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2011.10.19  FJ 1200整備初級編--「油圧クラッチ・プッシュレバーcomp シール交換」と「気泡吸い出し法によるエァ抜き」



1. プッシュレバー comp のシール交換   


※この項を読んだあと必ずこちらを読んでください→→プッシュレバー comp 再び ・ クランクケースカバーによる動作制限


a.構造と動作


私は構造と各部品の動作・役割が分からないと落ち着きません。
まずはプッシュレバー comp の構造と動作から。

これがプッシュレバー comp の構成部品です。



①がシリンダー、②がダストシール。
ダストシールはシリンダーの外側にはまります。

⑤がピストン。
ピストンは二段になっています。
後ろの方 ( 写真⑤の左側 ) にはテフロン加工がしてあります。

④はオイルシール。
ピストン( ⑤ )の二つの段差の間にはいります。

③のバネはピストン ( ⑤ ) の後ろ ( ⑤写真の左側 ) に出っ張りがあり、そこに取り付けます。

⑤のピストン ( ピストンにはめられた④のオイルシールも ) がシリンダーの中を動きます。

オイルシール ( ④ ) は外側がシリンダー壁面と当たります。
だから、リップは外側にあります。

⑦はプッシュロッド。
これが、ピストン ( 写真⑤の右側 )に当たって押されます。

油圧がかかると、ピストンが押し出されプッシュロッドを押します。
プッシュロッドが押されるとクラッチ板が離れ、エンジンの動力を切断します。

⑧は⑦のプッシュロッドにはまって、クラッチ側からギヤオイルが出てこないようにします。


⑨は新品のオイルシール、②のダストシールとセット販売です。
古いダストシールは溶けていました。

今回はブリーダーバルブも交換します ⑩ 。

部品番号と定価は前回に紹介済みです。


b.もう少しで手遅れ状態


シリンダーをはずしたらこんな状態でした。



ダストシールは溶けていました。


レバーを軽く握ってピストンを出すと、



オイルシールの縁から「プチ、プチ」とオイルがにじみ出てきます。

オイルシールが痛んでいるのです。
この状態が悪化すれば、シリンダーからオイルが抜け、クラッチが働かなくなります。

いったん止まったら、重いFJ を押してこなければなりません。

手遅れ一歩手前の状態だったのです。

シリンダーを外すだけならオイル入れ替え・エァ抜きは必要ありません。
ボルト三本を外すだけです。
時々点検しなければなりませんね。


オイルがにじみ出てくるのだから、ここからエァーを吸っていたのでしょう。


シリンダーから抜いたピストンはこんな状態でした。



ピストンの後ろ ( 写真左側 )の部分のテフロン加工が痛んでいなかったのが幸いです。


シリンダーの中はこんな状態です。



シリンダー前部に赤サビがこびりついていました。
壁面も痛んでいます。
錆びたピストンの前側がシリンダー壁面を擦ったのでしょう。

シリンダー前部に比べシリンダー後部はあまり傷が付いていませんでした。
それでも”なめらか“にはほど遠い状態です。


プッシュロッド側はこんな状態です。




プッシュロッドを引き出してみると、


たぶん、スプロケットから油・泥をもらったのでしょう。


c.各部品のクリーンアップ


ピストン前部の汚れを落としました。
サビとオイルが固まって付着したものです。


これで精一杯です。


シリンダーはここまで。

ピカールではサビがとれません。
2000番の耐水ペーバーで磨きました。

爪が引っかからなくなったので磨きは中止。

相手はアルミですからどれだけでも削れます。

フロントブレーキ・キャリパーはもっとひどい仕上がりだったから、これで大丈夫でしょう。


ピストンにオイルシールをはめ込みます。


矢印がオイルシールです。

オイルシールは外側にリップがありますから、これを痛めないように注意。
オイルシールの内側は手荒く扱ってもOK。

ピストンの後ろ側 (写真左側 )からはめた方が楽です。

楽と言っても、相当無理をしないとはまりません。


バネとオイルシールをセットしたピストンをシリンダーに入れて、外側 (  ピストン前部 ) からダストシールをはめ込みます。



赤い矢印の部分がダストシールです。

ダストシール後部はシリンダーケースに、ダストシール前端はピストンの前側段差の後ろに食い込みます。
オイルシールの前にダストシールの前端がくることになります。
下線部訂正下記 2011.10.27 追記

ピストンが押されて出てくると、ダストシールは引っ張られて伸びます。
ピストンが戻ると、ダストシールは元の状態になります。

ダストシールはホークブーツのような働きをしています。

オイルシールが異物を噛まないようにしているのです。

しかし、ダストシールは伸びたり縮んだりしますから、オイルシールより痛みが早いでしょう。


d.「これで終了」と思ったのが大間違い  

※この項を読んだあと必ず こちらを読んでください→→.2011.11.12  とても簡単だった“プッシュロッドのオイルシール交換”


プッシュロッドにはまるオイルシールを交換をしなければなりません。
一番上の写真の⑧です。

このオイルシールはプッシュロッドに付いているのではなく、プッシュロッドが出てくる出口に付いています。

これが外れない。

細いマイナスドライバーでコジルくらいではビクともしない。

ケガキ針で刺してめくろうとしてもダメ。

なんとか細かくちぎって出しました。

しかし‥、



オイルシールのはまる溝に残骸が残っています。

これを極細のマイナスドライバーで掻きだします。

左手に懐中電灯、右手に極細ドライバー。
寝そべって覗き込んで四苦八苦。



溝が一応きれいになったので、新しいオイルシールをはめ込む。

しかし、溝に残骸が残っているのか、すんなりと入らない。

ワッシャを当てて鉄パイプで叩いたり、オイルシールの縁を極細ドライバーで押し込んだり。

木製の円棒でオイルシールを直に叩いていたら、オイルシールの縁がささくれ立ってくる。

これ以上打ち込むとオイルシールがダメになってしまう。

こんな状態で終了。



オイルシールの前面はボロボロです。

「リップ部分は内側だから‥。」と言うけれど。


古いオイルシールのはまっていた状態は溝の外側と面一。
それより1㎜強出ています。。


ところで、このオイルシールは外側からはめ込むだけのものです。
オイルシールに段差などの引っかかる部分はありません。

このオイルシールを貫いてプッシュロッドが動きます。
外れてこないのでしょうか?

なぜに、古いオイルシールはあんなに固着していたのでしょうか?

サービスマニュアルのイラストには、このオイルシールの部分にギャオイル塗布のマークと 「SDO-6. 8-35-11-1」の記載。
「SDO-6. 8-35-11-1」は単なるオイルシールの規格です。

プッシュロッドからギャオイルが漏れていなければ、このオイルシールを交換する必要はありません。

「ついでだから」と交換すると、2時間の浪費と心配事を抱えます。


e.プッシュレバーcomp j取り付け時に少し戸惑う


プッシュロッドをはめて、シリンダーケースを取り付けようとすると、シリンダーケースが収まらない。

プッシュロッドが引っ込まないのでシリンダーケースが浮き上がってしまうのです。

ブッシュロッドが引っ込まないのは、一旦引き抜いたからか、オイルシールを打ち込む時にゴンゴン叩いたからか。

とにかく、プッシュロッドの上からシリンダーケースを当ててボルトを締めこみました。

「案ずるより産むが易し」、ボルトの力にプッシュロッドが負けたようです。

      
2.オイル入れ換え・エァ抜きに”第四の方法“--気泡吸い出し法


※この項を読んだあと必ずこちらを読んでください→→30分で済む”気泡吸い出し法”新情報


a.第三の方法を試すと‥


今回試すのは「プリーダーから注射器でオイルを圧入する方法」。
前回説明した第三の方法です。


CR のフォークオイル液面調整の時に使った小型の浣腸器を使います。

この浣腸器の先にパイプをつなげ、ブリーダーバルブからオイルを注入します。


『あれっ? オイルがまったく入っていかないゾ‥。』

ブリーダーバルブを開けなければ入っていくわけがありません。

ブリーダーバルブを開けて圧入開始。


なるほど、リザーバータンクにポコポコと気泡が出てオイルが入ってきました。

もう一回。

リザーバータンクがオイルで一杯になったので、ブリーダーバルブを締めてレバーを握る。

レバーはスカスカ。

「レバーに圧がかからない」ということは、「浣腸器でプリーダーからオイルを入れても空気を追い出せなかった」ということ。

空気をリザーバーに追いやるためには、ゆっくりと圧入しなければならなかったのかな?

第三の方法には何かコツがあるのでしょう。


b.気泡を吸い出したらどうかな?


『浣腸器を引っ張ったらどうなるのだろう?』

ブリーダーバルブを開けて、浣腸器を引っ張ると‥、
空気がボコボコと吸い出されてきました。

ブリーダーバルブを締めてバイプを外し、パイプから吸い出した空気を捨てる。
浣腸器で新しいオイルを吸いこみ、余計な空気を追い出す。

看護婦さんのように上手くいきません。
ブレーキオイルで手はベタベタ。


オイルで満たされたパイプをブリーダーにつなげ、オイルを圧入したあとオイルを吸い出す。
また、ボコボコと気泡が吸い出されてくる。


『これはいけるのじゃない?』


そうだ! いちいち吸い出した空気を捨てる必要はない。

気泡を吸い出したら、浣腸器を高くする。
気泡が上に上がってきて、浣腸器に溜まる。
そのまま、オイルを圧入すれば気泡まで圧入することはない。

浣腸器を押したり引いたり。
気泡がおもしろいように吸い出されてきます。


これを四回ほど繰り返して、レバーを触ると。

『レバーが固くなっている!』


あとはレバーを使ってのエァ抜きです。

レバーを握って、ブリーダーバルブを開けると、『シュボーッ』
勢いよく細かい気泡とオイルが混ざって飛び出してきます。

これを三~四回。


そのあと、空気だけが『スポーッ』。

ピストンが出て、シリンダーの容積が拡がったのでしょう。

でも、その空気はどこから吸ったの?

気にしない気にしない。
とにかくレバーに圧がかかっているのだから。

クランクケースの中からは「カチッ、カチッ」というクラッチの切れる音。


空気だけの『スポーッ』が三回くらい続いて、後はオイルだけで気泡が出てきません。

『えっ?もう終わり?』

あとは何度やってもオイルだけしか出てきませんでした。

所要時間は15分程度。


この方法はいいじゃない!

”気泡吸い出し法”と名付けましょう。


c.“気泡吸い出し法” まとめ


①浣腸器 ・注射器 にパイプをつなげる。

②浣腸器で新しいオイルを吸い込む。
※浣腸器・パイプに溜まっている空気を抜く必要なし。浣腸器を高くして空気を浣腸器に集める。

③プリーダーバルブにパイプをつなげる。

④プリーダーバルブを開けて、浣腸器を押してオイルを入れる。
※空気までいれないように注意。空気が入る直前で圧入を止めてバルブを締める。

⑤リザーバータンクにオイルが半分くらい入ったら圧入を止める。
※この時点ではレバーはスカスカ。
※リザーバータンクをオイルで満たすと、⑦のオイル圧入でオイルが溢れ出すので半分で止める。

⑥浣腸器・パイプに新しいオイルを入れ、空気を浣腸器に集める。

⑦パイプをブリーダーバルブに付けてオイルを圧入したあと、そのまま続けてオイルを吸い出す。
※気泡が吸い出されてきます。

⑧バルブをいったん締めて、ブリーダーバルブにパイプをつなげたまま浣腸器を高くして吸い出した気泡を浣腸器に集める。

⑨バルブを開けて、オイルを圧入したあと、そのまま続けてオイルを吸い出す。

これを繰り返す。
※五~六回やればOKです。もうレバーに圧がかかっていますヨ。

⑩レバーに圧がかかったら、通常のエァ抜きをする。


オイル入れ替えで苦労するのは「レバーに圧をかける」こと。
レバーに圧がかかるまで、何回レバーを握らなければならないか。

この方法では、レバーに圧がかかるまで、レバーを操作する必要はありません。
浣腸器を押したり引いたりするだけです。

しかも、すぐにレバーに圧がかかるようになります。

一度試してください。


ということで、これからのブレーキオイル交換セットは、


もう、ブレーキ液交換に苦労する必要はありません。

単なるブレーキ液交換は、前回紹介した「新しいオイルで古いオイルを追い出す方法」。
キャリパ分解後のブレーキ液注入・エァ抜きは今回の「気泡吸い出し法」

seiken DOT-4 も4缶 ストック。


あとは、プッシュロッドのオイルシールが外れないことを期待するだけ。


つづく

   
2011.10.27  追記


1.恒例の格安部品調達


前の日曜日に落札した部品です。



⑨以外はRMXの予備パーツです。

壊れそうな部品は掘り出しものをコツコツと集めます。
もちろん、安くなければ意味がありません。

高値が付くのはキャブレター、ウィンカー、カウル、社外マフラー、社外リヤショック。
エンジンとフレームは狙い目。

①~⑧はすべて走行7200㎞程度のSJ 13 A からの取外しです。


落札価格の安さに驚きますよ。

①クラッチケーブル  120円  、②インシュレーター  110円  、③イグニッションコイル  280円  、④スピードメーター  1100円  、
⑤フロントブレーキマスター ( ブレーキスイッチ付き )   510円  、⑥シフトペダル  100円  、⑦CDI ユニット  320円  、⑧リアブレーキマスター  100円。

⑨ は XJR 1200 のプッシュロッド comp  100円。


2.FJ 1200 と XJR1200・1300 との部品互換性


⑨は、平成9年登録のXJR 1200 ( 4KG ) 取外しのブッシュロッド comp です。

ブッシュロッドcomp の部品番号は、

FJ1200 ( 4CC・1991~)が 36Y-16381-00。

XJR1200の4KG-1 と 4 KG-2 が 36Y-16381-10 、4KG-3 が 36Y-16381-11。

XJR 1300 ( 5EA-1・1998~) が 5EA-16381-00  、XJR ( 5UX-3・2003~)が 36Y-16381-11。



部品番号の真ん中「16381」はブッシュロッドcomp のことらしい。

では、部品番号の「始め」と「終わり」は何をあらわしているのでしょう。
これが、分かれば部品の互換性が分かるのですが‥。

FJ の中古部品はXJR中古部品狙いが良いようですね。


さて、XJR1200のプッシュレバー compをFJ に付けてみましょう。

結果はOK。



ホースの付いている方が FJの36Y-16381-00 です。

FJにXJRの部品が使えれば、助かります。

中古部品なら、製造年度が後のXJRの方が程度が良いからです。


表側の程度からして違います。




ダストシールもしっかり付いています。
オイル漏れの形跡なし。



  
3.「プッシュレバー comp ダストシールはめ込み位置」 説明の訂正


こちらは、今回シール交換をした、FJのものです。



ピストンが引っ込むとこうなるのですね。

外したときにダストシールが溶けていましたので元の状態が分かりませんでした。

ピストンが引っ込んだ時のダストシールの状態がこうなるのなら、「ダストシール上端がピストンのどこに引っかかるのか」が違ってきます。

もう一度、ダストシール位置の説明で使った写真を上げます。



ダストシールは「ピストンの最初の溝」にはまることになります。
この写真では「青矢印の真ん中の部分」に引っかかることになります。

ダストシールはこの写真の状態より、もう一段前にはまります。

ピストン一段目の凹部にダストシール上端、ピストン二段目の凹部にオイルシールがはまります。
そして、ダストシール下端はプッシュレバーcomp 本体にかぶさるのです。

もっとも、ダストシール上端をピストン二段目の凹部に引っかけても、ピストンが出入りしているうちにピストン一段目の凹部に収まることでしょう。

以上、「ダストシールはめ込み位置」を訂正します。


2011.03.23  FJカウル修復・取付完了

2011.05.08 FJその後_1

2011.05.24 FJその後2-キャブレター同調

2011.08.24 FJ ユーザー車検に向けて  その①

2011.08.31 FJ ユーザー車検に向けて  その②  あともう少し

2011.09.02 FJ ユーザー車検に向けて  その③  エア抜きに半日

2011.09.08 FJ ユーザー車検終了

2011.09.25  FJ フロントフォーク・オイルシール交換  その①  準備

2011.09.29  FJ フロントフォーク・オイルシール交換  その② 終了-自作専用工具改良も

2011.10.03  FJ 1200 整備初級編  オイルエレメント交換・エァクリーナー点検

2011.10.03  FJ 1200 整備初級編  リヤショック調整・バッテリーケース下のゴムマット寸法

2011.10.08  FJ に“驚くほど高い”チェーンスライダーを取り付ける

2011.10.15  FJ 1200 整備初級編  いつまでたっても上達しないエァ抜き-フロントブレーキオイル交換

2011.10.19  FJ 1200 整備初級編--「油圧クラッチ・プッシュレバーcomp シール交換」と「気泡吸い出し法によるエァ抜き

2011.11.07  FJ 1200 整備初級編--チェーン“そのまま交換”  その 1

2011.11.12  FJ 1200 整備初級編-とても簡単だった“プッシュロッドのオイルシール交換”

2011.11.16  FJ 1200 整備初級編-チェーンそのまま交換  その②-組み付け

2011.12.15  FJ と革ジャケットの関係

2012.11.06 再度の左フロントフォークオイルシール交換  ・  フロントフォークオイルシール交換手順最新版 ( 印刷用 )

2013.08.24 カウル取り外し手順をもう一度

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2014.01.14 FJ 燃料ポンプコントロールリレーの交換

2014.03.01 FJキャブレター清掃・組み付け/その 1 - 安い市販Oリングを使う

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