やっぱり 私服保安だけど‥

- 防犯タグ・制服保安・私服保安の問題点 -




万引きを防ぐための方法として、防犯タグ、制服警備、私服保安がよく用いられています。

これらを効果的なものにするためには、各々の問題点を知っておかなければなりません。


1.防犯タグ・管理タグ


商品の一つ一つに小さな発信機(タグ)を付け、
商品をそのまま店外に持ち出そうとすると、出口に設置した受信機(ゲート)が反応し出口で警告音が鳴るシステムです。

「タグを商品に付けるだけで、万引きを抑制する効果がある」として広く用いられています。


a. 抑制効果は初めだけ


タグにはバーコードやICチップを使った小さいものが使われています。
商品に付けても目立ちません。

それを知らない万引き犯は、出口で大きな警告音が鳴るのに驚きます。
そして、商品をその場に置き去りにしたり戻したりします。

たとえそのまま商品を持ち去っても、
「 盗るのを見られた、顔を知られた 」と思い、二度とその店に来なくなります。

しかし、その効果は初めだけです。

システムに馴れてくると、タグを外したりゲートが反応しないようにしたりして商品を持ち出します。

ゲートで警告音が鳴っても、笑いながら商品を持って出ていく者もいます。

b. 鳴るだけではただの虫


防犯タグには「 驚かせる効果 」しかありません。

近づくとセンサーが反応してライトが点灯するシステムと同じです。

「 鳴るだけ・照らすだけでその後がない 」。これを知ってしまえば、何も怖くありません。


ゲートが反応したら、出口シャッターが閉まったり銃撃されたりするのなら別ですが‥。

c. ピーピー鳴っても、知らん顔


このシステムでは、ゲートが反応したときに、売場係員がそれに対応しなければ持続的効果が得られません。

ゲートで警告音が鳴ったら係員がすぐに駆けつけ声をかける。
『 すいません!レジで管理タグを外し忘れたようです。レジで外しますからレジまでお持ちください!』

防犯タグを外そうとしている者を見つけたら近寄ってお願いをする。
『 それはレジで外しますので、レジにお持ちください。』

これを繰り返せば万引き犯はうっとうしくなります。

そして、その店で盗ることを諦めるようになります。


しかし、経費節減で売場係員の数は少なく、その仕事は増えています。

彼らにそんなことをしている余裕はありません。

 

さらに、タグを外そうとしているのを見つけたり、ゲートが反応した時に駆けつけたりできるのは、売場が狭く出口が限られている場合です。

売場が広く出口があちらこちらにあるスーパーや、出口が一つでも売場の広いホームセンターでは係員が見つけたり駆けつけたりすることはできません。

そもそも「 防犯タグを商品に付ければそれで防犯効果がある 」と思っていることが間違いなのです。

目覚まし時計は “ 鳴る ” ことしかできません。

鳴ったときに起きるのは自分自身なのです。


2.制服警備員

制服を着た警備員に店内を巡回させ、『 見張っているヨ!』と思わせて万引きを防ぐ方法です。

防犯タグのように「 驚かせる 」のではなく、「 わざと見せつける 」のです。

a. 何もしないから怖くない

制服警備員を警察官と間違えるのは三歳までの子供です。

「 警備員が何もできない、何もしない 」ことは誰もが知っています。

万引き犯にとって制服警備員は何も怖くないのです。


盗ろうとしているときに『 いらっしゃいませ!』と声をかけられても笑っていれば済みます。

しつこく付きまとわれれば、クレームをつけることもできます。


スーパーの清算システムでは、商品をレジに持っていって代金を支払えばいいのです。

レジに持っていくのに店内カゴに入れる必要はありません。

ポケットに入れていこうがバッグに入れていこうが自由なのです

アンパンの中身を食べてから、包装紙を持っていってもいいのです。

商品をレジで清算せずに店外に持ち出さなければ万引きではないのです。


b. いないことが分かるから盗りやすい  

見せつけられても誰も怖がらない制服ですが、外国人窃盗団には効果があるようです。

司法制度の違いから、彼らは警備員に権限がないことを知りません。
警察官と警備員の区別もつかないようです。

また、警備員が警察官でないことを知っていても、彼らは一定期間のうちに一定の商品を大量に盗らなければなりません。

売場に制服警備員がいれば、危ない橋を渡らずにさっさと次の店に盗りに出かけます。


しかし、「 制服警備員を見せつける 」ことは窃盗団に対しても大きな弱点があります。

それは「 いないことがはっきりと分かる 」ことです。

ある食品スーパーで大量盗難を防ぐために制服警備員を毎日配置しました。

結果は大量盗難がなくなった店と逆に大量盗難が増えた店。

大量盗難が増えたのは24時間営業の店でした。

窃盗団は制服警備員がいない時間帯に安心して盗りに来たのです。


極論すれば、制服警備員がいてもその背後で安心して盗ることができるのです。

「 制服を見せつけること 」は「 盗りやすくする 」ことにもなるのです。


c. いつでもどこでもなら効果あり

これを防ぐためには、制服警備員を営業時間中ずっと、すべての売場に配置しなければなりません。

それには莫大な費用がかかります。

また、売場の雰囲気が物々しくなってしまいます。

一般客は常に見張られているように感じ、楽しく自由に買い物を楽しむことができません。


こんなことをするくらいなら、イケメンやピチピチギャルをお客様係として配置した方がよいでしょう。

3. 私服保安

昔ながらの万引きGメンです。

経費がかからず劇的な防犯効果があります。

もちろん、命を落とすほどの危険もあります。

a. 突然現れるから恐ろしい

万引き犯人にとってこれほど恐ろしいものはありません。

店外したら呼び止められて現行犯逮捕。

そのまま警察に引き渡されて、窃盗罪で10年以下の懲役。

罰金刑が付加されたので、再犯なら盗ったのが千円以下でも罰金は20万円~30万円。

千円を超えたら罰金50万円!

抵抗すれば強盗罪。

逃げる途中で通行人を突き倒し、相手がケガをすれば強盗傷害罪。

突き倒した相手が、打ち所が悪くて死んでしまえば強盗殺人罪で法定刑は無期懲役と死刑。

社会的地位があれば新聞テレビで実名報道。
職場を追われ、家族にも災いがふりかかる。

万引きGメンに呼び止められたら、その先には生き地獄が待っているのです。


b. いるかいないか分からないので盗りにくい

万引き犯逮捕は一般客の目の前で行われます。

パトカーもやって来ます。

警察官が店内で証拠写真を撮ります。

送検されれば、犯人は手錠・腰縄で現場検証に連れてこられます。

『 あの店で万引きが捕まった。その現場を見た。』
『 警察官が犯人を連れて証拠写真を撮っていた。』

この噂が強力な防犯効果を生みます。

こんな噂はすぐに拡がります。


万引きGメンは私服ですから、いるのかいないのかが分かりません。

私服保安を毎日入店させる必要はありません。
時々入店させて、万引き犯人を時々捕まえてくれればいいのです。

『 あの店には万引きGメンがいる。』・『 あの店で盗れば捕まる。』という噂が立てばそれでいいのです。

c. 大問題の誤認逮捕と人権侵害

このように、私服保安は費用があまりかからず劇的な防犯効果があります。

問題は誤認逮捕と人権侵害の危険があることです。

ひとたび誤認逮捕や人権侵害を起こせば、「 お客様第一 」のイメージが損なわれてしまいます。

マスコミが興味本位で取り上げれば、企業生命も危なくなります。

イ.職人ウーマン

かつて万引きGメンは「 ウーマン 」と呼ばれ、女性の職業として確立していました。

女性はショッピングセンターで目立たないし、商品に対する執着心が強く忍耐力があるので私服保安に向いていたからです。

そして、ウーマンの職人技は師匠から弟子へ伝承されてきたのです。

私はこのウーマンに育てられた最後の世代です。


しかし、スーパーの営業時間が深夜に及ぶようになり、
店は万引き被害を防ぐより店内の治安を護ることを重視するようになりました。

女性は、酔っぱらい・悪ガキ・痴漢・クレーマー・恐喝脅迫に対処することができません。

そこで、私服保安の仕事が女性から男性に任されるようになりました。

さらに、全国チェーンの大手スーパーが私服保安を全国的に排除したことにより、年配の職人ウーマンが姿を消してしまいました。

もう職人技が伝承されることはないのです。

ロ.手間隙かけて育てる

我々の頃には 「 Gメンは一年かけて育てる 」のが当たり前でした。

熟練ウーマンに付いて三カ月、自分で10人捕まえて独り立ち。
そのあと、100件処理してやっと一人前。

20人育てて、ものになるのは一人か二人。

私服保安は手間隙かけて育てられたのです。

誤認したらそこでGメン生命は終わりです。

誤認したGメンが図々しく仕事を続けられるような甘い業界ではありませんでした。

ハ.技術とプロ意識のない “ にわかGメン ”

しかし、最近では様子が変わってきたようです。

「 万引きGメンのイロハ 」を守れないで誤認する。

誤認しても平気で仕事を続けている。

技術とプロ意識のない私服保安が、万引きGメンという名前を使っているようです。


顧客は万引き検挙数・検挙率を求める。

“ にわかGメン ” が検挙に突っ走る。

彼らには「 冷静に犯人の動作を観察する目・追尾する技術・不確かなときにはプレーキをかける自制心 」がない。

さらに「 誤認・人権侵害を絶対にしてはいけない 」というプロ意識がない。

警備会社は『 またやったのか‥。今度は注意しろよ!仕方がないなぁ‥。』と謝りに行く。

顧客は『 仕事熱心なのはいいけれど、誤認は困るよ‥。』と注意するだけ。

他のGメンは『 「誤認しないが捕まえもしない」よりましだよ!』と笑って済ませる。


こんな状況は職人ウーマンの時代には考えられなかったことです。

本物が本物として通用しない時代になったのかも知れません。


この背景には、何の経験もない警備会社が警備料金の高い私服保安の分野に参入してきたことがあります。

このような警備会社はしっかりとした教育と充分な訓練を行いません。

教育・訓練のノウハウがないからできないだけでなく、その必要性が分かっていないから、「 しなくてもよい 」と思っているのです。

試しに、Gメンさんに質問してみてください。

『 なぜ、着手現認が必要なの? 』
※着手現認 : 「 犯人が商品を棚から手に取るところ 」を見たこと


『 それがないと、犯人の持っている商品が店の商品でない可能性があり誤認する危険があります! 』


こんな答えしかできないのでは大問題です。

その程度の理解なら「 誤認の危険がないような状況では着手現認不要 」となってしまいます。

着手現認が必要なのは、誤認の危険があるからではなく、「 それがないと犯罪を立証することができない 」からなのです。


彼らなら、小学1・2年生の子供が商品を盗って店外したら現行犯逮捕をするでしょう。

犯人が商品を捨てて逃げたら、犯人を捕まえた後に商品を回収すればよいと思っているでしょう。

犯人を捕まえたあと、犯人が盗った商品を値段調べのために平気で売場に持っていくでしょう。

そして、これらが違法逮捕・誤認逮捕・違法行為になることを理解していないでしょう。

ニ.選ばないと大失敗

私服保安の警備料金が高いのは私服保安を育てるのに時間と経費がかかるからです。

私服保安が誤認や人権侵害をしない知識と技術を持っているからです。

そして、「 プロとして絶対に誤認しない 」という職業意識を持っているからです。


私服保安は見様見まねでできる仕事ではありません。

万引きGメンは職人なのです。

高い警備料金を払うからには 「 それだけの技術を持っているかどうか 」を充分検討しなければなりません。

ホ.イケイケ店長さんは要注意

小さいスーパーの店長さんへの助言です。


『 事務所のモニターで盗るところをみつけ、店外した万引き犯人を捕まえた! 』  売場の係員は拍手喝采!


しかし、これは誤認逮捕となる危険が充分にあります。

プロGメンなら絶対に捕まえない、「 着手現認なし・中断あり 」の場合です。


『 モニターで盗るところを見たし、しっかりと記録されているじゃないか!』

記録映像は証拠になりません。その場面を現場で人間が観たから証拠になるのです。


それに、事務所から駆けつけるまでに犯人が盗った商品を捨てていたり仲間に渡していたりしたらどうなりますか?

捕まえたけど盗った商品を持っていなかったら誤認逮捕です。


『 しかし、犯人は商品を持っていたし 「 盗ったこと 」も白状したゾ!』

小心者の犯人で良かったですね。

もし、犯人が商品を持っていても 「 盗ったこと 」を否認したらどうなりますか?

裁判で犯人側が「 現場での着手現認がなかったこと 」を持ち出せば100%無罪となりますよ。

その前に、警察官が事件として取り扱ってくれません。

店長さんの逮捕行為はそれなりの理由がありますから違法行為とはなりません。
※違法性阻却事由の錯誤

だから、店長さんに手錠はかかりません。

しかし、警察が事件としなかったり犯人が裁判で無罪となったりしたらどうなりますか?

犯人がそのまま黙って引き下がると思いますか?


店を護ろうとする気概と万引きを憎む気持ちは分かります。

しかし、本当に店を護ろうとするなら万引きを捕まえようとは思わないでください。

万引きを見つけることは誰にでも簡単にできます。
しかし、確実に有罪にできる状態で捕まえ、人権侵害をしないで警察に引き渡すのには経験と技術と自制心が必要になります。

万引きGメンの仕事は素人さんが見よう見まねで簡単にやれるようなものではないのです。

4. まとめ

長くなりましたので結果をまとめておきましょう。


〇 防犯タグは目覚まし時計 : それが鳴ったときに売場係員が対応しなければ効果なし。

〇 制服保安 : 営業時間中ずっと、すべての売場に配置しないと逆効果。

〇 私服保安 : 選ばないと大失敗。

なお、経費がかからず一番効果的な防犯対策があります。

それは、売場係員に「 店を護る・商品を護る 」という意識を持たせることです。

売場係員の目が売場に向いていれば、防犯タグや制服保安、そして命取りの危険のある私服保安を導入する必要はありません。


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