SPnet私服保安入門


       

b.店担当者が犯人を独りで帰してしまわないように注意する

 




店の担当者が犯人に同情して、犯人を独りで帰してしまうことがある。

私服保安は「店の指示なら自分に責任はない。」と、そのまま犯人を帰してはならない。

その担当者に「犯人を独りで帰すことの危険性、店の責任問題発生の危険性」を充分に説明しなければならない。


店の担当者は“万引き処理のプロ”ではない。

犯人を独りで帰すことの危険性を知らない。

あとで問題が起これば、その担当者はこう言うだろう。

担『そんな危険があるのなら、あのとき私に言ってくれなければ困るよ!あんたらプロだろう?』


・事例47.『山河さんは、ダメだと言っていたけれど…。』-男は美人に弱い?


私とAさんの二人勤務。

16時ころ、私は中年男性を検挙して保安室で事後処理をしていた。

そこへAさんが若い南米系女性を連れてきた。


女性は30歳過ぎの美人。

仕事帰りであろうか白い上下の作業服を着ている。

6歳くらいの男の子が一緒である。

女性が盗ったのは数点の玩具。

男の子がその一つを握っている。


Aさんは私と別の場所で事後処理に入った。

私の犯人は警察送りと決まっていた。

私は処理が一段落したのでAさんのところへ行った。

店の男性担当者が女性犯人と話をしていた。


私はAさんに聞いた。


私『警察送りだろう?』

A『まだ、決まっていません。いま、担当者が犯人に事情を聞いています。』


私は男性担当者を警備室の外へ呼んで助言した。

私『犯人に情をかけてはいけませんよ。
     ご存じでしょうが、犯人を独りで帰しては後々大きな問題が起こる危険があります。
     警察送りにしないのなら、近親者に身柄を引き受けてもらう。
     それがだめなら、女性の同意を得て職場の上司に連絡しなければいけませんよ。』

担『分かっています。もう少し事情を聞いてみます。』

男性担当者は女性のところに戻った。


私とAさんは傍で話を聞いていた。


女『ケイサツ?ダメ…。ケイサツ、コワイ。ダメ…。』

担『ご主人…。ダンナサン、イル? ダンナサン、ムカエニクル、OK?』

女『ダンナ!ダメ、ダメ! ナグル、ワタシ、ナグル! ゼッタイ、ダメ!』

担『カイシャ、ボス。ムカエニクル、ダイジョウブ?』

女『カイシャダメ!ワタシ、オナジクニ、ナカマ、ミンナ シゴト デキナイ…。』


南米美人は担当者の目をすがるように見つめる。

何も知らない男の子が女性の盗った玩具で無邪気に遊んでいる。

そして、男の子が二人を不思議そうに見上げる。


担当者が私の方を見た。

私は首を横に振った。


このとき警備員が私に声をかけた。

警『山河さ~ン!事務所から連絡が入りました。
     「スキャンが終わったので、商品を取りに来てください。」とのことです。』

私は警備室から出て事務所に行って万引き被害商品を受け取った。

警備室に戻ってくると、女性と男の子がいない。担当者とAさんもいない。


暫くしてAさんが戻って来た。


私『どうなったの?』

A『お金を払って、そのまま帰しましたよ。』

私『担当者がそう決めたの?』

A『山河さんが警備室を出ていったあとそう決まりました。
     「山河さんは絶対にダメだと言っていたけど…、可哀相だからこのまま帰すことにするヨ…。」と言っていました。』

私『担当者が決めたのならそれでいいさ。女性にもいろいろ事情があるようだから…。』


A『私があの女性を見送ってきたンですけど、彼女がこう言っていましたよ。』

私『なんと言ったの?』

A『「ニホンジン、ミンナ、イイヒト!」。笑って手を振っていましたよ!』


つづく

 





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