RMX-SJ13 整備資料



 2017.01.13  正選手RMX②に載せたエンジン⑤の2000㎞走行後の排気バルブ点検





正選手RMX②の排気バルブの一年に一回の提起点検です。
現在のエンジンはエンジン⑤(⑤-2)。
稼動2000㎞程度の排気バルブです。
「スズキの排気バルブ/AETC3 の動き」は必読です。


点検した排気バルブの履歴
排気バルブの状態/清掃前
排気バルブの点検/バルブ,スペーサ,ボート内
排気バルブ/スズキAETC3の動きとバルブ組立時の注意

    
1.排気バルブの履歴と状態


a.履歴


正選手のRMX②は
・フレーム : 2011.8に部品取りSJ13(RMX①)を書付きフレームに載せてナンバー取得
・エンジン : ・2012.2.RMX①エンジン(右クランクベアリング破損)→2013.3.60000円の部品取りSJ13(RS型)エンジン換装、分離給油に
           ・2014.7.クランク左ベアリング破損、ベアリング・オイルシール全交換
           ・2016.4.排気バルブ破損。6500円エンジン/エンジン⑤のN型シリンダ+RMX①のN型排気バルブに交換→→→こちら

現在付いているエンジン⑤の排気バルブは2016.4交換ですが、その前にエンジン⑤の実走テストで2016.3~2016.5まで使っています。→→→こちら

だから、もう10カ月使っていることになります。
走行距離は1600㎞程度、多く見積もっても2000㎞未満。

排気バルブの定期点検は必須。
定期点検をさぼっていると、ボートへのタール付着でバルブがスムーズに動かなくなり、
バルブシャフト孔やスペーサ孔が変形し、バルブの降下量が規定量を超えシリンダーに突き出して少しずつ削られていきます。

少し早いと思ったけれど「思い立ったが吉日」です。

     
b.取り外した状態


まあ、2000㎞までだから問題はありません。

・写真左側(前から見て右側)のロアバルブに打ち傷ができています。
  この程度なら使用上問題はないでしょう。
タールはねっとりとした液状。バルブ上下はスムーズではない。
  ただし、各部は「ドロドロ、ガリガリ」ということはない。
・もっとも、前面カバーの内側は「カチカチのカーボン」がびっしり付着。


・バルブガイドのツバがポートに貼りついて、ピンを引っ張っただけでは外れなかった。
  ツバ部分を細いマイナスドライバーでこじって外す。
・ロアバルブ,ミドルバルブはねっとりタール付着で自由に動けないようだが、
  エンジンが動いて、熱い排気ガスが吹きつけられれば、
  タールが柔らかくなってバルブの動きはもっと軽くなるでしょう。
バルブスペーサがロアバルブシャフトからなかなか抜けないのには少々驚き。
  スペーサとシャフトの間にタールが入り込んでスペーサが固定されているのだろう。
・それなら、少しくらいスペーサのピン穴が磨耗・変形しても
  バルブ下降量が基準値を大きく外れることはないかも知れない。


ボート内の状態です。

・ボート下面の状態。
・入口付近に軽いカーボン付着あり。
・後述するように、ボート「2時位置~10時位置」は
  ロアバルブとミドルバルブが動く部分なので要チェック。
ボート上面の状態。(写真は上下逆転)
・入口付近にガリガリカーボン付着。
・しかし、ポート上面はバルブガイドが当たる部分で、
  バルブガイドは固定されて動かないから、バルブ作動上は問題ない。
・もちろん、カーボンを取ってきれいにしておきましょう。
・気になったのは右側(前から見て左側・上下逆転写真の右側)ポート上面の凹み。。

この凹みは、「バルブガイド溝にはまり、そこを動く」ミドルバルブの突起が、押しつけられてボート上面を削ったものでしょう。

・これは以前に検証した2.8万円エンジンのシリンダー(N型)ポート上面。
・写真右側ポートの2時位置にミドルバルブの摺動痕があるが、
  ボート上面に凹みはありません。
これは2016年1月14日に6500円エンジンの検証のときに撮った写真。(シリンダー下から)
・右側(前から見て左側)ポート上面にこの凹みがあります。
  当時はこの凹みにまったく気づいていなかったようです。


    
2.清掃後



a.清掃後の詳細点検


イ.バルブ

・灯油とスチールウールで付着したカーボンをせっせと磨き取り。
・2.8万円エンジン⑥のような赤サビ(※こちら)はありませんでした。
この状態なら問題はないでしょう。
  写真手前のバルブガイド上面の染みが気になるところでしょう。


このバルブガイドは右側(前から見て左側)のもの。

SJ13の排気バルブは右側(前から見て左側)の動きが悪いようです。
排気バルブスペーサも右側より左側が磨耗・変形します。
R・S型では右側のミドルバルブ自体が自由に動けるように改良されました。→→→こちら 
このシリンダーの右側ポートの凹みも右側バルブの不具合によるものでしょう。
SJ13の排気バルブは右側(前から見て左側)が要注意」。

なお、SJ13のエンデュローモデルPJ12では三枚バルブ構成を採用していますが、モトクロスモデルRJ16ではミドルバルブをなくしてバルブガイドとロアバルブだけになっています。
これは「高回転域を多用する」モトクロッサーでは「中回転域を犠牲にして良い」との配慮でしょうが、「ミドルバルブが故障しやすい」という課題があるかもしれません。


ロ.ピン穴の磨耗・変形チェック

  写真左側が左側(前から見て右側)のバルブ、
  写真右側が問題となる右側(『前から見て左側)のバルブ。

  (左側バルブ/写真左側)
・ロアバルブシャフトのピン穴 : ヨコ(バルブ方向)/4.2㎜、タテ/4.1㎜。※表面はヨコ/5.5㎜
・バルブスペーサのピン穴 : ヨコ/4.15㎜・4.25㎜,タテ/4.15㎜・4.20㎜
  (右側バルブ/写真右側)
・ロアバルブシャフトのピン穴 : ヨコ(バルブ方向)/4.2㎜,タテ/4.1㎜。※表面はヨコ/5.5㎜
・バルブスペーサるピン穴 : ヨコ/4.3㎜・4.4㎜,タテ/4.2㎜・4.3㎜

・スペーサは程度の良い左側(写真左側)のものと、
  エンジン⑥の程度の良いものを使うことにしました。

・エンジン⑥には新品のスペーサを二個使います。

 また、バルブスペーサの磨耗・変形は「前から見て左側バルブ、さらにその左側」が大きいので、
 「右側スペーサを左側に」、そして「スペーサの左面と右面を入れ換える」。
 さらに「スペーサの上下を逆にする」という配慮も必要でしょう。



b.ポート上面の凹みは問題を生じさせないだろう


  ボートも灯油+スチールウールできれいにします。
  特にミドルバルブとロアバルブが摺動する 2時~11時位置は念入りに。
  ボート上面のこの凹みは気になりますが、
  バルブが摺動する部分ではないのでこのまま使うことにしました。

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選任のための法律知識・








c.排気バルブの動き


SJ13の排気バルブは「AETC3」という「3ポジション式」が採用されています。

ここで、今一度「三枚の排気バルブの動き」を考えてみました。

写真のバルブは「左側(前から見て右側)」のバルブです。

・下がロアバルブ、上がミドルバルブ。
・ロアバルブには溝があり、ミドルバルブには突起があります。
・ミドルバルブの突起はロアバルブの溝にはまり、この中を動きます。。
ロアバルブとミドルバルブを重ねるとこうなります。
  
下が「ロアバルブ+ミドルバルブ」、上がバルブガイド。
・バルブガイドにも溝があり、ミドルバルブ上面にも突起があります。
  ミドルバルブの上面突起はバルブガイドの溝にはまり、この中を動きます。


・バルブガイドにはバネが内蔵されています。

・このバネの外側(写真右端)はバルブガイドに固定され、
  内側(写真左端)でミドルバルブの突起を押します。

・そのため通常の状態では、
  ミドルバルブはバルブガイドのミゾ先端(写真ではバルブガイドの溝左端)まで押しつけられます。



次に核心の「排気バルブの動き」です。

①通常状態(Lポジション)

上で説明した「ミドルバルブがバルブガイドのミゾ先端まで押しつけられた」状態。

・これが「Lポジション」、バルブ全閉状態です。
・アイドリングがこの状態になります。
・ミドルバルブはバルブガイドに内蔵されたバネでここまで下がります。
・ロアバルブは自重でここまで下がります。
この状態をシリンダーから見れば、バルブはこのようになります。
・この状態が「550rpmまで」続きます。



②Mポジション(5500rpm~6500rpm)とHポジション(6500rpm~)

・ロアバルブが引き上げられ、ミドルバルブと重なります。
・ミドルバルブはバルブガイド内蔵スプリングに押し下げられた位置にあり、
  ロアバルブから力を受けていません。
  言い換えれば、「ロアバルブの引き上げ力=ロアバルブ自身の引き上げ力」となります。
エンジン回転数が6500rpmから更にロアバルブが引き上げられて三枚のバルブが重なります。
  この状態になると、
  ロアバルブは自分自身を引き上げるだけでなくミドルバルブも引き上げなければなれません
・ミドルバルブはバルブガイド内蔵のバネによって押し下げられていますから、
  ロアバルブの引き上げ力はこのバネの押し下げ力にも打ち勝つ必要があります。
・このポジションでは
  ロアバルブの引き上げ力=ロアバルブ自身の引き上げ力+バネがミドルバルブを押す力
  となり、ロアバルブピン穴とスペーサピン穴にかかる力が最大となります。
 


ここで、注意しなければならないのは一番上のバルブであるバルブガイドの動き。

バルブガイドは全く動いていないのです。

だから、バルブガイドがボートに接する面に凹みがあっても問題は生じないと考えられるのです。


ミドルバルブの突起は「ネジ式」です。

  ロアバルブ側(下側)がヘキサ頭の雄ネジ、バルブガイド側(上側)がナットです。

  このネジ部分はエンジンオイルを含んだ排気ガスにさらされ、
  カーボン付着でネジが緩むことはないでしょう。

  しかし、このネジが緩んでミドルバルブにガタが生じると、
  ミドルバルブ損傷や排気バルブポート損傷の危険があります。

  排気バルブを組むときはこのネジの緩みをチェックする必要があります。
  今回は念のために「中程度のネジロック」を使いました。



d.これでガンガン走れます


 一年に一回は定期検診と胃カメラ。

 排気バルブも一年に一回の定期検診。

 排気バルブの新品部品が入手できない現在では、早めの検診が大切です。

 定期検診をして、排気バルブの現在の状態を知っていれば、
 どんな中古部品を入手すれば良いのかがわかります。

 また、定期検診でOKとなれば、思い切ってフルオープンにできます。

 これが、絶滅危惧種のSJ13を楽しむための知恵なのです。


 



つづく




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