開業篇



25.1ポスト・24勤務の日当 - 断続的労働とその賃金



1. 1ポストの宿直日直業務とは


工場や官公庁の業務が終わった後や休日に、
警備員が泊り込んで、定期的な巡回、来訪者・電話対応、郵便物の受け取り、事件・事故発生時の緊急対応をするものです。

平日なら17時~翌8時30分の15.5時間勤務。休日なら8時30分~翌8時30分の24時間勤務です。

複数名で行われる場合もありますが、小さい施設では1ポストです。

今回は1ポストの場合を取り上げます。

この勤務で警備員の最低日当はいくらになるでしょうか?

もちろん、それは労働基準法に適合するものです。


次の勤務を例とします。

①平日勤務・1名
・17時~翌8時30分 ( 拘束15.5時間 )
・17時30分~18時30分:閉館施錠業務
・22時~22時30分:施設内巡回
・23時~翌5時30分:仮眠
・6時~6時30分:施設内巡回
・7時30分~8時:開館・開錠業務

②休日勤務・1名
・8時30分~翌8時30分 ( 拘束24時間 )
・10時~10時30分:施設内巡回
・15時~15時30分:施設内巡回
・22時~22時30分:施設内巡回
・23時~翌5時30分:仮眠
・6時~6時30分:施設内巡回

巡回以外は警備室や防災センターに待機して来訪者や電話の対応郵便物の受け取りを行います。
また、ローカルシステム作動時 ( 火災,温度異状,侵入感知なと) には緊急対応を行います。
仮眠はできますが、少なくとも緊急時の対応があるので、完全に自由な睡眠はできません。


※宿直・日直とは労働者が通常の業務の後で会社に泊り込んだり、休日に留守番をしたりすることですが、
  ここではその仕事だけを宿直業務・日直業務と呼びます。



2.原則は 1日8時間・週48時間・週1日の休日


労働者には労働基準法(以下 労基法 )が適用されます。

使用者が労働者を労基法の労働条件より悪い条件で働かせると罰則が適用されます。※労基法117条~

また、使用者と労働者が結んだ労働契約の中で、労基法の定める労働条件より悪い部分は無効となり労基法の労働条件に引き上げられます。

労基法13条(労働契約)
「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。
  この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。」


労基法が定める労働時間,休憩,休日は次の通りです。

a.労働時間

・一週間に40時間以下で一日に8時間以下

※労基法32条(労働時間)

 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
  2.
使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」


b.休憩

・休憩は労働時間が6時間を超えたら45分間以上、8時間を超えたら60分間以上。
・休憩は労働時間の途中に与えなければならない。
・休憩は労働者が自由に使えるものでなくてはならない。

※労基法34条(休憩)
 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、
   八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
 2.前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。
   ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、
   労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
 3.使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。」


1ポストの宿直日直業務の場合、休憩時間中でも不意の来訪者や電話、事件事故発生時の緊急対応をやらなければなりません。
だから休憩時間が与えられていても「それを労働者が完全に自由に利用できる」とは言えません。
仮眠時間についても同じです。

『休憩時間に来訪者や電話対応があったら、適当に休憩時間をずらせてよ。』
『自火報発報なんてまず起こらないからね。万が一発報したときは対応してくださいね。これは大地震が起こったときと同じだよ。』

こんなごまかしは通用しません。

1ポストでは交代要員がいない限り休憩は存在しません。
だから、1ポストの宿直日直業務は6時間を超えた時点で労基法違反となります。


c.休日

・休日は一週間に一回以上、または4週間で4日以上

※労基法35条(休日)
「  使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
  2.前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。」


d.時間外労働・休日勤務

・ただし、例外として労働者の過半数を代表する者との約束で時間外や休日に労働させることができる。( 36協定 )

※労基法36条(時間外及び休日の労働)
「  使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、
    労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、
    これを行政官庁に届け出た場合においては、
    第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)
    又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、
    その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
    ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。

 2.厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、
   前項の協定で定める労働時間の延長の限度、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、
   労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる。


 3.第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、
   当該協定で労働時間の延長を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない。

 4.行政官庁は、第二項の基準に関し、第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。」

※36協定については→→→こちら

e.時間外労働・休日勤務の制限

36協定には限度があります。
労基法36条2項により、「労働基準法36条1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」が定められています。
その限度は
15時間/1週,27時間/2週,43時間/4週,45時間/1カ月,81時間/2カ月,120時間/3カ月,360時間/1年 です。


f.余談 - 警備員の方へ 「労基法は労働者の生存を守らない」?

使用者は労働者を労基法の定める労働時間を超えて働かせることはできません。
逆にいえば、労働者は労基法の定める労働時間しか働けません。
その時間数を計算してみましょう。

一年は365日で、(365÷7)週

一週間に40時間しか働けないから、一年で働けるのは 40時間×(365÷7)週=2085.7時間。

36協定の時間外労働の上限は 360時間/年。
この時間外労働は25%の割増賃金となるから、実質的には360時間×1.25=450時間。

これらを合計すると 2535.7時間。

これにあなたの時給をかけたものがあなたの年収の最高額。


警備員の時給は最低賃金ギリギリ。

三重県の警備員の最低賃金は時給753円、東京は888円。

だから、三重県の警備員の年収は753円×2535.7時間=190万9382円。
一カ月になおすと 15万9115円。

東京なら、年収 888円×2535.7時間=225万1701円。
月収 2251701÷12=18万7641円。

ボーナスなんか期待できません。

だから、警備員の月収は15万円~18万円になるのです。

しかし、これは「仕事が毎日あった場合のこと」・「残業や休日出勤ができた場合のこと」。

交通警備・イベント警備中心の警備会社では一年に半分くらいしか仕事がありません。

だから、月収が10万円以下でも異常ではないのです。

労基法は「働き過ぎを規制して、労働者の健康を守る」ことはできても「労働者の生存を守る」ことはできません。

「労基法や基準局を口にしたら仕事をやらせてもらえない」

〇〇〇ミクスなんか白々しく聞こえるでしょう?



3.断続的労働は例外


a.断続的労働とは


「一日に8時間・週に40時間、8時間を超えたら休憩1時間、休日は週に1日」の原則には例外があります。

その例外の一つに断続的労働というものがあります。

断続的労働では労働時間,休憩,休日の原則が外され(労基法41条,施行規則34条)、最低賃金も異なります(最低賃金法7条4号)。

※労基法41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
「   この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

  一.別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
  二.事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
  三.監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

※労基法施行規則34条

「法第四十一条第三号 の規定による許可は、従事する労働の態様及び員数について、様式第十四号によつて、所轄労働基準監督署長より、これを受けなければならない。」

様式第14号というのは→→→こちら  ・  労働局様式ダウンロード

※最低賃金法7条(最低賃金の減額の特例)
「   使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、
     当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に
     労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により第四条の規定を適用する。
  一.精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
  二.試の使用期間中の者
  三.職業能力開発促進法 (昭和四十四年法律第六十四号)第二十四条第一項 の認定を受けて行われる職業訓練のうち
    職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得させることを内容とするものを受ける者であつて厚生労働省令で定めるもの
  四.軽易な業務に従事する者その他の厚生労働省令で定める者」


断続的労働とは「仕事をしているときとしていないときが交互に繰り返される」もので、「仕事をしていない時間が長い」ものです。
全体を平均すると労働量・労働負荷が低くなるので労基法の労働時間・休憩・休日の規定が適用除外され、最低賃金も低くなるのです。
上の最低賃金法7条の4号に該ります。

警備員の断続的労働について労働省通達は次のように説明しています。

『いわゆる「宿日直業務の代行」として行われる業務であること。
 すなわち、原則として、常態としてほとんど労働する必要のない勤務で、
 定期的巡視、施錠及び開錠、緊急の文書又は電話の収受、不意の来訪者への対応、非常事態発生の対応等を業務内容とするものであること」

まさしく「ひまだなぁ~。」とあくびをしているような宿直日直業務です。
ショッピングセンターの常駐警備員のように、巡回以外では受付に座ってじっと出入口を監視しているような業務はこれに該りません。


この労働省通達は「どのような宿直日直業務を断続的労働とするかについての判断基準」を定めています。
※警備業者が行う警備業務に係る監視または断続的労働の許可について

これは、労働省が都道府県の労働基準局へ指示した内部的な通達です。
各労働基準局はこの通達の判断基準によって許可を与えます。

この通達は法律ではないので、許可されなかったことを不服として裁判で争うことができます。
もっとも、そんな行政訴訟を起こしてもまず勝ち目はありません。警察庁の「警備業法の解釈・運営基準」と同じです。

それではその判断基準を見ていきましょう。


b.断続的労働の要件


イ.巡視・巡回の内容

①精神的緊張の大きいものはダメ
・広い施設を巡回するもの→コンビナート,空港,遊園地。
  あとで「一巡回は1時間以内」という要件が出てきますが、1時間以内でも広大な場所を巡回するのは精神的肉体的に疲れます。
・その構造上、外部からの侵入を防止することが困難なもの→遊園地,駐車場,イベント会場など。施錠してある建物はこれに該らないでしょう。
  侵入者がいる可能性が高ければ巡回時の精神的緊張は大きくなります。
・高価な物品が陳列,展示,保管されている場所→博物館,美術館,貴金属店,家電量販店などでしょう。
  泥棒が侵入する可能性が高いので巡回の精神的緊張が大きくなります。

②危険な場所、環境(温度,湿度,騒音,粉塵濃度など)が有害な場所はダメ。
・放射線被曝の危険がある施設、病原菌を保管している研究所、弾薬庫、稼働中の工場内、
  噴火の可能性が高い火山の山小屋、酷寒の観測所、ジュラシックパークなどでしょう。

③巡回回数は 6回以内、一巡回の所要時間は1時間以内で合計4時間以内。


ロ.拘束時間


①12時間以内
②勤務中の夜間に継続して4時間以上の睡眠ができるときは 16時間以内→平日の宿直がこれに該ります。


ハ.休息期間が必要

・いわゆる「明け休み」です。
①勤務と勤務の間に10時間以上の休息期間が必要
②勤務中の夜間に継続して4時間以上の睡眠が与えられるときは8時間以上の休息期間が必要。


ニ.隔日勤務の場合の例外

・1ポストの宿直日直業務を、2名で一日おきに勤務する場合です。

①勤務中の夜間に継続して4時間以上の睡眠ができる場合は拘束時間は24時間以内。
②巡回回数は10回以下、一巡回の所要時間は1時間以内で合計6時間以内。
③勤務と勤務の間に20時間以上の休息期間が必要。

・一日おきなら24勤務を連続させてもよいことになります。


ホ.休日が必要

・休息期間(明け休み)の他に休日が必要です。

①休日は一カ月に2日以上。その代替要員が確保されていること。
②休日は休息期間に24時間を加えた継続したものであること。→「明け休み+休日」にしなければならない。


ハ.勤務場所が一つであること

①勤務場所が一つでそこに常駐する場合であること。
②常駐とは一カ月以上勤務する場合であること。
  警備契約期間が一カ月より少ないときはそのすべての期間を勤務する場合であること。


ニ.仮眠設備が必要

①夜間に睡眠を与えるときは充分な睡眠ができるような場所と寝具が備えつけられていること。
・警備車両の中で仮眠しなさい。机にうつ伏せになって仮眠しなさいというのはダメ。
・冷暖房も必要でしょう。
・寝具は会社が準備しなければならないようですね。


c.労働局の許可が必要


イ.監視又は断続的労働に従事する者に対する適用除外許可

警備員の宿直日直業務が上の要件をすべて満たしても、断続的労働として労基法の適用が除外されるわけではありません。
労基法の適用除外をうけるためには、労働基準局へ申請してその許可を取らなければなりません。
これを「監視又は断続的労働に従事する者に対する適用除外許可」といいます。→→→ 電子申請できます

この許可がない限り、宿直・日直業務には労基法が適用されます。
その結果、使用者は労基法違反の罰則を受け、労働者は労基法通りの賃金を請求できることになります


ロ.労働者個人についての適用除外許可です

この許可は「その業務について労基法の適用を除外する」というものではありません。
「その業務を行う者に対して労基法の適用を除外する」というものです。

その業務を行う者が変われば許可を取り直さなければなりません。


ハ.労働者の同意は必要か?


許可申請手続の添付書類をみる限り、その業務に従事する労働者個人の同意は必要ないようです。

しかし、現在行われている宿直日直業務を新たに断続的労働として労基法の適用除外許可を申請する場合は、
それが認められたら労働条件が不利益に変更されることになります。

だから、実務では労働者個人の同意書が必要なのかもしれません。


ニ.認可ではなく許可です


許可とは「一定の要件を満たせば必ず認められるもの」ではありません。

認めるかどうかの裁量が残っているのが許可です。

警備業の認可のように「一定の要件が揃っていれば必ず認められる」というものではありません。

労基法の適用を外すのですから慎重に行うのでしょう。

今までに問題を起こした警備会社にはこの許可がおりないかもしれませんね。


4.断続的労働の賃金


a.手待ち時間は60%評価


労働局のパンフレット「最低賃金の減額の特例許可申請について・断続的労働に従事する者」には次のように説明されています。

・所定労働時間数=A、実作業時間数=B、手待ち時間数=C。
・減額できる上限(減額率)=(C×0.4)÷A
・%の小数点第二位以下は切り捨て。
・所定労働時間とは拘束時間から休憩時間を差し引いたもの。
  1ポストの場合、休憩や仮眠の交代要員がいない限り休憩は存在しません。だから所定労働時間=拘束時間となります。
・所定労働時間,実作業時間,手待ち時間は一日のもの。※一勤務のことでしょう。
・所定労働時間,実作業時間,手待ち時間が勤務により異なるときは、それらが一律となる期間をとって平均する。

この計算式で減額できる最低賃金の率は出ますが、「なにがどうなってそうなるのか」が分かりません。
これを説明します。


イ.実作業時間は100%評価、手待ち時間は60%評価

(休日勤務・1名)
・8時30分~翌8時30分 ( 拘束24時間 )
・10時~10時30分:施設内巡回
・15時~15時30分:施設内巡回
・22時~22時30分:施設内巡回
・23時~翌5時30分:仮眠
・6時~6時30分:施設内巡回

拘束時間=24時間、休憩時間=0、所定労働時間=24時間、実作業時間=2時間、手待ち時間=24-2=22時間。

実作業時間は100%評価で、2時間×100/100=2時間。
手待ち時間は60%評価で、22時間×60/100=13.2時間。
合計15.2時間働いたと評価されます。
この15.2時間を評価労働時間とします。


ロ.所定労働時間1時間の評価

評価労働時間が分かれば日当が計算できそうです。
しかし、深夜労働や残業が発生する場合があるのでその基準となる最低賃金を計算しておかねばなりません。
※断続的労働では労働時間,休憩,休日の原則は外されますが深夜労働・時間外労働・休日出勤の割り増しは除外されません。
※ただし、24時間が断続的労働の最大限だから24勤務での残業は認められないでしょう。

まず、評価労働時間を所定労働時間で割って、所定労働時間1時間の評価を出します。
上の例では、評価労働時間 15.2時間÷所定労働時間 24時間=0.6333…≒0.634。
※最低賃金の減額率では%の小数点第二位以下を切り捨て→最低賃金自体を計算するときは%の小数点第二位以下を切り上げ。

つまり、所定労働時間の1時間は0.634時間評価となります。

この勤務での最低賃金=法定最低賃金×0.634。


所定労働時間24時間のうち、22時~5時の7時間は深夜割り増し25%で1.25倍。

日当は (24-7)×法定最低賃金×0.634+7×法定最低賃金×0.634×1.25

三重県なら法定最低賃金=753円/時だから、
日当=(24-7)×753×0.634+7×753×0.634×1.25=(17+8.75)×0.634×753=25.75×0.634×753≒12294円


ハ.練習問題

(平日勤務・1名)
・17時~翌8時30分 ( 拘束15.5時間 )
・17時30分~18時30分:閉館施錠業務
・22時~22時30分:施設内巡回
・23時~翌5時30分:仮眠
・6時~6時30分:施設内巡回
・7時30分~8時:開館・開錠業務

拘束時間=15.5時間、休憩時間=0、所定労働時間=15.5時間、実労働時間=2.5時間,手待ち時間=13時間。

手待ち時間の評価=13×0.6=7.8時間。
評価労働時間=2.5+7.8=10.3時間。

所定労働時間1時間の評価=評価労働時間÷所定労働時間=10.3÷15.5≒0.665。
最低賃金=法定最低賃金×0.742

深夜労働時間=7時間

日当=(15.5-7)×法定最低賃金×0.665+7×法定最低賃金×0.665×1.25

三重県の場合なら法定最低賃金=753円/時

日当=8.5×753×0.665+7×753×0.665×1.25=(8.5+7×1.25)×753×0.665≒8638円


b.減額率の計算


以上で日当額の計算はできますが、これを労働局のパンフレットで説明している最低賃金の減額率・減額という面から見てみます。

上例の休日24時間勤務を例にとります。
拘束時間=24時間、休憩時間=0、所定労働時間=24時間、実作業時間=2時間、手待ち時間=24-2=22時間


手待ち時間の労働評価は60%だから手待ち時間についての減額率は40%。
つまり、手待ち時間による減額=手待ち時間数×0.4=22×0.4=8.8時間

これを所定労働時間にならすと、所定労働時間1時間あたりの減額率が出ます。
つまり、所定労働時間1時間の減額率=手待ち時間数×0.4÷所定労働時間数=8.8÷24=0.36666…≒0.366
※%の小数点第二位以下を切り捨て。

結局、減額率の上限は0.366。
つまり、この勤務で減額できるのは法定最低賃金×0.366が上限。
支払わなければならない最低賃金=法定最低賃金×(1-0.366)=法定最低賃金×0.634

三重県の最低賃金753円でいえば、

減額できる賃金の上限=753×0.366=275.598円。
支払わなければならない最低賃金=753×0.634=477.402円。

これを基準として、深夜労働・時間外労働・休日労働の割り増し分を計算します。

労働局のパンフレットは「法定最低賃金からいくら減額できるか」という点から説明しているので分かりにくいのです。


c.最低賃金の減額にも許可が必要


イ.最低賃金の減額の許可

警備員の宿直日直業務が断続的労働として労基法の適用除外の許可が与えられても、それだけでは最低賃金を減額することはできません。

「監視又は断続的労働に従事する者に対する適用除外許可」は労基法の労働時間・休憩・休日の規定を除外するだけです。

その勤務が労基法の労働時間・休憩・休日の規定に反しても労基法違反にならないというだけです。
最低賃金法の適用は除外されません。

最低賃金法の適用を除外して賃金を減額するには、さらに「最低賃金の減額の特例許可申請」をしなければなりません。

電子申請については見当たりません。
申請書は→→→こちら


ちなみに、上の24勤務(拘束時間=24時間、休憩時間=0、所定労働時間=24時間、実作業時間=2時間、手待ち時間=24-2=22時間) を減額なしで計算すると、
①8時30分~16時30分の8時間が通常労働→8時間分
②16時30分~22時の5.5時間が時間外労働で25%増し→5.5×1.25=6.875時間分

③22時~5時の7時間は時間外労働で深夜労働→25%増しの25%増し→7×1.25×1.25=10.9375時間分
④5時~8時30分の3.5時間は時間外労働で25%増し→3.5×1.25=4.375時間分

①+②+③+④=30.1875時間分

三重県の最低賃金753円で計算すると753×30.1875≒22732円。

これが日当となります。
最低賃金減額の許可がなければこれだけの額を支払わなければなりません。

もちろん、その警備員が請求した場合ですが…。


ロ.減額率は上限、申請するのは許可


4 - a・b で算出した減額率や減額は上限です。

労働局のバンフレットでは、
「これを上限として、減額対象労働者の職務の内容,職務の成果,労働能力,経験などを総合的に勘案して、減額率を定めてください」とされています。

許可ですから「認めるかどうかは労働局の裁量」です。

『もう少し高くしないと許可しないよ。』と言われたらそれに従うしかないでしょう。



4.見積もり


上例の休日24勤務と平日15.5時間勤務で人件費を計算してみましょう。

最低賃金の減額が上限一杯まで認められた場合です。
だから、これより安いことばありえません。

三重県の最低賃金なら、休日24勤務の日当が12294円、平日15.5時間勤務の日当が8638円。

一カ月の土日祭日を11日、平日を20日とすると、一カ月の日当合計は12294円×11+8638円×20=30万8千円

これに警備員2名にかかる諸経費(教育・装備・雇用労災保険・交通費・有給休暇など)をプラスすると 35万円くらいになるでしょう。
もちろん、利益はありません。
利益を1割弱見込んで38万円。

『あ~、ひまだなぁ…。テレビも見飽きたし、たいくつだなぁ…』
こんな宿直日直でも月額38万円は必要なのです。

警備業者がこれより安く請けている場合は、そのマイナス分を警備員に押しつけている可能性があります。
文句を言う者には仕事を与えなければよいだけですからね。


公共施設の宿直日直業務入札では予定価格(最高落札価格)は決められていますが、最低価格は決められていません。

予定価格は公表されませんが、それは労働基準法と最低賃金法に適合するように算出されたものであるはずです。
前年度の落札価格がいかに低くても予定価格は適法なものでなければなりません。
そうでなければ、公的機関が法律違反を容認することになるからです。

問題は最低価格が決められていないことです。

『これより高い値段ではダメ』という制限はあっても、『これより安い値段ではダメ』という制限がないのですから安値競争になります。

そして毎年安値競争が繰り返され、「適法・適正価格からかけ離れた とんでもない価格」で落札・受注することが当たり前になっています。

総合評価方式で「企業評価が半分、価格評価が半分」と取り澄ましていても、最低価格が決められていなければ同じです。


発注側はこう言うでしょう。

『落札価格が適法・適正価格からかけ離れていても私たちには関係ありませんよ。
  予定価格が適法・適正価格でないのならいざ知らず、適法・適正な予定価格からいくら値引くかまで責任を持てませんよ。
  その値段でやりたいと言うからやらせるのですよ。損をするかどうかは知りませんよ。
  労働者には適法・適正な賃金を払うのは当然ですよ。仕様書にもちゃんとかいてあるでしょッ。「労働基準法を遵守すること」と。』


これは労働弱者の世界を知らない者の考え方。
仕事がなくて腹をすかせたことのない者の常識。

警備業者は損失を当然のように警備員に押しつけ、警備員は当たり前のようにそれを受け入れます。。
そうしなければ生きていけないからです。

「最低価格を定めない公共入札が、労基法違反の労働を産む土壌となっている」ことに知らないふりをしないでほしいものです。
(それを知っているから「労基法違反をしないこと」との一文を置いているのでしょう?)


警備員の労働条件はいつまでたっても“人並み以下”。

これを改善するためには、警備員一人一人が労基法違反に声を上げなければなりません。

雇用者(警備業者)の労基法違反を指摘して、安値競争をする警備業者の目を覚まさなければなりません。


資本主義では利益のあるところに必ず不利益があります。
そして、利益は強者が取り、不利益を弱者に押しつけます。
不利益を押しつけられた弱者は、より大きな不利益をさらなる弱者に押しつけて利益を吸い取ります。

「経済の好循環」など信じてはいないでしょうね?

あれは、強者が弱者に不利益を押しつけるための“まやかし”です。
マルチ商法と同じです。
「皆が裕福になる」ことなどあるわけがありません。


“お上”に頼っていたのでは、いつまでたっても警備員の生活はよくなりません。

まともに食べないで、まともに眠らないで、「警備員の資質の向上」などできるはずがありません。

愚痴を言っているだけでは何も解決しません。
声を上げなければ、いつまでたっても放っておかれます。

まずは、自分のやっている宿直日直業務について「断続的労働に従事する者に対する適用除外許可」を得ているのかどうか、
そして、「最低賃金の減額の特例許可」を得ているのかどうかを確かめることから始めましょう。


つづく


2014.12.20

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