RMX250-SJ13 整備資料



・2011.12.26  RMX 高回転不調対策 ② / メインジェットを♯195→♯190に







初歩の基礎知識「混合気の濃度を決める仕組み」
パワージェットの応急修復
以前の状態
MJ/190の状態


まずはこちらの写真から。

 今はいない Komachi です。
 末娘が小5くらいのときに、私の従兄弟からもらってきました。
 雌の秋田犬で、母親は文部大臣賞をもらった古式秋田犬です。

 すぐに小柄な娘より大きくなり、娘を追いかけ回していました。
 長女は 『 コマチャン、コマチャン 』 と可愛がっていました。
 小町は私にいろいろな想い出を残してくれました。

 人生は 「 失うこと 」 の連続ですが、
 その分だけ想い出が増えていきます。

 RMX を整備していると「CR や KX に乗っていた頃」が
 よみがえってきます。
 そういえば、長男は RM80 でした。

 皆様も “今” を充分に楽しんでください。
“今” はなくなりますが、
 充分楽しめばその想い出は大きくなります。

 ということで、今回は
 「RMX高回転不調対策・その② ・メインジェットの変更」です。



1.今回やること


前回の CDI とイグニッションコイル交換で、なぜか “高回転のもたつき” がなくなりました。
しかし、短時間の走行で 「 ほんとうに “もたつき”がなくなったのか 」 確かではありません。
もう一度、走行して確かめます。

また 「 メインジェット変更でどのように変わるのか 」 も知りたいので、メインジェットを絞ります。

ニードルの段数とエァスクリューの調整は、おいおいやっていきます。

※もともと付いていたイグニッションコイルがコンペ用で発生する電圧が高く、標準 CDI ユニット の作動を邪魔していたか壊した可能性あり。

        


2.まったく知らない方への説明  ※バイク好きは読みとばし


『 あのう‥、私はエンジンやキャブレターのことをまったく知りません。
  メインジェットやニードル段数・エァスクリューって何ですか ? 』

私もあまり良く知りませんが、簡単に説明しておきましょう。


a.キャブレター

エンジンはガソリンと空気を混ぜたもの ( 混合気 ) をピストンで圧縮し、それに火をつけて爆発させ力を出します。
この混合気を作るところがキャブレターです。

ガソリンと空気はキャブレターの別々の入口から入り、混ざって霧になります。
この霧がピストンの上下動から生まれる負圧 ( 真空が外のものを吸い込む力 ) によってエンジンに吸い込まれていきます。


b.混合比

ガソリンば空気との混合度合い ( 混合比 ) によって燃え方が違います。

これを最適なものにするために、
キャブレターでは、ガソリンが空気との混合部屋に入る前にガソリンの量を調整します。
その調整は次の二段階で行われます。


c.メインジェット

ガソリンはまずメインジェットを通ります。

メインジェットには小さい穴が開いています。

メインジェットの番数とはこの穴の大きさです。

穴が大きければガソリンがたくさん流れ込み、混合気のガソリン濃度は高くなります。


d.ニードルジェット と ジェットニードル

メインジェットを通ったガソリンはニードルジェットという筒を通ります。

この筒の中にはジェットニードルという細い棒が入っています。
この棒の上端はアクセルワイヤーにつながっています。

アクセルを開けるとジェットニードルが引き上げられ、アクセルを戻すと下がります。
つまり、アクセル開度に応じて、ジェットニードルという棒がニードルジェットという筒の中を上下するのです。

ジェットニードルは 先 ( 下 ) にいくにつれ細くなっています。

ジェットニードルが引き上げられると、それが入っている筒 ( ニードルジェット ) との隙間が大きくなります。
隙間が大きくなればそれだけたくさんのガソリンが流れ込み、混合気のガソリン濃度が高くなります。


e.ニードル段数

アクセルワイヤーはジェットニードルの上端でつながっていますが、ここには何段かの溝があります。

アクセルワイヤーをどの溝につなぐかにより、ジェットニードルの引き上げ量が変わります。

同じアクセル開度でも下の段につければ、それだけ引き上げ量が大きくなり、筒との隙間が大きくなります。
ガソリンはたくさん流れ込み、混合気のガソリン濃度が高くなります。

逆に上の段につければ、引き上げ量が小さくなってガソリンの流れ込む量が少なくなり混合気のガソリン濃度が低くなります。


f.エァスクリュー

アイドリング~低回転では、ガソリンと空気は通常とは別の通路を通って混合部屋に入ります。

ここで、空気の流入量を調整するのがエァスクリューというネジです。

エァスクリューを緩めれば、ネジ隙間が増えて空気がたくさん入り込みます。


g.メインジェット・ニードル段数・エァスクリューの受け持ち部分

アクセル全開になるとジェットニードルは完全に引き上げられて、「 それがない 」 のと同じ状態になります。
この状態になると、ガソリンの流入量を調整できるのはメインジェットとなります。

つまり、混合気のガソリン濃度は回転域に応じて調整するところが違うのです。

・アイドリング~低回転 ( アクセル開度0~1/8 )→エァスクリュー戻し量
・中回転 ( 1/8~3/4 ) →ニードル形状(番数)、ニードル段数、ニードルジェット太さ(番数)
・高回転 ( 3/4~全開 )→メインジェット番数

実際にはこれらの守備範囲が重なるので複雑になります。
また、プラグが焼けやすいか焼けにくいか ( 熱価 ) も回転不調に影響します。

なお、これら以外にもいろいろな調整箇所がありますが、一般使用では必要ないでしょう。


h.今回の調整は高回転域

RMX は“全開前のもたつき”がありますので、メインジェットを変更して調整するのです。

これを解消したあと、ニードル段数で中回転を、エァスクリューで低回転を調整します。
そして、これら調整の適否をプラグ状態で判断していくのです。


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3.CDI ユニットとイグニッションコイル交換前の状態


a.設定

・ キャブレター  MIKUNI - TM 30 SS ・刻印 29 E 0。
・ メインジェット  195 ( 標準 )
・ ニードル段数  最上段
・ エァスクリュー  2回転戻し ( 標準は1+3/4回転戻し )
・ プラグ  BR 9 ES
・ 混合給油 ( カストロールTTS・50: 1 )


b.走行状態

・ 自宅~鈴鹿スカイライン往復・4時間程度→→→RMX 初めての峠
・ 鈴鹿スカイラインではアクセル開度60%~100%

・ アクセル開度80%で「ボコボコ」と回転上昇が行き詰まる。
       構わずにアクセルを全開にすると、しばらくして回転上昇を再開するが、それは「イヤイヤ・無理やり」という感じのするもの。
    「レーサーでない」ことを割り引いても、それは2サイクル本来のものではない。
     いわゆる“高回転でのドンツキ”か?


c.プラグ状態


 ・電極部は茶褐色、その周りは黒く湿りがち



4.CDI ユニット・イグニッションコイル交換後、メインジェット 195番 での状態


a.設定

・オイル→カストロールパワー 1 ・ 50 : 1 。
・オイル以外 3 と同じ。


b.走行状態

・ほぼ80%~100%を保つ・2時間程度

・ 高回転での“もたつき”なし
・ 1st・2nd の 95%くらいで“ほんの少しの息継ぎ”があるが、3rd 以上では感じない。
      ※エンジン性能は8000回転からパワーが急に落ち込むので、そこに入ったためか?
       ※スプロケ比を落としてあるので、速度に比し早く8000回転に達するのか?


c.プラグ状態


・電極部は茶褐色、周りも茶褐色で乾いている



5.メインジェットの変更とパワージェットの応急措置


a.メインジェットの交換作業


モトクロッサーでは、キャブレター底部からメインジェットだけを交換できるようになっています。
公道仕様の RMX-SJ13A はそんな便利な造りになっていません。
メインジェットを交換するためにはキャブレターの下半分を外さなければなりません。

このとき必ずしもキャブレターを取り外す必要はありません。
しかし、メインジェットの取り付け・取外しの際にニードルジェットが供回りして、エンジン側に正対している切欠きの方向がずれてしまいます。
SJ13A のニードルジェットは差し込んであるだけです。

キャブレターの取外し・取り付け作業は簡単なので、取り外して作業するのをお勧めします。

なお、ニードルジェットの切欠き方向に気を取られてキャブレターを下に向けると、フロート部がごっそりと下に落ちてしまいます。
フロート部が歪むと油面高が狂ってしまいます。
フロートバルブを落としてしまったら捜すのに一苦労します。 ( 苦労しました。)

戸外で作業する時はくれぐれもご注意ください。


 取り付けてあるのは195番、これを 190番に交換して高回転時のガソリン濃度を下げます。

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b.パワージェットの損傷に気づく


190番への変更後、2時間程度走ってみました ( 後述 6 )

走行が終わったあと、サイドスタンドを立てたバイクからガソリンがポタポタ。

パワージェットの取り付け部が損傷して、そこからガソリンが漏れていたのです。

 写真は以前のものです。
 ホースが固くなってひび割れていました。

 取り付け部の損傷部を切り取ったら、短くなって取り付けられません。

 応急処置として、
 パワージェット部分を取り出して手持ちの耐油ホース ( 3 ㎜ Φ ) に入れました。


 写真の上にある真鍮製の部品がパワージェットです。  部品到着まで RMX にはこれで我慢してもらいましょう。

        

6.メインジェット 190番での状態


a.設定

・ 「 メインジェット 190番 」以外は 3 と同じ。


b.走行状態

・ほぼ80%~100%を保つ・2時間程度

・195番との差は感じ取れない
・195番で感じた“1st・2nd でのほんの少しの息継ぎ”なし
・1st での頭打ちが早くなった
・排気音が乾いているような感じがするが、気のせいか「キン・キン 」 回っているようだ
・「 エンジンが壊れるのではないか 」 と心配になるほど良く回る

※このときパワージェットホース取り付け部は損傷しています。


c.プラグ状態

・電極 ( - ) →ちょっと古くなった10円玉の色
・電極 ( + ) →艶なし黒色でスス無し
・ネジ表面→半分くらいがちょっと古くなった10円玉の色
・碍子 ( がいし )部→古い10円玉の色


『あのう‥、プラグ状態の項目が変わっていません ? 』

よく気づきましたね。

ネットで調べていたら、プラグ状態の詳しい判定方法を見つけたのです。→→→こちら     ※キャブレターの調整は→→→こちら

チェックする各部はこうなります。

・ A  電極 ( - )
・ B  電極 ( + )
・ C  碍子部
・ D  ネジ表面
・ E  ネジ内面

 今まではA部だけをチェックしていました。これではダメなのですね。
 上に紹介したサイトのプラグ状態判定では、
・ ベスト→碍子部/C と ネジ表面/D が 同じ狐色(やや明るいタバコのブィルターの色) 。
・ 碍子部が浅い焦げ茶 → メインが濃い

 この二つから写真のプラグ状態を判定すると、
 メインジェットをもう一番下げた方が良いことになります。
 190番から一番下げると 185番。
 メーカーのオプションが 185番 ですから、185番でチェックする必要があるでしょう。

 ただし、新品のプラグではないので以前の焼け色が関係してきます。



d.再度走行

本日、もう一度、190番 で走ってみました。
応急措置のパワージェットを付けた後での走行です。

bの走行より気温はずっと下がっています。
80%~全開を保ち1時間程度。

・ 1st →問題なし・スプロケ比のためかすぐに頭打ち
・ 2nd →高回転の始め ( 195 番で感じた回転数より低い回転数 ) で少し息継ぎ
               アクセルをゆっくりあければ息継ぎなし→エンジンが追いていかないのか ?
・ 3rd~→問題なし
       ※パワージェットの不完全さも影響 ?

・ 始動後の低回転→エンジンが冷えている時にアクセルを急に開けると 『 ボ・ボ・ボ‥ 』 とエンジンストップ。
      ※エァスクリューを調整必要。

・ プラグ状態→cと同じだが・碍子部がやや明るい色となった。
      ※事前に碍子部を掃除したことが関係ありか ?
      ※プラグを新品にして190番 走行後のプラグ状態をチェックする必要あり。
     ★★06     
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7.今後の調整


a.標準値にできれば問題ないが


キャブレター調整はとても難しくて複雑だと言われています。

ガソリンと空気の性質が気温・湿度・気圧などによって変わるからです。
最適設定はその都度変わるのです。

また、エンジンやキャブレターの健康度も関係します。
さらにコース状況・ライダーの技量や癖などによって 「 何が最適なのか 」 も違ってきます。

いろいろやってみて、自分とバイクに合った最適設定を捜さなければなりません。

最適設定の模範解答はメーカー指定の標準値です。
この標準値にしておけば一般使用では不満はないでしょう。

しかし、RMX は分離給油から混合給油に変更してあります。
メーカー標準値は分離給油のものなので、それを当てにすることができないのです。


b.今後の予定


まず、パワージェットを新しいものにします。
その後、しばらく 190番 で走ります。

以前の“全開手前の息詰まり”は解消しましたので、ニードル段数を一段下げてエァスクリューを標準戻し量にします。
そもそも、ニードル段数とエァスクリュー戻し量は高回転域に関係ありませんので。


タイヤもそろそろ交換です。

 テスト走行でアスファルト上を走り回るのでタイヤ上部が平になってきました。

 オンロードへ振った IRC・GP-210 を考えていますが、
 もう一度オフロードを走ってみたいとも思っています。



8.今回のトピックス


a.軽いことはいいことだ


試乗で RMX を目一杯走らせています。

とにかく軽いです。

FJ に乗る時は 『 よぉ~しッ、乗るぞ! 』 と気合を入れなければなりません。
しかし、RMX は気軽に車庫から出して、ホイホイと乗れます。

FJ は軽自動車の倍くらいの排気量で取扱性は半分以下。
RMX は軽自動車の半分以下の排気量で取扱性は同等。
しかも加速やコーナーでは軽自動車の比ではない。

軽いことは精神的にも肉体的にも優しいのです。


b.怖くなる余力が欲しい


オフロードコースで250を振り回せるのはセミプロ以上。
アマチュアにはパワーがありすぎて自分が振り回されてしまいます。

しかし、アスファルト上ではコースのようにバイクは暴れません。
直線では平気で全開にできます。「 あっ、もう一杯なんだ‥。」

もう少し余力が欲しいものです。

使い切れない余力があること、
「ピークまで開けたらどうなるの ? 」という凄味や恐怖感を感じさせるのがバイクの魅力の一つです。

KTM-690-SMC ですかね‥。

『 それなら、コーナーを全開にして走ってみなッ!』

まあ、それは置いといて‥


c .ホームページのもう一つの使い方


メインジェットを買いに行ったときのことです。

鈴鹿サーキット近くの某オートバイ用品店。

店内に展示してあるのはモンキーやスクーターのメインジェットセットだけ。
しかも、1200円程度の商品にしっかりと防犯タグが付いている。
バイク小僧が盗りにくるのでしょうか。

店員さんに 『 RMXのメインジェットで、三国用 195番前後のものは無いのですか?』 と尋ねる。

ばら売りが別の棚にありました。

適合表を調べた店員さんは、
『四種類ありますよ。
  丸形小と丸形大と角形小と角形大の四つです。
  適合表にはどれか書いてありません。』

現物を見ると小さいのではなくて大きい方、丸形大か角形大のどちらか。
しかし、形が丸かったのか六角形だったのか記憶がない。

『あっ!そうだ。SPnetのホームページに写真があった。』

店員さんに頼んでSPnetのホームページを開いてもらう。

HPで写真をチェック。角形であることが分かりました。

 メインジェットは5番刻みで一個 500円。
  ※メーカーの純正部品として取り寄せると350円 。

 190番と185番は混合気のガソリン濃度を下げるためのもの。
 ついでに、混合気のガソリン濃度を上げる 200番も買っておきました。

 ホームページにはこんな使い方もあるのです。
 私が全国どこにいても選任業務で使う各種書式や教育資料を引き出せます。
 バイクの整備情報も簡単に引き出せます。
 あらためてネットの便利さを感じました。



つづく。




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