店長のための保安のイ・ロ・ハ
6.私服保安導入の前に知っておいてほしいこと
ここでは、私服保安を導入する前に知っておいてもらいたいことを書きます。
私服保安を導入する店長さんは『さあ、私服保安がやって来るぞ!ドンドンと万引きを捕まえてくれるゾ!』と期待しているでしょう。
しかし、その店に慣れるまでに時間がかかり、偶然に見つけた場合を別にして「最初の一人」を捕まえるまでにどんな腕利きでも1カ月程度かかります。
さらに、私服保安には「現認・中断なし・単品禁止」という「犯罪立証のため・誤認しないため」の検挙条件があり、これが揃わないと検挙しません。
私服保安が万引きを捕まえるのは「確実に犯罪行為を立証でき確実に有罪にできるとき」だけです。
また、万引きの少ない土曜・日曜・祭日に入店させたり、盗難が多いコーナーに貼りつかせたりすると検挙数が激減し、場合によっては三カ月検挙ゼロとなってしまいます。
最後に、私服保安業界には「小さな看板の警備業者」がたくさんあります。
独り親方、独り親方のグループ,師範と免許皆伝者達。
これらは「大きな看板の警備会社から独立した警備業者」です。中身は「全員が免許皆伝の腕利き」です。
私服保安業界では「警備料金が同じなら小さな看板を選んだほうがお得」なのです。。
この点も説明してあります。
★私服保安は店内カゴを持ちません-どのようにして万引きを見つけるか
★最初の一人を捕まえるまでに時間がかかる
・万引きが来なければ捕まえられない。捕まえなければ抑止効果はない。入店時間帯と曜日
★私服保安の選び方-検挙がないのには理由がある
★大きな看板と小さな看板の違い
1.私服保安は店内カゴは持ちません-どのようにして万引きを見つけるか?
『私服保安って,普通の買い物客に紛れて万引きを捕まえるのでしょう?だから店内カゴ…。』
これが一般常識です。
しかし、それは万引き犯人を追尾する場合のこと。それ以外のときは店内カゴなんか持ちません。
a.普通の買い物客に私服保安は見えない
店の従業員、マネキン(推奨販売員)さん、出入りの業者さんには私服保安が一目で分かります。
私服保安が怖そうなオッサンであろうが、人の良いオバサンであろうが同じです。
どんな服装をしていても、店内カゴを持っていても、カートに食料品を満載していてもすぐに分かります。
それは私服保安が「自分たちと同じように人を見ている」からです。
『あんなにすぐに分かるのだから、普通のお客さんに威圧感を与えるのでは…。』
ご心配なく、普通のお客さんに私服保安は見えていません。
それは普通のお客さんが「人ではなく商品を見ている」からです。
店の関係者には異様で威圧感を与える私服保安ですが、お客さんには「普通の買い物客」にしか見えていません。
だから、動くのにじゃまになる店内カゴを始終持っている必要はないのです。
b.万引き犯人もすぐに見つける
店関係者はすぐに私服保安を見つけますが、これは万引き犯人も同じです。
それは彼らも「人を見ている」からです。
万引き犯人が私服保安に気がつくと、「盗らず」に出て行きます。
そのまま何もせずに出て行くか、盗ろうとした商品を店内に放置して出て行きます。
万引き犯人を捕まえるためには、「盗らせて」、「店から出させ」なければなりません。
そのためにはこちらが私服保安であることに気づかれてはなりません。
こんなときに店内カゴを持って「買い物客のふり」をするのです。
c.万引き犯人を先に見つける
『万引き犯人がすぐに私服保安を見つけるのなら、私服保安はいつも店内カゴを持っていなければならないンじゃない?
そうでないと、万引き犯人が店に入ってきても、すぐに私服保安を見つけて「盗らない」で出て行ってしまうじゃない…。』
私服保安の初心者ならそう考えるでしょう。
そして、ラップやカップ麺を入れた店内カゴに腕を通して、腕組みしながら店内を歩き回っているでしょうネ。
しかし、そんな必要はありません。
私服保安の方が先に万引き犯人を見つけるからです。
ここで「私服保安はどのようにして万引き犯人を見つけるのか」を少し説明しておきましょう。
①.私服保安は遠くを見ている
私服保安が見ているのは20m以上先です。
食品売場でいえば「サッカー台あたりからタテの通路」,「パン出口から農産入口」、逆に「売場奥からパン・弁当・デリカ入口」。
私服保安は遠くから人の集団を見ています。
②.万引き犯人は浮き上がってくる。
万引き犯人は「盗ろう」と決意・計画して売場に入ってきます。
そんな万引き犯人は普通の買い物客とは明らかに違います。
商品選びに迷いがありません。「盗るもの」を決めているからです。
値段を気にしません。「お金を支払わない」からです。
「どちらが良いか」など比較しません。比較するくらいなら二つとも選びます。どうせタダなのですから。
当然、周囲を気にしています。
表情もこわばっています。
すべての動作が素早く、ゆっくりしていません。
早く盗って早く逃げたいのです。
このように、万引き犯人が遠くに見える集団から浮き上がってきます。
そのような人物に狙いをつけて追尾するのです。(拾う)
③.万引き犯人にはまだ気づかれていない。
万引き犯人はキョロキョロと辺りを気にしますが、見えている範囲はせいぜい5m~10m。
私服保安は20m以上先から見ていますから、万引き犯人の視界には入っていません。
さらに、商品や商品棚の後から見ているので万引き犯人にはまったく見えないのです。
だから、万引き犯人を見つけるまでは店内カゴを持つ必要はありません。
万引き犯人を見つけてからは、近くに寄らなければなりません。
「何を棚取りしたか」、「それをどこに入れたか」、「入れた商品を捨てていないか」、「レジ清算しなかったか」を見なければならないからです。
万引き犯人の近くに寄れば「私服保安であること」に気づかれてしまいます。
この段階になって、初めて店内カゴを持って買い物客のふりをすることになります。
私服保安が手ぶらでいるときは「万引き犯人らしき者をまだ見つけていないとき」。
私服保安が店内カゴを持ったり、商品を手に取ったりしているときは「万引き犯人を追尾しているとき」なのです。
④.私服保安は動き回らない
このように、私服保安は「万引きを見つけるために」店内を動き回ることはありません。
動くのは「万引きと思われる者」を見つけて追尾するときです。
それまでは「お客の動向がよく分かる場所(お気に入りの場所)」でじっとしています。
動き回れば「近くの狭い範囲の人」しか見ることができないだけでなく、万引き犯人から先に見つけられてしまいます。
私服保安が売場前のベンチに座っていても、さぼっているわけではないのです。
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選任のための法律知識・
2.「最初の一人」を捕まえるまでに時間かかる
『腕利きの私服保安に来てもらったゾ!万引き犯人がドンドン捕まるゾ!』
残念ながらそうではありません。
どんなに腕利きの私服保安でも最初の一人を捕まえるまでに一カ月以上かかります。
10回以上の入店が必要です。
それは、私服保安にとって店内状況がまったく分からないからです。
後述するような「万引きの少ない店」ではこれよりずっと長くかかります。
a.万引きは多種多様
万引き犯人は多種多様。
・子育て中の若いママ。
・パート帰りに夕食の材料を盗りにくる図々しいオバサン。
・道徳観念のなくなったオバアサン。
・毎日の酒とつまみを拝借しにくるオジサンやオジイサン。
・悪人気取りの大学生や高校生。
・「盗ることを知った」中学生。
・「腹が減った」生活困窮者。
その手口も多種多様。
・米や洗剤の通路で商品をバッグに入れる。
・カートをサッカー台に横付けして段ボール箱に詰める。
・その場でポケットやセカンドバッグにねじ込む。
・カートごと出て行く。
・壁を作る。
・袖に入れる。
・手に持ったまま出て行く。
そして、現れる時間帯も違います。
・朝の家事を終わって、お姉ちゃんを幼稚園に迎えに行く前までの13時~15時。
・パートが終わって夕食の準備にかかる15時半~17時。
・パート前の9時~10時のツワモノ。
・捕まったあとで「歯医者の予約時間」を気にするオバアサン。
・フルタイムなら17時半~19時。
・中高生は学校帰りで土日は来ない。
・大胆なカゴ抜けは店内が混雑しているときに、古典的なバッグ入れは店内がすいているときに。
・しかし、昼飯前の弁当と夕食前の酒とつまみは優先。
・そして、転売目的のビール,米は神出鬼没。
私服保安が新しい店に入った場合、まず「その店にどのような万引きが居るか」を知らなければなりません。
万引きのタイプが分からなければ、人物(性別,年齢,職業)・手口・時間帯を推測できないからです。
「どんな魚がいるかが分からなければ、ポイントと針が選べない」のです。
b.とりあえず片っ端から追尾する
「その店にどのような万引きが居るか」を知るために私服保安がやることは「取り敢えず片っ端から追尾する」ことです。
万引きは一目で分かりますが、そうでなくても「少しでも怪しいことがあれば」確認のために追尾します。
・特売品を選ばなかった。
・高額商品を選んだ。値段を見なかった。
・カートに載せたバッグの口が開いている。
・黒いバッグを左肩に掛けている。
・カートに載せたカゴの中に手を入れている。カゴの中を整理している。
・二人で商品を交換し合っている。
・人通りの少ない通路(米・洗剤・トイレットペーバー)に入っていく。
・身なりがきたない。だらしない。
・独り言を言った。
・表情がこわばっている。
・目が合った。などなど。
もちろん、すべて問題なくレジ清算していきます。
万引きが売場に入ってから出て行くまでの時間は5分。
5分以上追尾しても出て行かないのなら、万引きではありません。
しかし、とにかく最後まで追尾します。
そして、その人を「少し怪しく見えるが安全な客である」リストに載せます。
次回からその人を追尾する必要はありません。
人とその行動にはその地域特有のものがあります。
「安全客リスト」を作りながら、その地域やその店の「不審に見えるが問題のない人と行動」を消去していけば、「本当に不審な人と行動」が分かります。
また「安全客リスト」が増えれば増えるだけ、売場を見ることに余裕ができます。
余裕ができればできるほど「5分で出て行く」万引き犯人を見つける可能性も高くなります。
映画館で目が慣れてくると周囲が見えてきます。
これと同じで、新しい店では「目が慣れるまで」に時間がかかるのです。
私服保安にとって「最初の一人を捕まえるまで」がとてもしんどいのです。
ところで、私服保安につけ回された安全客は不快な思いをしていないでしょうか?
ご心配なく、彼らは普通の買い物客ですから私服保安が見えていません。
追尾されていたことなどまったく気づいてはいないのです。
c.何度も盗らせて捕まえる--私服保安の鉄則
プロは誤認しません。
誤認は店に迷惑がかかるだけでなく、相手の人権を傷つけてしまいます。
私服保安はお金をもらっているプロです。
ブロは「依頼主や社会」に害を与えてはなりません。
私服保安を名乗る以上、絶対に誤認してはならないのです。
私服保安には「護らなければならない検挙要件(条件)」があります。
①棚取り現認(着手現認)
②入れる現認(現認)
③中断なし(注視)
④単品禁止
これは「誤認しないためと犯罪立証のために必要」なものです。
①は「犯人の持っていた商品が店の商品であること。犯人がそれを盗ったこと」を証明するためのもの。
②は「手に取った商品を犯人の支配下に置いたこと」を証明するためのもの。
③は「犯人が支配下に置いた商品を捨てたり他の者に渡したりしていない」ことを確認するためのもの。
④は「見間違いや犯人のハメコミを防ぐとともに私服保安の目撃証言の信用性を高める」ための安全ベルト。
私服保安はこの検挙要件が完全に揃わない限り万引き犯人を捕まえません。
そのために「何度も盗らせる」ことがあります。
私服保安の持っている鉄砲には弾が一発しか入っていません。
この一発で万引き犯人を完全に仕留めなければならないのです。
だから、一発を撃つまでにはそれなりの時間がかかります。
もちろん、日報に「今回も盗らせました」などとは書きませんが…。
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3.万引きが来なければ捕まえられない
スーパーマーケットに「万引きが居ない」ということは絶対にありません。
特に食品売場なら必ず居ます。
商品を入れた放置カゴや放置された空カートは「盗られた痕跡」です。
しかし、私服保安の入店するのは月に何日か、さらに営業時間内の8時間だけです。
万引きが多い店ならじきに万引き犯人と出会えますが、少ない店なら出会うまでにかなりの時間がかかります。
私服保安は目を凝らし最大限の努力をして万引き犯人を捜しています。
「私服保安が万引きを捕まえられない」のは私服保安の技術が劣っているからではありません。
私服保安が入店したときに「万引きが来なかった」のです。
別の言い方をすれば、「その入店日数では万引きを見つけられないくらい万引きが少ない」のです。
私服保安が20回入店して万引き検挙がないのなら、私服保安を導入しても意味がありません。
万引きが極端に少なく、私服保安が万引き犯人と出会えないから捕まえることができないからです。
また、その程度の万引きなら万引きによる被害は私服保安にかかる経費より少ないことと思われます。
4.捕まえなければ抑止効果はない
『私服保安が万引きを捕まえなくても、私服保安が売場にいるだけで抑止効果があるでしょう?』
これは間違いです。
制服警備員は制服を見せて抑止しますが、私服保安は万引きを捕まえることによって抑止します。→→→こちら
万引きを捕まえることにより、「あの店には私服保安がいる」という噂が拡がり万引きが来なくなります。
だから、私服保安が実際に万引きを捕まえなければ、噂が立たず、万引き抑止効果はないのです。
もっとも、店内カゴを始終腕に通して、「盗っているヤツはいないかぁ~、万引きはいないかぁ~!」と歩き回っている「ナマハゲ私服保安」なら、
万引き犯人に先に見つけられ、万引き犯人は店から出て行きますから、それなりの抑止効果はあります。
5私服保安の業務報告書
私服保安の仕事は万引き犯人に出会えれば楽です。
捕まえた後の処理に1時間。
警察官逮捕となれば警察署で3時間。
店長からは信頼のまなざし。従業員からは拍手喝采。
私服保安は自信に満ちて、『さあ、もう一件!』
しかし、万引き犯人に出会えなかった日は意気消沈。
「異常なし」の日報を書かなければならないからです。
a私服保安の日報内容は三種類-こんな日報は要注意
私服保安の報告書に書く事項は本来二種類。
「万引き処理」と「異常なし」の二つだけ。
「最初の一人を捕まえるまで」と「万引きに出会わないとき」は「異常なし」の日報が続きます。
この報告書を見た店長さんは心配になります。
「しっかりと仕事をやってくれているのだろうか?腕の悪い私服保安ではないだろうか?」
そこで、店長さんを安心させるために日報にもう一種類を付け加えます。
不審者(万引き犯人らしき者)についての情報です。
「17時30分 食品売場。
30歳代女性。ショートヘアー、チェックの事務服。黒いトートーバッグ左肩掛け。
カートを米通路に持ち込み、トートーバッグにカート上の商品を素早く入れて、正面出入口より退店。
カート上の商品の棚取り現認がないため見送り。以後、この女性に注意する。」
検挙要件が揃わなくて捕まえられなかった万引き犯人に対する情報です。
これを書けば「自分自身の至らなさ」を露呈することになりますが、少なくとも「仕事をやってくれているのだな」と店長さんを安心させることができます。
もちろん、「万引き処理」と「異常なし」の均整が取れている場合は、「見送り」は自分の胸の内にしまっておき日報には書きません。
b.レジ清算した場合は不審者ではない
では、次のような日報はどうでしょうか?
「17時30分 食品売場。
30歳代女性。ショートヘアー、チェックの事務服。黒いトートーバッグ左肩掛け。
カートを米通路に持ち込み周囲を気にする。
追尾している当方に気づいたのか、そのままレジ清算して正面出入口より退店。
以後、この女性に注意する。」
この女性は万引きをしようとしていたのではありません。
万引き犯人が「見つかった」と思ったときは、商品を元に戻すか、その場に放置します。
決してレジ清算をしません。
「タダで手に入れること」を覚えた万引き犯人が代金を支払うはずがないのです。
この女性は不審者でも何でもないのです。
私は「このような日報を絶対に書いてはいけない」と指導していますが、このような日報を書かなければならない気持ちは充分に分かります。
「勤務終了まであと〇〇時間、あと〇〇分。大丈夫、5分あれば万引きは捕まえられる。」
こうやって目を凝らしていても、「来ないときは来ない」のです。
あとは店長さんの冷たいまなざしが待っているだけなのです。
私服保安の世界では『万引きは向こうからやって来る』とか『そのうち湧いてくる』と言われています。
万引きが来なければ万引きを捕まえることはできません。
店長さんにはこのことをまず理解していただきたいのです。
そして、「異常なし」の日報が続き、
「仕事をしっかりとやってくれているのかな?腕が悪いのではないのかな?」と不安を感じたら、私服保安に店内状況を直接聞いてください。
私服保安は「日報に書かない・書けないこと」も話してくれるはずです。
店内状況と私服保安の働きぶりが分かれば、店長はその私服保安を信頼することができます。
店長の信頼があれば私服保安は「万引きの来ないとき」を乗り切れるのです。
6.入店時間帯と入店曜日をどうするか
私服保安の勤務時間帯は通常11時~20時。
これが一番多くの種類の万引きをカバーできる時間帯なのです。
「昼前」,「幼稚園のお迎え前」,「パート帰り」,「学校帰り」,「夕食前」,「フルタイム勤務帰り」をカバーできるからです。
あとはその店の万引きの種類・特性に応じて前後にずらせていきます。
入店曜日について、だいたい「土日・祭日や特売日」が希望されます。
しかし、これらの日にはかえって万引きが少ないのです。
子育て中の若いママは休日は家族で過ごさなければなりません。、
パート勤めのオバサン,中高生,勤め帰りのオネェサンは休日にわざわざ盗りに来ません。
食い詰めた老人は土日・祭日も腹が減り、酒が飲みたくなりますが、それは平日でも同じことです。
そして、常習万引きはなぜか「特売日・安売り日」にやって来ません。
特売日・安売り日は店内が混雑し、人目が多いので盗りにくいのです。
また、「いつもより安くなったものは盗りたくない」という職人のような万引きもいます。
もちろん、店内が混雑する土日・祭日や特売日にも万引きはやって来ます。
「カゴ抜け」は混雑している方がやりやすくなり、土日・祭日しか時間のとれない万引きもいます。
だから、入店曜日は「平日がメインで土日・祭日・特売日はサブ」にした方が効果的になります。
なお、曜日を固定してはいけません。曜日を固定すると出会える万引きが偏ってしまいます。
以上、結論は「入店曜日はランダム」ということになります。
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7.私服保安の選び方-「検挙がない」のには理由がある
a.「私服保安に検挙がない」意外な理由
あるスーパーから相談を受けました。
『私服保安をいれたのだけど、一カ月に12日。しかし、3カ月たっても検挙が一件もない。』
その店は街中にある繁忙店で、食品だけではなく衣料・家電・化粧品も扱っています。
店内配置は込み入っていて死角が多い。
いわゆる「万引きのたくさんいる店」。
確かに新しい店は「安全客リストを作り、目が慣れるまで」に時間がかかる。
それでも、「36日入って検挙なし」では時間がかかりすぎている。
何か他に理由があるはず。
その保安の仕事ぶりを聞いてみました。
『化粧品の盗難が多いので、女性保安を頼んで化粧品売場に貼りつかせている。しかし、化粧品万引きの検挙がなく、化粧品の盗難が減らない。』とか。
これが原因です。
化粧品売場に貼りつかせている私服保安は「ヤンキーネェチャン風」でも「怖そうなオバサン」でも、万引き犯人からはすぐに分かります。
その店に万引きが来ても私服保安がいたら盗りません。万引きが盗らないのだから万引き検挙がないのは当然です。
そして「私服保安がいないとき」に安心して盗るから化粧品盗難は減りません。
化粧品盗難を防ごうと思えば、その保安を自由にして衣料品や食品で万引きを検挙させればよいのです。
少額の弁当万引きでも捕まえれば、警察がやって来て店内で証拠写真を撮ります。万引きに前科があれば逮捕となって新聞に出ます。
それが噂として拡がって「あの店で万引きをすると捕まる」という風評ができれば、化粧品万引きも来なくなり化粧品盗難も減っていきます。
私服保安の犯罪抑止効果は「実際の万引き検挙」によって生じるのです。
化粧品盗難被害を防ぐために私服保安を化粧品売場に貼りつかせるのはまったく意味のないことなのです。
b.私服保安の技術
以前、交通警備料金が1万円を切ったときに、私服保安警備経験も私服保安教育・指導能力もない警備会社が「警備料金の高い」私服保安警備に参入したことがあります。
そのときは「知識も検挙技術もない素人私服保安」があちらこちらに出現しました。
「午前中に誤認して、午後にもまた誤認した」とか「追尾している途中に間違って、万引き犯人とは別の者に声かけした」など笑い話がたくさんありました。
しかし、今では「素人私服保安や素人私服保安警備会社」は淘汰され、私服保安の看板を挙げている警備会社とそこに所属する私服保安には「それなりの技術」があります。
現在残っている私服保安に「技術の差はない」と言ってよいでしょう。
「万引きを見つけること」は誰にでもできます。
私服保安の技術とは「万引きを見つけること」ではありません。
万引き行為をしっかりと現認し、追尾し、人権侵害がないように事後処理を行う。
検挙条件が揃わないときにはブレーキをかけて誤認をしない。
いわゆる「盗らせる・出させる・認めさせる。誤認という言葉はない」。
私服保安は万引きを見つければ必ず検挙できます。
私服保安に検挙がないのは、万引きに出会わないからです。
・万引きの少ない土曜・日曜・祭日に入店依頼をしている。
・盗難被害の多い売場に私服保安を貼りつかせている。
・その店の盗難状況を調査せず、一般的・常識的な時間に配置している。
店の盗難状況や盗難傾向を分析して「必要なところに私服保安を配置する」ことが不可欠です。
そのためには、私服保安警備業者の柔軟な対応が必要です。
『当社は11時~20時。早朝や深夜は勘弁してください。』こんな警備業者はパスしてください。
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c.大きな看板と小さな看板の違い
イ.私服保安の適正「一人前になるのは20人に一人、腕利きになるのは100人に一人」
施設警備や機会警備を導入する場合、警備料金が同じなら「名の通った大きな看板の警備会社」と「世間にあまり知られていない小さな看板の警備業者」のどちらを選びますか?
当然大きな看板でしょう。
大きな看板には歴史・技術・資材・人員が豊富だからです。
しかし、私服保安については少々事情が違います。
それは私服保安の適正の巾が狭く、私服保安を一人前にするのに時間と費用がかかるからです。
『それなら、大きな看板の大会社の方が…。』
その点を説明します。
私服保安に必要なのは
・犯人に押し切られない「胆力・押し出しの強さ」
・犯人の行動をしっかりと観る「集中力」
・法律知識・検挙技術を高めようとする「向上心」
・万引きが来ないとき・検挙がないときを耐える「忍耐力」
・手を抜かない「まじめさ」
・検挙条件が揃わないときには絶対に検挙しない「自制心」。
私服保安はハンターなので、「護り」を仕事とする常駐施設警備員とは適正が異なり、要求される適正が多いのです。
私服保安として新人を採用すると、試用期間の三カ月を指導員につかせます。
ここで、新人は実際の指導員の万引き検挙を見て私服保安技術を覚えます。
万引きの見つけ方、犯人に気付かれない方法、現認・追尾のやり方、エレベーター・トイレ中断、声かけ・同行・持ち物検査・警察連絡・書類作成など。
だいたい、万引き検挙を10~20件見ます。
最後の方では指導員の助けで実際に万引きを検挙してその処理をします。
ここで、上記の適正のない者は排除されます。
三カ月の訓練期間が終わると、別の店に一人で勤務します。
ただし、自由に万引き検挙ができるわけではありません。次のような「検挙制限」が付きます。
・万引きを見つけて、現認・中断なし・単品禁止の検挙条件が揃ったときには指導員に電話連絡する。
・指導員が状況を聞いて、少し危ないと思えば見送り。大丈夫だと思えば検挙してもよし。
・指導員の見送り指示に従わなかったり、指導員の許可なしに検挙した場合は私服保安から排除して制服警備へ。
この検挙制限が9カ月~12カ月。
ここで20件程度検挙したら、指導員と管理職で検討して検挙制限を外し、自分の判断で検挙できる「一人前」になります。
20件検挙できなければいつまでたっても「検挙制限付き」の半人前です。
いつまでたっても半人前の者は「おもしろくない」と辞めていきます。
このような者は私服保安の適正がなかったのです。
この「やっと一人前」になれるのが「20人に一人」です。
「一人前」といってもまだ「ヨチヨチ歩き」です。
その後、5年~10年。誤認が一度もなく、着実に検挙実績を上げた「本当の意味での腕利き」になるのは「100人に一人」です。
ここで免許皆伝となり、ある者は指導員となり、ある者は中間管理職となります。
ロ.「腕利き」になると独立する
しかし、「10年選手の腕利き」になっても、時給1000円~1100円の非正規従業員のまま。
交通費は出るがボーナスはない。
中間管理職になれば「育てている途中の私服保安を現場に配置しなければならない苦労と、よちよち歩きの私服保安が失敗したときの尻拭い」。
そこで、「腕利き」は仲間と一緒に独立してしまいます。
※私服保安は他の警備と違って制服も装備も要りません。開業に必要な費用は認定料の2万3千円。
お得意さんの1~2軒で充分にやっていけます。
警備業を独りで開業するための資格(警備員指導教育責任者資格)は実務経験3年で取得できます。 → こちら
腕利きに辞められたその警備会社はまた「20人に一人、100人に一人」を一から育てなければなりません。
私服保安業界では「看板の小さなところは腕利きの集まり」、「看板の大きなところは私服保安をいつも育てている」と言えるのです。
もちろん、「大きな看板でも腕利きが残っている」ところもあります。
しかし、「看板の小さなところは全員が腕利き」なのです。
また、小さな看板の警備業者でも大きな看板の警備業者と同じ額の警備業者賠償責任保険に入っています。
「もしものときの補償」はまったく同じです。
SPnetをご検討されるときにはこのような点を充分にご理解ください。
当方の私服保安に「検挙制限の付いた半人前」や「検挙制限がやっと外れたヨチヨチ歩きの一人前」は居ません。
全員が「10年誤認なしの免許皆伝」です。
ただし、当方の看板は小さいので『会社案内を送って欲しい』と言われても、当HPを印刷したものとなります。
もちろん、包装紙を選ぶか中身を選ぶかは「お好み次第」です。
ただ、全国チェーンスーパーの本部保安担当さんは、このような私服保安業界の実態を知っておかないと各店の「護り」が充分にできないのではないでしょうか?
つづく。
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