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店長のための保安のイ・ロ・ハ

その6

-私服保安導入の前に知っておいてほしいこと-



『さあ、私服保安を導入しよう!』

そのまえに、次のことを知っておいてください。


1.店内カゴは持ちません


『私服保安って,普通の買い物客に紛れて万引きを捕まえるのでしょう?だから店内カゴ…。』

これが一般常識です。

しかし、それは万引き犯人を追尾する場合のこと。

それ以外のときは店内カゴなんか持ちません。


a.普通の買い物客に私服保安は見えない


店の従業員、マネキンさん、出入りの業者さんには私服保安が一目で分かります。

私服保安が怖そうなオッサンであろうが、人の良いオバサンであろうが同じです。

どんな服装をしていても、店内カゴを持っていても、カートに食料品を満載していてもすぐに分かります。

それは私服保安が「自分たちと同じように人を見ている」からです。


『あんなにすぐに分かるのだから、普通のお客さんに威圧感を与えるのでは…。』

ご心配なく、普通のお客さんに私服保安は見えていません。

それは普通のお客さんが「人ではなく商品を見ている」からです。


店の関係者には異様で威圧感を与える私服保安ですが、お客さんには「普通の買い物客」にしか見えていません。

だから、動くのにじゃまになる店内カゴを始終持っている必要はないのです。


b.万引き犯人もすぐに見つける


店関係者はすぐに私服保安を見つけますが、これは万引き犯人も同じです。

それは彼らも「人を見ている」からです。


万引き犯人が私服保安に気がつくと、「盗らず」に出て行きます。

そのまま何もせずに出て行くか、盗ろうとした商品を店内に放置して出て行きます。

万引き犯人を捕まえるためには、「盗らせて」、「店から出させ」なければなりません。

そのためにはこちらが私服保安であることに気づかれてはなりません。

こんなときに店内カゴを持って「買い物客のふり」をするのです。


c.万引き犯人を先に見つける


『万引き犯人がすぐに私服保安を見つけるのなら、私服保安はいつも店内カゴを持っていなければならないンじゃない?
  そうでないと、万引き犯人が店に入ってきても、すぐに私服保安を見つけて「盗らない」で出て行ってしまうじゃない…。』

私服保安の初心者ならそう考えるでしょう。

そして、ラップやカップ麺を入れた店内カゴに腕を通して、腕組みしながら店内を歩き回っているでしょうネ。


しかし、そんな必要はありません。

私服保安の方が先に万引き犯人を見つけるからです。


ここで「私服保安はどのようにして万引き犯人を見つけるのか」を少し説明しておきましょう。


①私服保安は遠くを見ている

私服保安が見ているのは20m以上先です。

食品売場でいえば「サッカー台あたりから通路」,「パン出口から農産入口」、逆に「売場奥からパン・弁当・デリカ入口」。

私服保安は遠くから人の集団を見ています。


②万引き犯人が浮き上がってくる。

「盗ろう」として売場に入ってくる万引き犯人は普通の買い物客と明らかに違います。

商品選びに迷いがありません。「盗るもの」を決めているからです。
値段を気にしません。「お金を支払わない」からです。
「どちらが良いか」比較しません。比較するくらいなら二つとも選びます。どうせタダなのですから。

当然、周囲を気にしています。
表情もこわばっています。

すべての動作が素早く、ゆっくりしていません。
早く盗って早く逃げたいのです。

このように、万引き犯人が遠くに見える集団からう浮き上がってきます。

この人物に狙いをつけて追尾するのです。(拾う)


③万引き犯人にはまだ気づかれていない。

万引き犯人はキョロキョロと辺りを気にしますが、見ている範囲はせいぜい10mまで。

私服保安は20m以上先から見ていますから、万引き犯人の視界には入っていません。

さらに、商品や商品棚の後から見ているので万引き犯人にはまったく見えないのです。

だから、万引き犯人を見つけるまでは店内カゴを持つ必要はありません。


万引き犯人を見つけてからは、近くに寄らなければなりません。
「何を棚取りしたか」、「それをどこに入れたか」、「入れた商品を捨てていないか」、「レジ清算しなかったか」を見なければならないからです。

万引き犯人の近くに寄れば「私服保安であること」に気づかれてしまいます。

この段階になって、初めて店内カゴを持って買い物客のふりをすることになります。


私服保安が手ぶらでいるときは「万引き犯人らしき者をまだ見つけていないとき」。
私服保安が店内カゴを持ったり、商品を持っていたりしているときは「万引き犯人を追尾しているとき」なのです。


④私服保安は動き回らない

このように、私服保安は万引きを見つけるために店内を動き回ることはありません。

動くのは「万引きと思われる者」を見つけて追尾するときです。

それまでは「お気に入りの場所」でじっとしています。


動き回れば「近くの狭い範囲の人」しか見ることができないだけでなく、万引き犯人から先に見つけられてしまいます。

私服保安が売場前のベンチに座っていても、さぼっているわけではないのです。


2.「最初の一人」を捕まえるまでに時間かかる


『腕利きの私服保安に来てもらったゾ!万引き犯人がドンドン捕まるゾ!』

残念ながらそうではありません。

どんなに腕利きの私服保安でも最初の一人を捕まえるまでに一カ月以上かかります。
10回以上の入店が必要です。

それは、私服保安にとって店内状況がまったく分からないからです。

後述するような「万引きの少ない店」ではこれよりずっと長くかかります。


a.万引きは多種多様


万引き犯人は多種多様。

・子育て中の若いママ。
・パート帰りに夕食の材料を盗りにくる図々しいオバサン。
・道徳観念のなくなったオバアサン。
・毎日の酒とつまみを拝借しにくるオジサンやオジイサン。
・悪人気取りの大学生や高校生。
・「盗ることを知った」中学生。
・「腹が減った」生活困窮者。
・大胆な〇国人。


その手口も多種多様。

・米や洗剤の通路でバッグに入れる。
・カートをサッカー台に横付けして段ボール箱に詰める。
・その場でポケットやセカンドバッグにねじ込む。
・カートごと出て行く。
・壁を作る。
・袖に入れる。
・手に持ったまま出て行く。


そして、現れる時間帯も違います。

・朝の家事を終わって、お姉ちゃんを幼稚園に迎えに行く前までの13時~15時。
・パートが終わって夕食の準備にかかる15時半~17時。
・パート前の9時~10時のツワモノ。
・捕まったあとで「歯医者の予約時間」を気にするオバアサン。
・フルタイムなら17時半~19時。
・中高生は学校帰りで土日は来ない。
・大胆なカゴ抜けは店内が混雑しているときに、古典的なバッグ入れは店内がすいているときに。
・しかし、昼飯前の弁当と夕食前の酒とつまみは優先。
・そして、転売目的のビール,米は神出鬼没。


私服保安が新しい店に入った場合、まず「その店にどのような万引きが居るか」を知らなければなりません。

万引きのタイプが分からなければ、人物(性別,年齢,職業)・手口・時間帯を推測できないからです。

「どんな魚がいるかが分からなければ、ポイントと針が選べない」のです。


b.とりあえず片っ端から追尾する  


「その店にどのような万引きが居るか」を知るために私服保安がやることは「取り敢えず片っ端から追尾する」ことです。

万引きは一目で分かりますが、そうでなくても「少しでも怪しいことがあれば」確認のために追尾します。

・特売品を選ばなかった。
・高額商品を選んだ。値段を見なかった。
・カートに載せたバッグの口が開いている。
・黒いバッグを左肩に掛けている。
・カートに載せたカゴの中に手を入れている。カゴの中を整理している。
・二人で商品を交換し合っている。
・人通りの少ない通路(米・洗剤・トイレットペーバー)に入っていく。
・身なりがきたない。だらしない。
・独り言を言った。
・表情がこわばっている。
・目が合った。などなど。

もちろん、すべて問題なくレジ清算していきます。

万引きが売場に入ってから出て行くまでの時間は5分。
5分以上追尾しても出て行かないのなら、万引きではありません。

しかし、とにかく最後まで追尾します。

そして、その人を「少し怪しく見えるが安全な客である」リストに載せます。
次回からその人を追尾する必要はありません。

人とその行動にはその地域特有のものがあります。
安全客リストを作りながら、その地域やその店の「不審に見えるが問題のない人と行動」を消去していけば、「本当に不審な人と行動」が分かります。


また「安全客リスト」が増えれば増えるだけ、売場を見ることに余裕ができます。
余裕ができればできるほど「5分で出て行く」万引き犯人を見つける可能性も高くなります。

映画館で目が慣れてくると周囲が見えてきます。

これと同じで、新しい店では「目が慣れるまで」に時間がかかるのです。

私服保安にとって「最初の一人を捕まえるまで」がとてもしんどいのです。


ところで、私服保安につけ回された安全客は不快な思いをしていないでしょうか?

ご心配なく、彼らは普通の買い物客ですから私服保安が見えていません。

追尾されていたことなどまったく気づいてはいないのです。


c.何度も盗らせて捕まえる--私服保安の鉄則


プロは誤認しません。

誤認は店に迷惑がかかるだけでなく、相手の人権を傷つけてしまいます。

私服保安はお金をもらっているプロです。

ブロは「依頼主や社会」に害を与えてはなりません。

私服保安を名乗る以上、絶対に誤認してはならないのです。


私服保安には「護らなければならない検挙要件」があります。

①棚取り現認(着手現認)
②入れる現認(現認)
③中断なし(注視)
④単品禁止

これは「誤認しないための要件」です。→→→こちらこちら


私服保安はこの検挙要件が完全に揃わない限り万引き犯人を捕まえません。

そのために「何度も盗らせる」ことがあります。

私服保安の鉄砲には弾が一発しか入っていません。

この一発で万引き犯人を完全に仕留めなければならないのです。

だから、一発を撃つまでにはそれなりの時間がかかります。

もちろん、日報に「今回も盗らせました」などとは書きませんが…。


3.来なければ捕まえられない


スーパーマーケットに「万引きが居ない」ということは絶対にありません。

特に食品売場なら必ず居ます。

商品を入れた放置カゴは「盗られた痕跡」です。


しかし、私服保安の入店するのは月に何日か、さらに営業時間内の8時間だけです。

万引きが多い店ならじきに万引き犯人と出会えますが、少ない店なら出会うまでにかなりの時間がかかります。

私服保安は目を凝らし最大限の努力をして万引き犯人を捜しています。


「私服保安が万引きを捕まえられない」のは私服保安の技術が劣っているからではありません。
私服保安が入店したときに「万引きが来なかった」のです。

別の言い方をすれば、「その入店日数では万引きを見つけられないくらい万引きが少ない」のです。


私服保安が20回入店して万引き検挙がないのなら、私服保安を導入しても意味がありません。

万引きが極端に少なく、私服保安が万引き犯人と出会えないから捕まえることができないからです。

また、その程度の万引きなら被害は私服保安にかかる経費より少ないことと思われます。


4.捕まえなければ抑止効果はない


『私服保安が万引きを捕まえなくても、私服保安が売場にいるだけで抑止効果があるでしょう?』

これは間違いです。

制服警備員は制服を見せて抑止しますが、私服保安は万引きを捕まえることによって抑止します。→→→こちら

万引きを捕まえることにより、「あの店には私服保安がいる」という噂が拡がり万引きが来なくなります。

だから、私服保安が実際に万引きを捕まえなければ、噂が立たず、万引き抑止効果はないのです。

もっとも、店内カゴを始終腕に通して、「盗っているヤツはいないかぁ~、万引きはいないかぁ~!」と歩き回っているトロい私服保安なら、
万引き犯人に先に見つけられ、万引き犯人は店から出て行きますから、それなりの抑止効果はあります。


5私服保安の業務報告書


私服保安の仕事は万引き犯人に出会えれば楽です。

捕まえた後の処理に1時間。

警察官逮捕となれば警察署で3時間。

店長からは信頼のまなざし。従業員からは拍手喝采。

私服保安は自信に満ちて、『さあ、もう一件!』


しかし、万引き犯人に出会えなかった日は意気消沈。

「異常なし」の日報を書かなければならないからです。


a私服保安の日報内容は三種類


私服保安の報告書に書く事項は本来二種類。

「万引き処理」と「異常なし」の二つだけ。

「最初の一人を捕まえるまで」と「万引きに出会わないとき」は「異常なし」の日報が続きます。

この報告書を見た店長さんは心配になります。

「しっかりと仕事をやってくれているのだろうか?腕の悪い私服保安ではないだろうか?」


そこで、店長さんを安心させるために日報にもう一種類を付け加えます。

不審者(万引き犯人らしき者)についての情報です。

「17時30分 食品売場。
  30歳代女性。ショートヘアー、チェックの事務服。黒いトートーバッグ左肩掛け。
  カートを米通路に持ち込み、トートーバッグにカート上の商品を素早く入れて、正面出入口より退店。
  以後、この女性に注意する。」

検挙要件が揃わなくて(この例では棚取り現認なし)捕まえられなかった万引き犯人に対する情報です。

これを書けば「自分自身の至らなさ」を露呈することになりますが、少なくとも「仕事をやってくれているのだな」と店長さんを安心させることができます。

もちろん、「万引き処理」と「異常なし」の均整が取れている場合は、自分の胸の内にしまっておき日報には書きません。


b.レジ清算した場合は不審者ではない


では、次のような日報はどうでしょうか?

「17時30分 食品売場。
  30歳代女性。ショートヘアー、チェックの事務服。黒いトートーバッグ左肩掛け。
  カートを米通路に持ち込み周囲を気にする。
  追尾している当方に気づいたのか、そのままレジ清算して正面出入口より退店。
  以後、この女性に注意する。」


この女性は万引きをしようとしていたのではありません。

万引き犯人が「見つかった」と思ったときは、商品をその場に放置します。

決してレジ清算をしません。

「タダで手に入れること」を覚えた万引き犯人が代金を支払うはずがないのです。

この女性は不審者でも何でもないのです。


私は「このような日報を絶対に書いてはいけない」と指導していますが、このような日報を書かなければならない気持ちは充分に分かります。

「勤務終了まであと〇〇時間、あと〇〇分。大丈夫、5分あれば万引きは捕まえられる。」

こうやって目を凝らしていても、「来ないときは来ない」のです。

あとは店長さんの冷たいまなざしが待っているだけなのです。


私服保安の世界では『万引きは向こうからやって来る』とか『そのうち湧いてくる』と言われています。

万引きが来なければ万引きを捕まえることはできません。

店長さんにはこのことをまず理解していただきたいのです。


そして、「異常なし」の日報が続き、「仕事をしっかりとやってくれているのかな?腕が悪いのではないのかな?」と不安を感じたら、私服保安に店内状況を直接聞いてください。

私服保安は「日報に書かない・書けないこと」も話してくれるはずです。

店内状況と私服保安の働きぶりが分かれば、店長はその私服保安を信頼することができます。

店長の信頼があれば私服保安は「万引きの来ないとき」を乗り切れるのです。


6.勤務時間・入店曜日


私服保安の勤務時間帯は通常11時~20時。

これが一番多くの種類の万引きをカバーできる時間帯なのです。

「昼前」,「幼稚園のお迎え前」,「パート帰り」,「学校帰り」,「夕食前」,「フルタイム勤務帰り」をカバーできるからです。

あとはその店の万引きの種類・特性に応じて前後にずらせていきます。


入店曜日について、だいたい「土日・祭日や特売日」を希望されます。
しかし、これらの日にはかえって万引きが少ないのです。

子育て中の若いママは休日は家族で過ごさなければなりません。、
パート勤めのオバサン,中高生,勤め帰りのオネェサンは休日にわざわざ盗りに来ません。

食い詰めた老人は土日・祭日も腹が減り、酒が飲みたくなりますが、それは平日でも同じことです。

そして、常習万引きはなぜか「特売日・安売り日」にやって来ません。

「いつもより安くなったもの」は盗りたくないのでしょう。

もちろん、店内が混雑する土日・祭日や特売日にも万引きはやって来ます。
「カゴ抜け」は混雑している方がやりやすくなり、土日・祭日しか時間のとれない万引きもいるでしょうから。

だから、入店曜日は「平日がメインで土日・祭日・特売日はサブ」にした方が効果的になります。


なお、曜日を固定してはいけません。曜日を固定すると出会える万引きが偏ってしまいます。

以上、結論は「入店曜日はランダム」ということになります。


万引き対策と私服保安にお困りのことがあれば、お気軽に SPnetにご相談ください



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