spnet保安-RMX・SJ13クランクケース内のベアング交換-オイルシールの打込み量と方向

RMX ・ SJ-13A 整備資料





2014.08.31   SJ13クランクケース組立時の注意①-オイルシールの打込み量と方向



オイルシールはすべて外側から交換できるようになっています。

では、どこまで打ち込んだら( 入れたら ) よいのでしょう?

「オイルシールはオイル漏れを防ぐためのもの」
こう考えて、ついつい 「 止まるところまで 」 打ち込んでしまいます。

しかし、オイルシールがベアリングにくっついてしまうと、ベアリングの動きを阻害したりオイルシール自体が損傷したりします。

オイルシール打込み量の原則は 「 外側の面とツライチ 」 。

このことを、クランク左右とドライブシャフト左側のオイルシールで検証してみましょう。


また、オイルシールには取り付け方向があります。

この方向を誤るとオイルシールがその役割を果たしません。

原則は 「 油室側が凹部、油が漏れていく側が平坦部 」

クランク左側のオイルシールはケース外側(左側)が平坦面で内側(右側)が凹面。
しかし、クランク右側のオイルシールはケース外側(右側)が凹面で内側(左側)が金属プレートのついた平坦面です。

この点についても説明します。

     
1.クランクシャフト右側のオイルシール打込み量


a.ベアリング,オイルシール,スペーサの関係


まず、クランク軸右側の構成部品を見てみましょう。

・a:ベアリング
・b:オイルシール
・c:プライマリードライブギヤスペーサ
・c2:Oリング ( cのスペーサの中に入る)
・d:プライマリードライブギヤ
・e:プライマリードライブギヤボルト
・e2:プライマリードライブギヤボルトワッシャ


・ベアリングaの外輪と オイルシールb はケースに固定

・ベアリングaの内輪,スペーサc, プライマリーギヤd は、 e と e2 によってクランクシャフトに固定。


各部品のサイズを計ってみましょう。

・a,b,c は N型のものです。
・R・S型では 右側ベアリングが大きくなったので、
 オイルシールもスペーサも大きくなっています。

・a ベアリング
 外輪内側径:51㎜Φ、内輪外径:36㎜Φ
・b オイルシール
 外径:52㎜Φ、内径:36㎜Φ
・c スペーサ
 太い部分外径:36㎜Φ


このサイズから分かるように、

・オイルシールはベアリング外輪内側にピッタリはまります。
・ベアリング外輪内径が51㎜でオイルシール外径が52㎜ですが、
 ベアリング外輪にはテーパー部があるのでピッタリはまるのです。
・実際にはこのようにはまりませんし、はまるようにしてはいけません。
・スペーサはオイルシールにぴったりはまります。(実際も)
・オイルシールはケースに固定。スペーサはクランクシャフトに固定。
  クランクシャフトが回転すればスペーサも回転。
・当然、オイルシールは磨耗していきます。。
  
・オイルシールにはまったスペーサをペアリング側から見るとこうなります。
・金属製のスペーサがゴム製のオイルシールの中を
  高回転で回る様子を想像してみてください。
  「オイルシールが消耗品」ということが痛感できるはずです。


・スペーサはベアリング内輪とピッタリ重なります。 ・この二つが向かい合っています。
・このスペーサとオイルシールがベアリング溝の隙間を塞ぐのです。
・スペーサの中入っているOリングは、シャフトとスペーサの隙間を塞ぎます
・このように、オイルシールはペアリング溝の隙間をを塞ぐ働きをしています。
・しかし、ベアリングとオイルシールはケースに固定されているので、
  お互いがピッタリ重ならなくてもペアリング溝の隙間を塞ぐことができるのです。


b.クランクシャフトには段差がある


スペーサはどこまで打ち込めばいいのでしょう。

ベアリングとスペーサの関係を見てみましょう。

・クランクシャフトには段差があります。 ・この段差でスペーサは止まり、これ以上入れることできません。
・だから、「スペーサはどこまで入れるか」は問題になりません。
  ・シャフトに軽く挿入してプライマリーギヤを取り付ければ適正位置になります。


もう少し詳しく検証してみましょう。

・①フライホイールから段差までが16.5㎜。
  ②段差から取付テーパー部端までが24㎜。
  ③取付テーパー部端からシャフト端までが16.5㎜。

・ベアリング厚は17㎜ですから、スペーサは段差手前までしか入りません。
・ベアリング厚17㎜+スペーサー長さ23.5㎜=40.5㎜。
  ④が40.5㎜だから、ベアリングとスペーサで取付テーパー部端まできます。

・プライマリーギヤの取付面からの長さは18㎜。
・ベアリング+スペーサ+ギヤ=58.5㎜。⑤シャフト全長が57㎜。
・ベアリング,スペーサ,ギヤをシャフトにはめると1.5㎜だけはみ出します。

・ギヤは左画像の赤矢印のところまで入れることができます。

・右画像にベアリングをはめると
  赤矢印の方向にスペーサとギヤが1.5㎜押し出されます。
  この 1.5㎜をボルトで締めることによって
  ペアリング,スペーサ,ギヤをシャフトに固定するのです。


なお、R・S型ではN型よりスペーサの長さが短くなりました。

・スペーサの全長はN型が23.5㎜、R・S型は22.5㎜で 1㎜短くなりました。
・R・S型ではベアリングがN型より大きくなり、ベアリング厚が1㎜増えました。
 そのためにスペーサ全長を1㎜だけ短くしたのです。
・だから、N型でもR・S型でも、
  クランクシャフトにベアリング,スペーサ,ギヤをはめた場合、
  ギヤ取付部がシャフト端より 1.5㎜はみ出るのは同じです。
・なお、プライマリーギヤと排気バルブガバナギヤは中央で噛み合いません。
・この状態が正常です。
・プライマリーギヤをもっと下げようとギヤを叩いてはいけません。
 ギヤはこれ以上下がりません。ギヤを叩けばクランクシャフトのセンターが狂います。


c.フライホイールにも段差がある

・フライホイールにも段差があります。

・この段差は高さが 1㎜ で 外径が 36㎜Φ。
 ベアリングの内輪にぴったり重なります。

・ベアリング内輪はクランクシャフトにはめられ、 左側はフライホイール段差、右側ばスペーサに挟まれます。

・プライマリーギヤが取り付けられるとスペーサが押し込まれ、ベアリング内輪はクランクシャフトにガッチリと固定されます。

・一方、ベアリング外輪はクランクケースに固定されています。

・このようにして、クランクシャフトはベアリングを介してクランクケースに固定され、しかも自由に回転できるようになるのです。



この、「ベアリング内輪とベアリング外輪が別々の箇所に固定されている」ことは充分理解しておかなければなりません。

これを忘れるとベアリングの動きを阻害してしまうことになります。

それは、クランクシャフトの引き込み過ぎです。


d.クランクシャフトの引き込み過ぎに注意


イ.引き込みすぎるとベアリングが動かなくなる

・クランクケースのベアリング穴にはベアリングを止める段差があります。
  この段差(画像の白矢印のところ)でベアリング外輪が止められます。

・クランクシャフトをベアリング内輪に挿入してインストーラーで引き込んでいくと抵抗を感じて行き止まりになります。
 このとき、クランクホイールの段差がベアリング内輪にくっついたのです。

・この状態からさらにインストーラーのネジを締めてクランクシャフトを引き込むとどうなるでしょうか?

・ベアリング外輪はケース段差でストップ、ベアリング内輪はクランクホイール段差に押されて外側へ。
 ベアリング外輪と内輪がずれた状態になり、ベアリングがスムーズに動かなくなります。

・また、クランクホイールの段差はたったの1㎜です。
 もし、ベアリング内輪がベアリング外輪より 1㎜だけ多く出てしまえば、クランクホイールがベアリング外輪にくっついてベアリングが動かなくなります。


・では、クランクシャフトをどの程度引き込めばよいのでしょう。

  引き込んでいって抵抗を感じたらインストーラーによる引き込みは終了。
  あとは、左右のクランクケースをボルトで結合するときに自然と適正値まで引き込まれます。


ロ.クランクシャフトの引き込みとクランクケースの接合は別のもの


一方のクランクシャフトを片方のクランクケースに引き込みました。

もう一方のクランクシャフトをクランクケースに引き込んでいくと、二つのクランクケースが近づいてきます。

そこで 「 クランクシャフトの引き込みはクランクケースの接合作業だ 」 と勘違いしてしまいます。

そして、クランクケース接合がうまく進まないと、「これでもか、これでもか」とクランクシャフトを引き込もうとします。

しかし、クランクケースの接合は止まったまま。

そこで、また 「 これでもか! これでもか!」、


クランクシャフトがクランクケースに規定量だけ引き込まれていないと、クランクケースはピッタリ重なりません。
しかし、クランクケースがピッタリ重ならないのは、クランクシャフトの引き込みが不足しているだけではありません。

カウンターシャフトの入りが渋かったり、クランクケースが傾いていたりしても接合がスムーズに進みません。

クランクケースの接合が止まった場合は、接合の渋いところをプラスチックハンマーでたたくと、
堅かったクランクシャフトの引き込みが軽くなり再びクランクケースの接合が始まります。

「もう少しで重なる 」というところで接合が止まったら、クランクケース接合ボルトを締めてみましょう。
「 パキッ、パキッ 」 と音をたててクランクケースがクランクシャフトに食い込んでいきます。

これらのことをしないで、クランクシャフトを無理やり引き込んでも接合は進みません。
それどころか、上に述べたようにベアリングが動かなくなります。

クランクシャフトの引き込みは 「 クランクケースにクランクシャフトを引き込む作業 」 で、「クランクケースを接合する作業」でばありません。

インストーラーによるクランクシャフトの引き込みは 軽く行き止まったらそれで終了。
もし、引き込み量が不足していても、クランクケース結合ボルトを締めるときに自然と適正値にまで引き込まれます。


ハ.一方を引き込むと他方が抜けることがある


クランクシャフト左側を左クランクケースに引き込んだ。

次ぎに、クランクシャフト右側を右クランクケースに引き込む。

この時に、左クランクケースに引き込んだクランクシャフトが少し抜けることがあります。

左側が少し抜ければ、右側を規定量だけ引き込んでもクランクケースは重なりません。

こんなときに、クランクシャフト右側を無理やり引き込んではいけません。

右側を引き込んで行き止まったら、右側の引き込みはそれで終了。
左側が抜けた分はクランクケースの結合ボルトを締めるときに戻ります。


ニ.クランクシャフトを引き込みすぎた場合はどうするか


引き込みすぎた場合はクランクの回転が鈍くなるのですぐに分かります。

そんなときは、クランクシャフトをたたいてやればベアリング内輪が自由になってクランクは軽く回るようになります。

もちろん、これは救命措置です。
クランクシャフトをたたくとセンターがずれたり、ベアリングの挿入が甘くなったりします。

クランクシャフトを叩かずに済むようにしなければなりません。


「クランクシャフトの引き込みは クランクケースの接合作業でない」ことをしっかりと自覚し、、
「クランクケースの接合は徐々に、クランクシャフトの引き込みは慎重に」行わなければなりません。


手持ちの 1994・KX125・250のサービスマニュアルの「クランクケースの結合」にこう書いてあります。

「クランクケース取り付けボルトをクランクシャフトの周囲より順次外側へ向けて締めつける」

このように、クランクケースの接合は複合的で慎重な作業なのです。

クランクシャフト引き込みでは、「インストーラーでは終わり近くまで、仕上げはクランクケースのボルト結合で」 を留意してください。


     

★2019.1.22 追記    クランクシャフト引き込みについての考察

上の説明では「クランクシャフトの引き込みを甘くしておいても、クランクケース接合によってベアリングが押されて適正位置になる」としていますが、そうならない場合があります。

クランクシャフトとベアリングの嵌め合いがきつい場合はクランクケースの接合によってベアリングは動きません。
「クランクケース接合前(隙間が1~2㎜)はクランクがスムーズに回転していたのに、クランクケースを接合したら回転が重くなったor回転しなくなった。」場合がそれです。
この原因と対策について考えました。

まずは確認事項

①ベアリング外輪はクランクケースのベアリング孔段差に当たって、それ以上外側には動けない。

②クランクシャフトの引き込みではベアリング内輪がクランクホイールの段差に当たって外側に押される。

③クランクホイール段差が内輪を押し込み過ぎると、ベアンリングの外輪と内輪がズレて動きが鈍くなったり動かなくなったりする。

④クランクホイールの段差は片側で1㎜。内輪の押し込み過ぎは最大1㎜。それ以上はクランクホイールがベアリング外輪と当たってしまう。

⑤両側のクランクホイール段差間の距離は、クランクケースに取り付けた両側のベアリング内輪同士の距離に等しい。(※設計上の±αは除く)

     つまり、

   a.クランクシャフトの引き込みが両方とも適正量(位置)ならクランクケースが接合するように設計されている。

   b.クランクケースを接合した場合、クランクシャフトの「両方が引き込み過ぎ」または「両方の引き込みが不足」ということは存在しない。
          クランクシャフトは伸び縮みしないから、「片方を引き込み過ぎた場合はその分だけもう一方の引き込みが戻されて引き込みが不足する」

   c.だから、クランクケースガ接合したからといってクランクシャフトの引き込みが両方とも適正量(位置)だとは言えない。
          「片方が引き込みすぎで片方が引き込み不足」でもクランクケースは接合する。
         この場合は引き込み過ぎの方のベアリングの外輪と内輪がずれているのでクランクの回転が重くなったり回転しなくなったりする。

   d.以上のことから、クランクケース間の隙間=「一方の引き込み不足量-もう一方の引き込み過ぎ量」or「一方の引き込み不足量+もう一方の引き込み不足量」


通常のクランクシャフト引き込みは、まず左側をやや甘く引き込み(プーラーが重くなる前に止める)、次に右側を普通に引き込む(プーラーが重くなったら止める)。
左側は引き込み不足で右側は適正がやや不足。

この両方の不足分だけクランクケースに隙間ができている(1~2㎜)。

クランクケース接合ボルトを締めてクランクケースを接合していくと、両方のクランクケースのベアリング孔段差がベアリング外輪を内側へ押してベアリングが動き、
ベアリング内輪がクランクホイール段差に当たるとクランクケースガ接合する。

しかし、これはクランクシャフトとベアリング内輪の嵌め合いが通常の場合。
何らかの原因で嵌め愛がきつい場合は、クランクケースがベアリング外輪を押してもベアリングは動かない。
ベアリングが動かないまま接合ボルトを締めてクランクケースを接合すれば、ベアリングの外輪と内輪にズレが生じて「引き込み過ぎ」の状態になってしまう。

「クランクケース接合前はクランクがスムーズに回転していたのに接合したら動きが重くなったor動かなくなった」というのはこの場合。

この場合の対処方は?

「引き込み過ぎ」だからシャフトを内側へ叩いてやる。

「シャフトを叩く」のはあまりお勧めできません。

それなら、もう一度クランクースを少し引っ張る。

いやいやもっと簡単な方法があります。

「クランクシャフトをもう少し引き込む」のです。

「えっ?引き込み過ぎているのに、さらに引き込む?」

クランクケースが接合していて、片方が引き込み過ぎなら、必ずもう一方が引き込み不足になっています。
その引き込み不足の方を引き込んでやるのです。

通常は「左側の引き込みを甘くしている」から、左側が引き込み不足になっているでしょう。
※左側引き込み不足1㎜→右側引き込み適正→クランクケース隙間1㎜→クランクケース接合
    →左クランクケースが左ベアリング外輪を押すが動かない and 右クランクケースが右ベアリング外輪を押すが動かない
    →クランクケースを接合→右ペアリングの外輪と内輪が1㎜ズレている。
        ※左ベアリングは引き込み不足なので内輪がクランクホイール段差に当たっていない→クランクケース接合で外輪がクランクケースに押されても内輪とのズレは生じない

クランクケース接合ボルトをしっかりとしめておいて、左クランクシャフトをプーラーで少し引き込むと…。
なんと、動かなくなったクランクがスムーズに回転するじゃないですか!

「回転が重くなった→引き込み過ぎ→引き込み過ぎ解消の方法」と考えていると思いつきませんね。

ただし、左側を引き込み過ぎると右側の引き込みが不足するので、今度は右側を引き込まなければなりません。

「クランク回転のスムーズさ」について神経質になると、無限地獄になってしまいます。

クランクケース接合前の回転具合を覚えておくとよいでしょう。

しかし、それより少し重くなっても気にしないことが大切です。    

「動いているうちに、適正位置に収まっていくだろう」と横着を決め込むのが精神的に良いようです。



e.オイルシールを止める段差はない


次は、ペアリングとオイルシールの関係です。

・オイルシールはクランクケースのオイルシール穴にはまっています。

・スペーサはクランクシャフトに固定されていますが、オイルシールはクランクシャフトに固定されていません。

・オイルシールはスペーサの上を移動でき、ベアリングに接するまで動くことができます。
 ベアリングに接するまで動くことができます。

・つまり、オイルシールを適正位置にする段差(ストッパー) がありません。

・そこで、「オイルシールをどこまで打ち込むか?」が問題になるのです。



f.オイルシールでこの溝(穴)を塞いではいけない

・クランクケースのベアリングのはまる穴にはミゾがあります。
・この溝は上部で穴になっています。
・この穴はシリンダーまで貫通しています。 ・この穴の役割は、
    ベアリングを通過した混合気を、
    ピストン室へ逃がすことです。→→→こちら


・オイルシールはまる部分の厚さは12㎜。
・溝部分を除くと 8㎜。オイルシール厚が 8㎜。
・この 8㎜の部分にオイルシールをはめれば、
  穴を塞ぐことはありません。
・8㎜部分にオイルシールをセットするとこうなります。
 
・クランクケースの外側から見るとこうなります。
・オイルシールの打込み量はケースとツライチ。
  それ以上打ち込むと
   クランク室とシリンダーをつなぐ穴を塞いでしまいます。


確認のためにベアリングをはめた状態で見てみましょう。

クランクケースの外側から見ています。

・ベアリング外輪は段差で止まってこれ以上動きません。
・ケース外側からベアリングまでが 12㎜、
 クランク室とシリンダーをつなぐミゾ穴を除くと 8㎜。
・この8㎜部分にオイルシールがはまります。
・オイルシールとベアリングには4㎜厚の空間ができるのです。
・くどいようですが 「オイルシールはケースとツライチ 」。
・オイルシール打込みは角ワッシャを上に載せて叩いてください。
  そうすれば、ケースより深く入ることはありません。
・古いオイルシールを重ねて打ち込むと打ち込みすぎてしまいます。


オイルシールとベアリングの間に空間を作ることはサービスマニュアルも指摘しています。

その指摘は直接的ではありません。

マニュアルp2-2 の動力装置のイラストにはっきりとオイルシールとベアリングの間に隙間・空間があることが描かれています。



g.スペーサはオイルシールから出ているのが正常


・ベアリングからケース外側までが 12㎜。
・オイルシールはケース外側にツライチ。
・スペーサはベアリング内輪に接し、
 太い部分の長さが 12.5㎜、全長が 23.5㎜。

・つまり、スペーサの太い部分が
 オイルシール ( ケース面 )から 0.5㎜出ているのが正常。

・もう少し細かく言うと、
 スペーサの太い部分はオイルシールのリップ部から出ています。
 リップ部はオイルシール外端から 1㎜くらいへこんでいます。
だから、スペーサの太い部分がオイルシールから1.5㎜出ているのが正常。

・右の写真の状態で正常です。

スペーサがオイルシールからはみ出ているのを見て、「スペーサの打込み不足だ」と、スペーサを打ち込んではいけません。

これ以上スペーサを打ち込むことはできませんし、クランクシャフトに衝撃を与えればそれだけ不具合が生じます。

「スペーサはギヤを取り付けたらそれで適正値、打ち込む必要はない 」・「オイルシールはケース外側とツライチ」
 これを忘れてはいけません。


    
2.クランクシャフト左側のオイルシール打込み量


右側と同じです。結論は 「 ケース外側とツライチ」


a.ここにも溝(穴)がある


・オイルシールでこの穴を塞いではいけません。 ・A面にベアリング外輪が当たります。
・B面がベアリング溝をカバーします。
・B面はA面より1㎜低くなっているので、B面がベアリングにくっつくことはありません。
・オイルシールのはまる部分は 7.5㎜、溝を除くと 6㎜
・オイルシール厚は 6㎜。
・この 6㎜部分にオイルシールをはめます。
・写真ではもう少し打ち込めますね。



b.オイルシールとベアリングの間には空間を作る

・ケースの外側から見るとこうなります。
・ケース外端から 6㎜の部分がオイルシールをはめる部分です。
・ベアリングをはめた状態です。
・①は 溝隙間 で 7.5㎜-6㎜= 1.5㎜。
・②は A面とB面の段差 1㎜。
・オイルシールとベアリングの間には 2.5㎜厚の空間ができます。
・ここでも、オイルシールは角ワッシャを載せて上から叩いてツライチ。
・古いオイルシールを上に載せて叩いてはいけません。
・オイルシールはあと  2.5㎜ だけ打ち込めます。
 しかし、これ以上打ち込むと、シリンダーへ通じる穴を塞いでしまいます。
 また、止まるところまで打ち込むと、オイルシールがベアリング内輪とくっつき
 ベアリングの動きを阻害するだけでなく、オイルシール自体が損傷することになります。


     
3.ドライブシャフト左側のオイルシール打込み量


a.構成部品と挿入方法

・a:ドライブシャフト左、b:エンジンスプロケットスペーサ、c:Oリング、d:オイルシール。

・Oリング c は二個ともスペーサb の中に入る。
・スペーサb は ドライブシャフトにはまり、ベアリング内輪に接する。
・オイルシールd はスペーサとケースの間に入る。

・Oリングはドライブシャフトとスペーサの隙間を塞ぎ、オイルシールはベアリング溝を塞ぐ。

・ドライブシャフトが回ればスペーサも回るが、スペーサはOリングでドライブシャフトに固定されているだけなので固定が弱い。
・クランクシャフト右側のスペーサのように、シャフトの回転に直結して回るわけではない。
・その分だけオイルシールの磨耗は少なくなる。

オイルシールの挿入は、
①ドライブシャフトにグリスをたっぷり塗る。
②Oリングとスペーサの内側にグリスを塗って、Oリングをスペーサにセットする。
③Oリングをセットしたスペーサをドライブシャフトにはめて、止まるところまで押し込む。
④オイルシールの内側にグリスをたっぷりつけて、スペーサにかぶせケースに ツライチまで押し込む。
※叩く必要はありません。指で押し込めば簡単に入ります。

オイルシールを外す場合は、
①スペーサをプライヤーで挟んで引き抜く。
②オイルシールを引っかけて手前に引き抜く。
③スペーサの中にOリングが二個なければ、ベアリング付近から回収。


b.オイルシールとベアリングの間には隙間を作る

・オイルシール厚は 6㎜
・スペーサ厚は 9㎜。※訂正 : 9.3㎜
・このような状態でドライブシャフトにはまります。


・ケース外側面からベアリング内輪までは 7㎜。
・オイルシールがはまる部分が 6㎜。
・ベアリングとオイルシールがくっつかないようになっています。
・オイルシールとベアリングの間には 1㎜厚の空間。
・この空間がないと、ベアリングの動きが阻害されるし、
 ベアリングの回転でオイルシールが損傷します。
・スペーサ厚は 9㎜。スペーサはベアリング内輪に接する。
・ケース外端面からベアリング内輪までが 7㎜。
・オイルシールはケース外端面とツライチ。
・結局、スペーサはオイルシールから 2㎜くらい出っぱります。これで正常。


c.オイルシールの押し込み過ぎに注意


スペーサはベアリング内輪に接するまで 押し込みますが、ベアリングはケース外端面とツライチにしなければなりません。
オイルシールをベアリングに接するまで押し込んではいけません。

しかし、「 オイルシールはオイル漏れを防ぐためのもの。しっかり最後まで押し込まなければ 」 とついつい止まるまで押し込んでしまいます。

・RMX②でも押し込みすぎました。 ・RMX③でも押し込みすぎです。

ケース外端面より入りすぎたオイルシールをケース外端面とツライチに戻すには、オイルシールを引っかけて引っ張らなければなりません。

もちろん、オイルシールのリップ部が傷ついてオイルシールがダメになります。

オイルシールを押し込みすぎだ場合はオイルシール交換となります。

オイルシールを取り外す作業でスペーサも取り外しますから、Oリングも交換となります。

今回は二台ともこの状態で様子を見ることにしました。
もちろん、オイルシール二個 と Oリング四個 を追加注文して準備をしました。


くどいようですが 「 オイルシールはケース外端面と ツライチ 」 です。

★最新情報→→→スペーサの打ち込み量


d、.スペーサは要交換


スペーサはオイルシールの中を回転します。

スペーサはスチール、オイルシールはゴム。

しかし、スペーサガオイルシールのリップ部で削られていました。 恐るべし オイルシールゴム。

・左がnew:左がused。
・上から見ている限り交換の必要なし。
・しかし、側面には深い溝が。
・オイルシールのリップ部で削られたとしか考えられない。
・当然オイルシールも磨耗しているでしょう。両方交換です。


トランスミッションに使われているスペーサやワッシャはまったく磨耗していませんでした。
金属と金属が擦れあうトランスミッションと違い、オイルシールが金属を削るはずはありません。
これは驚きでした。

今回、三台のRMXクランクケースを分解しています。
このドライブシャフトのスペーサは三台とも多かれ少なかれこのような削れ溝が付いていました。

このスペーサはオイルシールやOリングと同様消耗品なのです。


     
4.オイルシールの方向


いろいろな質問箱で問題となっているのが、クランクシャフト右側のオイルシールの方向。

重要なことなのに、SJ13のサービスマニュアルに書いてありません。

今回分解した三台のうち、一台が逆に取り付けられていました。

これについては別の頁で紹介しますが、クランクケースの内部は大変なことになっていました。


a.オイルシールの方向

オイルシールはオイル漏れを防ぐためのものです。

オイルは油室 ( 内側 ) から外側に漏れて出て行きます。

このオイル漏出を効果的に防ぐために、オイルシールのリップは レを時計回転方向に 90度回転させた形をしています。
リップが平坦の方が外側で、オイルシールは平坦面になっています。
そして、リップが斜めになっている方が内側で、オイルシールは凹部になっています。

だから、オイルシールを取り付ける方向は、外側 ( オイルが漏出していく側 ) が平坦面、内側 ( オイルの入っている側・油室側 ) が凹部になります。

問題は、どちらが油室でどちらが外側かです。


b.ドライブシャフト,ギヤシフトシャフト

・トランスミッションを潤滑するオイルが漏れないようにするためのオイルシールです。

・油室(内側)はクランクケースの内側、外側はクランクケースの外側。

・オイルシールの取付方向はクランクケース外側がオイルシール平坦面。


c.クランクシャフト左側

・オイルシールの働きは、クランク室の混合気を外部に漏れさせないこと。

・だから、内側 ( 油室 ) はケースの内側、外側がケースの外側。

・オイルシールの取付方向は、ケース外側がオイルシールの平坦面でケース内側がオイルシールの凹部。


d.クランクシャフト右側

・このオイルシールの役割はクランクケース内のオイルをクランク室に吸い込ませないこと。

・クランクケースはトランスミッションが入っている中央室と、
 クラッチが入っている右側室の二つに分かれています。

・中央室はクランク室と壁で仕切られていますが、右側室はオイルシールでクランク室と仕切られています。

・このオイルシール では右側室のオイルがクランク室に漏れていかないようにしているのです。

・この場合、油室はクランクケース右側室。外側はクランク室側。
 だから、オイルシールの取付方向は、
 オイルシールの凹部がクランクケースの外側、オイルシールの平坦面がクランクケースの内側。

『それって、本当に確かなの?』

そう突っ込まれると少し迷いますねぇ…。

あっ、そうだ!

このオイルシールは平坦面に金属プレートが付いていますよねぇ。
これは、クランク室の混合気からオイルシールを保護するためのものなのです。
昔のKXではクランクシャフト右側のベアリングは片面シールドでオイルシールを保護していましたからねぇ。

『でも、それって決定的な根拠になりませんよ…。』


それでは決定的な根拠を示しましょう。( 2018.04.14追記 )

  PJ12のサービスマニュアルです。

  この「トランスミッション,クランクシャフト」の項の
  「クランクシャフトの点検/オイルシールの取り付け」に書いてありました。



◎は主リップ ( オイルリップ ) を押さえつけるスプリングです。→→→こちら

スプリング側がオイルシールの凹部になります。

反対側が補強環が入っている平坦部で、そちら側のリップは副リップ(ダストリップ)です。

クランクシャフト右側のオイルシールは 「 凹部が外側・平坦部が内側 」 になります。

クランクシャフト左側のオイルシールは 「 凹部が内側・平坦部が外側 」 になります。

※クランク右オイルシール逆組みと生ガス吹き出しの関係→→→こちら



つづく

2011.02.26  久しぶりにオートバイのエンジンをかけました。

2011.05.28 RMXその後-1

2011.07.01  RMXこの後-公道復活作戦開始

2011.07.09 RMX公道復帰のために-その①

2011.07.14 RMX公道復帰のために-その②

2011.07.20 RMX公道復帰のために-その③

2011.07.25 RMX公道復帰のために-その④  RMX走る

2011.08.05 RMX公道復帰のために-その⑤  完了

2011.08.12  RMXのダートデビューに向けて-その①

2011.08.17  RMXのダートデビューに向けて-その②

2011.09.18  RMXに一個100円の中古部品を三個取り付ける

2011.12.10  RMX 初めての峠

2011.12.21  RMX 高回転不調対策  ①電子部品の抵抗値測定

2011.12.26  RMX 高回転不調対策  ②メインジェットの変更

2012.01.01  RMX キャブレター調整入門  ①プラグ状態判定法

2012.01.04  RMX キャブレター調整入門  ②プラグ状態判定法追加 ・ エァスクリュー調整

2012.01.18  RMX キャブレター調整入門  ③再度のスロー調整 と スポーク交換も

2012.02.18  RMX が “ なで肩 ” に - 素人がやるホイールのセンター出し

2012.02.20   “ RMX + IRC-GP 210 ” 峠でウォーミングアップ

2012.03.08   RMX エンジントラブル検証・エンジン内部状況

2013.01.04  エンジン移植用 RMX 入手てんまつ

2013.02.16  RMX この頃 - 新品ピストンを組む

2013.03.02 RMX 最後の試行 - クランクケース②を組む

2013.03.18 分離給油・RMX 発進

2014.05.01  スロージェット取外しにエキストラクターを使ってみたが…

2014.05.25   SJ13 中古エンジン検証 ・ 前編 /スタッドボルトの交換

2014.05.31  SJ13 中古エンジン検証 ・ 後編 / エンジン始動

SJ13 クランクケースの分解と組み立て(小目次)



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