SPnet 選任業務編



13. 護身用具一覧の記載内容 と 護身用具の保管義務


1.一年半前に退職した会社からの電話


.9月6日 10時すぎ携帯電話が鳴る

私 『はい、SPnetです!』

相手 『〇〇警備の 〇〇です!』


それは、一年半前に辞めた警備会社の取締役からの電話でした。


取 『どう?元気にしてる?』

私 『マイペースでやっていますよ。』

取 『ところでさぁ〜、営業所の警棒が一本なくなったのだけど、知らない?』

“ 営業所 ” とは私がこの警備会社で選任をしていた営業所、
“ 営業所の警棒 ” とは営業所の管理する商業施設常駐警備が使用する警棒で、その商業施設の警備室に常置しているもの。


私 『その警棒は警備室保管でしょう? 営業所には保管していませんよ。警備室の方でなくしたのじゃないですか?』

取 『警備室の方でなくなるということはありえないんだよ‥。』


この人はいったい何を言いたいのでしょう。
それにしても、この横柄で馴れ馴れしい言葉づかいは何なのでしょう。
この人は他の警備会社に電話をかけるときも “ 上から、タメ口 ” で話すのでしょうか?


多分、今年9月の立ち入りの準備で、警棒が一本なくなっていることに気がついた。
そこで 『 これは大変!』 と、その警棒を捜しているのでしょう。


今年の立ち入りが、私が選任を辞めたあとの初めてのものなら、私に問い合わせるのは当然でしょう。

しかし、私がこの警備会社を退職し、営業所の選任を辞めたのは 昨年の2月末。

そのあと新しい選任が就任し、その選任の下で昨年の9月に立ち入りを受けている。

『 今年の立ち入り前に警棒が一本なくなっている。 知らないか? 』  と聞かれても、私は答えようがないのです。


しかし、次の言葉でこの人の真意が分かりました。

取 『営業所で現任教育をしたときに警棒を使ったよネェ。 あの警棒はナニ?』

この人は、「私が警備室常置の警棒を持ち出して現任教育で使用し、その後返却していない」と疑っているのです。

「返却していない」=「紛失した」or「盗った」 ということですネ。


多分、現任教育に参加した警備員がそのことを伝え私が疑われているのでしょう。

それなら、なぜ昨年の立ち入り前に問い合わせてこなかったのでしょう。

昨年の立ち入りではどんな書類で検査をパスしたのでしょう。


それはともかく、この人はなくなった一本の警棒を探し回っているのです。
考えてみれば感心なことです。

しかし、人を疑うのはしっかりと調べてからでないと大怪我をします。
心の中で疑っているだけなら安全ですが、それを言葉に出すとその責任をとらなければなりません。
万引きGメンの誤認と同じです。

根も葉もないことを言う警備員も警備員ですが、その話を真に受けて軽率に問い合わせてくる取締役も取締役です。
私は警備業者ですから、警備業者VS警備業者の紛争になることが分からないのでしょうか。


まあ、そこはこらえて疑いを晴らしておきましょう。


私 『二年前の前期現任講習のことですね。 あのときに使った警棒はすべて私の物ですよ。』

取 『‥‥( 疑っている・怪しんでいる・言い逃れされると思っている ) ‥‥。 』

私 『現任教育で使ったのは ASP-F 21 と カンタスのナイロンファイバー、それに木製の棒を切ったもの。
       ノーベルもありましたが会社の警棒と色が違いますよ。』   

取 『‥‥‥。』  ※警棒について詳しくない方は→→→こちら


ものごとの理屈がが分からない人に付き合うのはここまで。

私 『 「 よその警備会社の警棒がどこに行ったのか 」 など分かりかねます。 では、これで。』



2.ノーベル警棒のシリアルナンバー


次の二本の警棒を見てください。


@が ノーベル警棒 ( 旧規格 )、警視庁御用達。
Aが SPnet ・届出警棒の ASP-F26 ・ エァウエイト、 FBI 御用達。

※@のグリップ部には使いやすいように自転車のハンドルグリップが取り付けてあります。


警備員の方は腰に吊っているノーベル警棒を伸ばしてみてください。
@と違ってシャフト全体が銀色でしょう?
シャフトが銀色の警棒は “ ノーベル白 ” 、@のようにシャフトが黒染めの警棒は “ ノーベル黒 ” と呼ばれています。

黒は警察官用、白は警備員用なのです。
材質が同じかどうか分かりませんが、黒の方が造りが良いようです。
白はなぜか 「 カチャ・カチャ 」 音がします。

ノーベル社は警備会社に白しか販売しなかったのです。
警備員はオモチャのような  “  ピカピカ警棒  ”  を持たされて喜んでいたのです。


私の現任教育を受けた警備員さん!
そして 『 あの選任が持ち出したから、一本なくなった! 』 と言いふらしている警備員さん!

あなたの目の前に置いてあるノーベル警棒は “  ピカピカ ・ カチャカチャ警棒  ”  でしょう?


ノーベル警棒にはシリアルナンバーが刻印されています。



写真のノーベルはゴムグリップを被せているので刻印は見えません。
しかし、グリップの元金(石突き)に刻印されています。

ご丁寧に外箱にもナンバーが印字されています。


このような個体識別番号は猟銃から腕時計までいろいろなものに刻印されています。
人間にまで付けようという動きもありますね。

この番号はメーカーが「その製品の製造場所時期・仕様・部品互換性などを知る 」ためだけに付けているのではありません。

この番号を管理すれば、「それが今どこにあるのか」、「そこに至るまでにどのような経路をたどったのか」が分かります。

「それを紛失していないかどうか」も分かります。

猟銃は毎年検査をして猟銃番号を調べます。
猟銃を紛失した場合、同じ型の猟銃をどこかから手に入れて検査に持っていっても、銃番号が違うから紛失したことが分かってしまいます。

紛失したことだけでなく、誰から入手したことも分かりますね。


なお、ASPにはシリアルナンバーは刻印されていません。



3.護身用具一覧の記載内容 - 何を書かなければならないか


護身用具一覧は営業所に備えつけなければならない書類です。
当然、立入検査の対象となります。

記載内容に不備があると、
担当警察官は、 『 この警備会社はいい加減だなぁ‥。細かく調べてみるか‥。』

法律上何を書かなければならないのでしょう。


a.普通このように書いています


種類 名称・規格 数量 番号 保管場所
警棒1 ノーベル社製・三段伸縮・41.5p 5 093283・093284・093285・100021・100022 〇〇店警備室
警棒2 ASP社製・三段伸縮・65p 3 番号刻印なし 営業所
警棒3 木製警棒・60p 5 番号刻印なし △△工場警備室
警杖   ‥‥   ‥‥   ‥‥   ‥‥


100点満点・文句なしの記載内容です。
立ち入り担当警察官の心証はぐっと良くなります。


しかし、シリアルナンバーを書くと紛失したときに慌てなければなりません。

一覧にシリアルナンバーが書いてあるから、担当警察官は前年度の一覧と比較したくなるのです。
そして、前年度と異なる番号の物があると、『 前年度に記載してあった番号の警棒はどうしたの?』 と質問したくなるのです。

そんな質問が怖いので、「一年半前に辞めた・三代前の選任が盗んだのかもしれない」と疑わなければならないのです。

警備業法では護身用具一覧にシリアルナンバーの記載を要求しているのでしょうか。


b.種類と数量だけ書けばよい


警備業法45条(警備員の名簿等)

警備業者は、内閣府令で定めるところにより、営業所ごとに、警備員の名簿その他の内閣府令で定める書類を備えて必要な事項を記載しなければならない。」

※ここで内閣布令とは警備業法施行規則です。

警備業法施行規則66条3号(警備員の名簿等)


法第四十五条 の内閣府令で定める書類は、次のとおりとする。

  三.
護身用具の種類ごと数量を記載した書面」


つまり、護身用具一覧には護身用具の
種類と数量を書けばよいのです。


c.護身用具の種類とはなにか



数量が何かは問題ありません。
警棒・警杖なら〇〇本、盾や防弾チョッキなら〇〇枚、カラーボールなら〇〇個。

では、護身用具の種類とは何でしょう。


警備業法に「護身用具の種類」を定義する規定がないので、他の条文を見てみます。

護身用具の種類」という文言は警備業法17条2項に出てきます。

17条1項は警備員の護身用具の制限について規定したもの。
17条2項は護身用具の届出について規定したもの。

復習のために17条を見てみましょう。

警備業法17条(護身用具)

  警備業者及び警備員が警備業務を行うに当たつて携帯する護身用具については、
    公安委員会は、公共の安全を維持するため必要があると認めるときは、
    都道府県公安委員会規則を定めて、警備業者及び警備員に対して、その携帯を禁止し、又は制限することができる。

 2.前条第2項の規定は警備業務を行うに当たつて携帯しようとする護身用具の届出について
    第11条第1項の規定は当該届出に係る事項の変更について
準用する
    
この場合において、前条第2項中「用いようとする服装の色、型式」とあるの
は「携帯しようとする護身用具の種類、規格と、
    第11条第1項中「主たる営業所の所在地を管轄する公安委員会」とあるのは「当該変更に係る公安委員会」と
読み替えるものとする。


またまた復習です。
“ 前条第2項 ” を見てみましょう。

警備業法16条2項

警備業者は、警備業務を行おうとする都道府県の区域を管轄する公安委員会に、
  当該公安委員会の管轄区域内において警備業務を行うに当たつて
用いようとする服装の色、型式その他内閣府令で定める事項記載した届出書を提出しなければならない。
   この場合において、当該届出書には、内閣府令で定める書類を添付しなければならない。」

17条2項の読み替えをすると、


「警備業者は、警備業務を行おうとする都道府県の区域を管轄する公安委員会に、
  当該公安委員会の管轄区域内において警備業務を行うに当たつて携帯しようとする護身用具の種類、規格その他
内閣府令で定める事項記載した届出書を提出しなければならない。
   この場合において、当該届出書には、内閣府令で定める書類を添付しなければならない。」



「護身用具の種類」と「護身用具の規格」があるようです。


d.護身用具の種類 と 規格


警備業法16条2項に対する内閣布令は警備業法施行規則28条です。


警備業法施行規則28条(服装及び護身用具の届出) 1項

法第十六条第二項 (法第十七条第二項 において準用する場合を含む。次条から第三十一条までにおいて同じ。)に規定する届出書の様式は、
  服装の届出に係る届出書にあつては別記様式第九号のとおりとし、
   
護身用具の届出に係る届出書にあつては別記様式第十号のとおりとする。」



要するに「護身用具の届出は別記様式第10号でしなさい」ということです。


それでは別記様式第10号を開いてください。→→→こちら


記載要領に「
規格欄には、当該護身用具の大きさ、重さ、材質、構造等を記載すること。」 と書いてあります。

「 護身用具の規格 」 とは 「 護身用具の大きさ、重さ、材質、構造等 」 なのです。


それなら、 「 護身用具の種類 」 とは 「 警棒、警杖、盾、刺股、防弾チョッキ‥ 」 のことになります。


e.結局、護身用具一覧に書かなければならないことは


警備業法45条と施行規則66条3号で、
護身用具一覧に書かなければならないのは護身用具の種類と数量です。

種類とは警備業法17条2項と施行規則28条1項と別記様式第10号から、
「大きさ、重さ、材質、構造等を含まないもので、単なる護身用具の分類名称」です。


結局、護身用具一覧には、

「 警棒〇本、警杖〇本、刺股〇本、盾〇枚‥」 と書くだけでよいのです。

「 ノーベル三段伸縮・41.5p×5本、ASP・三段伸縮・65p×3本、木製警棒・60p×5本 」 なら、 「 警棒 : 13本 」 と書くだけでよいのです。

「 どこに保管しているか 」 など書かなくてもよいし、ましてや 「 ノーベル警棒のシリアルナンバー 」 など書く必要はないのです。


f.嘘を書くと認定取消しになります


護身用具一覧に書かなければならないのは、護身用具の種類と数量。

護身用具の名称・規格・番号・保管場所などを書く必要はありません。
もちろん、これらを書いても構いません。

しかし、嘘を書くと罰則があります。
「 30万円以下の罰金 」です。
警備業法違反の罰金刑なので、警備業者・警備員の欠格事由に該ります。
罰金刑が確定すれば、認定取消し・警備業界から追放5年となります。


警備業法58条10号

次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
   1〜9 -略- 
  
10.第44条又は第45条に規定する書類を備え付けず、又はこれに必要な事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をした者


立ち入りのときに、護身用具一覧通りの護身用具があるかどうか、現物を確認することもあるそうです。( 立ち入り担当警察官談 )


こんな場合が考えられます。

・去年の一覧は「 警棒 : 10本 」
・今年の立ち入り前に調べたら警棒が一本なくなっていた。
・今年の一覧に 「 警棒 : 9本 」 と書くと、『 警棒一本をどうした!』 と追及されるので、 「 警棒 : 10本 」 と書いた。
・新しく担当になった警察官が、立ち入りで 『 この10本の警棒を確認させてください。』
・しかし、実際は9本しかない。

はい!虚偽記載!罰金30万円!認定取消し・追放5年!


こんな場合もあるでしょう。

・去年の一覧が 「 警棒 : 10本、aZ〇〜〇〇 」 。
・書かなくてもよい 警棒のシリアルナンバーを一覧に書いていた。
・今年の立ち入り前に調べたら、警棒が一本なくなっていた。
・急いで、警棒を一本購入し、警棒を10本にした。
・紛失した警棒と購入した警棒のシリアルナンバーが異なる。
・新しい警棒のシリアルナンバーを書くと、『 去年の一覧にある警棒はどうしたのだ!』 と追及される。
・今年の一覧に警棒のシリアルナンバーを書かないと、『 なぜ、今年は書いてないの?さては‥。』 と疑われる。
・そこで、今年の一覧に去年の一覧と同じ「 警棒 : 10本、aZ〇〜〇〇 」 と書いた。
・新しく担当になった警察官が、立ち入りで 『 この10本の警棒を確認させてください。』
・担当はご丁寧に警棒すべてのシリアルナンバーを確認した。
・そして、一覧に記載されていないシリアルナンバーの警棒を見つけた。

はい! 虚偽記載! 罰金30万円!認定取消し・追放5年!


これはチョット可哀相ですね。


どちらも、へんな小細工をするからかえって追い込まれてしまうのです。

護身用具一覧には堂々と 「 現在ある、護身用具の種類と数量 」を書けばよいのです。



4.護身用具の保管・管理義務の法的根拠 と 具体例


a.護身用具一覧の内容が前年度と異なる場合はどうなるか


立ち入り前に警棒の数を調べたら一本足りません。
前年度の護身用具一覧では「 警棒 : 10本 」、しかし9本しかない。
今年の護身用具一覧に「 警棒 : 9本 」 と書いたらどうなるでしょうか?


立ち入りのときに担当警察官は、
『去年と比べて警棒が一本少ないじゃないか!警棒一本をどこにやったのだ!』 と尋ねるでしょうか?

『一本壊れたのですよ。』と答えたら、

担当警察官が 『いい加減なことを言うな!壊れたのならそれを見せてみろ!』 と怒鳴るでしょうか?


警棒は岡っ引きの十手のように、お上が警備業者に貸し出しているものでもないし、警備業者だけに使用を認めたものでもありません。

警棒を増やそうが減らそうが公安委員会に文句を言われる筋合いはありません。
壊れた警棒をどう処分しようが警備業者の勝手なのです。


護身用具一覧は 「 警備業者がどんな護身用具を どれだけ持っているか 」 を知るためのものなのです。

交通誘導が主なのに警棒が50本もある。
警杖を使うような施設の警備や貴重品運搬や機械警備をやっていないのに警杖が20本もある。
なんで、刺股が100本もあるの!

護身用具一覧は 「 警備業務名目で凶器を準備することを防ぐため 」 のものでしょう。
同じく届け出対象の制服について、制服一覧を作成して備えつけることは要求されていませんものね。

要するに 「 刀刈り 」 なのです。

だから、護身用具の数か前年度より増えていたら、  『  どうして増えたの? 』  と質問されるでしょう。
しかし、減っていてもその原因を追及されることはないでしょう。

ましてや、シリアル番号での同一性など問題にされるはずはありません。
警棒は猟銃ではないのです。


b.護身用具の保管・管理義務


それでは警備業者に護身用具を保管・管理する義務はないのでしょうか?

警備業者は現在保有する護身用具の種類と数を護身用具一覧に書くだけで良いのでしょうか?

護身用具を紛失してもなんら責任は生じないのでしょうか?

検定講習や指導責講習で、
「警棒は鍵のかかるキャビネットに保管しなければならない」と教えられます。
そうしなければならない法的根拠はどこにあるのでしょうか?


もし警備業者に護身用具保管・管理義務があれば、それはどの程度のものなのでしょう。
その義務の程度により、
「 警棒を一本紛失したときに責任を問われるかどうか 」 や 「立ち入り担当警察官は前年度より少なくなった警棒について追及できるかどうか 」 が決まります。


c.警備業法17条1項と21条2項


警備業法は17条1項で「 警備業者・警備員に対する護身用具の制限 」 を定め、21条2項で 「 警備業者の警備員に対する指導・監督義務 」 を定めています。


警備業法17条1項 ( 護身用具 )

警備業者及び警備員が警備業務を行うに当たつて携帯する護身用具については
  公安委員会は、公共の安全を維持するため必要があると認めるときは、
  都道府県公安委員会規則を定めて、警備業者及び警備員に対して、
その携帯を禁止し、又は制限することができる。」

警備業法21条2項 ( 警備業者の責務 )

警備業者は、その警備員に対し
 
 警備業務を適正に実施させるため、
  この章の規定によるほか、内閣府令で定めるところにより教育を行うとともに、
  
必要な指導及び監督をしなければならない。」



このように、警備業者には 「 警備員が護身用具の携帯制限に反しないように指導し監督する義務 」 があるのです。

護身用具保管・管理義務はこの警備員に対する指導・監督義務から生じるものです。

それを次に説明します。


c.護身用具保管・監督義務懈怠の具体例


( 警備員に警棒を貸与する場合 1 )


たとえば、

施設夜間巡回警備と交通誘導の二つの業務を行う警備員がいる。
法律上、施設夜間巡回警備のときには警棒を携帯できるが、交通誘導のときには警棒を携帯できない。

この警備員には警棒を貸与して、施設巡回警備のときだけ携帯するように指示している。


この場合、警備業法21条2項の 「 警備員に対し、警備業務を適正に実施させるために必要な指導をしている 」 ことになります。
『 施設巡回警備のときだけ警棒を携帯するように 』 指示しているからです。

しかし 「 警備業務を適正に実施させるために必要な監督をしている 」 かは問題となります。

警棒を警備員に貸与して、「警備員が交通誘導のときにも警棒を携帯することができる状態にしている」からです。


このような場合は、警備員が巡回に出発するときに営業所や基地局に立ち寄って警棒を受け取り、巡回が終了したら警棒を返却させるなどの措置が必要でしょう。


( 警備員に警棒を貸与する場合 2 )


では、施設夜間巡回業務だけをする警備員に警棒を貸与する場合はどうでしょう。

この警備員は 「 法律で警棒の携帯を制限されるような業務 」 にはつきません。
警棒を貸与していても 「 警備業務を適正に実施させる 」 ことができるのです。

だから、警備業者は警備員に対する監督義務を果たしているとも言えます。


しかし、この警備員が休日に警棒を着衣の下に付けて外出したらどうなるでしょう。
この警備員は軽犯罪法違反となりますが、警備業者にはなんら責任は生じないのでしょうか。

この場合、警備員は休日で警備業務を行っていないのだから、
警備業法21条2項 の「 警備業務を適正に実施させるために必要な監督 」 とは関係ないように思えます。

警備業者は警備員の私生活まで監督することはできません。
しかし、警備員の私生活での違法行為が 「 警備業者がその警備員に対して警棒を貸与したことで可能になった 」のなら警備業者に何らかの監督責任が生じるでしょう。

警備員に対する監督義務を果たすためには、警棒を貸与している警備員に対し休日には警棒を返却させることが必要でしょう。


( 警備室から警棒が紛失した場合 )


施設常駐警備の場合、施設内夜間巡回のときに警棒を携帯します。

その警棒が警備室に保管されています。
通常は鍵のかかるキャビネットに保管されています。

しかし、

警棒がむき出しのまま箱に入れられ、警備員以外の者が出入りできる場所に置かれていた。
警備員以外の誰かがこの警棒を盗った。
その者がこの警棒を使って強盗をした。

このような場合、警備業者の責任は問われないのでしょうか。
警備業者の護身用具保管・管理義務懈怠にならないのでしょうか。


検討の余地はありますが、警備業者の護身用具保管・管理義務懈怠にはならないと思います。

理由は、

・警備業者の護身用具保管・管理義務が銃砲刀剣類のように法律上はっきりと定められていない。

・警備業者の護身用具保管・管理義務は 警備員の指導監督義務から生じるものであり、
  警備員以外の者が行った行為に対してまで生じない。。
 
・警棒は誰でも簡単に入手できるものであり、警備業者だけが入手できるものではない。



5.〇〇警備会社の警棒紛失について


・護身用具一覧に 「 現在ある警棒の数 」 を書けば問題はないのです。

・『 去年より一本少ないけど‥。』 と質問されたら、『 本数を減らしたのですよ。』 と答えればいいでしょう。

・『 壊れてしまった』 と答えると、『 どのような状況でどのような使い方をしたのか?』 と違法行為を疑われます。

・『なくなったのです。』 と答えると、『 どのような保管・管理をしていたのか』 と突っ込まれます。

・『 一年半前になくなったようなのです。』 と答えると、『 前回の立ち入り検査でチェックしなかったのか!去年の書類をもう一度検査する。』と言われます。

・『一年半前に辞めた選任が盗んだようなのです。』 と紛失の責任を部外者に押しつけても、前回の立ち入り検査漏れは同じです。
   この場合は、さらに、その選任から人権侵害や信用毀損で訴えられます。
  その係争が公になって顧客名が世間に知れたり、顧客を巻き込むことになったりすれば、受注している施設警備は解約されるでしょう。



個人には基本的人権が保障されています。
基本的人権の制約は合理的最小限のもので法律で明確に定められていなければなりません。

警備業者と警備員は警備業法により基本的人権を制約されています。

我々は警備業法で 「 何をすることが禁じられているのか 」、「 何をすることが義務づけられているのか 」 をはっきりと知る必要があります。

警備業者と警備員が従うのは警備業法です。
“ お上 ” に卑屈になることはありません。

もちろん、 “ お上 ” に卑屈になって、警備業法が求める以上の制約や義務を甘受しても、それはあなたの自由です。

護身用具一覧にノーベル警棒のシリアルナンバーを記載したり、警棒をシリアルナンバーで厳重管理したりするのは、あなたの自由です。
警棒がなくなった原因を何年も前にさかのぼって調べるのもあなたの自由です。

しかし、そのツケを他に回してはいけません。
そのために他人の権利自由を侵害してはなりません。


根も葉もない噂が “ はっきりと ” 聞こえた場合は、徹底的に責任を追及いたします。


つづく。

2012.09.22



選任編目次にもどる    top    万引きGメン実戦教本