時計・自動巻き 資料
・2012.11.16.タフソーラー・FROG MAN・GW 200 の二次電池交換
「ソーラー発電時計」は「電池交換不要」ではありません。
太陽電池で発電した電気は蓄電池(二次電池)に貯められます。
この蓄電池の寿命がきたら蓄電池を交換しなければなりません。携帯電話の電池と同じです。
蓄電池の寿命はだいたい10年。ネットで一個60円くらいのリチウム電池 CR 2016 も10年持ちます。
今回はカシオ・フロッグマンの電池交換をします。
注意しなければならないのは「電池の取り外し方」。
簡単なことですが、知らないと無理やり外して部品を壊してしまいます。
電池交換にムーブを取り外す必要はありませんが、
しかし、ムーブが外れたときには「ムーブの取り付け方」を知っていなければなりません。
これも「知っていないと苦労する」事項です。
・CASIO・FROGMAN・GW-200 と交換電池
★CASIO・FROGMAN・GW-200 の 二次電池取外し方法
★ムーブメントを入れる場合の注意点
・二次電池交換手順
・ソーラー発電は誰のため?
1.8年間の休養で二次電池要交換
今回電池交換をするのはこちらのフロッグマン。
・CASIO の定番、FROG MAN です。 ・型番は GW-200 :2008.11 生産中止のタフソーラーモデルです。 ※ メーカーカタログ ・8年くらい前に、その顔に惹かれて衝動入手。 ・しかし、デジタル表示が性に合わない。なにより、老眼で数字が見えにくい。 ・装着外出は 2~3度。 そのまま他のソーラーやソーラー・電波と一緒に保管ケースへ。 ・保管ケースでは定期的に日光浴。充電インジケーターは今でもフル充電。 ・今回の時計整理・リストラ 対象になり、各機能をチェック。 各機能正常作動、しかしパックライトが点灯しない。 ・パックライトのボタンを押すと、充電表示がゼロになる。 整理の可否は別にして、とにかく二次電池交換の必要あり。 |
2.電池交換での注意点
電池交換自体は通常のソーラー二次電池交換と同じです。
裏蓋を開けて、電池押さえを外し、新しい電池を入れて、オールリセット。
電波時計ではないから、年月日と時刻合わせは必要ですが、何ら問題になるところはありません。
しかし、「ちょっと苦労する点」・「知っていないと戸惑う点」があります。
それは、「電池の外し方」と「ムーブメントのセット方法」です。
今回は、それらを知らないために 「 ちょっと×2」 の苦労をしました。
まず、それらを説明してから、「ありきたりの二次電池交換手順」をまとめておきます。
なお、二次電池名称は ML 2016 ( Man O2-Li・3V ) 、 入手先は スイスパビリオン、値段は899円です。※Yahooショッピング → ML2016 ①,ML2016 ②
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①.ここに引っかかっているのは分かるけど‥ | ②.「 無理やり 」 は厳禁 | ③.外れたときの写真で分かります |
・電池押さえは、白い樹脂フックに引っかかっています。 | ・「どのように引っかかっているのか」が 分からないと外せません。 ・無理やり外そうとすると部品を壊してしまいます。 ・いろいろ試したので、フック回りは傷だらけになりました。 |
・外れるとこうなります。 ・これで「外し方」が分かる人もいるでしょう。 |
④.樹脂フックは 4 の形 | ⑤.4 の先を越えればよい | ⑥.これで簡単に外れます |
・白い樹脂フックは横から見ると4の形をしています。 ・この4の下側に電池押さえの先(青色平行線)が 引っかかります。 ・電池押さえは横から見ると「へ」の形に上が凸に なっています。 ・樹脂フックに引っかかるときは凸部が伸ばされて前へ出、 引っかかると凸部が元に戻って、 電池押さえをロックします。 |
・電池押さえの先の部分を前に押し出せば、 フックから外れます。 ・①.フックと電池押さえ先端の隙間に目打ちを差し込む。 ・②.差し込んだ目打ちを前にこじる。 ・これで簡単に外れます。 ・電池押さえの凸部をへこませる必要はありません。 |
・上から見るとこうなります。 ・①.電池押さえ先端と白い樹脂フックの間に 目打ちを差し込む。 ・②.差し込んだ目打ちを前(先)にこじる。 ・何事も「分かってしまえば簡単」なのです。 |
b. ムーブメントをケースに入れる場合の注意点
電池交換をするのにムーブメントをケースから取り外す必要はありません。
しかし、「電池の取外し方法」が分からなくていろいろ試していると、ムーブメントが外れることがあります。
また、ムーブメントとケースの間に入っているスポンジを取り替えるときにはムーブメントを外さなければなりません。
「ムーブメントのスイッチプレートとボタンの関係」を知っていないと、ムーブメントをケースに入れる場合にスイッチプレートを曲げてしまう危険があります。
①.Gショックの秘密は スポンジ ? | ②.ボタンの先端がスイッチプレートを押す | ③.スイッチの仕組みは簡単 |
・ケースとムーブメントの間に少し堅いスポンジが入ります。 ・このスポンジが「Gショック」なのでしょうか? 少し期待外れでした。 ・ムーブはこのスポンジだけでケースに留められています。 |
・ケースには四つのボタン、 ムーブには四つのスイッチがあります。 ・ボタンの先端がスイッチプレートを押すことによって スイッチON。 ・ポタンを離すと、 スイッチプレートが戻ってスイッチOFF。 |
・ボタンを押すと、 ① が ② に接触して、スイッチON。 ・ボタンを離すと、 ① が ② から離れて、スイッチOFF。 ・ボタンにバネはありません。 |
④.先にスポンジをケースにセットする | ⑤.ムーブの片側をケースに入れる | ⑥.四つのボタンのうち二つがセットされる |
・スポンジはボタンの下を通ります。 ・ムーブにスポンジをセットしたまま ケースに入れることはできません。 ・スポンジを入れるときに、 ボタン先端を精一杯短くしておくことが必要です。 |
・まず、ムーブの片側をケースに入れます。 写真では手前から入れています。 ・片側のボタン先端が ムーブのスイッチプレートに当たることを確認。 |
・二つのボタン先端がスイッチプレートに当たっています。 |
⑦.反対側のボタンはスイッチプレートの下にある | ⑧.スイッチプレートをボタンの先端に乗せる | ⑨.片側の二つのボタンもセットされる |
・反対側のボタンの先端は スイッチプレートに当たっていません。 ・このまま、ムーブを押し込んではいけません。 ・ボタンの先端がスイッチプレートを曲げてしまいます。 |
・スイッチ部分を目打ちで矢印の方向に動かし、 下に押し込みます。 ・そして、ボタン先端をスイッチプレートに乗せます。 |
・片側の二つのボタンも スイッチプレートを押せるようになりました。 ・最後にムーブメントをしっかりとケースに押し込みます。 |
でき上がりはこうなります。
・重ねて言いますが、電池交換にムーブメントを取り外す必要はありません。 ・電池取外し方法を知っていれば、ムーブメントはケースから出てきません。 ・しかし、「失敗や回り道は人生の浪費になるだけ」とは言えません。 その失敗や回り道を他に伝えれば、他の者が失敗や回り道をしなくて済みます。 さらに、新たな発見をすることもあります。 ・今回は「Gショックの秘密」 を知ってしまいました。 |
①.余計なものは取外し | ②.裏蓋を開けるときは覚悟して | ③.裏蓋の下は押さえ金とゴムプレート |
・ベゼルやベルトは取り外す必要はありません。 ・裏蓋を開けられれば電池交換できます。 ・しかし余計なものはない方が作業が楽です。 ・ベゼルの星型ビスはダミー。取り外す必要はありません。 ・ベゼルを本体に留めているビスは長さが2種類。 |
・裏蓋は「インパクトレンチで締めてあるのか?」 と思うくらい堅いです。 ・しっかりとしたホルダーに固定して、 心して開けましょう。 ・気を抜くと、 オープナーを滑らせて深い傷を付けてしまいます。 ・こんな傷があると、転売価格が半減します。 |
・ムーブメントには ゴムプレートと押さえ金が乗っています。 ・文字通り「乗っかっている」だけです。 |
④.押さえ金とゴムプレートは二つ一緒に取り外す | ⑤.電池取外しは「差し込んで、前へこじる」 | ⑥.Oリングは溝から取り出すと、二度と納まらない |
・押さえ金とゴムプレートを別々にすると、 組む時に迷います。 ・作業はできるだけ少ない方が楽です。 ・二つ一緒に外して、二つ一緒に取り付けます。 |
・電池取外しに戸惑わなければ、電池交換は5分で終了。 ・古い電池を取り出し新しい電池を入れ、 電池押さえを押してパチン。 ・古い電池は「2.066V」、新しい電池は「2.820V」でした。 ・V数値だけではダメなようです。 |
・溝の中に納まっているOリングは 裏蓋の圧力にさらされています。 ・Oリングを溝から取り出すと、 「 待ってました 」と伸びてしまいます。 ・もう二度と溝に納まりませんので要注意。 ・溝内径は「35.4 ㎜Φ」 「 35.5 × 0.9 ~ 1.0 」のOリングを準備。 |
⑦.オールリセット | ⑧.出荷時の状態に戻ります | ⑨.バックライトもOK |
・何も書いてなければ、 「AC端子」と「電池(+)」をショート(通電) 。 ・先の尖った、金属ピンセットがあると便利です。 |
・リセットで 表示は 「 1月1日 土曜日 」に。 ・携帯電話のカレンダーで調べてみると、 2005年1月1日が土曜日。 ・つまり、2005年モデル。7年と11カ月の休養でした。 |
・電波時計ではないから、年月日と時刻を手動合わせ。 ・バックライトも点灯するようになりました。 |
4.ソーラー発電時計は 誰のため?
現在のクォーツ時計の電源の主流はソーラー発電。
「自然エネルギー」・「電池交換不要」・「フル充電で、〇〇年」、メーカーカタログの宣伝文句が目を引きます。
※CITIZENのソーラーはフル充電で3.5年もちます。
しかし、ソーラーは本当に優れたシステムなのでしょうか?
今回交換したソーラー充電用電池 ( ML 2016 ) と 前回登場した “ボン付け” の クォーツ用リチウム電池 ( CR 2016
) で比較してみましょう。
写真 | ||
名称 | ML 2016 | CR 2016 |
size | 20㎜Φ×1.5㎜ | 20㎜Φ×1.7㎜ |
電圧 | 3V | 3V |
電力持続時間 | フル充電/5カ月 ・ パワーセーブ/10カ月 ※GW200 | 3年~10年 ※時計の電力消費量により異なる |
電池寿命 | 10年程度 | 10年 |
使用 | 定期的に太陽に当てて充電必要 ※一日分=昼間の屋外で5~7分 | 充電不要 ・ そのまま使える |
必要機構 | ソーラーパネル と 充電回路 | 特別な機構不要 |
故障可能性 | 通常のクォーツ機構の他に、ソーラーパネル と 充電回路の故障 | 通常のクォーツ機構の故障だけ |
時計値段 | 高い | 安い |
電池交換 | 10年毎 | 3年~10年毎 |
交換手段 | 原則メーカー ※個人でも可 | メーカー ・ ホームセンター ・ 個人 |
電池入手 | 原則市販せず | 市販 ( コンビニでも入手できる ) |
値段 | 889円 ※Yahooオークションショップ出品 | 56円 ※Yahooオークションショップ出品 ( コンビニ価格 315円 ) |
電池交換費用 | 高い | 安い |
電池廃棄 | 1個/10年 | 1個/10年 |
実は‥ | 機械複雑・故障可能性高い・時計値段高い・電池交換必要・交換費用高い | 機械簡単・故障可能性低い・時計値段安い・電池交換必要・交換費用安い |
どこにソーラー発電の利点があるのでしょうか?
次回に紹介する KINETIC ( 自己発電機構 ) のように、時計の味が出るわけでもありません。
ユーザーは、メーカーの宣伝文句に踊らされて、「取扱が不便」で「維持費用が高く」、「複雑で故障の可能性が高い」時計を、「高い値段」で買っているのです。
ユーザーにソーラー発電時計は不要という結論になります。
そんなことを考えさせられた CASIO ・ FROG MAN の二次電池交換でした。
つづく。
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