RMX250-SJ13 整備資料
2016.01.17 エンジン⑤入手。その状態
「排気バルブなし。クラッチデスクなし。すべてにおいてジャンク扱い」のSJ13のエンジンを6500円で入手しました。
RMXの中古エンジンは「入手して分解してみなければ使えるかどうか分からない」。
安くても“当たり”があるし、高くても“外れ”がある。
さて、今回は?
・未明のYahooオークション
★ジェネレーターチェック(抵抗他)
・ピストンシリンダーの状態
・オイルポンプの状態
・左クランクケースの状態。
・トランスミッション・クランクの状態
・右クラッチカバーの状態
・クラッチハウジングの状態
★キックスタータアイドルギヤのサークリップ。N型とR・S型
・右クランクケースの状態
・総評
1.6500円のジャンクエンジン
a.未明のYahooオークション
YahooオークションでSJ13のジャンクエンジンを入手しました。
今回はそのエンジンの状態をチェックします。
こちらが入手したエンジンの「オークション頁の商品写真」です。
オークション説明文には ・部品取りのために入手したエンジン。 ・クラッチプレートドリブン欠品。 ・クラッチプレートドライブ使用不能。 ・クラッチレリーズラックベアリング欠品。 ・クラッチプレーシャー周辺使用不能。 ・排気バルブ欠品。 ・その他欠品あるかもしれません。すべてにおいてジャンク扱いです。 送料は2000円弱。 終了時刻は朝の4:55。 2名が入札。3:16で現在価格 6250円。 |
SJ13中古エンジンではシリンダーやピストン(腰上)の健全性に関心を引かれますが、クランクケース(腰下)の健全性も重要です。
SJ13のエンジントラブルで多いのは「ピストン焼き付き」ではなく「クランクベアリング損傷」。
「排気バルブ折れ込みによるピストン・シリンダー損傷」は定期的なチェックをしていないと起こりますが、
「エンジン焼きつき」はレース使用でないかぎりあまり起こりません。。
特に、オイルポンプを使った分離給油での通常使用ではエンジンが焼きつくことはありません。
それに対し、クランクベアリング損傷はブレーキパッドが減るように通常トラブルとして「日常的に」起こります。
現在所有している三台のSJ13は三台ともクランクベアリング損傷を経験しています。
クランクベアリング損傷で厄介なのは「それに気づかない」こと。
右ベアリング損傷ではギヤオイルをシリンダーに吸い込みますから「ギヤオイル激減,白煙過多,サイレンサーより生オイル吹き出し」ですぐに分かります。
しかし、左ベアリング損傷ではギヤオイル吸い込みがないので気づきません。
SJ13エンジンはベアリング玉が何個かなくなっても元気に回ります。
ベアリング損傷に気づかないで走っていると、ベアリング玉のホルダーがちぎれてクランクケースのベアリング取り付け穴を削ってしまいます。
ベアリング取り付け穴が削られて拡がってしまうと新しいベアンリングを圧入することができません。
ベアリング交換ができなければそのエンジンを再生することはできません。
では「その中古エンジンのクランクケースガ健全かどうか」をどう判断したらいいのでしょう。
「始動確認済み」・「問題なく元気に走れていました」ばあまり当てになりません。
そのような触れ込みの中古エンジンも新しいベアリングを入れたらスコスコでした。→→→こちら
また、アクセル全開で走り回っていたRMX②は左クランクベアリングが何個かなくなっていました。→→→こちら
つまり、判断基準はないのです。
それは「丁半」と同じで確率50%、開けてみなければ分からないのです。
だから、狙うのは安いジャンクエンジン。
「始動確認済み」の中古エンジンに3万~4万円出して外れたらイヤですからね。
現在、SJ13の予備は完全スペアーが二台。
今欲しいのは、正選手RMX②に換装するPJ12のエンジン。
『SJ13は間に合っているからなあ…。』
しかし、上のオークション写真のエンジンが『ボクを再生させてよ…。もう一度ギャンギャン回りたいよ…。』。
朝早く目覚めたこともあって、姑息な「終了5秒前」に6500円で入札。
オークション終了時刻自動延長の5分間が無事に過ぎて、そのまま落札。
送料1912円で合計8412円。
※以下では通常の分解手順通りに分解していません。また説明の順番と今回の分解手順は一致していません。
※通常の分解手順は、
「シリンダ・ピストン取り外し→右クラッチカバー取り外し→クラッチ,各ギヤ取り外し→右クランクケース取り外し
→トランスミッション取り外し→ジェネレーター取り外し→左クランクケース取り外し」です。→→→分割手順
b.第一印象
Yahooオークションの中古SJ13エンジンで最初にチェックするのが「分離給油使用が混合使用か」。
具体的にはオイルポンプ・オイルラインが付いていてオイルポンプが使われていたかどうか。
分離給油ならエンジンに負担がかかっていません。
まずは合格です。
チェーンガードとドライブスプロケットのサークリップが残してあるのには驚き。
キャブレター取り付けバンドも付属していました。
出品商品への「自信と思いやり」が感じられます。
★★10
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まずは、プレスとスクワット。
ホームジムならこれで孫の代まで。
三極カブラー(三相出力・ステータコイル側)の端子間抵抗測定。 1.1Ω,1.2Ω,1.4Ω。 基準値は 0.56Ω~0.68Ωだけど、三相間に大きな違いがなければOK。 なお、0Ωはショート、∞は断線。どちらも使用不能。 二極カプラーはピックアップ側、端子間の基準抵抗値は80~120Ω。 測定値は100Ωで問題なし。 ジェネレーター問題なし。 |
ローターは新品部品のようにキレイです。
ただし、ローターのナットがメチャクチャ固いです。
ネジロックたっぷり。多分「分解歴なし」でしょう。
「分解歴なし→分解する必要がなかった→いままでトラブルを起こしたことがない→健全」と推測します。
コイルも光り輝いています。
コイルハウジング内はきれいそのもの。 ベアリング取り付け穴が削れたときのアルミ粉はどこにもありません。→→→比較参照 これが健全な左クランクケースのジェネレーター取り付け部です。 左クランクケースは期待してよさそう。 |
シリンダーヘッドを外すときに、ナットが外れずにスタッドボルトが抜けたのが三本。 これは、ナット固着が原因。 スタッドボルトは「外れる」のは問題なし。「ナット締め付けで抜けてくる」のが問題。 このスタッドボルトは一式で2700円と値が張ります。 根元の部分に痛みがないから、先端部のネジ山を磨いてこのまま使います。 ガスケットは手持ちの新品に交換。 |
b.シリンダーヘッド
まったく問題ありません。 というより、シリンダーヘッドに問題がある場合はほとんどありません。 YahooオークションでRMXのシリンダーヘッドが 「スタート2300円・即決 2300円」でいつまでたっても落札されないのが納得されます。 送料がかかるのだから、他部品と同時落札・同梱でない限り100円でも入札しないでしょうネ。 |
c.ピストン
こんなキレイなピストン見たことない!
タテ傷皆無です。
製造過程でできる横溝しっかりあります。
しかし、残念ながらこのピストンは使えません。
ピストン頂部に欠けがあります。 取り付け不良の排気バルブがシリンダー内に突き出したのでしょう。 |
これでは圧縮が逃げてしまいます。
手持ちの新品ピストンを使います。
ピストンリングはも新しいものにします。
ピストンピン、ベアリングまったく問題ありません。
d.シリンダー
爪が引っかかるようなタテ傷がまったくありません。
これにも驚き。
ホーニング加工がしてあるようです。
ピストン表面の状態,ピストンの欠けを含めて推測すると、シリンダー加工・補修に結構お金をかけたようです。
シリンダーに手が加えてあるとしたら、その良し悪しは実際に回してみないと分かりません。
左のシリンダーはエンジン③から取り外したものです。 スタッドボルト穴をリコイルしたあと冷却水が漏れるようになりました。→→→こちら 「スタッドボルト取り付けにスリーボンド1215 を使ったら冷却水漏れがとうなるのか」を まだチェックしていません。 エンジン③のシリンダーから排気バルブを取り外して今回のエンジンに使うか、 今回のエンジンにエンジン③のシリンダーを使って、 上の「スリーボンド1215の効果」をチェックするかを決めなければなりません。 |
4.クランクケース
●●
外観を見る限り問題ありません。
ポンプ本体取り付けネジが純正のプラスビス、取り外しにショックドライバーが必要だったので、一度も取り外したことはないと推測されます。
オイルタンクからの太いパイプとスプリングがはストックしてあるのを使います。
ついでだから、シリンダーのオイル入口をパーツクリーナーで吹き通し。
もちろん、「詰まりなし」。
f.左クランクケース
「クランクケースを外すときにクランクベアリングがクランクケースに残った」ので、ベアリング取り付け穴健全度の第一次審査合格。
クランクベアリングに損傷なし。回転のひっかかりもありません。
純正の「KOYO-63/28」が使ってあります。
刻印側も内側に。
ベアリングを外してみると、やはりこの状態。 ベアリング取り付け穴に削れ・損傷は一切ありません。→→→こちらと比較 左クランクケースは 『きわめて健康!』 これが分かる方は年金世代。 ※鶴田浩二の同期の桜その1 その2 ※ついでに青春の蒙古放浪歌 と 今の政治にピッタリな昭和維新の歌(青年日本の歌) ※昭和維新の歌は右翼街宣車がガンガン流しているので節回しはオリジナル通りですが、 蒙古放浪歌は各学校で唄い継がれているので節回しがアレンジされています。 こちらはちょっと感じが変わります。 正調を練習したければこちらでどうぞ。 もちろん、クランクベアリングとオイルシールは交換します。 「RMXを入手したらまずクランクベアリング交換」です。 |
ドライブシャフト左ベアリングも汚れていますが回転の引っかかりはありません。 こちらのベアリングは規格外。純正で一個3000円。 損傷するベアリングではないのでこのまま使います。 オイルシールとOリング二本はもちろん交換。 |
g.トランスミッション
問題ありません。
というより、中古エンジンでここに問題のあるものはないでしょう。
h.クランク
問題ありません。 というより問題があっても、素人ではクランクシャフトが外せないので対処できません。 コンロッドのガタはこの程度でしょう。 |
オイルポンプ,ウォーターポンプのナイロンギヤに少し変色あり。 まったく問題ないレベルです。→→→きれいだとこの程度(RMX④) |
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国産ではないけれど「いい味」。
※トライクの法的取り扱い
k.はずしにくい「N型のサークリップ」
キックスタータアイドルギヤのスナップリングにはN型純正のサークリップ( 09380-17001 )が使ってあります。
通常は取付が簡単なR・S型のサークリップを使いますから、N型のサークリップが使ってあれば「分解歴なし」と推測できます。
ただし、このサークリップは穴がないので、通常のサークリッププライヤーでは滑って外せません。
滑り止めのギザギサがついたプライヤーで外しますが、やはり手こずります。
取り外しが楽で安い「穴のあるR・S型のサークリップ( 08331-31176 )」に交換しておきましょう。
正しい方向(凹面が外側)です。 もちろんオイルシールとベアリングは交換します。 しかし、このシャフトに付いているプライマリドライブギヤを外すのに一苦労。 取り付けボルトがメチャクチャ固い。 ネジロック塗布指定ですが、これほどまでになるとは…。 これはやはりメーカーの仕業。 だからここでも「分解歴なし」の好評価。 |
m.右クランクケース
なぜか、各所にサビがあります。
特にキックスタータギヤにサビが多く付いています。
クランクオイルシールの向きは間違っていなかったから、シリンダーの生ガス吹き戻しによるサビでばありません。
ギヤオイルを抜いた後の時間経過によるものでしょうか。
もちろん、使用に問題はありません。
クランク右ベアリングは純正のNACHI 6305
ベアリングの刻印側は外側。
クランクケースを外さなくてもオイルシールを取り外せばベアリング型番が判るからでしょう。
素人では刻印側を内側にするでしょうからこれはメーカーの仕業。
やはり「分解歴なし」でしょう。
ベアリング取り付け穴は健全です。
5.総評
このジャンクエンジンは「クランクケースガ使えればアタリ」の域を超えて「再生可能」のものでした。
6500円ですから「大当たり」です。
もちろん、クランクベアリング,オイルシール,ガスケット,Oリング類は新しくしますから、部品代は1万円くらいかかります。
また、エンジンを再生させても調子をみるために車体に積んで走ってみなければなりません。
組立に一日、換装に一日くらいかかります。
三台のRMXのどれに搭載して動作チェックするかは未定です。
このまま、ストックするかもしれません。
PJ12 エンジンならすぐに正選手のRMX②に換装するのですが…。
つづく
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