SPnet  選任業務編


気になること @- 所属する警備会社とは別の警備会社の選任になれるか?


0.基礎知識-指導教育責任者制度と言葉の意味


※資格者でない方、警備業関係者でない方のための基礎知識です。
   資格者・警備業関係者は読みとばしてください。


a.指導教育責任者制度

警備業法は「警備業者・警備員の犯罪防止、警備員の資質の向上」を目指して昭和47年に制定され、現在まで何度も改正されてきました。

昭和57年の改正では、警備業が届出制から認定制になり、警備員指導教育責任者制度が設けられました。

警備業者に警備員の教育・指導義務を課しても、実際にはしっかりとやられていない。だから警備員の質がいつまでたってもよくならない。
警備業者に『警備員の教育・指導をしっかりやりなさいよ!』と言っていてもらちがあかない。
それなら、「警備員を教育・指導する専門の係」を配置させよう。

このような目論見で生まれたのが警備員指導教育責任者制度です。
この専門の教育係が「
警備員指導教育責任者」です。(以下では指導教育責任者)。


b.指導教育責任者と指導教育責任者資格者証保持者

警備業者は指導教育責任者資格を持った者の中から指導教育責任者を選び公安委員会に届けなければなりません。

指導教育責任者資格は警備員従事実績3年以上の者が公安委員会の講習を受けて取得します。
この資格を持っている者が「
指導教育責任者資格者証保持者」です。


警備業者が警備員の教育・指導の専門係(指導教育責任者)を選ぶことを「
選任する」といいます。

そこで指導教育責任者を「
選任」と言うことがあります。
『私は○○警備会社の選任です』と自己紹介したり、指導教育責任者の仕事を「
選任業務」と言うのはこのためです。

また、指導教育責任者を略して「
指教責(しきょうせき)」とか「指教(しきょう)」とか「指導教(しどうきょう)」と言うこともあります。


c.指導教育責任者制度の強化

当初、指導教育責任者は「一つの会社に一人」でした。

しかし、大きな会社ではあちらこちらに支社や営業所を作るので、本社に指教責が一人では警備員の教育・指導がしっかりと行われない。
警備員の教育・指導を徹底するためには「警備会社に指教責一人」ではなく「各支社・営業所に指教責一人」にした方がよい。


また、指導教育責任者自身もしっかりとした知識・技術を持っていなければならない。

従来の指導教育責任者資格は一種類であり、1号〜4号どれかの警備員実績があれば講習が受けられ、この資格を取得することができました。
その結果、たとえば、交通警備員実績三年の者でも講習を受ければ指導教育責任者資格が得られ、
交通警備だけでなく、やったことのない施設警備・貴重品運搬警備・身辺警備の指導・教育ができました。
これではしっかりとした教育・指導ができるはずがありません。


以上のことから、平成16年改正(平成17年施行)では、
指導教育責任者資格を1号〜4号の四種類に分け、各々の資格取得にその警備業務三年の実績を必要としました。
そして、指導教育責任者を各営業所の各業務につき一人置くことにしました。

たとえば、交通警備と施設警備をやっている警備会社が本社の他に営業所(支社)を持っていれば、
本社に交通警備の指教責と施設警備の指教責、営業所にも交通警備の指教責と施設警備の指教責を置かなければなりません。
今までなら一人でよかった指教責が四人も必要になったのです。

※旧資格者は1号〜4号業務につき希望する業務の特別講習を受け新しい資格に切り換えました。
   1号〜4号すべての業務の特別講習を受ければ1号〜4号の新しい資格を得られたのです。
  
  今では各業務につき三年の従事実績が必要ですから、1号〜4号すべての指導教育責任者資格を得るためには12年かかることになります。
 
  実際は実績なしでも「実績あり」として管理職が資格を取っていますが、これは完全な警備業法違反。
  もちろん資格剥奪、悪くすると警備業界から5年間追放されます。
  さらに、このような嘘の実績証明を出した指教責も勤務懈怠で資格剥奪、両罰規定で警備会社も営業停止や認定取り消しとなるでしょう。
   
  所轄警察や公安委員会は見て見ぬふりをしていますが、表沙汰になれば動かざるを得ません。
  テンプラ実績で資格を取った管理職は、密告されないように一般隊員を大切にしましょう。


d.専任と兼任

この平成16年改正は警備業者に大きな負担を強いることになりました。

そこで、警備業法施行規則で次のように定め、警備業者の負担を軽くしました。
@一つの営業所が複数の警備業務を行っている場合は指教責一人でよい
A一つの営業所の指教責は近くの営業所の指教責を兼務できる

たとえば、X警備会社が施設警備と交通警備をやっている場合、本来二人の指教責が必要だけれど一人でも構わない。
もちろん、その指教責は1号指教責資格と2号指教責資格が必要。

また、X警備会社の本社の近くにA営業所があれば、本社の指教責がこのA営業所の指教責を兼務できる。

結局、小さな警備会社では実質的に今までどおりの「一つの会社に指教責一人」になったのです。


ここで、ある営業所の指教責が別の営業所の指教責を兼務する場合を「
兼任」といいます。

上例でX警備会社本社の指教責甲が近くのA営業所の指教責を兼務するのなら、
甲はX警備会社本社の「
専任指導教育責任者」であり、X警備会社A営業所の「兼任指導教育責任者」となります。

なお、一つの営業所の中で複数の警備業務の指教責を一人で行う場合は「兼任」ではありません。
X警備会社本社が施設警備と交通警備をやっていて甲がその二つの業務の指教責となる場合、甲はX警備会社本社の1号専任指教責であり2号専任指教責です。

またこの甲が施設警備と交通警備をやっているA営業所の指教責を兼務する場合なら、甲はA営業所の1号兼任指教責・2号兼任指教責となります。

指教責が専任であるか兼任であるかは認定申請届や営業所変更届の記載事項になっています。

※指導教育責任者の「配置状況」→→→認定申請書主たる営業所変更届その他営業所変更届

以下の2・3で説明しますが、
兼任の場合は公安委員会の承認が必要だったり、承認するときに専任の方の営業所を管轄する公安委員会の意見を聞いたりしなければなりません。
そのために「その指教責が専任か兼任か」を知る必要があるのです。


1.問題設定


X警備会社の警備員甲が指導教育責任者資格をもっている場合、Y警備会社の選任になることがあります。
もちろん、甲がX警備会社の指教責として選任されていない場合です。

甲にとっては、使っていない指導教育責任者資格を使うことでアルバイト収入が得られます。
Y警備会社にとっては、安く指導教育責任者を確保することができます。
特に、開業予定の警備会社がこの方法で「取り敢えず指導教育責任者を確保して開業する」ことが多く行われています。

これは警備業法に違反しないのでしょうか?
警備業法違反なら罰金刑以上で甲は資格剥奪、Y警備会社は認定取り消し、そして甲もY警備会社も警備業界追放5年。
指教責資格を持っている者や開業予定の警備会社にとっては気になるところです。

所轄警察署や公安委員会に質問すれば「違法かどうか」が分かりますが、藪蛇(やぶへび)になる危険があります。
またこれが違法でなくても、『その方法で選任して構わないよ』と言う担当はいないでしょう。

ここでは、選任について警備業法や警備業法施行規則が何を要求しているのか、警察・公安委員会はどのような取り扱いをしているのかを見ていきましょう。

断っておきますが、ここで説明するのはあくまでSPnetの解釈です。
『こんな解釈も成り立つ』という程度のものです。
その解釈が間違っていてもSPnetはいかなる責任も取りません。

あくまで、警備業法や警備業法施行規則を知るための問題設定だと考えてください。


2.法令の定めること


我々が従わなければならないのは法令です。
ここで法令とは警備業法警備業法施行規則です。

(警備業法22条)

警備業者は、
営業所(警備員の属しないものを除く。)ごと及び当該営業所において取り扱う警備業務の区分ごとに
警備員の指導及び教育に関する計画を作成し、その計画に基づき警備員を指導し、及び教育する業務で内閣府令で定めるものを行う
警備員指導教育責任者を
次項の
警備員指導教育責任者資格者証の交付を受けている者のうちから選任しなければならない

ただし、当該営業所の警備員指導教育責任者として選任した者が欠けるに至つたときは、その日から十四日間は、警備員指導教育責任者を選任しておかなくてもよい。


警備業法が要求することは、

@営業所ごと、取り扱い警備業務ごとに指導教育責任者を選任する。
A指導教育責任者は指導教育責任者資格者証保持者から選任する。
B指導教育責任者が欠けた場合は、その日から14日間は指導教育責任者を選任しなくてもよい。


(警備業法施行規則39条)

法第二十二条第一項 の規定により選任される指導教育責任者は、
次項及び第三項に規定する場合を除き、
営業所ごと及び当該営業所において取り扱う警備業務の区分ごとに、
専任の指導教育責任者として置かれなければならない

2.二以上の警備業務の区分を取り扱う一の営業所において
これらの警備業務の区分のすべてに応じ警備業務の区分に係る指導教育責任者資格者証の交付を受けている者が置かれる場合は、
当該これらの
警備業務の区分ごとに専任の指導教育責任者をそれぞれ選任することを要しない

3.専任の指導教育責任者が置かれている営業所に近接する営業所でその属する警備員の数が五人以下であるものについて、
当該指導教育責任者が当該営業所において取り扱う警備業務の区分に係る指導教育責任者資格者証の交付を受けており、
かつ、当該指導教育責任者を当該警備業務の区分に係る指導教育責任者として置くことにつき
当該営業所の所在する都道府県の区域を管轄する公安委員会の承認を得た場合は、専任の指導教育責任者を選任することを要しない


警備業法施行規則が要求することは、

@営業所ごと ・ 取り扱い業務ごとに
専任の指導教育責任者を選任しなければならない。(1項-警備業法@の制限)

・専任とは専属という意味です。
・つまり、指導教育責任者は選任業務(警備員の教育・指導計画作成やその実施など)を専門的に行う者でなければなりません。
・名前だけの指導教育責任者ではいけないのです。

A.同一営業所では、
異なる取り扱い業務について同一人を指導教育責任者として選任してもよい。(2項-警備業法@の例外)

・一つの営業所で1号業務と2号業務を行う場合なら、一人の者が1号の指導教育責任者と2号の指導教育責任者になってもよい。
・この場合、この指教責は1号についても2号についても専任指導教育責任者です。
※「専任の指導教育責任者をそれぞれ選任することを要しない」→「一人の者でそれぞれの専任指導教育責任者となる」
※甲が1号業務と2号業務の指導教育責任者になった場合、甲は1号専任指導教育責任者、2号専任指導教育責任者です。
    届出書の「指導教育責任者の配置状況」は専任に○。「選任に係る警備業務の区分」は1号と2号に○。

Bある営業所の専任指導教育責任者は、
次のすべての要件を充たす場合に別の営業所の指導教育責任者を兼任することができる。(3項-警備業法@の例外)
  イ..別の営業所が
近接していること
  ロ.別の営業所に属する警備員が
5人以下であること
  ハ.別の営業所を管轄する
公安委員会の承認をえること

※A営業所の指導教育責任者甲がB営業所の指導教育責任者を兼ねるときは、B営業所の選任届けの「専任・兼任」は兼任に○。
※A営業所の1号指導教育責任者甲がB営業所の1号指導教育責任者と2号指導教育責任者を兼任するときはどうなるのでしょう?
   甲はB営業所の指導教育責任者を兼任するのだから、B営業所の選任届けでは1号2号とも兼任でしょう。
※ただし、専任と兼任のどちらに○をするかは選任届けを出すときに担当に聞けば済むことです。「議論のための議論」は止めましょう。
    

以上施行規則が要求することを具体例で確認してみましょう。

・甲は1号と2号の指導教育責任者資格を持っている。
・X警備会社はA県に本社(主たる営業所A)、B県に支社B、C県に支社Cがある。
・甲はA・B・Cのどれかで、1号と2号の指導教育責任者になれる。
・甲がAの指導教育責任者である場合、B・Cの指導教育責任者を兼任することができるのは次のイ・ロ・ハをすべて満たすとき。
  イ.B・CがAと近接していること
  ロ.B・Cの警備員が5人以下であること
  ハ.B・Cをを所轄するB県・C県の公安委員会の承認をえること。

ここで、「近接する」という抽象的な基準を使っていること、「兼任できる営業所の数に限定がない」ことに注意してください。
警備業法施行規則では「警備員5人以下の近接する営業所で、その営業所を管轄する公安委員会の承認があれば」指導教育責任者を兼任できるのです。
「何q以内」という距離制限や「兼任する営業所の数」に制限はないのです。


3.警察庁の解釈運用基準


次に出てくるのが「影の警備業法」です。
『警備員の制服には60平方p以上のワッペンを胸部と上腕部につけなければならない。』を全国の警備業者に守らせている警察庁の解釈運用基準です。

これは法令ではありません。
警察庁の警備業法・警備業法施行規則の解釈です。
一行政機関の単なる解釈にすぎません。

警察庁の解釈運用基準に警察行政機関は従わなければなりませんが、我々国民は従う必要はありません。
国民が従わなければならないのは憲法と立法府が定める法律です。

しかし、所轄警察署や都道府県公安委員会はこの解釈運用基準によって届出書を受理したり取り締まりを行ったりします。
そこでは「それが警備業法違反かどうか」をこの解釈運用基準によって判断し、届出書受理や、営業停止・認定取り消しなどの行政処分が行われます。

もちろん、これが不服なら行政処分取り消しを裁判所に訴えることができます。
裁判所で警察庁の解釈が間違っていると判断されれば処分は取り消されます。

こんなことをどこの警備会社がするでしょうか。
みんな何の文句も言わずに60平方p以上のワッペンを胸部と上腕部に付けています。
指導教育責任者資格講習では「それが警察庁の解釈に過ぎない」などとは説明されません。「そうしなければならない」ように説明されます。

平民にとって「お上の考え方」は法律と同じなのです。
「お代官様」の時代と何も変わっていないのです。

前置きがながくなりました。
警視庁の解釈運用基準を見ていきましょう。


(警察庁の解釈・運用基準-第20 指導教育責任者(法第22条関係)

1 総説
法第22条第1項中「営業所(警備員の属しないものを除く。)」とあるのは、
事業規模の大きい警備業者の多くの営業所のうちには、
主たる営業所(本社)や多数の営業所を指揮統括する支社のように警備員が所属しない営業所が例外的に存することが想定されるからである。

2 府令の定め

(1) 府令第39条第1項中「
営業所ごと(略)に、専任」とは
その
営業所に常勤して指導教育責任者の業務に従事し得る状態にあることをいう。
従って、他の営業所とかけ持ちしている場合、
他に職業を持っていて通常の営業時間にその営業所に勤務できない状態にある場合等は、専任とはいえないが、
指導教育責任者の業務のみに専従することまで必要とするものではなく、
指導教育責任者の業務に支障のない範囲で、警備業務に従事したり、当該営業所の他の業務に従事するものであってもよい

(2) 府令第39条第2項の規定により、
指導教育責任者は複数の警備業務の区分の指導教育責任者を兼ねることができる
しかしながら、当該警備業務の区分ごとに属する警備員が相当数となるような営業所については、各区分ごとに指導教育責任者を選任することが望ましい。

(3) 府令第39条第3項中
「近接する」とは
二つの営業所における指導及び教育に関する業務を適時適切に行うことができる距離にあることをいい、
おおむね
片道1時間以内で行ける距離にあることが必要である。

(4)
兼任の承認は、
「近接」及び「5人以下」の要件を満たし、
当該指導教育責任者が当該営業所において取り扱う警備業務の区分に係る指導教育責任者資格者証の交付を受けており、
かつ、当該指導教育責任者による
警備員に対する指導及び教育が十分に行われると認められる場合のみ、
当該営業所の当該警備業務の区分について行うものとする。

(5) 兼任を認めることにより
当該指導教育責任者が3以上の営業所の指導教育責任者を兼ねることとなる場合には、兼任を認めないものとする。

(6)
専任の指導教育責任者の置かれている営業所が他の都道府県の区域内に所在するときは、当該区域を管轄する公安委員会の意見を聴いて承認を行うものとする。

(7) 承認の要件を満たさなくなったときは、当該承認を取り消すものとする。

-以下略-


警察庁の解釈運用基準が要求することは、

@指導教育責任者は「その営業所に常勤して指導教育責任者の業務を行える者」でなければならない。

・ 他に職業を持っていて通常の勤務時間に勤務できない者は指導教育責任者として選任することはできない。
・選任業務に支障のない範囲で警備業務などの仕事をしてもよい。

※施行規則の「専任」の意味を具体的に解釈したものです。

A同一営業所で異なる業務の指導教育責任者になっても良いが、警備員数が多いときはならないのが望ましい。

※施行規則では「異なる業務の指導教育責任者になれる」、解釈運用基準では「警備員数が多いときはならない方がよい」
   これは施行規則の文言を解釈したのではありません。 指導教育責任者の制度趣旨から警察庁が独自に作り出した制限です。
    「のぞましい」という表現を使って逃げていますが、「のぞましい状態になるまで」執拗な指導が続くことになります。
   だからこれは行政機関による実質的な立法で、三権分立を害するものであると言っても言い過ぎではないでしょう。

B「ある営業所の指導教育責任者が別の営業所の指導教育責任者を兼任すること」をその営業所を管轄する公安委員会が承認するためには、次の要件を満たさなければならない。
   イその営業所にに片道1時間くらいで行けること。
   ロ.その営業所の警備員数が5人以下てあること。
   ハ.三つ以上の営業所の指導教育責任者になっていないこと。
   ニ.もともとの営業所を管轄する公安委員会の意見を聞くこと。
   ホ.イ〜ニの要件を満たさなくなった場合は承認を取り消すこと。

※イは施行規則の「近接」の解釈です。ロは施行規則と同じです。
※ハ・ニは施行規則の文言解釈ではありません。指導教育責任者の制度趣旨から警察庁が独自に作り出した制限です
   『行政機関による立法だ』と批判されるので、「行政機関内部の承認の要件・承認のやり方」として逃げています。
   しかし、承認されなければ兼任できないので実質的な立法です。
   ハの制限は行政訴訟で争う余地のあるものでしょう。   


警察庁の解釈運用基準を具体例で確認してみましょう。

・甲は1号と2号の指導教育責任者資格を持っている。
・X警備会社はA県に本社(主たる営業所A)、B県に支社B、C県に支社Cがある。

・甲はA・B・Cのどれかで、1号と2号の指導教育責任者になれる。
・ただし、甲はAに常勤して選任業務に従事できる状態でなければならない。
・甲は選任業務に差し障りのない範囲で他の業務をしても構わない。
・1号警備員と2号警備員が多いときは、両方の指導教育責任者にならない方がよい。

・甲がAの指導教育責任者である場合、B・Cの指導教育責任者を兼任することができるのは
  イ.B・CがAと片道1時間くらいで行けること
  ロ.B・Cの警備員が5人以下であること
  ハ.B・Cを所轄するB県・C県の公安委員会の承認があること。
  ニ.B・C県公安委員会が承認するときは.A県公安委員会の意見を聞かなければならない。
  ホ.兼任は一つだけ。BかCかどちらかしか兼任できない。



簡単に言えば、
・指導教育責任者は常勤している正規スタッフでなくてはいけません。
・警備員の数が多いときは、業務ごとに別々の指導教育責任者を選任しましょう。
・他の営業所の指導教育責任者を兼任させるときは一個だけです。いくつも兼任させてはいけません。
・兼任させる営業所は警備員数5名以下で片道1時間くらいで行けるものに限ります。

これが実際に適用されています。

しかし、こうしてみればみな妥当なものです。
上で『行政機関による立法だ、三権分立を 害するものだ』と言いましたが少し過敏だったかもしれません。


4.所属する警備会社とは別の警備会社の選任になれるか


さて、「別の警備会社の選任になれるか」の問題です。
そんなことは法令や解釈運用基準には触れられていません。そんな場合など想定されていないからです。

まともに尋ねたら一蹴されるでしょう。

『なにイ〜ッ!「他の警備会社の選任になれるか」だって?指導教育責任者の仕事を片手間でやろうとしているのか!ダメに決まっているだろうが!』

しかし、警備員が5人くらいなら週に1日出勤すれば選任業務は十分こなせます。
30時間の新任教育は一カ月あれば四日間を確保できます。現任教育は一日で済みます。
指導教育責任者の仕事は週に五日、40時間常勤しなければできないものではありません。

施行規則の「専任として」、解釈運用基準の「常勤」や「片道1時間以内」・「兼任は一つ」は、指導教育責任者を形だけの役職にしないためのものです。
指導教育責任者の仕事は「警備員の指導及び教育に関する計画を作成し、その計画に基づき警備員を指導し、及び教育する業務で内閣府令で定めるもの(警備業法22)」です。
この仕事を十分にやることができれは、他の警備会社の指教責になっても施行規則の「専任として」を満たしているといえます。


所属する警備会社とは別の警備会社の選任になる場合には二つの場合があります。
所属する警備会社で指教責として選任されていない場合と選任されている場合の二つです。

この二つについて検討してみましょう。


a.甲はX警備会社の警備員である。甲が1号指導教育責任者資格を持っている場合、Y警備会社の1号選任になれるか。


甲がX警備会社の1号指教責として選任されていない場合です。

この場合、施行規則の「専任の指導教育責任者として置かなければならない」に反するかどうかがが問題になります。

警察庁の解釈運用基準では
他に職業を持っていて通常の営業時間にその営業所に勤務できない状態にある場合等は専任とはいえない」ので甲はY警備会社の選任にはなれません。

しかし、Y警備会社ができたばかりで隊員が居なかったり、居ても5名くらいなら常勤でなくても指導教育責任者の仕事は十分にできます。

また、警察庁の解釈運用基準でも「指導教育責任者はその仕事に差し支えがない範囲で警備業務等の他の仕事をしてもよい」としています。
それなら、「別の警備会社で警備業務をやっている者が指導教育責任者になってもよい」ことになります。

しかし、そんなことを許せば結局指導教育責任者は形だけのものになってしまいます。
甲の「アルバイト収入を得るために別の警備会社の指教責になろう」という目的意識や
Y警備会社の「指導教育責任者を安く確保しよう」という営利優先意識が指導教育責任者制度を形骸化させてしまうのです。

だから、裁判に持ち込んでも勝てる見込みはほとんどないでしょう。


もっとも、Y警備会社が所轄警察署(公安委員会)に甲を指教責として届けても、
 「甲が他の警備会社の警備員であるかどうか・他に職業をもっているかどうか」はチェックされません(チェックできません)。
 また、「常勤であるかどうか・勤務日数や給料」もチェックされません。
 だから、実際には甲はY警備会社の指教責となれます。

もし、 何らかの事情でそれが分かっても、警察(公安委員会)がすぐに Y警備会社を警備業法違反で摘発することはないでしょう。
それは、施行規則の「専任として」の解釈が争われる可能性があるからです。

まずはY警備会社に指導でやんわり、それに従わなければ指示処分のイエローカード、それでも無視すれば伝家の宝刀。

さらに、伝家の宝刀を抜く場合でも、始めから施行規則39条・警備業法22条違反を持ち出すことはないでしょう。

警備業者などたたけば必ずホコリがでます。
法定備え付け書面の作成ミスなど簡単に見つかります。

警備員の住民票を取るのが遅れて、警備員名簿に本籍を記載していなかった、
あちらこちら現場が変わるので、警備員名簿の「従事させる警備業務の内容」の記載を忘れていた。
こんな小さなことでも行政処分を行えます。(実際例)

突然立ち入りをすれば、来月分の指導計画書を作っていなかったり、一カ月前に来期分の教育計画書を作っていなかったり。
契約前書面や後書面の交付など警備業法違反摘発のポイントはいろいろあります。

だから、わざわざ施行規則の「専任」を争う必要はないのです。


またこの場合、Y警備会社がたたかれても甲本人がたたかれることはないでしょう。

警備業法の規制はまず警備業者に向けられているからです。
お上は『警備業者をまともにすれば、警備員はまともになる』と考えているのです。

 指導教育責任者資格でアルバイト収入を得ている皆様は一安心ですね。

ただ、そのようなアルバイト感覚が「警備員の教育に金をかけない警備業者」を助け、警備員の資質向上を害していることを知っておいてください。

警備員の資質が向上しなければ、いつまでたっても警備員の賃金や地位は向上しないのです。
そしてあなたはいつまでたっても指教責資格で副収入を得なければならないのです。


なお、逆の場合も同様です。

『逆の場合?』

ある警備会社の選任が、別の警備会社の警備員になる場合です。
上例で言えば、X警備会社の1号選任甲がY警備会社の警備員になる場合です。

こんなことは所轄警察署や公安委員会には分かりません。
分かった場合のことです。

警察庁の解釈運用基準では「常勤性」が害されるのでアウトです。
もちろん、施行規則の「専任」の解釈が争われるので、警察・公安委員会は別の方法で締め上げます。


ただし、締め上げられるのは甲です。
甲の指教責としての資質が問題になるからです。

Y警備会社は事情を知らなければたたかれません。

甲にプレッシャーをかけてY警備会社を辞めさせたり、X警備会社に甲を選任から外すように指示したり。
甲やX警備会社が従わなければ、甲のX警備会社での選任業務のミスを見つけて勤務懈怠・警備業法違反で甲の資格剥奪。
もちろんX警備会社も警備業法違反で営業停止や認定取り消し。

X警備会社は「甲が他の警備会社で働いていること」を知らなかったのだから『そんな、ムチャクチャなぁ〜!』

そんなことにならないように、選任には十分な給料を与えておかなければならないのです。


b.甲はX警備会社の2号選任であるが1号の指導教育責任者資格も持っている。甲はY警備会社の1号選任になれるか。


X警備会社の2号選任である甲が、「Y警備会社の2号選任になる場合」ではありません。
これがダメなのは当然です。
そんなことを許せば、一人の者が多数の警備会社の選任になることができるからです。

ここで問題にするのは、X警備会社の2号選任である甲が、「Y警備会社の1号選任になれるか」です。

甲は1号と2号の指教責資格を持っています。
しかし、所属するX警備会社で使っているのは2号指教責資格だけです。1号指教責資格は使っていません。
この使っていない1号指教責資格を別の警備会社で使えるかどうかの問題です。

使っていない指教責資格を使う点では、aの場合と同じです。
しかし、今度は甲がX警備会社の指導教育責任者です。
ある警備会社の指導教育責任者が別の警備会社の指導教育責任者になる場合です。

『これはダメだろう…。』と直感するでしょう。

これができるのなら、持っている指導教育責任者資格の数だけ別の警備会社の選任になれます。
甲が1号〜4号の指教責資格を持っていれば、施設警備会社,交通警備会社,貴重品運搬警備会社,身辺警備会社の四つの警備会社で指導教育責任者になれるのです。

これではしっかりとした指導教育ができるはずがありません。
資格は四つあっても身は一つですからね。


『そんな大げさな…。
  Y警備会社の規模がもっともっと小さくて、甲がY警備会社の選任業務をしてもx警備会社の選任業務に支障がない場合のことですよ。
  たとえば、Y警備会社がX警備会社の近くにあってY警備会社の警備員数が5名以下の場合ですよ。
  こんな場合なら、甲がX警備会社の別の営業所の指導教育責任者を兼任することと同じじゃないですか…。』
  

しかし、施行規則の定めた例外は「指導教育責任者制度強化で大きくなりすぎた警備業者の負担を一時的に軽くするためのもの」なのです。

従来、指導教育責任者資格は1号〜4号すべてを含んだ資格であり、一つの会社に指導教育責任者が一人いればよかった。
それを、平成16年の改正で、指導教育責任者資格を1号〜4号の別々の資格に分け、
各営業所ごとに、その業務ごとに指導教育責任者を置かなければならないとした。

これではあまりにも警備業者の負担が大きくなり、指導教育責任者制度強化が「絵に描いた餅」になってしまう。
そこで内閣布令(警備業法施行規則)で例外を認めて当面の警備業者の負担を軽くしたのです。
それが、「同じ営業所であれば異なる業務について一人の者が指導教育責任者になってもよい」・「近接する営業所の指導教育責任者を兼務してもよい」なのです。

だから、複数の警備業務の指教責を一人で行うことや、別の営業所の指教責を兼任することは、あくまで同じ警備会社の中でのことなのです。
別会社の指教責兼任を認めるものではないのです。


もっとも、X警備会社の指導教育責任者である甲がY警備会社の指導教育責任者になっても、
X警備会社とY警備会社を所轄する公安委員会が別々なら「甲が二つの警備会社の指導教育責任者になっていること」は分かりません。

また、届には「X警備会社・指導教育責任者甲・2号・専任」、「Y警備会社・指導教育責任者甲・1号・専任」で偽りはないので「虚偽の届出」にはなりません。

しかし、壁に耳あり障子に眼あり。
秘密はどこからか漏れてしまうのです。

この場合でもY警備会社に対して「指導→指示処分→レッドカード」という順番をたどるでしょう。

しかし、今度は甲にも災いが及ぶでしょう。
甲の指導教育責任者としての資質が問題になるからです。
この場合は、甲のX警備会社での選任業務の細かい不備を見つけて資格剥奪にもっていくでしょう。
危ない橋は渡らないのが得策です。


なお、「一つの営業所では異なる業務について一人の指導教育責任者でよい」・「他の営業所の指導教育責任者を兼務してよい」というのは警備業法施行規則の規定です。
警備業法施行規則は内閣布令です。
内閣布令は内閣の命令であり法律ではないので、それを変えるのに法律改正手続きを必要としません。

平成16年改正からそろそろ10年。
この施行規則の例外がいつなくなっても不思議ではありません。

個人事業者がいるから、「同一営業所では異なる業務について一人の指導教育責任者でよい」は存続させるでしょうが、
「異なる営業所の兼任」はなくなるかもしれませんネ。

県内の各市町村に警備会社の営業所がある理由を知っていますか?
その市町村の公共調達参加資格を得るためですよ。

営業所が多ければそれだけ競争が激しくなり、値引き合戦で警備料金はドンドン下がり、そのツケは警備員に回ってきます。
指教責の兼任を禁止して営業所の数が減っても警備員の待遇が悪くなることはないのです。


2013.08.03


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