警備員編


営業が苦手でも警備会社の営業はできる  かな?



1.営業が苦手でも警備会社の営業はできる


私は営業が苦手です。

学校を卒業して大手メーカーの系列会社でパワーショベル(ユンボ)の営業をやらされました。
22歳の世間知らずです。
土建屋さんに行っても話をつなげることができなくて滞在時間は1〜2分。
『お願いします!』とカタログを置いてくるだけ。

40歳半ばで、本業の学習塾の運営資金捻出のために弁当屋サンで3年間営業をしました。
その前にも別の弁当屋サンで3年間配達をしていました。
配達先の顧客を片っ端から取りました。
これは顧客の私への信頼があっただけではなく、売り込んだ弁当の内容も良かったからです。
しかし、新規客には食い込めませんでした。

性格的にヘコヘコするのが嫌いで、お客の前で下手に出ることができないのです。

58歳で警備会社の営業所長となりました。
「さてさて、一番苦手な営業をどうやってするか…。」

私の警備員としての本職は私服保安です。
警備員の制服を着て現場に立ったことなどないし、交通誘導なんかしたことがない。
しかし、入った警備会社はイベント・交通が中心。

@まず、土木の公共入札結果をインターネットで調べ、受注した建設会社を訪問しました。
見積提出だけで負け。
公共土木事業では警備員は値段勝負。
今の相場は1万円を切っているけれど、その当時でも1万2千円では相手にされない。

前営業所長が名刺を置いてきた土木会社から「公共事業を受注したから見積もりを出してほしい」との連絡。
これは値段勝負で負けました。

A半年くらい経って、
本社で付き合いのある「大手スーパーマーケットの系列メンテ会社」から臨時の制服保安が舞い込みました。
※後で聞いた話では「他の二社に頼んだら断られたので、最後の最後に発注した」とか。
   「明日から、毎日7人出してくれ」という常識はずれの注文に納得。

このメンテ会社には前々職で私の名前が知られていました。
「毎日7店に一人・2カ月」交通誘導しかやったことのない隊員を制服保安として配置しました。
もちろん、私も生まれて初めて「お巡りさんのような制帽」をかぶって店に立ちました。
これは大成功。
その後、店舗数は減りましたが今でも仕事が残っています。

B制服保安成功に気をよくして「お店の雰囲気を明るくする制服保安」を売り出しました。
まったく売れませんでしたが、その関係でで中堅の警備会社と提携することができました。
オープン警備で仕事をもらいました。

C春には公共入札を狙いました。
入札資格申請・情報収集の遅れもありましたが、「ハローワークの駐車場・平日3ポスト」を取ることができました。

Dイベント警備も狙いました。
事務員さんにイベント情報を集めてもらい、主催団体に営業をかけました。
数多くの見積もりを出しましたが、「しがらみと値段」で負け。

ホームページからイベント警備の打診が入ったことも何度か。
その中で、半公共団体の主催するイベント警備をやりました。
この団体は全国展開で公共施設の指定管理者やイベントをやっています。
これから先のイベントや施設警備受注の可能性や情報が得られることが期待できます。

E前々職で私服保安をやっていた大手スーパーマーケットが例外的に私服保安を復活させました。
その情報を得て、前々職で入店していた店に営業をかけました。
すぐに「一カ月に12ポスト」の私服保安業務を受注。

もちろん、私を中心に入店。
手当たり次第に万引きを検挙し、半年で「万引きがいない店」になりました。

前々職でお世話になった副店長や食品マネージャーがあちらこちらの店で店長をやっています。
この店の私服保安成功で実績を得たのでこれから先の私服保安拡張が期待されます。

新しい顧客も得られました。
前職とは関係のない中堅スーパーマーケットにも私服保安で食い込むことができました。
既存の警備会社が「誤認・クレーム」で失敗すれば「御用達」になる可能性があります。

F以前の顧客の紹介で交通誘導の仕事が舞い込んできました。
検定持ちが一人必要だったので私が入りました。
担当者は「営業所長自らが現場に入ってくれた」ことに満足し、「次」を約束してくれました。

営業が苦手な私でもこれくらいの成果が得られます。
警備会社の営業は「普通の営業」とは違った面があります。
その「キーワード」を考えてみましょう。


2.警備会社の営業のキーワード


a.公共土木事業は避ける(@)

「利益が出る値段」では受注できません。
「次のために利益度外視で」と頑張っても「次」はありません。
値段勝負だからです。
公共土木事業を積極的に狙うのはやめましょう。

そもそも誰かが名刺を置いてくれば、公共土木事業落札の時に必ず「お声」がかかります。
一度訪問しておけば、それ以上の訪問は必要ないでしょう。


b.自分の得意分野で仕事を取る(A・E)

私の場合は保安警備・特に私服保安です。
顧客に対して「ベストな提案」ができます。
得意分野ですから仕事は他に負けません。
隊員を育成することも簡単です。
得意分野での営業は一番成功します。


c.公共入札を狙う(C)

公共入札には「以前からの付き合い・しがらみ」はありません。
「値段勝負」で決まります。
県・市町村の入札では「驚くほどの安値落札」です。
ある市役所は8千円とのこと。
これでは入札しても意味がありません。

しかし、国の入札では充分利益のでるものがあります。
必要なのは情報収集。
情報を集め、「利益が出る入札」にはドンドン参加しましょう。

公共施設の警備をやれば「警備会社の名前を売る」こともできます。
この点からもこれから先の営業にプラスになります。


d.イベントを狙う( D )

イベント警備も「値段勝負」です。
最初のイベントは低価格でとにかく仕事をとって、技量を見せる。
しかし、どれだけ素晴らしい警備を見せても「次」はありません。
「次」も「値段勝負」になります。

「次の値段勝負」に負けても、実績は残ります。
イベント主催団体との付き合いを始められます。


e.良い仕事をする ( F )

「良い仕事」をすれば必ず「次」があります。
他に紹介してくれます。

どんな経緯であれ仕事が舞い込んだら、必ず受けて「自分たちの腕」を見せましょう。
「顧客に喜んでもらうこと」が一番の営業です。


f.ホームページも有効

ホームページは有効な宣伝手段です。
「ホームページを見て電話した」という新規客は少なくありません。
ネット時代の風潮を利用しましょう。


g.より大きい警備会社の仕事をもらう ( B )

もちろん、次に述べる「乞食営業・ハイエナ営業」ではいけません。
「なんでもかんでももらう」のではなくて、利益と隊員の数・質を考えて「良い仕事ができる」範囲に止めておきましょう。



h.新商品を開発する ( B )

「お店の雰囲気を明るくする制服保安」だけでなくいろいろな新商品を考えて売り込みました。
「常習万引き検挙のためのピンポイント私服保安」、「夏場のワルガキ・暴走族たむろ排除のためのコンビニ巡回」。
「病院内警備・学校内警備」。
結局売れませんでしたが、「今はまだ売れない」ことを知っただけでも成果がありました。


結局、警備会社の営業は、

まず「取っかかり」を作ること。
他の警備会社への売り込み、公共事業落札業者への売り込み、、イベント、得意分野、新商品の売り込み。
何でもよいから、利益が出なくてもよいから、「とにかく初めの仕事をとること」です。
「取っかかり」がなければなにも始まりません。

公共入札での受注・ホームページでの宣伝で名前を売ることも「取っかかりを作る」ことにつながります。

次に、そこで良い仕事をして信用をつけること。
公共事業落札業者やイベント主催団体は「次も値段勝負」になります。
しかし、次が取れなくてもそこで良い仕事をすれば信用がつきます。

『あそこは少し高いが良い仕事をする』
難しい仕事になれば必ず声がかかります。
そして、さらに良い仕事をすればさらに信用がつきます。

警備会社の営業は「隊員に良い仕事をさせること」です。
良い仕事をするために取っかかりを作り、隊員に良い仕事をさせるようコントロールするのが営業職の務めです

ウィスキー会社は8年先・12年先しか製品を売り出しません。
何年か熟成させなければ美味しいウィスキーができないからです。
経営者に我慢をしてもらうよう説得しなければなりません。

目先の数字にとらわれて無理な仕事・安い仕事を取ってはいけません。
無理な仕事を取れば隊員に無理をさせ、隊員は良い仕事ができなくなります。
安い仕事を取れば会社の利益が下がり隊員の給料が下がり隊員の士気が下がります。


3.営業職は現場を知れ


売った商品には責任を持たなければなりません。
ヘラヘラ揉み手で「無責任な嘘八百」で売りっぱなしにしてはいけません。
自分が現場を見て隊員の働く姿を見なければなりません。
一番良いのはときどき隊員と一緒に現場で働くことです。

現場に出れば自分の売った商品の品質・顧客の満足度・顧客の要望を知ることができます。
「隊員に良い仕事をさせる」ための課題を発見することができます。
そして、それを解決してより良い商品を作り出せます。
また、営業職が現場に出てくれたことで顧客の信用が一段と上がります。

『いやぁ〜!現場監督から聞いたンだけど、あの現場に警備員として出てくれたンだって?』
『ベテラン隊員に叱られっぱなしでしたよ…。』
『ハハハ…。あの現場はチョットキツかったからねぇ。』
『イヤイヤ、あの現場で私も少々警備の腕を上げたから今度は大丈夫ですよ!』
『アンタは営業職だからあまり無理をしないでネ。』
顧客はあなたを気に入ってくれたようです。

   
4.「乞食営業・ハイエナ営業」は行き詰まる


大きい警備会社に声をかけます。

『警備員が足らない時は言ってください。必ず必要な人員を出します。』


その警備会社が大きなイベントを受注します。

必要な数の警備員が自社や協力会社・警備業組合の応援ではまかなえません。

『あっ、そうだ!あそこの警備会社がある。』

電話がかかります『明日、30人を出せる?』


もちろん「OK」します。

OKしてから、警備員を調達します。

隊員を24時間働かせて配置します。

それでも30人が出せません。

管理職・事務職を総動員します。


「他の警備会社や組合の応援」など無理です。

大きな仕事を受注した元請け警備会社は、
「他の警備会社や組合に応援を頼んでも人数を確保できない」から、最後の最後になって電話をかけてきたのです。


四苦八苦して何とか30人を確保しました。

しかし「猫の手を借りての30人」ですから良い仕事はできません。

それでも元請け警備会社の要求を満たすことができました。


元請け警備会社は大満足。

『あの警備会社は仕事はダメだけれど、とにかく人数を出してくれる。いざという時にはあの会社だ」


問題は「いざという時には」という評価です。

次からその元請け警備会社はドンドン仕事を取ります。

他の警備会社や自社の隊員が嫌がる、短時間の仕事であろうと遠距離・深夜の仕事であろうとお構いなく取ります。

そして、「良い仕事をする警備会社」から順に声をかけていきます。

「良い仕事をする警備会社」は「割に合わない仕事」を断ります。

しかし、元請け警備会社は安心しています。

「最後の最後になったらあの警備会社がある」


「たらい回し」の後、やっとお声がかかります。

元請け警備会社はその前に「他の警備会社に予定していた値段」を下げます。

「必ず受ける」ことを知っているからです。

『明日なンだけど、30人出してよ。この値段でネ。』


もちろん、「待ってました」とばかりその値段でOKします。

また、「猫の手を借りて」の四苦八苦。

良い仕事はできませんが、注文された人数だけは揃えます。

そして、営業担当は『また大きい仕事を受注しました!』と社長に報告。

社長は『あの大手警備会社との関係が深まったナ!』と大満足。


彼らは元請け警備会社の思惑に気づいていないのです。

元請け警備会社は重要な仕事・割の良い仕事は回しません。

そんな仕事は「隊員の質が良くて良い仕事をする」警備会社に注文します。

元請け警備会社にとって、「人数揃えの警備会社」は「最後の最後」だからです。


これが「乞食営業・ハイエナ営業」です。

「残り物が出るのをじっと待っている」営業です。


森のハイエナは残り物をあさりますが、自分の腹がいっぱいになればそれ以上食べなくてもかまいません。

しかし、ハイエナ営業では「出された残り物を全部食べきらなければ」なりません。

「残り物を全部食べてくれるから」仕事が回ってくるのです。


突然目の前に出された大量の残り物を食べきるために、隊員に無理をさせます。

メチャクチャな配置・過重労働で隊員に不満が出ます。

そして「他の警備会社でも通用する質の良い隊員」が辞めていきます。

「他の警備会社に転職することができないレベルの低い隊員」が残ります。

隊員の質が悪くなり、その仕事は前より質の悪いものになります。


これを繰り返せば:隊員の質はドンドン悪くなり良い仕事ができなくなります。

新規客があっても良い仕事ができないので次はありません。

それどころか「今までやってきた良い仕事・割のよい仕事」で失敗し昔からの顧客を失います。

売上・利益はジリジリと落ちてきます。

これを挽回するためにさらにハイエナ営業に走り回ります。


無理な仕事をもらい、隊員に無理をさせ、良い隊員が辞めて質の悪い隊員が残り、質の悪い仕事をして評判を下げ、顧客を失う。

「負のスパイラル」にはまってしまいます。

これが「ハイエナ営業の罠」なのです。


警備業界では『あの警備会社は警備会社ではなくて人夫出しの会社だな』と言われているかもしれません。

そのうちに「人数も出せなくなって」残り物も回ってこなくなるでしょう。



こんな体質の警備会社で営業をやっていても、あなたに明日はありません。

えっ? 『営業になんか出られませんよ!現場に出っぱなしですよ!』ですって?

いいじゃないですか「営業職は現場を知れ」と言ったでしょう?

アハハ、チョット意味が違うか…。





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