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・現行犯逮捕の時間制限・距離制限についての出典





a.現行犯逮捕での時間制限・距離制限


・注釈刑事訴訟法第二巻・立花書房・170~172頁・藤永幸治執筆部分(犯罪の現行性・時間的接着性)


『「現に罪を行い終わった」現行犯人とは、特定の犯罪の実行行為を終了した直後の犯人であって、そのことが逮捕者に明白である場合を言う。…
   犯罪の実行行為を終了した直後とは、行為を行い終わった瞬間またはこれに極めて接着した時間的段階をいうものと解される。(本位田・実務講座(3)524)…
   行為を行い終わった後、どの程度の時間をいうかを数字的に限定することはできないが、その最大限は3、40分程度であろう。…』

   判例・裁判例が適法・違法とした現行犯逮捕としたもの。
  ・最決昭和31.10.25(暴行・器物損壊の犯行より3~40分後の逮捕は適法)
  ・大阪高裁昭和40.11.8(映画館での公然わいせつの犯行より1時間5分後の逮捕は違法)
  ・仙台高裁昭和42.8.22(自動車の当て逃げの犯行より約1時間後の逮捕は違法)
  ・大津地裁昭和48.4.4(具体的状況により脅迫の犯行より約1時間20分後の逮捕を適法)

   このように、現行犯人は時間的段階における概念であるが、犯行後の時間的経過により犯人が犯行現場から移動するのが通常であり、
   犯人が犯行現場から遠く離れるほど犯行と逮捕の時間的接着性が希薄になるとともに犯人がそれ以外の者と混同され犯人の明白性が失われるから、
   「現に罪を行い終わった」という要件のなかに場所的要素も含んでいる。
   具体的にどの程度の距離をいうかを数字的に限定することはできないが、その最大限は2~300mであろう。

  判例・裁判例では
  ・最決昭和33.6.4(住居侵入の現場から約30m離れた地点での逮捕は適法)
  ・東京高裁昭和27.2.19(すり犯人を継続追跡し約150尺(約46m)へだてた地点での逮捕は適法)
  ・東京高裁昭和41.1.27(自動車の速度取り締まりで、測定終了地点から300m離れた地点での逮捕は適法)
  ・札幌高裁小破37.9.11(窃盗現場から速足で4分20秒の距離・約4~500mでの逮捕は適法)


b.準現行犯逮捕の時間制限・距離制限


・刑事訴訟法(改訂版)現代法律学全集28・高田卓爾著・青林書院新社・322頁


『準現行犯は…旧刑訴ではかなり広範囲に認められていたのであるが、
   憲法33条の解釈上問題があるとされ「罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるとき』という制限をおいて、なお準現行犯の概念を存置した。
   このような関係から「間がない」というのはかなり厳格に解する必要があり、犯罪を行いおわってから最大限数時間を出ない場合に限るべきである。』


・注釈刑事訴訟法第二巻・立花書房・174~175頁・藤永幸治執筆部分(準現行犯逮捕の時間的接着性)

『「罪を行い終わってから間がない」とは、犯罪の実行行為終了後、時間的に相当接着していることをいう。
   数字的に限定することはできないが、通説は、最大限数時間を出ないものとしている。(団藤・条解403)
   数時間では長きに失するとの見解(青柳・現行犯概念の検討)もあり、一般的には3~4時間と解すべきであろう。
   「間がない」とは、時間的段階のことであるが、現行犯の場合ほどでないとしても場所的にも犯行現場との近接性が要求されよう。
   もっとも、継続して追呼されている場合には、時間的・場所的に相当のへだたりがあっても、犯人の明白性が失われないから「間がない」といえるであろう。』

  判例・裁判例では、
  ・最決昭和30.12.16(窃盗後2時間30分後、贓物所持を発見されて追跡され犯行後4時間後に準現行犯逮捕したのは適法)
  ・最昭和42.9.13(放火のあと逃走し犯行後1時間して現場付近で準現行犯逮捕したのはは適法)
  ・広島高裁松江支部昭和27.6.30(荷車の窃取後2時間10分後贓物を所持しているところを準現行犯逮捕したのは適法)
  ・福岡高裁昭和29.5.29(窃盗未遂後1時間半して犯行現場から二百数十メートルの地点で誰何して準現行犯逮捕したのは適法)
  ・東京地裁昭和42.7.14(窃盗後約2時間して犯行現場で交番への同行を求めたら逃走しようとしたので準現行犯逮捕したのは適法)


つづく。





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