SPnet 選任業務編



10-2-3 .新任教育・2号業務別教育資料-道路交通法-車と車の交差点での優先順位(36条・37条・43条)

1.交差点での優先順位は駐車場での交通誘導に必要

交差点で交通警備をやるのは道路工事現場で、駐車場警備をする場合は関係ないと思うでしょう。
しかし、スーパーの駐車場も道路でしたよね。
道路だから道交法が適用されますよ。

スーパーの駐車場に交差点はたくさんあります。
しかも、信号がありません。
警察官の交通整理もありません。
駐車場内での円滑な交通と事故防止のためには警備員の適切な誘導が必要なのです。

交差点でどちらの車が優先するかを知っていないと、『道交法違反の誘導をされた。』と文句が来ます。
『指導教育責任者はどんな教育をしているンだ!』と警察から叱られるのは私です。
だから、「どちらの車が優先するか」をしっかりと覚えてくださいね。

ただ、道交法36条は文言が絡まって「何を言っているのか何をどう定めているのか」さっぱり分かりません。
現場の警備員としては簡単に結論だけ覚えてください。

しかし、教える者は36条の絡まった糸玉をほぐしておかなければなりません。
指導教育責任者が「結果だけしか知らない」のでは講義に力が感じられません。
最後に参考として絡んだ糸をほぐしておきます。
2級検定受講者も困っている条文だと思います。参考になれば幸いです。

2.言葉の意味

まず、条文に出てくる言葉の意味をハッキリさせておきましょう。

『道交法2条の定義ですね!』

順調に「道交法で飯が食える」ようになっていますね。
道交法のプリントを見てください。


a.交差点

交差点とはどんなものですか?

『はいっ!2条5号の「十字路、丁字路その他二以上の道路が交わる場合における当該二以上の道路(歩道と車道の区別のある道路においては、車道)の交わる部分」です』

そうです。
十字路だけでなく、「T 字路やY字路の交わった部分も交差点になる」ことをしっかり覚えておいてください。


b.交通整理の行われていない交差点


「交通整理の行われていない交差点」とはどんな交差点ですか?
これは2条に書いてありませんよ。

『信号機がない。警察官が交通整理をしていない交差点ですか?』

そうです。
交差点で警備員が交通誘導をしていても、信号なし・警察官の交通整理なしなら「交通整理の行われていない交差点」ですからね。

では、信号が赤の点滅の場合はどうですか?

『一時停車です!』

そうです。これは道交法施行令2条1項に定められています。

では、信号が赤の点滅なら「交通整理の行われていない交差点」なのですか?

『「一時停車をしなさい」と信号が言っているのだから、交通整理かなぁ‥。』

「一時停止をすれば交差点に入ってもよい」のですよ。

『「一時停止のあとを指示していない」から交通整理の行われていな交差点になるのですか?』

そうです。「一時停止をして交差点の中に入ったら、あとは勝手にやってちょうだい」と言っているだけです。
だから、「赤の点滅信号は交通整理をしていない交差点」になります。(2級講習)


「信号なし・警察官の交通整理なし」ではどう進んでいいのか分からない、皆が勝手に進むと事故や渋滞がおこります。
そこで、36条で優先順位が決めてあるのです。。

あっ、ここでは歩行者は関係ありませんよ。
路面電車は説明から省きますから、車両と車両の優先順位です。
車両ですから、リヤカーや自転車も入りますよ。


3.どちらが優先するか分かる場合

二つの道の一方が優先道路の場合、どちらが優先するかハッキリしていますね。
当然、優先道路が優先します。

a.標識・標示があるとき

優先道路を示す標識・標示は次のものです。


@自分の方が優先道路
    A相手の方が優先道路     BAが優先道路C左が優先道路



b..標識・標示がないとき

優先道路の標識・標示がなくても、どちらが優先するかハッキリしている場合がありますね。

『広い道と狭い道が交差する場合ですか?』

そうです。
ただし、「明らかに広い場合」でないといけません。
道幅の違いが明らかでないと「どちらが優先するか」ハッキリしないからです。

36条では、「その通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるとき」としています。


簡単に言えば、「優先道路VS非優先道路」では優先道路の勝ち。
「明らかに広い道VS狭い道」では明らかに広い道の勝ち。
ここまでは大丈夫ですね。


4..どちらが優先するか分からない場合-その1

これを決めておかないと意味がありませんね。

・同じくらいの広さの道同士ではどちらが優先しますか?
自動車免許を取るときに習ったでしょう?

『左から来る車が優先です!』

自分から見て左から来る車が優先ですね。
自分から見て右から来る車に対しては自分が優先ですね。


a..なぜ、左方優先なのか

なぜ、左から来る車が優先するのですか?

『これは知っています。自動車学校の先生が言っていました。』

その自動車学校の先生は凄いですね。そこまでしっかり説明しましたか!

『何を言っているのですか!そんなの教師として当たり前じゃないですか!』

そうですね。受講生の疑問を予測して教えるのが教師ですからね。
で、なぜ「左から来る車が優先」なのですか?

『自分が交差点に入るとき、自分は道路の左側を走っていますから、左の方が見やすいのです。
右の方は対向車があるので見にくいのです。

さらに、左から交差点に入ってくる車を見つけるのが遅れても、相手も左側を走っていますから衝突するまでに相手の道路の右側分だけ余裕があります。
だから、事故を回避できます。

右から交差点に入ってくる車を見落としたら、この余裕がないので一発で衝突事故です。

相手を見やすくて、危険を回避できる可能性が高いので、左側から来る車を優先したのです。』

明快な説明ですね。
今一度、その自動車学校の先生に敬意を表します。


b.きまりには理由がある(余談)

何事もルールにはそれを決めた理由があります。

ちょっとリフレッシュタイムです。


・.ボディガードはVIPの前に立つか後ろに立つか

私が4号の指導教育責任者資格取得の講習を受けたときのことです。
4号とは身辺警備・ボディガードですね。

警備対象者(VIP)を一人でガードするときのポジションです。

まず、VIPの前に立ちますか後ろに立ちますか?

『これは分かります。後ろです。』

なぜですか?
ボディガードがVIPの後ろにいたのでは、襲撃者が襲ってきたときに襲撃者を制止することもVIPをかばうこともできませんよ。

『襲撃者は前から来るとは限りません。
後ろかも来るし横からも来ます。VIPの前にいたのでは前からの襲撃しかVIPを護れません。
後ろにいる方が危険を回避する可能性が高くなります。

さらに、後ろにいた方が視野が広くなり、それだけ襲撃者を発見しやすくなります。
また、VIPの様子を見ることができますから、いざというときにVIPに応じた対応ができます。』


素晴らしい分析ですね。
ボディガードの基本ポジションはVIPの後ろです。

私服保安が万引き犯人を同行する場合も犯人の後ろですね。

・深夜の施設巡回方向

次はちょっと難しいですよ。今度は1号業務の巡回方法です。
警備員が深夜に施設・建物の回りを不審者がいないかどうか見回ります。

このときに警備員は建物に沿って左回りに巡回しなければなりません。
左回りですから、時計の針と反対に回ることになります。

なぜですか?

『時計の針と反対回りということは‥、
  警備員は道路の左端を歩くことになりますよ。道交法の「歩行者の右側端通行」に反しますよ!』

深夜ですから大丈夫です。

『分かりません‥。』

ではヒントです。

警備員は不審者から襲われても対処できるように警棒を持って巡回します。
建物に沿って左回りということは、警備員の左手が建物側になりますよ‥。

『分かりました!そうです!分かりました!』

万引きGメンの研修生が、初めて万引き現場を見たときのように興奮しないでください。
警備員は常に常に危機意識を持って冷静に。

『警備員は右手に警棒を持っています。
  建物側が警備員の左手側ですよね。

  襲撃者は建物側から襲ってきません。道路側から襲ってきます。

  襲撃者が道路側から襲ってきたときに、警備員は右手に持った警棒を自由に使えます。
  建物に沿って右回りに巡回すると、警棒を持っている右手が建物側になって、とっさに警棒を使えないからです!』

その通り!


これは深夜の室内を巡回する場合も同じです。
部屋の壁に沿って室内を見回りますが、左回りですか右回りですか?

『ええっと‥。とにかく右手の警棒が自由に使えたらいいのだから‥。壁が左手側になればよいのか‥。
‥‥、分かりました分かりました。今度は右回りです。』

そうですね。室内の壁に沿って右回りだと、左手側が壁ですね。だから右手が自由に使えますね。

ただ、これは「その方が危険を回避する可能性が高い」とういうことで、危険を100%回避できるということではありません。

壁に張りついていた襲撃者が上から飛びついてきたり、地下に潜んでいた襲撃者がマンホールに引きずり込んだりする場合は知りませんよ。
スタローンのランボーTでは崖の泥の中から出てきましたからね。

・VIPが車から降りて前へ進むときにボディガードのポジションは?

今度は少し難しいですよ。

今度もボディガードは一人です。

VIPが車の後部座席から降りて演説会場へ向かいます。
ボディガードは車のドアを閉めてVIPをガードして歩きます。

まず、ボディガードはVIPの後ろですよね。
では、VIPの「後ろ左」ですか「後ろ右」ですか?

今度は建物や壁はありません。
ボディガードは右手に警棒を持っていません。

『‥‥。』


4号指導教育責任者の教本では、「VIPの後ろ右」

『なぜですか?』

私も不思議に思ったので、講師の先生に質問しました。

私『なぜ、左ではなくて右なのですか?』

先生『それは右と決めたからです!』

私『左後ろではなく右後ろと決めたのは、何らかの理由があるはずですが‥。』

先生『理由なんかありません。どちらか決めておかないとボディガードが困るからです!』


まあ、「警備員を教育する者」を教える先生に間違いはないと思いますが、チョトねぇ‥。
もしそうであっても、受講生の疑問に付き合ってくれてもいいでしょうに。

たとえば、

『VIPは車の後部座席から下りて前へ進んでいるよね。
ボディガードは車の後部ドアを閉めて、VIPに後ろからついていこうとしているよね。

今、ボディガードは車のどの辺にいる?

車の後部ドアの前だよ。

もし、VIPの左後ろにつけば、車のトランクの所に立つことになるよ。
右後ろにつけば、ボディガードは車の後部ドアと・前部ドアの間、つまり車の真ん中に立つことになるよね。

VIPの右後ろなら、ボディガードは車を背にしているから自分の背中を護れることになるよ。』

そして、皆でいろいろ考えたら、先生の知っている答えよりもっといい答えがでるかもしれませんね。

教えるとは自分の知っている知識を伝えることではなく、受講生に考えさせて育てることなのですから。

私の質問に先生が答えたあと、受講生はしらけきっていましたね。


さあ、交差点の優先順位に話をもどしましょう。

「道幅が同じくらいで、どちらが優先かわからないときは、左から来る車が優先」
これもOKですね。


5.どちらが優先するかわからないとき-その2.


同じくらいの道幅の場合は、どちらが優先するか分かりません。

「どちらが優先するか分からない場合はもう一つあります。

どんな場合ですか?


『チョットおかしいと思いますが‥。』

ドンドン発言してください。遠慮しないでね。


『優先道路VS優先道路の場合ですか‥?』

そうですよ。

私もそんな交差点を見たことはありませんが、ちゃんと2級検定のテキストに書いてあります。


まだ、ありますよ。

自分が優先道路だけど道幅が狭い。相手は優先道路ではないけれど道幅が明らかに広い。
つまり、(優先道路+道幅狭い) VS (非優先道路+道幅広い) の場合です。


この二つの場合は五分五分で、引き分けですよね。

こんな場合は、どうすればよいでしょう?


『五分五分だから、左の方から来る車が優先するのですか?』

その通り!

五分五分で勝敗がハッキリしないときは、左方の勝ち。
いわゆる判定勝ちですね。

36条って簡単でしょう?

しかし、「36条のどこに書いてあるか」は気にしないでください。
それを気にしだすと頭がオーバーヒートしますからね。


6.「優先する」とはどんなこと?


36条の条文では「優先する」という言葉を使っていません。

36条では「優先する」の内容として二つのことを定めています。

それは、

@「交差点においては‥通行する車両の進行妨害をしてはならない」(36条1項・2項)
A「交差点に入ろうとする場合‥徐行しなければならない」(36条3項)

@は交差点の中でのことです。
Aは交差点に入る前のことです。

もちろん、交通整理の行われていない交差点での話ですから、
Aの徐行は信号なし・警察官の交通整理なしの場合です。
信号が青で徐行する必要はありません。


では、結果だけ覚えてくださいね。


五分五分の場合で左から来る車が優先するときは@だけ。

たとえば、五分五分の場合で自分が直進、相手が左から来る。

この場合、左からくる相手が優先しますから、交差点に入ったら相手のじゃまをしてはいけません。

相手をじゃましなければいいだけだから、必ずしも一時停止する必要はありません。
しかし、一時停止しなければならない場合もありますよね。


五分五分ではなく勝ち負けがハッキリ分かっている場合は@とAの両方。

たとえば、自分が非優先道路で相手が優先道路。

この場合、交差点に入ったら相手のじゃまをしない。
これが@

さらに、自分が交差点に入る場合は「優先道路に車がいなくても」徐行。
これがA。


つまり、

「五分五分で左が優先する」のは判定勝ち。
「はっきりと優先が分かる場合はの優先」はKO勝ち。

判定勝ちの場合は@だけ、KO勝ちの場合は@とA。


結果をまとめましょうか?

「五分五分」で左方の判定勝ち

・非優先道路・道幅同じ   VS   非優先道路・道幅同じ    →    交差点に入ったら左から来る車のじゃまをしない。
・優先道路・道幅狭い      VS   非優先道路・道幅広い    →    交差点に入ったら左から来る車のじゃまをしない。
・       優先道路              VS      優先道路                   →   交差点に入ったら左から来る車のじゃまをしない。

「はっきりと優先が分かり」KO勝ち

・優先道路・道幅同じ      VS   非優先道路・道幅同じ   →交差点に入る前に徐行、交差点に入ったらじゃまをしない。
・非優先道路・道幅広い   VS  非優先道路・道幅狭い   →交差点に入る前に徐行、交差点に入ったらじゃまをしない。


余計わからなくなったでしょう?

ここまでが、36条の1項〜3項です。


7.優先者への戒め(36条4項)


36条4項は優先する者に対する戒めが規定してあります。


その戒めとは「勝ったからといって調子にのるなよ!」です。

優先だからといいって横柄に振る舞ってはいけません。

横断歩道の歩行者、右折してくる車、自分を優先してくれる車、これらに注意して安全に交差点を通過しなければなりません。

奢れる優先者に対しては罰則が適用されます。


なお、4項には「交通整理の行われていない交差点では」という限定がありません。

交通整理の行われている交差点、つまり信号がある・警察官が交通整理をしている交差点では優先順位をつける必要はありません。
だから、この規定は、優先者の戒め規定だけでなく、交差点を通行するすべての車両への戒め規定なのです。

交差点内では優先される者・優先されない者・同じ立場の者、すべての者が他の者に注意して安全に通行しなければならないという規定です。

罰則の適用があります。


8.右折する場合は直進してくる車・左折する車が優先(37条)


これはよく知られていますね。

交差点で右に曲がるときは、直進してくる対向車を待ってから右折ですね。

また、対向車が自分と同じ方向に曲がるとき(対向車が左折するとき)は対向車の曲がるのが優先ですからね。

交差点に先に入っても、直進車・左折車が優先ですよ。


9.交差点の手前に一時停止の標識がある場合(43条)


交差点での優先順位に関し、43条があります。

※道交法43条(
定場所における一時停止)
車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、
  道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。
  この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。」

 (罰則 第百十九条第一項第二号、同条第二項)

a.43条の意味

@交通整理の行われていない交差点で、
A一時停止の道路標識・標示があるときは、
B停止線の直前・交差点の直前で、
C一時停止しなければならない。
D36条2項に該当する場合の他は交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。

@〜Cは当たり前ですね。


Dがややこしそうですね。


b.36条2項に規定に該当する場合→交差点内では優先される


36条1項は左方優先の原則、36条2項はその例外を上げています。

36条2項では、左方優先の例外として、
優先道路VS非優先道路→優先道路が優先
広い道VS狭い道→広い道が優先
を定めています。


「36条2項に該当する場合」とは、自分が優先道路または広い道の場合です。
KO勝ちの場合ですね。

この場合は「交差道路を通行する車両の進行妨害をしてはならない」という要求が外されます。


たとえば、自分が優先道路、相手が優先道路ではない。

自分が入ろうとする交差点に一時停止の標識がある。

交差点に入る前に、一時停止。

あとは、自分が優先されますから、交差点で進行妨害してはならないのは相手の方です。


c.36条2項に該当しない場合→交差点内では相手が優先


36条1項の左方原則が適用される場合です。
判定勝ちの場合ですね。

たとえば、道幅が同じ交差点。

自分の道には一時停止の標識。

交差点前で一時停止。

ここまでが@〜C。


一時停止のあと、交差点に入ったら「交差道路を通行する車の進行を妨害してはならない」。

左側から来る車は当然優先(36条1項)ですが、右側から来る車も優先しなければなりません。

要するに、一時停止の標識がある場合は「左方優先の判定」が覆されてしまうのです。


五分五分の場合、交差点の優先判定は、

一時停止の標識があれば標識のある方が負け(、43条 )
一時停止の標識がなければ右方が負け(左方が勝ち)となります。( 36条1項)


10.駐車場交通誘導でよく起こす間違い

あなたがスーパーマーケットの広い駐車場で交通誘導をしています。
駐車場には白線で車道が描いてあります。

あなたの立っているところは“字路”の交差点。
の━”は長い真っ直ぐな車道、これに駐車スペースから出る車道“Tの┃”が交わっている。
二つの車道の道幅は同じくらい。

の━”車道は駐車スペースに入ってくる車、次の駐車スペースへ入ろうと通過する車、別の駐車スペースから出て駐車場出口へ進む車がドンドンやって来ます。

あなたが立っている
字路”の交差点に、駐車スペースから出た一台の車がTの┃車道をあなたの方に向かって進んできます。
その車は左ウインカーを点滅させています。
車がドンドン通過するの━”車道に入るつもりです。

あなたは、その車に徐行の誘導合図をして車を停止させました。
そして、の━”車道を右から来る車が途切れたところで、一礼して左折誘導。
『ありがとうございました!またお越しくださいませ!』と笑顔で見送る。

あなたは、駐車場誘導の充実感を感じます。

『あれっ?さっきの車からきれいな奥さんが降りてこちらにやって来るぞ‥。缶コーヒーをくれるのかな?それとも‥〇〇△△かな?ヘ・へ・へ‥』

その美人奥さんはあなたに、
『〇△〇△!〇×△□!×××〇!』

言った内容は分かりますね?

あなたは優先車両を止めて、非優先車両を優先させたのです。
道交法違反の誘導をして美人奥さんの正当な活動を妨害したのです。
警備業法違反をしたのです。

『げっ!今度は、いかつい旦那が下りてきた!』


11.T字路での右折と直進の優劣(36条と37条)


a.「36条1項の左方優先」と「37条の右折する場合は直進優先」との競合


『質問です!』

どうぞ。

『上の例で、きれいな奥さんの車が右折する場合だったら、どちらが優先するのですか?』


なぜ、そのような疑問が出るのですか?

『36条1項では左方優先です。
 Tの┃車道からの━”車道に出る奥さんの車と、の━”車道を右からくる車では、左方の奥さんの車が優先します。

  しかし、37条では「右折する場合は直進が優先」と定めています。

 上の例では、奥さんの車が左折したから37条は関係しませんが、右折したら37条が関係しますよ。

  36条では左方優先、,37条では右折劣後。
  奥さんがT字路を右折した場合、36条では奥さんが優先、37条ではの━”車道を右から来る車が優先しますよ。

  この場合、どちらが優先されるのですか?』

難しいところを突いてきますね。


b.36条と37条の関係


36条1項は「交差点においては‥左方から進行してくる‥車両等の進行妨害をしてはならない」としています。
36条では「左方車が右方車に優先する」と定めただけで、
左方から進行してくる車が「直進するのか・右折するのか・左折するのか」については言及していません。

37条は「交差点で右折する場合において、当該交差点において直進‥する車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない」としています。
37条は「右折車が直進車に劣後する」と定めただけで、
その”直進“が対向車の直進なのか、右側からくる車の直進を含みすべての直進なのかについて言及していません。

36条1項と37条のどちらが優先するかの問題です。


36条1項の文言と37条の文言だけの解釈ではどちらが優先するか分かりません。
37条の立法趣旨から判断しなければなりません。

立法趣旨とは「その条文がなぜ置かれたか」という理由です。
この場合二つの立法趣旨解釈がなりたちます。

@36条は交差点での交差する車道の優劣関係を定め、37条は交差点での対向車との優劣関係を定めたもの。

こう考えると、「左方車は右方車に優先する」(36条1項)が、対向車に対しては「右折する場合は対向車の直進・左折が優先する」(37条)。
つまり、「36条と37条は同じく交差点内での優劣関係を定めたものだが、優劣関係の対象が違う」と考えるのです。

A37条は36条の例外を定めたもの。

こう考えると、「左方車は右方車に優先する」(36条1項)が、「左方車が右折する場合は直進車・左折車が優先する」(37条)。


「37条が36条の次に置かれたこと」が手がかりになりそうですが、@ともAともとれます。


c.裁判所の解釈


『面倒くさい立法趣旨解釈は学者に任せておいて、結局、どちらが優先するのですか?』

解釈論では解決しませんね。

ただ、解釈には人の解釈(学説)・下級裁判所の解釈(裁判例)・最高裁判所の解釈(判例)の三つがあります。

どれだけ著名な学者の解釈でもは、それは“その人個人”の解釈で、裁判になった場合にその解釈が採用されるとは限りません。
裁判所の解釈は、その裁判での裁判官の解釈で、別の裁判で違う裁判官が異なる解釈をするかも知れません。
最高裁判所の解釈
は、下級裁判所の裁判官の解釈を拘束するものではありません。
しかし、争いは最終的に最高裁判所に持ち込まれるますから、実質的に下級裁判所の裁判官の解釈を拘束することになります。
ただし、最高裁判所の解釈も最高裁判所によって変更される場合があります。

どの解釈でも不安定なものですが、解釈の強さは、「判例→裁判例→学説」の順となります。


『それで、最高裁の解釈はあるのですか?』

あります。

『それならそうと先に言ってください。』

いやいや、「最高裁の解釈とて不安定なものだと」いうことを知ってほしかったのです。


@最判昭46.7.20・判時638・102

「法37条にいう交差点において直進しようとする車両等とは、交差する道路のすべての方向への交差点を直進する車両等をいうものである。‥」
※事案
・“トの字”三叉路で、Bが“トの字┃”を下から直進、AはBの右側道より右折してトの字┃”に入り、Bの進行を妨げた。
・Aから見るとBは左方直進車で右方直進車ではない。
・右方直進車と左方右折車の事案ではないが、37条の解釈を定めたものとして有意義。

A札幌高判昭50.11.27・判タ333・352

「直進車と右折車とを比較すれば、一般的に右折車の方が危険回避措置を採ることが容易なのであって、
  右折車は、たとえ自車が左方車(注:左方から進行してくる車両)であっても、右方直進車の進行妨害をしてはならないと解するのが相当である。」
※事案不詳

(参考)  小川賢一著・新実務道路交通法・立花書房発行平成20年11月10日第1刷・137頁



また、T字路での交通事故損害賠償請求での基本過失割合は、

Tの┃車道からの━”車道に右折する車  :  “の━”車道を右から直進する車  = 7  :  3 」 とのこと。

過失割合の判断は、法律の他さまざまな要因を総合してなされます。
しかし、基本割合で圧倒的に左方右折車が悪くなっていますから、交通事故損害賠償でも「右方直進車が左方右折車に優先する」と解釈しているようです。



d.警備員は予め店に相談すること

注意してほしいことがあります。

道交法37条で「右方直進車が左方右折車に優先する」としても、それはあくまで最高裁判所の解釈や交通事故賠償裁判での過失割合判断でしかありません。
解釈としては逆の解釈も成り立ち、それを争う余地があります。

警備員は法律に反した誘導だけでなく、個人の正当な活動に干渉することは許されません。(警備業法15条)
争う余地のある問題に警備員が介入することは避けるべきでしょう。


予め、顧客である店に相談することが必要です。

「36条と37条の解釈では、どちらとでも考えられるが、最高裁の判断では左方右折車より右方直進車を優先させている。
最高裁の判断に沿って、左方右折車より右方直進車を優先させる誘導をしてよいか?」と店の指示を仰ぎましょう。

店の判断・指示どおりに誘導してクレームが出ても、店が対処してくれます。
店の指示を仰がずに警備員が勝手に誘導すれば、クレームの責任はすべて警備員になります。

T字路のTの┃車道に止まれの停止線を引いてもらうこともできます。
こうすれば、
43条で左方右折車は優先でなくなります。


『あのう‥、質問です。』

どうぞ。

『店が、「そこを上手くやるのが警備員じゃないか。臨機応変だよカメレオンだよ。
  停止線を引け?それなら警備員のポストをカットするぞ!」と相手にしてくれなかったらどうするのですか?』

そうですねぇ、やはり
の━”車道・右方直進を優先しましょう。


『こわもての旦那にはどう説明するのですか?』

こう言いましょうか?

『お客さんは、交差点では左方優先だから、私が右方直進車を優先させたことを怒っているのですね。
しかし、道交法では左方右折車と右方直進車の優先についてハッキリと定めてないのです。

ただ、最高裁の解釈は左方右折車より右方直進車が優先するとしています。
また、交通事故損害賠償事案での過失割合は左方右折車が悪くなるのが一般です。

当店はお客様第一ですから、お客さんが不利になるような交通誘導はできません。
お客さんが不利にならないように誘導させてもらいました。』

ここまで、説明できて「道交法で飯を食っている交通誘導警備員」と言えるのです。

あなたを見る美人奥さんの目が、ハートになっているかも知れませんよ。


※道交法36条.(交差点における他の車両等との関係等)

車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、次項の規定が適用される場合を除き、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に掲げる車両等の進行妨害をしてはならない。

  一.車両である場合 その通行している道路と交差する道路(以下「交差道路」という。)を左方から進行してくる車両及び交差道路を通行する路面電車
  二.路面電車である場合 交差道路を左方から進行してくる路面電車

  2.車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、
     その通行している道路が優先道路
     (道路標識等により優先道路として指定されているもの及び当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路をいう。以下同じ。) である場合を除き、
     交差道路が優先道路であるとき、又はその通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるときは、
    当該交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。

  3.車両等(優先道路を通行している車両等を除く。)は、交通整理の行なわれていない交差点に入ろうとする場合において、
     交差道路が優先道路であるとき、又はその通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるときは、徐行しなければならない。

  4.車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、
     当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、
     かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。」

   (罰則 第一項については第百二十条第一項第二号 第二項から第四項までについては第百十九条第一項第二号の二)



※道交法37条

車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。」

 (罰則 第百二十条第一項第二号)

※参考:36条1項・2項・3項深読み(路面電車除く)

※説明文では「明らかに広い」→「広い」と記述します。条文はそのまま「明らかに広い」を使います。


1.36条1項--原則は左方優先

・「次項の規定が適用される場合を除き」→2項の場合は左方優先ではない。
・「次の各号に掲げる区分に従い‥通行妨害をしてはならない」→1号→車VS車は左方優先。


2.36条2項--左方優先の例外


a. 1項(左方優先)の例外

イ.「その通行している道路が優先道路である場合を除き」→自分が非優先道路。
ロ「交差道路が優先道路であるとき」→相手が優先道路。
ハ「その通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるとき」→相手が自分より広い道幅

※ハの相手は優先道路ではありません。相手が優先道路ならロに含まれます。
   ハの相手は「非優先道路で道幅が広い」場合です。
※イの自分は、ハで相手を「道幅が広い」としていますから、「道幅が狭い」ことになります→イの自分は「非優先道路で道幅狭い」

・「当該交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない」→相手が優先。

この部分では、
@イ VS ロ→非優先道路 VS 優先道路 →優先道路が優先
Aイ VS ハ→(非優先道路・狭い)  VS (非優先道路・広い)→広い方が優先


b. aの場合の例外→1項(左方優先)の例外の例外→左方優先

今度は.「その通行している道路が優先道路である場合を除き」の「その通行している道路が優先道路である場合」です。

自分が優先道路の場合です。
相手は同じです。

この場合は、「‥除き‥進行妨害をしてはならない」の「除き」に該りますので、1項の原則にもどります。
1項の原則は左方優先です。


つまり、

ニ..「その通行している道路が優先道路」→自分が優先道路

相手は同じです。
ロ「交差道路が優先道路であるとき」→相手が優先道路。
ハ「その通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるとき」→相手が自分より広い道幅



Bニ VS ロ→ 優先道路 VS 優先道路 →左方優先
Cニ VS ハ→(優先道路・狭い) VS (非優先道路・広い)→左方優先


36条1項と2項は@〜Cの4パターンの優劣を規定していることになります。


3.36条3項--交差点に入る時の徐行義務


規定の仕方は2項とまったく同じです。

だから、

自分 ( イ・ニ )と相手 ( ロ・ハ )の内容は同じです。

原則の場合@・Aと例外の場合B・Cの4パターンも同じです。


a.原則-徐行

@イ VS ロ→非優先道路 VS 優先道路 →優先道路が優先→非優先道の車は交差点に入る時に徐行
Aイ VS ハ→(非優先道路・狭い)  VS (非優先道路・広い)→広い方が優先
→狭い道の車は交差点に入る時に徐行


b.例外-徐行不要

Bニ VS ロ→ 優先道路 VS 優先道路 →左方優先→右方の車は徐行しないでよい
Cニ VS ハ→(優先道路・狭い) VS (非優先道路・広い)→左方優先→右方の車は徐行しないでよい。

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読者からの指摘 「 二級教本の記載誤り」について


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