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2011.05.22 親指シフトの説明


これからは外出先でパソコンを使う機会が多くなるだろうと、ノートパソコンを手に入れました。
もちろん、“セブン”や“ビスタ”ではありません。
私は20年前のFJ1200や40年前のSEIKOスポマチ・CITIZENオートデーターを日常使用している“半アナログ人間”です。
“98”はさすがにパスしますが、“XP”で充分なのです。

入手先は当然Yahooオークション。
プレゼンテーションに使っていたという使用頻度の少ないノートPCです。

付属品・説明書、予備のバッテリーパック、無線LANの受信機までついて、たったの1万円!
パソコンも安くなったものです。


windowsのアップデート、インターネットへの接続、メールアカウントのインポート、使用しているソフトのインストール、使用頻度の高い文書のコピーなどなど。
使えるようにするのに“一晩+半日”かかりました。
最後のデフラグが終わったのが本日の昼過ぎ。
特に、アップデートに時間がかかりました。
プレゼン用であったので、何年もアップデートをしていなかったのでしょうね。

ところで、私にはパソコンを使う上で一般の方より“とても不利”な点があります。
それは「入力方法が非常にマイナーなこと」です。


【1】親指シフトの歴史

私は20年以上も前のワープロの時代からキーボードで字を書いています。
ワープロ全盛時代に『コンテストで入賞するにはこの入力方法しかない』と絶賛された入力方法があります。
それが親指シフトです。
当時のソフトはOASYSですね。懐かしいでしょう?

この入力方法は富士通が開発し、「指先で字を書く」と評価されました。
途中で「ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽ」の入力方法を変えて完成し、「ニコラ配列」となりました。

パソコンが普及し、アルファベット入力(ローマ字入力)がほとんどとなり「親指シフト・ニコラ配列」は忘れ去られてしまいました。
今では家電量販店の店員さんも知りません。
それどころか、開発した富士通自身が親指シフトを見放してしまいました。
現在、富士通は親指シフトで入力できるパソコンを製造していません。(時々、思い出したように出すようですが…。)

司令部に見放された全国の親指シフト隊員は孤軍奮闘、“ヒンQ”というソフトが使われていました。
富士通はこのユーザーの熱意にに押されてか、ついにJapanistというソフトと専用のキーボードを発売しました。
このソフトとキーボードがあれば普通(?)のパソコンで親指シフトが可能になったのです。



これは予備でストックしている親指シフト用のキーボードです。
PCにJaoanistソフトを入れ、このキーボードをUSBでつなげば親指入力ができるようになりました。

このキーボードの値段はいくらだと思いますか?
一台、35000円もするのですヨ!
『一桁間違えている』と思うでしょう。
しかし、これが10万円でも親指シフト愛好者は手に入れるはずです。
それだけ、この入力方法には魅力があるのです。


【2】親指シフトのキー操作

1.キーボードの違い

上のキーボードをよく見てください。普通のものとどこが違いますか?

かなキーが三列しかありません。
一般のJIS配列キーボードではかなキーが四列になっています。

アルファベットは24文字。かなは50音+「ちいさいかな」が7個。
アルファベットなら三列で収まるけれど、かなでは四列使わなければならないのです。

しかし、四列のキーをブラインドタッチすることはできません。
ブラインドタッチのためには三列でなければなりません。
親指シフトは「かな入力でブラインドタッチができるように」開発された入力方法です。

もう一度、上のキーボードを見てください。
一つのキーに2~3個のかなが割り当てられています。
たとえば、「Hキー」には「み・は」、「Lキー」には「ょ・ぽ・い」。

しかし「かな2個のキー」はもう一つ「3個目のかな」を割り当てられています。
それは濁音です。
「Hキー」には「み・は」が刻印されていますが、このキーからは「み・は・ば」が出力されます。

いったい、どのような方法で「一つのキーから3個のかなを出す」のでしょう。

2.頭が痛くなる複雑な方法

暇な方は読んでください。
何が何だか分からないでしょうが…。



まず、各指のホームポジションです。

右人差し指→「Jキー」、右小指→「+キー」、右親指→「変換キー」。
左人差し指→「Fキー」、左小指→「Aキー」、左親指→「無変換キー」。
普通のキーボードと同じでしょう?
右指の守備範囲と左指の守備範囲も同じです。

(下に刻印されたかな)
キーをそのまま押せば、下に刻印されたかなが出ます。
たとえば、「Jキー・お・と」をそのまま押せば「と」が出ます。

これは左指守備範囲のキーでも同じです。
「Fキー・ゅ・け」をそのまま押せば「け」が出ます。

(上に刻印されたかな)
「そのキー」と「そのキーと同じ側にある親指」の変換キーを同時に押します。
たとえば「Jキー・お・と」と右親指の変換キーを同時に押すと「お」が出ます。

左指守備範囲のキーでは、そのキーと左親指の無変換キーを同時に押します。
「Fキー・ゅ・け」の「ゅ」を出すには「Fキー・ゅ・け」と左親指の無変換キーを同時に押します。

「右側のキー+右親指」・「左側のキー+左親指」で「上に刻印されたかな」が出るのです。

(濁音)
刻印されていない3個目のかなです。
これは、「そのキー」と「反対側の親指キー」を同時に押します。

たとえば、右側にある「Fキー・お・と」と左側にある「左親指の無変換キー」を同時に押すと「ど」が出ます。
左側にある「Fキー・ゅ・け」と右側にある「右親指の変換キー」を同時に押すと「げ」が出ます。

このように、親指を多用することから「親指シフト」と呼ばれています。

『質問です!』
どうぞ。
『下に刻印されたかなを出す時は、そのままキーを押す。上に刻印されたかなを出す時は同時に同じ側の親指キーを押す。
そして、濁音を出す時はそのキーと反対側の親指キーを同時に押す。そうですね?』

そのとおりです。

『じゃあ、上に刻印されたかなの濁音を出す時は「そのキー+右親指+左親指」の三つのキーを同時に押すのですか?』

あなた、親指シフトを使っているでしょう。
親指シフトを知らない人がここまでの説明でそんな質問ができるはずはないのですが…。
『…、バレたか…。』

心配しないでください。
上に刻印されたかなには濁音がありません。
そのように割り当ててあるのです。
濁音がすべてのかなにあったら、「そのキー+右親指+左親指」となるでしょう。

(かな入力への配慮)
読点「。」は左小指の斜め上、句点「、」は右小指の斜め上にあります。
句点を右側にしたのは、「読点よりも句点の方が使うことが多い」からです。

「~を」の「を」は左小指のホームキーです。
文章は「~を」で少し間を置きますから、この位置にあるのです。

また、右小指のホームキーの右側に「後退・Back」と「取消・Del」が並んでいるのも使いやすさを配慮したものです。

「かな」を「カナ」に変換するときは、左親指キーをもう一度押せばOK。
この左親指キーを押すたびに「かな→カナ→半角カナ→英字入力切り替え」という機能を持たせることもできます。

『質問です!』
親指シフトファンの“ヤラセ質問”ですね。どうぞ。

『3個のかなが刻印されているキーがありますね。
たとえば、⑥のLキーには「ょ・ぽ・い」。
上に刻印された「ょ」は「⑥+左親指」、下に刻印された「い」は⑥だけ。
では真ん中に刻印された「ぽ」はどの様にして出すのですか?』

知っているのでしょう?
「真ん中に刻印されたかな」を出す時は「反対側の親指キーを同時に押す」のです。
反対側の親指キーを同時に押すと濁音が出ますが、このキーに割り当てられたかなには濁音がないので、濁音出力と機能がダブらないのです。

「親指シフトは途中で“ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽ”の入力方法を変えて完成した」と説明しましたね。
これがそれなのです。
もう忘れましたが、それまでは「シフトキー」を使って出していました。
これが非常にやりにくかったのです。

『質問です!
どうぞ、どうぞ。

『右小指ホームの斜め上の句点の横に「読点②」というキーがありますね。
「読点キー」は左小指ホームの斜め上にありますが、なぜ右側にもあるのですか?』

さすがは親指シフト愛好家!
よく気がつきましたね。

『わざわざ「読点②」と注意書きがあれば誰でも気づきますよ!』

実のところ、私はこの「読点②があること」を今まで知らなかったのです。
もちろん、20年以上もこの「読点②」を使ったことはありません。
そもそもこの読点②をどうやって出すのでしょう。
いろいろやってみても「。」が出てきません。

もしかして、これは読点じゃないかもしれません。
しかし、使わないけれど気になりますねぇ。
暇な時にネットで調べてみます。

3.体で覚えるキー操作

親指シフトの操作方法を文章で説明すると難しくなります。
しかし、それを習得するのは簡単です。

「親指シフト練習方法」にそって、毎日1時間くらい練習すれば、二週間でかな入力のブラインドタッチができるようになります。
後は、文章を書けば書くほど上達していきます。
一年くらいすれば「どこにどんな“かな”があるのか」分からなくなります。
指先が覚えてしまうのです。
これで「指先で字を書く」ようになったのです。


【3】親指シフトの魅力

1.ローマ字入力も速い

私服保安をやっていると、万引き検挙後に警察署で調書を取られます。
もちろん、証人としての調書です。
ときどき、検察庁でも調書を取られます。
万引き犯人が送検されて検察官が「起訴するかしないか、起訴して勝てるかどうか」を判断するためです。
起訴した後の証拠収集の場合もあります。

警察署での調書は担当警察官が作成します。
だいたいがパソコンを使います。
たまに、手書きで調書作成をする警察官もいます。
「これで書かないと気分が乗らない」と万年筆を取り出した女性刑事もいました。
若い警察官は馴れた調子でパソコンのキーを打っていきますが、親指シフトの私が驚くようなものではありません。

検察庁へ行くと、デカイ机の後ろに検事。その右横の机に検察事務官が座っています。
我々は検事のデカイ机の前に置かれた椅子に座ります。
我々から見ると「検事が前、検察事務官が左横」という配置になります。

なお、警察署ではコーヒーが出てタバコもOKです。
これは「コーヒーカップに着いた指紋やタバコの吸殻に着いた唾液からDNAを採取するため」ではありません。
単なるサービスです。
もちろん、ケイタイが鳴れば『どうぞ、どうぞ。』

しかし、検察庁では何も出てきません。
それどころか、ケイタイが鳴ると『部屋の外で話してください。』と注文されます。

検事のデカイ机の右前にパソコンのモニターが置いてあります。
検事は作成する調書の内容を考えながら口述していきます。
それを検察事務官がパソコンで入力します。
入力された文章は検事の机のモニターに出て、検事がこれを見ながら調書の内容を修正したり付け加えたりしていきます。

ある事件で検察庁に出向いた時のことです。
検察事務官は40歳前の女性でした。
私の左横からは検察事務官のキー操作音が聞こえます。

「ン?」
私は聞き耳を立てました。
非常に軽やかで流れるような音です。

しかし、親指シフトではない。
検事の口述を私が打つ場合と何か違う。どうもワンキー多い。

2時間後、調書作成は終わり。
検察事務官が出口まで見送ってくれました。
私は尋ねました。
『ローマ字入力ですか?それにしては速いですねぇ…。』
『長くやっていますから、馴れますよ。』

私は「ローマ字入力でもこれだけ速く打てるのか」と驚きました。

2.ローマ字入力との違い

親指シフトでもローマ字入力でも入力スピードに違いはないでしょう。
しかし、親指シフトは「かな入力」なのです。

われわれ日本人の思考回路は「かな」ででき上がっています。
「愛」は「あ・い」なのです。
「愛」は「a・i」ではないのです。

「あ・い→愛」と変換されないで、「a→あ、i→い、あい→愛」と変換されたのでは思考回路が邪魔されるのです。
ローマ字が途中で入ることにより、「靴の上から足をかく」もどかしさを感じるのです。

口述を入力する場合や、でき上がった原稿を入力する場合はローマ字が介在しても問題ありません。
しかし、文章を考えながら打っていく場合は、この“もどかしさ”がストレスとなります。
「思ったままに文章が書けない」からです。

親指シフトの良さは、単に「ブラインドタッチができて入力スピードが速い」ことだけではありません。
それが「かな入力で可能」なことなのです。

3.JIS・かな配列は?

親指シフトは少数派ですが、「JIS・かな配列」は死んでいます。
国政調査の項目に「あなたは、JIS・かな配列でかな入力をしていますか」という項目を付け加えたらどうでしょう。
何%の人が「そうです」と答えるでしょうか?

JIS・かな配列では、ブラインドタッチができない、「ば・び・ぶ・べ・ぼ」や「ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽ」が二動作になる。
「馬鹿」は「は」+「゜」+「か」→「ばか」ではなく、「ば+か」でなくてはなりません。

こんな「どうしようもない死んだJIS・かな配列」が、どのキーボードにも刻印されているのです。
お上の皆様、恥ずかしいとは思いませんか?
民間業者の富士通が開発した「かな入力方法」に負けたことを認めることが嫌なのですか?

なお、親指シフトでもアルファベットの配列は同じです。
もちろん、ローマ字入力もやり方は同じです。
ローマ字入力が主流となった現在、かな配列を親指シフトにしてもまったく問題はありません。
どんなワープロソフトを使うかも関係ありません。
Word・Excel同じです。

富士通は誰に気兼ねしているのでしょう。
もっと親指シフト・かな入力を宣伝し、「全国のキーボードからJIS・かな配列の刻印を消そう」という気概を持ってください。


【4】親指シフトのキーボードはいらない

上で、「親指シフトでかな入力をするためには“親指シフトのキーボード”と“Japanist“というソフトが必要」と説明しました。
しかしこれは正確ではありません。
PCにJapanistを入れれば、使っているキーボードのかな配列が親指シフトのかな配列に変わってしまうのです。
もちろん、かな刻印まで変わるわけではありません。
しかし、親指シフトではブラインドタッチをするのですから、キーにどんな刻印がされていようが関係ありません。

一世代前の親指シフト専用キーボードでは「無変換キー(左親指キー)」と「変換キー(右親指キー)」の下に「無変換キー」と「変換キー」がありました。
親指キーは「上に刻印されたかな・濁音・真ん中に刻印されたかな」を出す機能だけにして、変換・無変換機能を持たせていませんでした。
その方が「かな入力がやりやすく、文章作成にストレスがかからない」からです。

しかし、今の“親指シフト専用キーボード”ではこの変換・無変換キーをなくし、親指キーに変換・無変換機能を持たせました。
結局、“専用のキーボード”といっても“普通のキーボード”と同じなのです。
違うのは“かな刻印“だけ。
ブラインドタッチに”かな刻印“は不要。
それなら、3万5千円も出してわざわざ専用キーボードを買う必要はない。

富士通が「親指シフトをやりにくくし、一般のキーボードと同じ型のキーボードで親指シフト専用キーボードを作った」のはなぜでしょう。

①経費がかかるので、一般に使われているキーボードを流用しただけ。
②「専用キーボードなんか一般のキーボードと同じだ。特別に買う必要はないンだ」と気づかせようとしている。
③全国のキーボードに密かに親指かな入力を浸透させようとしている。

富士通の思惑はさておき、結局Japanistソフトだけで親指シフト・かな入力はできるようになりました。

ということで、
今回、手に入れた富士通製「JIS・かな配列」ノートPCはJapanistをインストールして、親指シフト版に生まれ変わりました。



もっとも、私はノートPCの「グニュグニュ」したキータッチが嫌いです。
このキータッチも思考回路を邪魔します。
親指シフト使用者はとってもデリケートなのです。


【5】親指シフトはお勧めしません

親指シフト・かな入力には一つだけ欠点があります。
それは「別に英字入力を習得しなければならない」ことです。
英文を打つ機会がなくても、文章の中で英単語を使ったり、パスワードを入力したりすることは普通に起こります。
初めからローマ字入力なら、そのまま英単語や英文を打つことができます。
もっとも、これは「親指シフトの欠点」ではなく「かな入力の欠点」ですが…。

ローマ字入力は日本語も入力できて英文も入力できる。
しかも24個のキー操作を習得すればよい。
ブラインドタッチは当然。
馴れれば親指シフトに負けない速さで入力できる。

「日本人の思考回路はかなででき上がっている…」は現代っ子には当てはまりません。
「ご飯・みそ汁・魚」は「パン・スープ・肉」に変わっています。
ケイタイメールの「恐ろしいほどめんどうくさい入力」を歩きながらやれるのです。
彼らにとって「愛」は「a→あ→i→い→あい→愛」であっても「あ→あ、い→い→あい→愛」であっても何のストレスもかからないでしょう。
「あ・い→愛」である必要はまったくないでしょう。

富士通が親指シフト・かな入力を見放しているのも納得できます。
「かな入力」に固執しても儲かりませんからネ。
もはや「かな入力」自体が 時代遅れになったのです。
その内に「日本の伝統文化・かな入力」という特集番組が放映されるかもしれませんネ。


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