時計調整資料




2017.05.05  ベルジョン・Final Test に似た中華ワインディングマシーンの検証



先日、Yahooオークションで BERGEON ( ベルジョン ) の Final Test に似たワインディングマシーンが出品されていました。

プレートには 「 TIANJIN 」、すぐに Final Test の中華コピーだと判りました。

しかし、一週間後なんと 4万1千5百円 で落札されていました。

入札者は10名。これには驚きました。

まあ、ベルジョンなら15万円くらいしますからネ。→→→ こちら


ところが、これと同じものが Amazon で売られていました。→→→ こちら

新品・送料無料で 9799 円。

Yahooオークションの出品者さんは3万1千円の儲け、落札者さんは3万1千円の損。

誰かが儲ければ誰かが損する。

皆が儲かることなんかありません。

アベノミクスに騙されてはいけません。


早速、 Final Test と比較するために Amazon で購入しました。

というのはタテマエで、実際にはYahooオークションに出品して 3万円儲けようとしていたのです。

しかし、すぐに Amazon の出品者が Yahooオークションに 9799円・即決で出品したので、私のもくろみは外れました。

世の中は 「 二匹目のドジョウ 」 で儲けられるほど甘くはないのです。



1.Final Test の中華コピー


 左が Final Test 、右が中華コピー。
 一見して見分けが
つきません。
 しかし、箱にはMADE IN CHINA と明記。
 ベルジョンの Final Test でないことは明らかです。


 トッププレート ( シール ) にも Final Test の名前はありません。
 TIANJIU と明記されています。
 だから、これをベルジョンの Final Test だと誤解する方がいけないのです。
 こちらが Final Test のトッププレートです。
 シールではなく、アルミプレートです。




2.構造と仕様


a.大ギヤと回転部と小ギヤ


構造はまったく同じ。( 写真の左がベルジョン、右が中華コピー )

・ 固定された大ギヤに回転部の小ギヤが噛み合います。
・ 小ギヤの先端には時計ホルダーが取り付けられています。
・ モーターが回転部を回すと、小ギヤが大ギヤの周りを回転し、時計ホルダーが回転します。

この構造はベルジョンの特許ではなく、一般的なものです。

だから、この構造を採用してもなんら 「 コピーだ! 」 と非難できません。


 ベルジョンの大ギヤ : 外径/71.2㎜Φ、ギヤ巾/10㎜、歯数/56枚、シャフト径/10㎜Φ
 中華コピー大ギヤ : 外径/71.2㎜Φ、ギヤ巾/10㎜、歯数/56枚、シャフト径/10㎜Φ
 材質はともに樹脂。
 まったく同じです。
 ベルジョンの小ギヤ : 外径/18.0㎜Φ、厚さ/18㎜、歯数/13枚
 中華コピーの小ギヤ : 外径/18.0㎜Φ、厚さ/18㎜、歯数/13枚
 ギヤの材質はともに樹脂、シャフトはともにスチール。
 まったく同じです。




b.小ギヤのシャフトと互換性


それでは二つの間に互換性はあるでしょうか?

ベルジョンの回転部と中華コピーの回転部を入れ換えることができるでしょうか?

シャフト径は同じですが、シャフトに付いているピンの形状が違い、回転部の取り付け穴も違う ( 開放・非開放 ) のでこのままでは互換性はありません。

ただし、少し加工すれば入れ替えは可能でしょう。


それでは、小ギヤシャフトの互換性はどうでしょう。

左がベルジョン、右が中華コピーです。

構造はおなじで、シャフトの平坦部で小ギヤを留め、小ギヤの前にクリップを挟んでシャフトが抜けないようにします。

 a ( 先端径 回転部内穴に入る部分の径 ) : 4.0㎜Φ
 b ( 平坦部に続く部分の径 ) : 4.0㎜Φ
 c ( 平坦部厚さ ) : 4.0㎜
 d ( 回転部外穴に入る部分の径 ) : 5.0㎜Φ
 e ( 先端部~平坦部終わり ) : 14.4㎜
 a ( 先端径 回転部内穴に入る部分の径 ) : 4.0㎜Φ
 b ( 平坦部に続く部分の径 ) : 4.2㎜Φ
 c ( 平坦部厚さ ) : 4.4㎜
 d ( 回転部外穴に入る部分の径 ) : 6.2㎜Φ
 e ( 先端部~平坦部終わり ) : 11.4㎜


このように、d ( 回転部外穴に入る部分の径 ) が異なるので、中華コピーの小ギヤシャフトはベルジョンの回転部に入れることはできません。

また、ベルジョンの小ギヤシャフトは中華コピーの回転部に入れることができますが、がたつくことになります。

ただし、中華コピーの小ギヤをベルジョンに付けることはできます。

もちろん、中華コピーの小ギヤの平坦部かみ合い巾は4.4㎜でベルジョンの小ギヤシャフトの平坦部は4.0㎜なので、少しガタつくことになります。


なお、上の中華コピーの写真で、クリップの左に写っているカラーは回転部内穴に入るものです。

 ベルジョンの回転部は内穴も外穴もカラーです。  しかし、中華コピーの方は内穴も外穴も回転するようになっています。
 ベアリングというほどのものではないでしょう。
 内穴に上記の回転カラーがはまります。




c.モーター部


まずは、中華コピーの方です。

 各ビスは裏からナットで留めてありますから、裏蓋を外さないと外れません。

 裏蓋はこじれば簡単に外れます。

 この状態にして、ナットを供回りをしないようにブライヤーで挟んでビスを外します。


 ビスは大ギヤ外側に六本。

 これで大ギヤはフレームに取り付けられています。

 この六本のうち二本はカラーを介してモーターフレームに取り付けられます。

 つまり、この二本は大ギヤとフレームとモーターフレームを留めることになります。

 大ギヤ内側にある二本のビスは大ギヤをシャフトフレームに取り付けます。

 この取り付け穴は四個ありますが、ビス留めは二カ所になっています。

 モーターは 110V ・ 4.5W ・ 2.5回転/分 の交流モーター。
 ※実際に測ってみると 3回転弱/分 でした。

 シャフトに直結してギヤはありません。

 モーターは取り外せるので、部品供給があれば交換できます。



次はベルジョンです。

 中華コピーが 「 アルミ板とビスで作ったモーター部 」 なら、
 ベルジョンは 「 アルミの塊で作ったモーター部 」 です。

 これほどまでに頑丈に作る必要があるのでしょうか?

 金属製のギヤを介してモーターがシャフトを回転させます。

 しかし、中華コピーのようにギヤを介さず、
 低回転モーターで直接回転させる方がコストがかからず、故障がないように思えます。


 モーターの取り外しは多分可能でしょう。  このモーターが入手できれば、モーター交換ができます。
 しかし、10年前に中古 ・ 1 万円で入手した、この Final Test のモーターは今でも元気です。
 なお、このモーターはギヤを介し、シャフトを 1分間にちょうど一回転させます。




d.時計ホルダーの回転数


・ ベルジョン : 大ギヤ56枚÷小ギヤ13枚×1回転/分=4.3回転/分

・ 中華コピー : 大ギヤ56枚÷小ギヤ13枚×2.5回転/分=10.76回転/分 ( ※実際には3回転弱/分だから、56÷13×3≒12.9回転/分 )

だから、中華コピーの方がベルジョンより三倍回ることになります。

この点を考慮して、トッププレート ( シール ) には 「4時間巻き上げで、巻き上げ量=20時間~31時間 」 と記載されています。

ベルジョンのどっブレートには 「 4時間巻き上げで、巻き上げ量=8時間~12時間 」 と記載されています。

 ( 8時間~12時間 ) ×2.5=20時間~30時間だから、トッププレートの記載もちゃんと修正されています。


なお、中華コピーの方は一定時間後 or スイッチのON・OFF後に回転が逆方向になります。

これはベルジョンにない機能なので付け加えておきます。



3.巻き上げ性能・時計との相性の巾


ワインディングマシーンにはその時計との相性があります。

不思議と 「巻ける時計」 と「巻けない時計」 があるのです。

ワインディングマシーンの価値は 「時計との相性の巾」 にあります。

ワインディングマシーンのメーカーは時計ホルダーの角度や回転数を工夫して 「時計との相性の巾」 を拡げようとしているのです。


a.水平にして


まずは、中華がコピーしたベルジョン新型のように水平にしてみました。

結果は、

 相性の巾はきわめて狭いことが判りました。
 テストした自動巻き16個のうち巻き上げられたのは4個だけ。
 現代版の SEIKO5/7S26/7S36を 「3.5時間ON+0.5時間OFF」 で24時間巻き上げましたが
 時計は最初の時刻を示したままで、まったく巻き上げられていませんでした。
 こちらはベルジョンの新型 FINAL TEST です。
 時計ホルダーの角度も水平設置なのも同じです。
 しかし、これで充分に巻き上げられるのでしょう。
 回転数の問題でしょうか?
 手元にあるのは旧型なので判りません。


ワィンディングマシーンを水平にすると、ホルダーの時計は 12時-6時位置 方向に回転します。

これは時計を腕に着けた場合、ドアノブを回す方向です。
時計の文字盤に垂直な面で時計を動かすものです。

こういう動きは日常生活であまりありません。
通常は腕をふる方向、つまり文字盤の面で時計を動かします。

ベルジョンの新型 FINAL TEST が文字盤に垂直に時計を動かして巻き上げられるのはベルジョンならではの工夫があるからでしょう。

中華コピーにはその工夫ができません。

だから、形を真似ても巻き上げることができないのです。

しかし、時計を動かす方向 ( 面 ) を変えてみたら巻き上げられるかも知れない。

そこで、



b.縦にしてみました


この中華コピーにはフックがついています。

板にネジフックを取り付けて直角に近い角度で設置して巻き上げてみました。

 なんとなんと

 水平設置ではまったく巻き上げられなかった時計が簡単に巻き上がったのです。

 しかも短時間で。

 Yahooオークションで この中華コピー を4万1千5百円で落札された方はもうお気づきでしょうか?

 「 四万円も出してガラクタをつかませられたな…。」 と悔しがっているなら、縦にしてください。



では巻き上げ結果です。

水平ではまったく巻き上がらなかった時計が短時間で巻き上げられるのには驚きました。

※巻き量ゼロ( 停止状態 ) で装着
※〇 / 時刻がほぼ合っているもの、△ / 停止していなかったもの、× / 装着する時の時刻のままでまったく巻き上がらなかったもの or 2~3時間だけ進んで停止していたもの
※〇・△・× / 装着時間 / 巻き上げ量 ( 外してから停止するまでの時間 ) / 歩度

時計 中華コピー水平
3.5時間ON+0.5時間OFF
中華コピー縦
3時間ON+1時間OFF
ベルジョン旧型水平
その他
SEIKO5 ACTUS カットガラス 〇 / 16時間 / 29時間 XENLON / ×
SEIKO5 ACTUS SS 角丸 〇 / 16時間 / 12時間 △ / 14時間 / 装着12時間後に停止
CTIZEN オートデータ 金 赤バンド 〇 / 16時間 ×
CTIZEN クリスタル7 〇 / 16時間
CTIZEN V2 コハク  × / 16時間 〇 / 14時間 MARINE / 〇
CTIZEN V2 グリーン × / 16時間 〇 / 5時間 / - / 5分進み × / 14時間
CTIZEN レオパード × / 16時間 〇 / 5時間 / - / 10分遅れ MARINE / 〇
SEIKO5 ACTUS 21石 ♯142545 × / 16時間 〇 / 12時間 / 37時間 / +3秒 △ / 14時間 / 装着6時間後に停止
SEIKO5 23石 ♯8N00550 × / 14時間 〇 / 12時間 / 46時間 / -7秒 ×
CTIZEN クリスタル7 9時窓 × / 14時間 〇 / 5時間 / - / 良好 ×
CTIZEN オートデータ 金 金バント × / 14時間 × / 5時間 ×
SEIKO5 ACTUS 蛍光針 × / 14時間 〇 / 5時間 / - / 良好 ×
SEIKO5 7S26 シルバー × / 24時間 〇 / 12時間 / 38時間 / +7秒 〇 / 24時間
SEIKO5 7S36 白 緑針 × / 24時間 〇 / 12時間 / 52時間 / +7秒 〇/ 24時間
SEIKO5 7S36 白 赤針 × / 24時間 〇 / 12時間 / 49時間 / +7秒 〇 / 24時間
SEIKO5 7S36 青 × / 24時間 〇 / 5時間 / - / 15分遅れ × / 24時間
SEIKO 7S26 オレンジモンスター
※ムーブ交換
〇 / 10時間 / 分針を戻しても秒針が動く
CTIZEN 17石 青 〇 / 8時間
CTIZEN 17石 白 〇 / 8時間
CTIZEN 21石 緑 〇 / 8時間
CTIZEN V2 グラデ ガラス傷 〇 / 8時間
SEIKO スポマチ ♯6703473 〇 / 12時間 / 47.5時間 / ±0秒
SEIKO5 ACTUS SS 23石 
♯353976
SEIKO5 ACTUS SS 23石 
♯330073 ※日付送り不可
SEIKO スポマチdeluxe 25石
♯5717116 ※曜日送り不可
SEIKO スポマチdeluxe 25石
♯5N00590 ※ムーブ不調
SEIKO 7S26 オレンジモンスター EILUX2連 / △
通常、〇だが停止していた
SEIKO 7S26 ブラックモンスター EILUX2連 / △
通常、〇だが停止していた
Orient ブルー LUHWで停止していた


ベルジョン旧型 FINAL TEST の結果が良くありません。

これには原因があります。

 もともと旧型はこのように立てて設置するようになっています。
 しかし、時計ホルダーに時計を四個着けられるのでモーターに負担がかかります。
 苦しそうに回ったり、各部の摩擦で回らなかったりします。
 そこで、新型が水平設置なので水平にしてみたのです。
 水平設置の新型にはそれなりの工夫がなされているはずです。
 旧型は立てて使用するように設計されているのでしょう。
 中華コピーと同じく斜めに設置すればもっと良い結果が出るでしょう。
 これは宿題です。


以上、要するに 「 ワインディングマシーンの巻き上げ効率 」 は 「 時計の設置角度と回転速度・回転数 」 で決まるということです。

回転が速ければ、それだけ良く巻き上がるということではありません。

そのよい例が MTEの四連タイプです。

構造は次のようなものです。


時計ホルダーの小ギヤが大ギヤと噛み合って、大ギヤの周りを回転するのではありません。

回転部にはシャフトが出ていて時計ホルダーはこのシャフトに差し込まれています。

しかし、時計ホルダーはシャフトに固定されておらず自由に動くことができます。

また、時計ホルダーの下部は円盤になっていて、回転部の周りに取りつけられた大きなゴム円盤に接触しています。

モーターが回転部を回すと、シャフトに差し込まれたホルダーが大きな円盤の周りを転がって回転することになります。

モーターが逆回転すればホルダー自身も逆回転することになります。

ホルダーの回転数はホルダーの円盤の直径で決まることになります。

分解していませんが、多分 大ギヤと小ギヤ はないでしょう。

ギヤがないぶんだけ故障がすくなくなりますが、円盤部のゴム磨耗により接触が弱くなるとホルダー自体が回転しなくなります。

  こちらが本家本元の MTE 四連 →→→ こちら
 8年前に新同を 1 万円程度で入手しました。
 2回転 ( ホルダーは5回転 ) / 45秒 → 1分45秒停止 → 逆方向へ2回転 / 45秒 を繰り返します。
 こんなにスローモーなのに8年以上 時計を巻き上げています。
 装着してある時計はOH済みのスポーツマチックです。
 8年装着しっぱなしですが、ほぼ同時刻をしめしています。
 このワィンディングマシーンは絶対のお勧めです。
 こちらは最近 9千5百50円 で入手した国産 MARINE の MTE タイプです。→→→ こちら
 1.5回転 ( ホルダーは3回転弱 ) / 30秒 → 1分40秒休止 → 逆方向に1.5回転 / 30秒
 これもスローモーですが、どのマシーンでも巻き上げられなかった時計を巻き上げます。
 要は回転数ではないのです。
 いかにゆっくりと時計に負担をかけないで巻き上げるかがポイントなのです。




4.総評


では、この中華コピーは購入する価値のあるものでしょうか?

ベルジョン新型と同じく水平設置で巻き上げることができない以上 「 巻き上げ時間と巻き上げ量から巻き上げ能力をテストする 」 FINAL TEST としての価値はありません。

巻き上げ時間と巻き上げ量の関係を示すシールは単にベルジョンのデーターを 回転数の比率から換算したものでしょう。
テストをして算出したものではないでしょう。 ( そもそも水平設置では巻き上げられないからテストできない )

しかし、立てれば六個の時計を短時間で巻き上げられます。

直流モーターと小さいプラスチックギヤを使った LUHWタイプの中古良品が単巻きで3千円~5千円、同じく2連の EILUX タイプが 5千円~7千円。
だいたい中古良品の相場は 「 3千円 / 個 」

この点から考えれば、六個巻きなら 1万8千円程度になります。

各部品とモーターの耐久性は使ってみないと判りませんが、オモチャのような 「 直流モーター+プラスチックギヤ 」 より耐久性はあるでしょう。

現時点での推測なら 「 新品で2万円程度 」 の価値はあるでしょう。

もちろん、この中華コピーにベルジョンと同じく 「 ファイナルテスト 」 としての機能を期待してはいけません。
あくまで 「 単なる巻き上げ機 」 として考えなければなりません。

かつて XENLON が大人気になったように人気がでるかもしれません。

今なら1万円弱で入手できます。

さあどうしますか?

だだし、フォルダーにはゴムを貼りつけなければなりません。
そうしないとブレスや裏蓋が容赦なく傷つけられます。



2017.05.19 追記


ファイナルテストを65度、中華コピーを35度に立てて、1時間ON+1時間OFFで稼働させています。

問題なく、ほとんどの時計が巻き上がっています。

設置角度と稼働時間がポイントのようです。



つづく



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