんな 盗撮 ・ のぞき があるのですか?』


G『 大きく分けて三つのものがあります。

     ①売場で女性客や女子従業員の 姿 ・顔 ・ 脚 を 写真に撮る。
     ②売場で女性客や女子従業員のスカートの中をのぞく ・ 写真に撮る。
     ③試着室や女子トイレで中に居る女性客を のぞく ・ 写真に撮る。』


『 だいたいこの三パターンですね。

   最近は女性客や女子従業員だけでなく、幼い女の子も対象になっていますね。』


G『 自分の幼い娘がスカートの中を のぞかれたり盗撮されたりしたら、若い父親は のぞき男や盗撮男を ボコボコにしていまいますからね。』


『 それは過剰防衛や違法行為になりますから、保安担当はそうなる前に のぞき男や盗撮犯を処置しなければなりません。』



b. 盗撮 ・ のぞき を禁止する法令



『 まず、法令を確認しておきましょう。 それから、上の三つのパターンを検討しましょう。』


G『 お願いします。』



イ.軽犯罪法 と 迷惑行為防止条例


『 盗撮 ・ のぞき を禁止する法令にどんなものがありますか?』


G『 軽犯罪法 と 迷惑防止条例です。 条文をあげます。

     ・( 軽犯罪法第1条23号 )
      「
正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所を ひそかにのぞき見た者は拘留・科料に処す。」
      刑罰→拘留 ・科料=1日~30日未満の拘置 ( 刑法16条 ) ・ 千円~1万円未満 ( 刑法17条 )

     ・( 三重県迷惑防止条例 2条2項・3項 )
      「2.
 何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、
           人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
          (1)人の身体に、直接又は衣服その他の身に着ける物(以下この条において「衣服等」という。)の上から触れること。
          (2)衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。
          (3)前二号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
       3.何人も、みだりに、
         公衆浴場、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室その他公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所における
         当該状態にある人の姿態を撮影してはならない。

          罰則は6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金。』 →→→ 三重県迷惑防止条例



『 さすがは渉外部長ですね。スラスラと条文が出てくるじゃないですか。』


G『 今度は失敗しないように、法令をしっかりと検討しています。』


『 軽犯罪法は全国共通ですが、迷惑防止条例は都道府県によって異なります。
   地方より都会の方が厳しくなっているようですが、だいたいの内容は同じです。』

 

ロ.軽犯罪法 1条23号 の のぞき ・ 盗撮


『 まず、軽犯罪法から検討していきましょう。

  軽犯罪法の禁止する のぞき ・ 盗撮 は次のものです。

  a.正当な理由がないのに
  b.人が通常衣服をつけないでいるような場所を
  c.ひそかに
  d.のぞき見た


  「 a.正当な理由がないのに 」 は 当然のことです。

  「 b.人が通常衣服をつけないでいるような場所 」に限定しています。
  だから、「 エスカレーターの上にいる女性のスカートの中を のぞく ・ 撮影すること 」 は入りません。

   「c.ひそかに 」 というのは、「自然に見えてしまった場合 を除く 」 という意味で、堂々とのぞいても 「 ひそかに 」 に該ります。

   「d. のぞき見た 」 とは 「 カメラで撮影する 」 ・ 「 望遠鏡で見る 」 も含まれると解釈されています。
  「 見る 」 ことには変わりありませんからね。 

  注意してほしいのは、 「 ‥場所を‥ のぞき見た 」 としている点です。

  そのような場所を のぞいた・写真に撮った だけで、犯罪が成立します。
  そのような場所の中に 「 人がいるかいないか 」 かは問題になりません。』



  上の “ のぞき ・ 盗撮 の三パターン ” のうち、 「 ③試着室や女子トイレで中に居る女性客を のぞく ・ 写真に撮る 」 がこれに該ります。』
  


ハ.迷惑防止条例の のぞき ・ 盗撮


 迷惑行為防止条例の目的は 「 公衆に迷惑をかけるような暴力的行為や不良行為 を防止して、公衆の平穏な生活が害されないようにする 」 ことです。

   この条例は のぞき ・ 盗撮 ・痴漢行為 だけでなく、乗車券 ・ 座席券 ・ 景品の売買や客引き等の行為を禁止しています。

   しかし、すべて公共の場所で不特定人に対して、つきまとったりうろついたりして行われる場合を対象としています。
   それらの行為が、それを行われた人や周りの人に不安を与え一般人の平穏な生活が害されるからです。


   だから、迷惑防止条例で処罰の対象となる のぞき ・ 盗撮 ・ 痴漢行為は すべて公共の場で行われるものに限られます。』


G『 軽犯罪法の のぞき ・ 盗撮 が 公共の場であるかどうかに関係ないのとは違うのですね。』


『 今問題となっているのはショッピングセンターでの のぞき ・ 盗撮 ですから、迷惑防止条例の のぞき ・ 盗撮 が適用されることになります。』


G『 しかし、迷惑防止条例は内容が複雑でこみ入っていますね。 一般の者には 「 どんな のぞき ・ 盗撮 を禁止しているのか 」 よく分かりません。』


『 これを説明していると前回のように時間がなくなってしまいますから、結論だけ説明しましょう。

   細かい内容と解釈は一番下に参考として上げておきます。』


G『 まずは結論だけお願いします。』


迷惑防止条例の禁止する のぞき ・ 盗撮 は次のものです。

   ・公共の場所で、

   ・人の衣服の下にある身体を、のぞく ・撮影する。
   ・それをのぞこうとして・撮影しようとして、かがむ ・ 手鏡やカメラを差し入れる。

   ・トイレ ・ 更衣室など人が衣服をずらせる場所の中に居る人を、のぞく ・撮影する。
   ・その人を のぞこうとして撮影しようとして、かがむ ・ 顔を出す ・手鏡やカメラを差し入れる。


   つまり、上の三パターンのうち ②と③が対象になります。』


G『 ちょっと待ってください!

     もう一度、問題となっている 三パターンの のぞき ・ 盗撮 を上げます。

     ①売場で女性客や女子従業員の 姿 ・顔 ・ 脚 を 写真に撮る。
     ②売場で女性客や女子従業員のスカートの中をのぞく ・ 写真に撮る。
     ③試着室や女子トイレで中に居る女性客を のぞく ・ 写真に撮る。

    この中で、②が迷惑防止条例、
    ③は、試着室やトイレの中に人が居る場合が迷惑防止条例、人が居ない場合が軽犯罪法 ですね。』


『 そうです。』


G『 では、①を取り締まる法令がないじゃないですか!』


『 ①は犯罪ではありませんからね。』


G『 えっ?犯罪じゃないのですか? 肖像権侵害になるのでしょう?』




3. 「 売場で女性客や女子従業員の 姿 ・顔 ・ 脚 を 写真に撮る 」 のは犯罪ではない



a. 「 公開されているもの 」 を見たり撮影したりしても犯罪ではない



『 「 衣服で隠している体の部分 」 を 見たり写真に撮ったりするのは迷惑防止条例が禁止している犯罪です。

   しかし、「 衣服から出ている体の部分 」 や 「 姿全体 」 を 見たり写真に撮ったりするのは犯罪ではありません。

  タンクトップから出ている肩や胸の谷間、ローライズから出ている下着や尻、ミニスカートから出ている太股 などを見たり写真に撮ったりしても犯罪になりません。

  もちろん、相手に付きまとったり、 相手が恥ずかしがったり、不安を感じたりするような方法で見たり写真に撮ったりすれば、
  迷惑防止条例の “ つきまとい ” や “ 卑わいな言動 ” に該ります。
  
  しかし、そのような方法でない限り犯罪にはなりません。』


G『 なぜ、犯罪にならないのですか?』


『 それは、その人が公開しているからです。

   その人が公開している部分を見たり写真に撮ったりするのを犯罪にすることはできないでしょう?』



b. 肖像権侵害とは


G『 見るのは仕方がありませんが、写真に撮るのは問題がありませんか?』


『 なぜですか? 』


G『 そんな写真を他人に見せられたり、ネットで公開されたら、その人が迷惑するじゃないですか。

     その人が胸の谷間や太股を衣服から出していても、

     それは、「 見てもかまわない 」 というだけで 「 写真に撮って持ち帰ってもかまわない 」 とまでは思っていないでしょう?』


『 しかし、まだ 「 写真を撮っただけ 」 で 「 持ち帰ったり、他人に見せたり、ネットで公開したりしていません 」 からね。

   写真に撮れば画像がフィルムやメディアに記録されます。
   しかし、それは目で見てそれを脳裏に焼き付けることと同じです。

   だから、写真を撮っただけで、それを犯罪とするわけにはいかないのです。』


( 肖像権 )


G 『 しかし、写真に撮ればその人の肖像権が侵害されるじゃないですか!』


肖像権とは 「 自分の姿・形を、勝手に公開されない権利 」 です。

   この権利は法律に規定されていませんが、一般的に認められているし裁判所も認めています。

  憲法は 「 国民が個人として尊重されること 」 ・ 「 国民の自由・幸福追及の権利は尊重されること 」 を保証しています ( 憲法13条 ) 。

   この憲法の趣旨から、「個人の私生活を暴かれない」という権利 ( プライバシー権 ) が認められています。

    “ 個人の姿・形 ” は個人の私生活に関するもので、それを公開されることは、私生活を暴かれることになります。

   肖像権はプライバシー権の一つなのです。

    この肖像権が侵害されるとは 「 その肖像が一般に公開された場合 」 です。

    写真を撮られただけで、その写真が公開されていない段階では肖像権侵害はありません。


    また、肖像権侵害を犯罪とする法律はありません。
   
写真が公開されて肖像権侵害が起こっても、肖像権侵害をした者に刑罰は与えられません。

    被害者は、民事裁判で「公開されないように」差し止め請求をするか、損害賠償を請求することしかできないのです。』


G『 しかし、このまま放っておけば、その写真が公開される危険があるじゃないですか。それを防止することできないのですか?』



b.肖像権侵害に対する正当防衛


『 肖像権侵害に対する正当防衛ができますね。』


G『 その点を説明してください。』


正当防衛とは「 他人や自分に“不正な侵害”が迫ってくるときに、やむを得ない限度で、これを押し返す 」 ことです ( 刑法第36条 ) 。

  正当防衛であれば、相手を押し返したことによって相手の権利が侵害されても犯罪となりません。


   その人の許可を得ないでその人の写真を撮っても、まだその人の肖像権は侵害されていません。

    撮影者がその写真を他人に見せたときに侵害が発生します。

    写真を撮られたときは、「その人に肖像権侵害が迫ってくる」段階です。

    そして、このままにしておけば撮影者はどこかへ行ってしまいます。

    今、なんとかしなければ肖像権が侵害されることになります。

    つまり 「 写真を撮られた者に不正な侵害が迫ってくる 」 状態です。

     だから、肖像権侵害に対する正当防衛ができることになります。』


G『 では、正当防衛としてどんなことができるのですか?』


『 「 肖像権侵害が起こらないようにする 」 ことですから、「 撮った写真を他人に見せたり公開させたりしない 」 ことです。

   一番手っとり早いのが、「 撮った写真を廃棄させること 」 でしょう。

   「 撮った写真を廃棄させること 」 は 撮影者の権利を侵害することになりますが、正当防衛行為なので違法行為にはなりません。』



c. 具体的にはどのようにするか


G『 では、女性客や女子従業員が写真に撮られた場合、具体的にどのような対処をすればよいのですか?』


『 まず、写真を撮られた相手に 「 写真を撮ることに同意していたかどうか 」 を確認しなければなりません。

   相手が撮影に同意していた場合は肖像権侵害など問題になりません。

   この確認をしないで、撮影者を呼び止めたら 『 おれを盗撮犯扱いした 』 というクレームや人権侵害に発展してしまいます。


  次に、「同意がないこと 」 を確認したら、写真を撮られた相手を伴って撮影者にこう言いましょう。

   「すいません…。 今、この方の姿を写真に撮られましたよね?この方は「同意をした覚えはない。」と言っておられます。

    その写真が一般に出回ると、この方の肖像権が侵害されてしまいます。

    だから、今 あなたが撮ったこの方の写真を、この場で削除してもらいたいのですが…。」


    もし、撮影者が 「
写真を撮るのは俺の自由だ。そんなことを命令されるいわれはない!」 と開き直ったら、

    「
それなら警察官にここに来てもらって、その点を充分に説明してもらいましょう。」 と 110番するふりをすればよいでしょう。

    これで、撮影者は慌てて撮った写真を削除するでしょう。』


G『 なるほど、そんな手があったのですね!』



d.店内ルールでやんわりと牽制する方法 の方が良い


『 しかし、この方法はあまり勧められません。』


G『 なぜですか?』


『 もし、写真を撮っていなかったり、写真が撮れていなかったりすると、クレームや人権侵害に発展するからです。』


G『 もう少し詳しく説明してください。』


『 カメラを向けても写真を撮っているかどうか確実ではありません。単にカメラを向けて写真を撮るつもりになっているのかも知れません。

   また、そのようなふりをして警備員をはめ込もうとしているのかも知れません。

   もし、写真を撮っていたとしても、写真が上手く撮れているかどうか分かりません。

   写真が上手く撮れていても、その画像をすぐに消去したかもしれません。デジタルカメラでは画像の消去は簡単ですからね。』


   このような場合、その者を呼び止めて
   「 今 この女性の写真を撮ったでしょう? 肖像権侵害のおそれがありますから、その写真を消去してください。」 と言ったらどうなりますか?

   相手は 「 俺を盗撮犯扱いした!変態オヤジ扱いした!」 と怒るでしょう?

   男が写真を撮っていなくても、あなたのしたことは誤想防衛ですから名誉棄損など違法行為にはなりません。
    しかし、過失があれば民事上の不法行為責任が発生します。
    そうでなくても、そんなクレームが表面化すれば店の信用やプランド力は下がってしまいます。

   特に盗撮犯は 小心者で神経質な者が多いので、自分が盗撮犯でないことを大きく主張してきます。』


G『 社会的地位がある盗撮犯なら、大事になりますね‥。』


『 そもそも、正当防衛行為は “ 判定勝ち ” なのです。その判定が覆ることもあります。

   警察官なら “ 判定勝ち ” でも判定を覆させるようなことはないでしょう。また判定が覆っても許されます。

   しかし、我々は一般私人で権力と威光がある警察官ではありません。

   我々はやはり現行犯逮捕という “ 一本勝ち ” だけを狙った方がよいでしょう。』


G『 判定勝ちがダメだとしたら、他に対処法はないのですか?』


( 店内ルール )


『 安全なのは “ 店内ルール ” によるお願いでしょう。』


G『 どのような方法ですか?』


店には店内ルールがあります。これは店の施設管理権の行使です。

    店内ルールに「店内での撮影・模写はご遠慮ください。」というものがあります。


   これは、他の客のプライバシーを護るためのものです。

   たとえば、客が何気なく売場の写真を撮った。
   その写真に「 隣家の旦那と見知らぬ女性が手をつないでいるところ 」が写っていた。
   そうなったら二人の私生活が公にされる危険が生じます。

    この「 店内撮影禁止 」 で “ お願いする ” のがよいでしょう。

     具体的には、カメラをのぞいている者 ・ 写真を撮っている者にこう言います。

     「 他のお客様のプライバシーを護るために一般の方が店内で写真を撮ることをご遠慮願っています。

       店内の写真を撮る場合は店の許可が必要で、許可を得た方にはその旨の腕章をして頂いています。
       撮影許可腕章をしてみえませんが、許可を得て頂いたのなら腕章をしてください。

        まだ、店の許可を得ていないのなら、まず事務所の方で撮影許可と許可腕章をもらってください。」

        
     撮影許可腕章をつけていない者に 許可腕章を付けるように注意したり、許可があるかどうか尋ねるのは保安担当として当然のことです。
     撮影者が実際に写真を撮ったかどうかは関係ありません。写真を撮ろうとしている者にも尋ねることができます。

     写真を撮っているふりを楽しんでいても、写真をまだ撮っていなくても、撮った写真が上手く写っていなくても、相手からクレームがつくことはありません。
       
     盗撮犯に対しては、この店内ルールによるお願いが よく効きます。
     二回くらいお願いすれば、もう来なくなります。

     彼らは万引き犯人と違って、とてもナィーブなのです。 』   


G『 このやり方が安全で効果がありそうですね!』



4. 法令で禁止する のぞき ・ 盗撮 の対処法



『 さて、今度は のぞき ・ 盗撮が犯罪になる場合を説明しましょう。』

   最初に挙げた “ のぞき ・ 盗撮 の三パターンの内の、
   「 ②売場で女性客や女子従業員のスカートの中をのぞく ・ 写真に撮る。
      ③試着室や女子トイレで中に居る女性客を のぞく ・ 写真に撮る。」 場合です。』


G『 現行犯逮捕という “ 一本勝ち ” ができる場合ですね!』


『 一本勝ちを狙うときは十分注意しなければなりません。

   技をかけようとして逆に返し技で投げられることや、カウンターを喰らってKOされることもありますからね。』


G『 前々回のような、反則負けにも注意しなければなりませんね。』



a.犯罪行為の立証がむずかしい



『 万引きを捕まえるのが仕事のGメンなら現行犯逮捕自体には馴れています。

   しかし、のぞき ・ 盗撮 の場合は万引きとは違った点があります。

   その違いを十分に知っておかなければなりません。』


G『 よろしくご指導ねがいます!』


( 犯罪行為の現認が難しい )


『 まず、 のぞき ・ 盗撮 では 犯罪行為の現認が難しくなります。

   万引きの犯罪行為は、店の商品を盗ることです。

   大きな商品が商品棚から万引き犯人に移動するのですから、犯罪行為の現認はそれ程難しくないでしょう。

   しかし、のぞき ・ 盗撮行為では 物が移動することはありません。

  のぞき ・ 盗撮 の犯罪行為は、犯人が のぞいたこと、犯人の持っているカメラで撮影したことですからね。 』


G『 ということは、犯人が本当にのぞいたのか、本当に撮影したのかを見極めるのが難しくなりますね。』


『 のぞく ・ 撮影する という行為を遠くから現認するのですから、現認間違いの可能性が高くなります。

   犯人と思われる者が本当に女性のスカートの中を見ていたのか、本当にシャッターを切ったのかを判断するのですからね。』


G『 犯人の傍にいれば、犯人の目の方向も分かるし犯人の表情も分かる、カメラならシャッター音が聞こえますからね。』


『 のぞき ・ 盗撮 の場合は、万引き以上に慎重 ・ 確実に現認しなければなりません。

   そして、万引き検挙のときの単品禁止以上に、何度も現認しなければならないでしょう。』


( 犯罪行為の立証が難しい )


『 次に難しいのが、のぞいた ・ 写真を撮った ことの立証です。』


G『 犯罪行為をしていても、それが立証できなければ犯人を有罪にすることはできない。

     犯人を有罪にすることができなければ誤認逮捕と同じになりますからね。』


『 特に、のぞき の場合は、本当にのぞいたかどうかは犯人にしか分かりません。

   犯人の頭の中の記憶を取り出して証拠とすることはできませんからね。

   極論すれば犯人が女性のスカートの中に顔を突っ込んだとしても、犯人が目をつぶっていればスカートの中は見えません。
   目を開けていても、放心状態なら犯人の脳裏にスカートの中身は写っていないでしょう。

   もちろん、そんな行為は “ 卑わいな言動 ” となります。
   しかし、 「 のぞいた 」 ことの立証について言えば 「 スカートの中に顔を突っ込んだこと 」 は決定的な証拠とはならないでしょう。』


G『 犯人が 「 見ていない ・ 見えなかった 」 と言えば、「 見たこと ・ 見えたこと 」 を証明する方法がないということですね。』


『 その点、盗撮は カメラに画像が残ります。

   画像が残っていれば、犯人の 「 撮っていない 」 という主張を退けられます。

   しかし、カメラが故障していて画像が写っていなかったり、ピンボケで何の画像か分からなかったりすれば、
   犯人の「 撮っていない 」 という主張を退けることはできません。

   画像がはっきりとしたものであっても、その画像を犯人が消去することにも注意しなければなりません。
   犯人がGメンの監視に気づいたら、すぐに証拠となる画像をすぐに消去するでしょう。

   万引き犯人の盗った商品は消すことはできませんが、盗撮犯人の撮った写真は簡単に消すことができますからね。』


G『 のぞきでは、のぞいたことを立証する物証がない。
     盗撮では画像という物証があるが、犯人がそれを簡単に消すことができる。

     決め手になる証拠の確保が難しいということですね。』


『 そうです。』


( 「 のぞこうとした ・ 撮影しようとした ・ 卑わいな言動をした 」 の立証は簡単 )


G『 しかし、迷惑防止条例は “ のぞいた ・ 撮影した ” だけでなく、 “ のぞこうとした ・ 撮影しようとした ” も “ 卑わいな言動 ” として処罰の対象にしていますよ。

      “ のぞいた ・ 撮影した ” の立証は難しいでしょうが、 “ のぞこうとした ・ 撮影しようとした ” の立証はそれほど難しくないのではないですか?』


『 京都府迷惑防止条例では、

  「 ‥着衣で覆われている他人の下着又は身体の一部をのぞき見し、若しくは撮影し、
     又は
これらの行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、若しくは着衣の中が見える位置に鏡、写真機等を差し出し、置く等をすること 」 と規定し、
   「のぞいた ・ 撮影した 」 だけでなく、「 のぞこうとした ・ 撮影しようとした 」 ことをはっきりと犯罪としています。

   このように 「 のぞこうとした ・ 撮影しようとした 」 を犯罪として明記しないでも、それらは “ 卑わいな言動 ” と判断されるのが通常です。

   「 のぞこうとした ・ 撮影しようとした 」 ことを立証するのに、 「 実際にのぞいたこと ・ 撮影したこと 」 は必要ありません。
   犯人の行動自体が証拠となりますから、目撃証言で十分です。

   最近、迷惑防止条例がどんどん改正され、
   「 のぞこうとした ・ 撮影しようとした 」 を犯罪として明記したり、「 卑わいな言動をする」 という包括的な規定を置いたりしています。

   これは、「 のぞいた ・ 撮影した 」 の立証が難しいからでしょう。』


G『 目撃証言で有罪にできるのなら、犯罪行為の立証は簡単にできますね。』



b. 犯罪故意の立証が難しい



『 しかし、犯罪行為は立証できても、犯罪故意を立証しなければなりませんよ。』


G『 犯罪故意ですか‥。』


『 万引き犯人の犯罪故意は、犯人が店外して10m進むことによって立証できます。

 「 のぞいた ・ 撮影した 」 には「 のぞく故意 ・ 撮影する故意 」 が必要です。
 しかし、「 のぞこうとした ・ 撮影しようとした 」 ことにも、「 のぞく故意 ・ 撮影する故意 」が必要になります。

  上にあげた、京都府迷防も 「 これらの行為をしようとして‥」 と 、
  「 のぞこうとした ・ 撮影しようとした 」 ことにも、「 のぞく故意 ・ 撮影する故意 」が必要であると明記しています。


  この 「 のぞく故意 ・ 撮影する故意 」 を立証するのに 「 店外10m 」 のような決め手がないのです。


  決め手がなければ、「 疑わしきは被告人の利益による 」 という刑事司法の鉄則により犯人は無罪となります。

  犯人が無罪となれば、誤認逮捕と同様の結果が待っています。』


G『 犯人の自白があれば簡単でしょうが‥。』


『 警察官なら犯人を自白させる方法はいくらでもあるでしょう。

   自白しなければ、何日間も身体拘束をして朝から晩まで取り調べをする。

   脅し ・ 利益供与 ・ 自白誘導‥、やってもいないことすら自白させてしまいます。

   しかし、我々にはそんな権限も威力 ・ 威光もありません。

   犯人が我々に対して簡単に自白することはないでしょう。

   もし、自白をしたとしても裁判になれば 「 自白を強要された 」 と自白を翻すでしょう。』



c. 現行犯逮捕よりやんわりと牽制する方が安全


G 『 のぞき ・ 盗撮犯人を現行犯逮捕するのは危険だということですね。』


『 何の権力も持たない警備員にとって、現行犯逮捕は伝家の宝刀です。

   この刀を抜くときは最後の最後です。

   抜いた刀で相手を倒すことができなければ、自分は切腹しなければなりません。

   犯罪の立証が難しい のぞき ・ 盗撮 に対して安易に現行犯逮捕を使うのは得策といえません。』


G『 では、どんな方法で対処すればよいのですか?』


『 やんわりとした牽制を繰り返すことでしょうね。』


G『 例の店内ルールですか?』


『 盗撮犯に対しては上で説明した 写真撮影禁止の店内ルールで十分対処できます。

   のぞき を防止する店内ルールはありませんから、別の方法を考えなければなりませんね。』


G『 どんな方法がありますか?』


『 たとえば、女性客のスカートの中をのぞこうとして男が床に頭を押しつけている。

   男に近寄ってこう言いましょう。

  「お客さん! どうしたのですか?コンタクトレンズを落としたのですか? 待ってて下さいね。売場の係員をたくさん呼んできますから皆で捜しましょう!

    お客さん! 大丈夫ですか? 頭が重いのですか? 脳梗塞だったら大変ですよ! 救急車を呼びましょうか!

    お客さん! 当店の床に亀裂があるのですか?メンテの者を呼んで調べさせます。どこに亀裂が入っているのですか?」

   いろいろ考えてみてください。

   「 のぞいていること 」 に触れなければまったく問題はありません。


   のぞき や 盗撮をする者は、相手と自分だけの世界を妄想しその中で相手を自分の意のままにして楽しんでいるのです。

   その犯人の妄想の世界の中にズケズケと踏み込んでいけばよいのです。犯人を現実に引き戻せばよいのです。

   犯人はそんな “ 思いやり ” のない警備員のいる店に来なくなるでしょう。』


G『 なるほど、安全でしかも面白い方法ですね。

     しかし、保安担当としては のそき や 盗撮犯人を 現行犯逮捕してお灸を据えてやりたいものですね!』


『 我々警備員の仕事は店の安全 ・ 平穏を護ることで、犯罪者を捕まえることではありません。

   犯罪者を捕まえるのは警察の仕事です。

   「 お灸を据えてやりたい 」 というのは自分自身の欲望です。

    その自分の欲望を満たすために、危険な現行犯逮捕を使ってはいけません。

   ソフトな牽制で効果がなければ、警察に頼めば済みます。
   危険な現行犯逮捕は警察にやってもらいましょう。

   我々が現行犯逮捕しても警察が現行犯逮捕しても、のぞき ・ 盗撮犯 を捕まえることには変わりありませんからね。』 

    
G『 我々警備員が、のぞき ・ 盗撮犯 に対処するには安全でソフトな牽制が一番だということですね。』


『 まあ、たまには現行犯逮捕するのも面白いですが‥。』


G『 言っていることと逆じゃないですか!』



5. ケーススタディ



a.現認


G『 さて、久しぶりのケーススタディをお願いします。』


『 そんな必要はありませんよ。あの男、さっきから女性客のスカートの中を撮影していますよ‥。』


G『 えっ、どの男ですか?』


『 化粧品コーナーの男性化粧品棚の前にしゃがんでいる40歳くらいの男です。』


G『 あれっ? あの男は 1時間くらい前にもあそこにいましたよ‥。

     それで、スカートの中を盗撮されている女性はどの女性ですか?』


『 男の左後方の化粧品棚の前に30歳過ぎの女性が二人居るでしょう?』


G『 二人ともミニスカートで、ナマ足ですよ!』


『 アンタが興奮してどうするのですか!』


G『 しかし、男はカメラやケイタイを手に持っていませんよ?
     しかも、二人の女性の方を振り返らず熱心に男性化粧品を品定めしていますよ?』


『 男の右手を見てください。右手を握りこんでいるでしょう?』


G『 車のキーでも握っているのでしょうかねぇ。』


『 握り込んだ親指を見てください。親指が動くでしょう? あれはカメラのリモコンですよ。』


G『 遠隔操作ですか‥。 でも、カメラはどこにあるのですか?』


『 女性化粧品棚の手前に店内カゴが置いてあるでしょう?』


G『 あれは店のカゴではなく、買い物客が持ってくるマイバスケットですね。野菜や果物がはいっていますね。』


『 あの中に、ビデオカメラが入っているはずです。』


G『 あの位置からでは、女性二人のスカートの中は丸見えじゃないですか!』


G『 この状態では、あの男にソフトな牽制をすることはできませんよ‥。』


『 男かがカメラをのぞいていたり、床に頭を押しつけていたりしていませんからね。』


G『 どう対処すればいいのですか?』


『 現行犯逮捕でいきましょうか‥。』


G『 いきなり、伝家の宝刀ですか!』



b.盗撮行為の確認


『 声かけする前に、確認しなければならないことがあります。』


G『 はいっ!』


『 男はこれから、男性化粧品を買って、それをあのマイバスケットに入れて専門店街に出ます。。

   そして、どこかマイバスケットに入ったビデオカメラを取り出します。』


G『 まず、女性客の足元も置かれたマイバスケットにビデオカメラが入っていたかどうかを確認するのですね。

     ビデオカメラが入っていれば、現行犯逮捕ですか?』


『 何を言っているのですか!ビデオカメラに二人の女性のスカートの中が映っていなければ盗撮を証明できませんヨ!』


G『 でも、「着衣の中が見える位置に鏡、写真機等を‥置く 」 ことも “ 卑わいな言動 ” となるのでしょう?

     犯人のマイバスケットな中からビデオカメラが出てきたら “ 卑わいな言動 ” で逮捕できるじゃないですか!』


『 あなたは、今までの私の説明をちゃんと理解したのですか?
  
  ビデオカメラが出てきただけでは、男が 「 女性客のスカートの中を盗撮するためにビデオカメラを置いた 」 ということが立証できないでしょう!』


G『 そうでした。スイマセン、つい女性客のナマ足画像を想像していました‥。』


『 ‥‥。』


G『 男の故意を立証するためには、そのビデオカメラに女性客のスカートの中が映っていないとダメなのですね。』


『 それを確認する必要がありますね。』


G『 どのように確認するのですか?』


『 あの男は専門店街に出て、フードコートかどこかでカメラの画像を確認するはずです。

   その画像をアナタが確認すれば現行犯逮捕OKです。』


G『 男が画像を確認せずにそのまま帰っていったらお手上げですよ。』


『 そんな場合は “ お見送り ” しかありません。次を待てばいいじゃないですか。

   しかし、あの男は1時間くらい前にもあそこにいたのでしょう?

   男は写りの悪い画像を消して、また盗撮をしにきているのです。必ずどこかで画像をチェックするはずです。』


G『 あっ!男が男性化粧品を持って立ち上がりました!レジの方に行きます!』


『 さあ、男はレジ清算した男性化粧品を女性客の足元に置いたマイバスケットに入れて店外しますよ。

   あなたは、男を尾行してビデオカメラの画像を確認するのですよ!』


G『 盗撮の被害者の確保はどうするのですか? あの二人の女性に被害届を出してもらわないといけませんが‥。』


『 それは私がやっておきます。』



c. 声かけ ・ 現行犯逮捕



予想通り、男は清算した男性化粧品を女性客の足元に置いたマイバスケットに入れて専門店街に出た。

Gメンは5mはなれて男を追尾。

男が、フードコートに入り自販機でホットコーヒーを買って、周りに客の居ない席に座る。

Gメンは男から離れた席に座る。

男はマイバスケットをテーブルの上に置いて、ビデオカメラを取り出した。

そして、マイバスケットを陰にしてビデオカメラのモニターを確認している。

Gメンは何食わぬ顔で男の背後から近づき、男の肩ごしにビデオカメラのモニターを見た。

モニターには、あの女性たちのミニスカートの中のナマ足が鮮明に動いていた。


Gメンが男の背後から声をかける。


G『 ニイサン‥、なかなか面白いものが映っているやないか。』


男『 ビックリした!人の撮ったビデオを勝手に見ないでくださいよ!プライバシー侵害で警備員を呼びますよ!』


G『 なにが プライバシーの侵害じゃッ! プライバシーの侵害をしているのはオマエノ方じゃッ!』


男『 アナタは何を言いたいのですか!警官を呼びますよ!』


G『 俺はこのショッピングセンターの保安担当じゃッ!

      オマエを今から迷惑防止条例の盗撮で現行犯逮捕する。警官を呼ぶのはコッチの方じゃッ!』



d. 同行


男『 何のことですか! 私は盗撮なんかしていませんよ!』


G『 何とでも言えヤッ!こっちは一部始終をしっかり見ているンやッ!

     そのビデオカメラに映っている二人の女性も別の者が確保しとるンやッ!

     無駄な言い訳はやめた方が身のためと違うンか?

     迷防の盗撮は 6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金 だぞッ!

     素直に白状せンと、刑務所に行くことになるぞッ!』



男『 言い訳や白状なんて何のことですか! 盗撮なんかしていないのに言い訳や白状なんかする訳がないじゃないですか!』


G『 こんな所で言い争っていても仕方がない。保安室まで来てくれるか!』


男『 なぜそんな所に行かなければならないのですか! 何もしていないのに!』


G『 それなら、この場に警官を呼ぶぞ!

     皆がジロジロ見てるやないか! 知り合いがいたら噂が立つぞ!

     俺はアンタのためを思って、保安室でアンタの言い分をゆっくり聞こうと言っているンじゃないか。』


男『 それでは、アナタの気の済むようにしてください。保安室でもどこでも行きましょう!』


G『 やっと観念したな! そのビデオカメラは証拠品だから渡してくれ!』


男『 これは私の所有物です。アナタに渡す必要はないでしょう?』


G『 ほう、けっこう言うじゃないか! その元気がいつまで続くかな‥。』



e. 保安室での事情聴取



Gメンは男を伴って化粧品売場に戻り、被害者の二人の女性も連れて保安室へ到着。

二人の女性は別室で待ってもらい、保安室で男への事情聴取を始めた。



G『 まず、免許証か身分証明書を見せてくれ!』


男『 どうぞ。』


G『 氏名と住所を控えさせてもらうゾ。 かまへんなッ‥。』


男『 何でも気の済むようにやってください。』


G『 素直になったやないか。初めからそんなんやったら、俺もいろいろ言うことはなかったンやぞッ。』


男『 ‥‥。』


G『 次にそのビデオカメラを見せてくれッ!あの二人の女性のスカートの中が映っているヤツやッ。』


男『 嫌です!』


G『 すなおにせンと、罪が重くなると言っとるヤないかッ! それでもいいンかッ!』


男『 盗撮なんかしていないのに、罪が重くなることはないでしょう?』


G『 何とでもほざけやッ!今から警察に連絡するからなッ!』


男『 気の済むようにどうぞ。』


Gメンが携帯を取り出して警察に連絡。


G『 もしもし、〇〇交番ですか? いつもお世話になっています。〇〇ショッピングセンターの保安担当です。

     今、盗撮容疑者に保安室まで来てもらっています。お願いできますか?』


警『 その容疑者の住所氏名は分かりますか?』


G『 住所は〇〇〇〇、氏名は〇〇〇〇、男性。生年月日は〇年〇月〇日。』


警『 どんな状況でしたか?』


G『 化粧品売場で30歳くらいの女性二人のスカートの中を盗撮しました。

     カゴの中にビデオカメラを仕込んで、離れた所からリモコンで操作していました。』


警『 ビデオカメラは確保しましたか?』


G『 はい持っています。』


警『 被害者は確保しましたか?』


G『 別室で待ってもらっています。』


警『 分かりました。うかがいます。』



f.男はビデオカメラを取り出した



G『 さあ、警官がやって来るゾ。もう、まな板の鯉やなぁ!』


突然、男がビデオカメラを取り出した。


G『 なンや、警官が来ると知ってビデオカメラを渡す気になったか!』


男『 ぜんぜん‥。』

男はビデオカメラの映像を再生させてニタニタしながらこれを見だした。


G『 楽しそうヤのう。どんな風に映っているのか俺にも見せてくれやッ!』


男『 嫌です。』


G『 まあ、警官が来るまでせいぜい楽しめやッ。』



男『 ‥、なんだ映っているけど動きがイマイチだなぁ‥。アングルも悪いし、削除してしまおうかな‥。』


G『 おいッ! 勝手なことをするなッ! それは盗撮の証拠だぞッ!

     オマエは盗撮容疑で現行犯逮捕されていることが分かっているのかッ!』


男『 分かっていますよ。アナタが私を現行犯逮捕したのでしょう?』


G『 分かっていたら、画像を消去することはするなッ!』


男『 盗撮容疑で現行犯逮捕された者がその画像を消去してはいけないのですか?』


G『 いけないに決まっているだろうッ!』


男『 へぇ~ッ。最近刑事訴訟法が改正されたのですか?』


G『 なにをほざいているンやッ! 刑事訴訟法なんか関係ないだろうッ!』


男『 アナタは警察官じゃないでしょう? このショッピングセンターの保安担当でしょう? 一般私人ですよねぇ。』


G『 現行犯逮捕は警察官でなくても一般私人でもできるンだッ! それくらい覚えておけッ!』


男『「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。」(刑訴法213条) でしょう?』


G『 ちゃんと知っているじゃないかッ!』


男『 では、私人が現行犯逮捕をしたあと、何ができるのですか?』


G『 「検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、
        直ちにこれを…検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。」(刑訴法214条) だろう!』


男『 ちゃんと知っているじゃないですかッ!』


G『 だから、警察に連絡して今からオマエを引き渡すのじゃないかッ!』


( 刑訴法220条 )


男『 刑訴法220条も知っていますよねぇ‥。』


G『 俺は一般私人じゃッ! 刑訴法の条文なんかいちいち覚えているかッ!』


男『 刑訴法220条は知っていないと大ケガをしますよ。無料で説明してあげましょう。

     まず、条文です。

     「
検察官、検察事務官又は司法警察職員は
       第199条の規定により被疑者を逮捕する場合又は
現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、
       
左の処分をすることができる
       第210条の規定により被疑者を逮捕する場合において必要があるときも、同様である。

       一.
人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り被疑者の捜索をすること。
       ニ..
逮捕の現場で差押、捜索又は検証をすること

         2. ( 省略 )
         3.第1項の処分をするには、令状は、これを必要としない。
         4. ( 省略 )                                                                                                                                     」

      もし、アナタが警察官だったら、私を盗撮容疑で現行犯逮捕した場合、必要があれば、逮捕の現場で捜索 ・差押 ができます。
      私が盗撮犯人だったらその証拠となる盗撮画像を捜して差し押さえることができるのです。

       私が盗撮の証拠となる画像を消去しないように、押さえておく必要がありますからね。
       これは捜索 ・ 差押令状は必要ありません。


       しかし、この権限が認められているのは検察官 ・ 検察事務官 ・ 警察官 ( 司法警察職員 ) だけです。
       一般私人には認められていません。


       だから、一般私人であるアナタは私を盗撮容疑で現行犯逮捕しても、
       盗撮の証拠となる盗撮画像を捜索するために、無理やり私のビデオカメラの撮影画像を見たり、ビデオカメラを取り上げることはできないのです。』


G『 だから、ビデオカメラを取り上げていないだろうッ!』


男『 アナタは私のビデオカメラを取り上げるだけでなく、私がビデオカメラの画像を消そうとしても何もできないのです。』


G『 俺は警察官にオマエが盗撮画像を消去したことを言うゾ!』


男『 盗撮していないのだから、このビデオカメラには盗撮画像なんか記録されていませんよ。

      このビデオに記録されているのは私の娘の運動会の様子ですよっ!

      さぁ、みんな消してしまおう‥。』


G『 ちょっと待て! 消すな! コラッ! 消すな!』


男『 はいっ! 全画像消去完了!』



g. 警察官到着


警『 こんにちは‥。この男ですか?』


G『 そうです! この男が盗撮犯人です!』


警『 アンタ、盗撮は迷惑防止条例で犯罪になっているンだよ。

      そのビデオカメラで盗撮したの?』


男『 盗撮なんかしていませんよ。それをこの人が 盗撮の現行犯逮捕だとかなんとか言って私を捕まえたのですよ。』


警『 それなら、そのビデオカメラを見せてくれる?』


男『 どうぞ。』


警『 どうやって再生するの?』


男『 私がやりましょう。この再生ボタンを押せばモニターに画像が映ります。』


警『 何も映っていないよ‥。』


G『 今、その男が撮影した画像を全部消去したのです!』


警『 アンタはそんなことをしたの?証拠隠滅になるよ!』


男『 消した画像は私の娘の運動会の画像ですよ? それが証拠隠滅になるのですか?

      私が盗撮をしていないのに、どうして私が盗撮画像を消去できるのですか?』


警『 ‥。ちょっとGメンさんお話が‥。』


保安室の外で、


警『 盗撮の証拠がないんじゃお手上げだよ‥。』


G『 それなら、「 あのビデオカメラを女性のスカートの中が見える位置に置いた 」 というのでやれませんか?』


警『 “ 卑わいな言動 ” か‥。』


G『 撮影できてなくても、撮影できるような位置に置いただけで犯罪となるでしょう?』


警『 しかし、あなたはあの男がビデをカメラを設置したところを見ていますか?』


G『 それは見ていません‥。』


警『 もしアナタがそれを見ていても、あの男が撮影するつもりだったことをどうやって証明するのですか?』


G『 警察に連れて行って、白状させてください。』


警『 そんなことはできませんよ。あの “ PC 遠隔操作事件 ” 以来、きついお達しがありましたからネ。』


G『 あっ、そうだ! あの二人の被害女性が男がカメラを置くのを見たかもしれませんよッ!』


警『 あのビデオカメラはカゴの中に野菜や果物と一緒に入れてあったのでしょう?

      ビデオカメラをむき出しで置いたならまだしも、買った商品の入ったカゴを置くことはまったく問題がないじゃないですか‥。』



G『 ということは、無罪放免ですか‥。』


警『 本当にあの男は盗撮をしていたのですか? アナタの思い込みではなかったのですか?

      とにかく、事件にはなりませんので我々はこれで失礼します。』



h. 保安室に残された 盗撮男 とGメン



男『 結局、どうなったのですか? 私はもう帰ってもいいのですか?』


G『 ああ、勝手にしろやッ!』


男『 そうそう、まだこれからのことを話し合っていませんね。
      ショッピングセンターの責任者を含めて話し合いましょうか‥。』


G『 また、失敗か!』



『 Gメンさん、Gメンさん! 何をうなされているのですか!目覚めてください!』


G『えっ? ここは売場じゃないですか? 保安室じゃないのですか? 盗撮画像を消した男はどこにいるのですか?』


『 何を寝ぼけているのですか!盗撮男は男性化粧品棚の前で、せっせとリモコンスイッチを押しているじゃないですか!』


G『 えっ? 今までのは夢だったのですか? 』


『 あの男を盗撮で現行犯逮捕するのでしょう!』


G『 とんでもない! もうコリゴリですよ!』



i. 付記


実際はここまで骨のある盗撮犯はいません。

簡単に盗撮したことを白状して、証拠のビデオカメラを渡します。

どこかの盗撮犯人は警備員に捕まったときに、カメラからSDカードを抜き取ってそれを飲み込んだそうです。


盗撮犯人は小心者です。

しかし、あなたが今 捕まえようとしている盗撮犯は骨のある者かも知れません。

現行犯逮捕という伝家の宝刀を抜くときは十分注意してくださいネ。


なお、盗撮犯人が盗撮画像を消去しようとしたときに、それを止めさせようとして恫喝したら脅迫罪。
消去を止めさせたら強要罪。
ビデオカメラを取り上げたら、強盗罪になってしまいます。

これら犯罪にならなくても、違法捜索 ・ 違法差押 ・ プライバシー侵害で民事上の不法行為責任が生じます。
相手の出方によって、店の信用が大きく害されることになります。


くれぐれも、のぞき ・ 盗撮犯 の現行犯逮捕には注意してください。



つづく。


2012.10.26


※迷惑防止条例 が禁止する行為の検討


・( 三重県迷惑防止条例 2条2項・3項 )
      「2.
 何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、
           人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
          (1)人の身体に、直接又は衣服その他の身に着ける物(以下この条において「衣服等」という。)の上から触れること。
          (2)衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。
          (3)前二号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
       3.何人も、みだりに、
         公衆浴場、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室その他公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所における
         当該状態にある人の姿態を撮影してはならない。

          罰則は6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金。』 →→→ 三重県迷惑防止条例



1.処罰の対象となる のぞき ・ 盗撮 ・ おさわり とその要件


一つ目は、
  a. 正当な理由がないのに
  b. 公共の場所又は公共の乗物において
  c.
人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で

 ・
人の身体に、直接又は衣服その他の身に着ける物の上から触れる
 ・
衣服等で覆われている人の身体又は下着を のぞく ・ 撮影する
 ・
卑わいな言動をする


二つ目は、
  a. みだりに
  b. 公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所における
  c. 当該状態にある人の姿態を

  d. 撮影する                                                                                           』


2. 一つ目の のぞき ・ 盗撮 ・ おさわり


a. 場所


まず、場所が限定されています。
 b. 公共の場所又は公共の乗物 において 」 行われたものでなければなりません。

 “ 公共の ” とは不特定多数人が集散することです。

不特定人でも少数が集散する場所は入りません。
タクシー内や救急車内はここに言う “ 公共の乗り物 ” ではありません。
タクシーや救急車内での のぞき ・ 盗撮 ・ おさわり は入りません。

多数人でも特定の者が集散する場所は入りません。
私企業の会社ビルやオフィスはここに言う“ “ 公共の場所 ” ではありません。
私企業のエレベーター・更衣室・トイレ、オフィス内での “ のぞき ・ 盗撮 ・ おさわり ” は入りません。

もちろん、それらが 強制猥褻罪になったり、セクハラ になったりするのは別の問題です。


b. 方法


つぎに、方法が限定されています。
 「 c.人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法 」 で行われたものでなければなりません。


( 人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせない方法 ?)


では、 「 人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせないような方法 」 での のぞき ・盗撮 ・ おさわり とはどんなものでしょう。
もちろん、「 a. 正当な理由がないのに 」 した場合です。


 「 人の身体に、直接又は衣服その他の身に着ける物の上から触れる 」 に関しては、
挨拶代わりに肩をたたく、『 このスーツいいねぇ、どこで買ったのですか?』 とスーツに触れる ような場合でしょう。

しかし、 「 衣服等で覆われている人の身体又は下着を のぞく ・ 撮影する 」 に関してはどのような場合なのでしょう?

  
( 迷惑防止条例の趣旨 ・ 目的 から考えると )


迷惑行為防止条例は 「 公衆に迷惑をかけるような暴力的行為や不良行為 を防止して、公衆の平穏な生活が害されないようにする 」 ことを目的としています。

この条例は乗車券 ・ 座席券 ・ 景品の売買や客引き等の行為も禁止しています。
これらは、すべて公共の場所で不特定人に対して、つきまとったりうろついたりして行われる場合を対象としています。
それらの行為が、それを行われた人や周りの人に不安を与え一般人の平穏な生活が害されるからです。

つまり、乗車券 ・ 座席券 ・ 景品売買や、客引き自体を禁止することが目的ではなく、
つきまといやうろつくことによって、公衆を不安がらせることを禁止するのを目的としているのです。

迷惑防止条例のこのような趣旨 ・ 目的からから考えれば、一般公衆を不安がらせない方法での のぞき ・ 盗撮は 対象外だといえるでしょう。

だから、ここで 「 人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせないような方法 」 での のぞき ・ 盗撮 とは、
 「 相手や周りの者にまったく気づかれないような方法 で行う 」 のぞき ・盗撮 でしょう。
具体的には、遠隔操作の隠しカメラや、遠くから望遠鏡 ・ 望遠レンズ を使って 行う のぞき ・ 盗撮 だと考えます。


迷惑防止条例が護るのは、のぞき ・ 盗撮 行為により、公衆を不安がらせないことで、スカートの中のプライバシーではないのです。


c. 行為


次の三つの行為を上げています。

 ・人の身体に、直接又は衣服その他の身に着ける物の上から触れる
 ・衣服等で覆われている人の身体又は下着を のぞく ・ 撮影する
 ・卑わいな言動をする



イ.人の身体に、直接又は衣服その他の身に着ける物の上から触れる


( 人の身体 )

頭のてっぺんから足先までのすべての部分です。

髪の毛に触ってもダメです。


( 直接又は衣服その他の身に着ける物の上から )


帽子を触ってもダメです。
帽子を介して髪の毛を触ることになります。

靴を触ってもダメです。
靴を介して、足の踵や爪先を触ることになります。


女性の持っている傘やカバンの上から女性の体を触るのはどうでしょうか?
これらが、衣服と同じ 「 身につけるものかどうか 」 の判断によります。

女性が手に持っている傘やカバン、肩にかけているカバンなどは、衣服と同じとは言えないでしょう。
だから、これらを介して女性の体に触れるのはここでは除外されるでしょう。

しかし、あとで説明する “ 卑わいな言動 ” に入ってしまいます。


もちろん、女性が身につけいてる衣服等を介して、女性の身体に触れることが対象です。
帽子だけ ・靴だけ ・ 衣服だけ を触った場合は、ここでの対象外です。

ただし、“ 卑わいな言動 ” と判断される場合があります。


( 触れる )

手で触れようと、脚で触れようと、体の一部で触れようと同じです。

自分の持っている傘やカバンを押しつけることはどうでしょうか?
“ 触れる ” の解釈によって判断が分かれるでしょう。
ただし、ここで “ 触れる ” に該らなくても、“ 卑わいな言動 ” にあたります。

「 息を吹きかける 」 のも “ 触れる ” に該らないでしょうが、“ 卑わいな言動 ” に入ります


ロ. 衣服等で覆われている人の身体又は下着を のぞく ・ 撮影する


( 衣服等で覆われている人の身体または下着 )


衣服等から出ている身体の部分は対象外です。

うなじ ・ 胸の谷間 ・ ミニスカートから出た太股 など その女性が公開している部分を見たり ・ 撮影したりするのは該当しません。
ただし、そのやり方によっては“ 卑わいな言動 ”にあたります。

ズボンの上から見えるパンティラインはどうでしょうか?

パンティラインは 「 衣服等で覆われている‥下着 」 だとも言えます。
しかし、
“ のぞく ” という行為は “ 何らかの工夫をして見ること ” です。
見えているものを見るのは “ のぞく ” とは言えないでしょう。

パンティラインの撮影も同じです。
“ 撮影 ” が “ のぞく ” と併記されているからです。
つまり、ここでの撮影は、何らかの工夫をして撮影することだからです。


衣服から 「 透けている 」 下着も同様でしょう。
ただし、赤外線カメラなどを使って、 「 透けるように工夫して 」 見たり撮影したりするのはダメです。※下記京都府迷防 3条-( 5 )


ハ. 卑わいな言動 をする


どんな行為が “ 卑わいな言動 ” で、 どんな行為が“ 卑わいな言動でない ” かあやふやです。

このような包括的な規定は、 処罰の対象となる行為が明確に定められていないので罪刑法定主義に反し、憲法違反の可能性があります。

京都府迷惑防止条例のように、処罰の対象となる行為を限定するべきでしょう。

   ※京都府迷惑防止条例

   ・( 3 条-卑わいな行為の禁止 )
   「 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、
      他人を著しくしゅう恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、
次に掲げる卑わいな行為をしてはならない
      (1) みだりに、他人の身体の一部に触ること(着衣の上から触ることを含む。)。
      (2) みだりに、物を用いて他人の身体に性的な感触を与えようとすること。
      (3) みだりに、他人に、その意に反して人の性的好奇心をそそる姿態をとらせること。
      (4) みだりに、着衣で覆われている他人の下着又は身体の一部(次号において「下着等」という。)をのぞき見し、若しくは撮影し、
          又はこれらの行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、若しくは着衣の中が見える位置に鏡、写真機等を差し出し、置く等をすること。
      (5) みだりに、写真機等を使用して透視する方法により、着衣で覆われている他人の下着等の映像を見、又は撮影すること。
      (6) みだりに、他人に、異性の下着を着用した姿等の性的な感情を刺激する姿態又は性的な行為を見せること。
      (7) みだりに、他人に、人の性的好奇心をそそる行為を要求する言葉その他の性的な感情を刺激する言葉を発すること。

     ※京都府迷惑防止条例   京都府迷防改正点について


 ここに上げられている行為は “ 卑猥な言動 ” に該るとされるでしょう。

 たとえば、カバンや傘を女性の体に押しつける、スカートをまくる、ケイタイや手鏡をスカートの下に差し入れる、異性の下着をつけて見せつける、エッチなことを話しかける。


3. 二つ目の盗撮


一つ目の盗撮は、
公共の場所又は公共の乗物において、
  人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で
  衣服等で覆われている人の身体又は下着を 撮影する
」 ことです。

この一つ目の盗撮から、 「 衣服等を脱ぐような場所での盗撮 」 を取り出して別に規定したものです。


a. 場所


 b. 公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所 」 です。

その例として
公衆浴場、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室 」 をあげています。


( 公衆が )

この規定は、「 公共の場所 ・ 公共の乗り物 で 公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所 」 とはせず、
単に 「
公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所 」 としています。

この点から、 「 公衆の 」 とは、「 公共の場所 ・ 公共の乗り物 」 よりも少し広くなっていると解されます。

しかし、
「 公衆の 」 である以上、それが不特定多数を意味していることに変わりはありません。

だから、私企業のビルやオフィスにある、トイレや更衣室は対象外になります。

しかし、「 公共の 」 ではなく 「 公衆の 」 ですから、
公共の建物ではない 私立病院 や 私立学校 の トイレや更衣室 も含まれるでしょう。
もっとも、職員専用の トイレや更衣室は別です。


( 通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所 )


たとえば、ショッピングセンター ・ 病院 ・ 、駅、公園、スポーツ施設などの更衣室 ・ トイレ ・ 診察室 。

トイレのないキャンプ場や海水浴場のヤブの中。


b. 撮影対象


「 衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所 での 当該状態にある人の姿態


( 当該状態にある人の姿態 )


女子トイレ内なら、その中の女性がスカートやズボンを下げていたり、下着を下げていなければなりません。

 トイレ内の女性がスカートやズボンや下着を下げていない場合は、
 一つ目の 「公共の場所は公共の乗物において、.人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、卑わいな言動をする 」 に該ります。



この規定が定める場所は、もともと、一つ目の のぞき ・ 盗撮 の場所である 「 公共の場所又は公共の乗物 」 の中に入ります。
この規定は、一つ目の盗撮の中から 「 特に 衣服を脱ぐような場所での盗撮 」 を抜き出して、成立要件を変えて規定したものです。


 c.行為 - 撮影すること


( 撮影すること )


のぞくことは入っていません。

のぞくことは、一つ目ののぞきに該ります。


つまり、女子トイレ内の女性が、

スカート ・ ズボン ・ 下着をずらしていた場合は、
「 公共の場所又は公共の乗物において‥人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見した」 に該り、

スカート ・ ズボン ・ 下着をずらしていなかった場合は、

公共の場所は公共の乗物において、.人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、卑わいな言動をする 」 に該ります。


( 「 人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で 」 という限定がない )


これが、一つ目の盗撮や卑わいな言動 と異なるところです。

一つ目ののぞき・盗撮で次のように説明しました。

「 人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせないような方法 」 での のぞき ・ 盗撮 とは、
「 相手や周りの者にまったく気づかれないような方法 で行う 」 のぞき ・盗撮 で、
具体的には、遠隔操作の隠しカメラや、遠くから望遠鏡 ・ 望遠レンズ を使って 行う のぞき ・ 盗撮 だと考えます。


二つ目の盗撮ではこのような条件が付いていませんので、どんな方法であろうと撮影すれば処罰の対象となります。


この点については東京都迷惑行為防止条例が参考になります。

※東京都迷惑行為防止条例 5 条
「 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。
  ‥‥
  (2) 公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けないでいる場所
       又は公共の場所若しくは公共の乗り物において、
       人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、
       又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは
設置すること。」 →→→ 東京都迷惑防止条例


4.迷惑防止条例が禁止するのぞき・ 盗撮 のまとめ


①公共の場所 ・ 公共の乗り物でスカートの中をのぞく ・ 撮影する → 一つ目ののぞき
②公共の場所 ・ 公共の乗り物でスカートの中をのぞこう ・ 撮影しようとして、かがむ ・ 手鏡やカメラを差し入れる → 卑わいな言動
③公衆トイレ・更衣室の中の衣服を着ている人をのぞく。のぞこう ・ 撮影しようとして、かがむ ・ 手鏡やカメラを差し入れる →卑わいな言動
④公衆トイレ・更衣室の中の衣服をずらした人をのぞこう・撮影しようとして、かがむ・手鏡やカメラを差し入れる → 卑わいな言動
⑤公衆トイレ・更衣室の中の衣服をずらした人をのぞく → 一つ目ののぞき
※①~⑤は 「 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような 方法 」 で行われた場合に限る

⑥公衆トイレ・更衣室の中の衣服をずらせた人を撮影する → 二つ目の盗撮


結局、迷惑行為防止条例で禁止する のぞき ・ 盗撮 は、

不特定多数人が集散する場所で、
人の衣服に覆われた身体を、のぞく ・撮影する。のぞこうとして・撮影しようとしてかがむ ・ 手鏡やカメラを差し入れる。
トイレ ・ 更衣室など人が衣服をずらせる場所の中の人を、のぞく ・撮影する。 のぞこうとして撮影しようとしてかがむ ・ 顔を出す ・手鏡やカメラを差し入れる。


また、迷惑防止条例で禁止する のぞき ・ 盗撮 に該らないのは、

不特定多数人が集散しない場所 ・ 乗り物のなかでの のぞき ・ 盗撮。
たとえば、私企業の社屋ビル ・ 工場やオフィス、個人の家屋・敷地内 でののぞき ・ 盗撮。救急車 ・ タクシーの中での のぞき ・ 盗撮


なお、以上の解釈は私の解釈で、それが正しいかどうかは保証しません。
また、迷惑防止条例はその都道府県で細部が異なっています。
ここで説明した解釈に従って、のぞき ・ 盗撮 をした場合に迷惑防止条例が適用されて罰せられても当方はいかなる責任も負いません。
自己のなす行為はすべて自己責任であることをご了解ください。


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