時計・自動巻き 資料
・2012.01.05 BERGEON - FINAL TEST の構造と修理
旧型 FINAL TEST-24個巻きの6本の腕のうちの1本が空回りします。
前々から気になっていたのですが、バイクにかまっていたので放ってありました。
時間ができたので修理します。
修理といっても空回りしている部分を修復するだけです。
おすめのワィンディングマシーン、MTEとGEMのWIND-O-MATも紹介します。
・BERGEON - FINAL TESTの構造
・BERGEON - FINAL TEST の時計ホルダーの空回り修復
・キネティックが充電できるGEMのWIND-O-MAT
・お勧めのMTEの四連
00.BERGEON - FINAL TESTの不具合修復
バイクばかり触っていましたので時計の方が放ったらかしになっていました。
RMX は部品待ちで安静・謹慎。
少し時間ができたので、気になっていた FINAL - TEST を修理しました。
FINAL - TEST はワインディング・マシーンで “ 観覧車タイプ ” のもの。
交流モーターを使用しています。
メンテナンスをしていれば、 “ 孫子の代 まで ” 使えるでしょう。
このワインディングマシーンは随分前にYahooオークションで手に入れたものです。
『 一万円くらいだったかな‥。』
しかし、あちらこちらを検索すると、なんとBERGEON ( ベルジョン ) の製品でした。→→→ こちらも( ダウンロードに時間がかかります )
新型はこちら → BERGRON-BE7803-115
廃業した時計屋さんで見かけたら、何がなんでも譲ってもらいましょう。
1.構造と各部の動き
(A.モーター部) ・A-1 モーターシャフト ・A-2 大ギヤ ( 固定されています ) (B.大回転部 / 公転部 ) ・B-1 取り付け部 → A-1に ボルト留めされ、 モーターが回ると B も同じ方向に回る。 ・Bには六個の小回転部Cが取り付けられている。 (C.小回転部 / 自転部 ) ・C は C-1 ( シャフト ) 、C-2 ( 小ギヤ ) 、 C-3 ( クリップ ) の三部品で構成される。 ・C-1 ( シャフト ) に C-2 ( 小ギヤ ) がはまり、 C-3 ( クリップ ) でBから抜けないように取り付けられている。 ・C-2 ( 小ギヤ ) は A-2 ( 大ギヤ ) とかみ合う。 ・大回転部 B がモーターで回されると、 C-2 ( 小ギヤ ) は A-2 ( 大ギヤ ) のレールの上を転がり、 C 自身も回転 ( 自転 ) する。 (D.時計ホルダ) ・D ( 時計ホルダ ) は小回転部 C ( C-1 ) に取り付けられる。 ・時計ホルダ D は、小回転部 ( C ) の回転方向に回りながら、 大回転部 ( B ) の回転方向に回る。 地球が自転しながら太陽の回りを公転するのと同じ。 右回転の自転をしながら、右回転の公転をする。 |
2.B部の取外しと取り付け
・ヘキサレンチで中心のネジを緩めて取り外す。 |
・A-1 ( モーターシャフト ) にはテーパー状のネジ ( A-3 ) がはまっている。 ・A-3 をねじ込むと、テーパーによって A-1 が拡げられて 大回転部 ( B ) の取り付け穴 ( B-1 ) から抜けないようになる。 |
・写真上の ② が正常、下 ① が空回りする小回転部です。 ・下の歯車(C-2)が壊れています。 |
・C-1( シャフト ) は C-2 ( 小ギヤ ) に差し込んであるだけです。 ・C-1 ( シャフト ) の先の方に平らな部分 ( e ) があります。 小ギヤ ( C-2 ) の方にも平らな部分 ( C-2-② の f ) があります。 この平らな部分同士 ( e と f ) が重なり、小ギヤの回転がシャフトに伝わるのです。 |
小ギヤ ( C-2-①) では、この平らな部分が丸くなっています ( g ) 。だから、小ギヤが回ってもシャフトに回転を伝えることができず空回りするのです。
b.原因
シャフト ( C-1 ) には時計ホルダが取り付けられ、時計ホルダには四個の時計が装着されます。
これを小ギヤが自転させるのですから、小ギヤの平らな部分には大きな力がかかります。
シャフト ( C-1 ) はスチール製、小ギヤ ( C-2 ) は樹脂製です。どうしても 小ギヤ ( C-2 ) の平らな部分 ( f ) が変形してくるのです。
しかし、通常では ガタがあっても空回りするほどには変形しません。
本当の原因は 小回転部 ( C ) の一つが固着して自転が鈍くなった時に、力任せに無理やり回転させたので、小ギヤの平らな部分がシャフトの平らな部分で削り取られたのです。
4.修理
小ギヤに平らな部分を作り直します。
使うのはこちら。
・680円のパテです。粘土状で指で練って充填します。 ・小ギヤに充填してからシャフトを差し込み型取りをします。 中に隙間ができないように、シャフトの周りから爪楊枝でパテを押し込みます。 ・すぐに硬化しますので型取りは素早く。 ・少し硬化したらシャフトを抜くのをお忘れなく。 シャフトまで接着されたら、大回転部 ( B ) に取り付けられなくなります。 |
・24時間たったら、ヤスリで表面をきれいにします。 ・小ギヤに平らな部分が復活しました。 |
・もう空回りすることはありません。 ・これで、自動巻き四個分が復活。 |
・できることなら時計ホルダに四個の時計を装着しないで、二個にした方がよいでしょう。 それだけ、小ギヤにかかる負担を減らせます。 ※2019.11.追記・解説 ・この金属パテによる修復は耐久性がありませんでした。 2~3カ月で効果がなくなります。 ・写真のように一つのホルダーに四個の時計をつけて、それを垂直面で回すと 各部とモーターに大きなストレスを与えてしまいます。 現在は、一つのホルダーに時計を二個つけて、回転面を45度に傾けて使っています。 |
なお、このタイプのワインディングマシーンにはタイマー(プログラム)が付いていません。24 時間 ON-OFF タイマーを使って作動させます。
・上二つは 980円の安物です。 ・下はNational 製で 5000円程度です。 ・どちらも 15分刻みで ON-OFF 設定ができます。 ・980円の方は当たりが悪いとすぐに壊れてしまいます。 写真上・左のものは2カ月で動かなくなり、同じものを買ったら 2日で動かなくなりました。 購入する時にしっかりと保証書をもらいましょう。 |
5.FINAL-TEST って何をテストするの ?
前々から気になっていたことです。
TEST という名称になっているのだから、何かを 「 テストする 」 機械なのでしょう。
正面に付いているプレートには、「 Power reserve in hours 」 ・ 「 Winding duration in
hours 」 ・ 「 MINI ・MAXI 」 ・ 「 SIMULATOR 」 。
これから推測すると。
・「 自動巻きの巻き上げ力が正常かどうか 」 をテストするもののようです。 ・たとえば、プレートの 9時前位置の記載 「 32-MINI・42,MAXI・54 」 は、 「 自動巻きを 32時間この機械にかけたあと、42時間~54時間 動き続ければ巻き上げ力OK 」 を示しているのではないでしょうか ? ・素人には 「 その本来の使われ方 」 は分かりませんが、 とにかく 24本の自動巻きを引き受けてくれるので助かっています。 ・LUHW ( Lautenshlager ・ ローテンシュラガー ) の 30本巻きは、 Yahooオークションで 「 開始価格 168万円 ・ 即決価格 180万円 」 ですからね。 ・なお、信頼性のあるワインディングマシーンの相場は 「 一本分が新品で 1万円前後、 中古で 2千円~ 5千円 」 です。 もちろん、私はこの半分以下でないと食指が動きませんが‥。 ・自動巻きに興味を持つと、すぐに百本を超えますから ワインディングマシーン にかかる経費も考慮しておいておかねばなりません。 |
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1000Wモーターで最高40km/h
ZonDoo には最高108km/hもあります※購入
250㏄扱いでしょう。※要問合せ
・タイマーが付いています。 ・連続 ( ON ) と 30分タイマーです。 |
・メーカーは、GEM 。 |
・これは、 「自転しながら公転する 」 というような器用なことはできません。 ただ、ただ、グルグルと回るだけです。 しかも、一般のワインディングマシーンとかけ離れたスピードで。 羽をつけたら 「 卓上扇風機 ・ 弱風 」 になります。 ・「 なぜ“ お勧め ” なのか 」 は装着してある時計を見れば分かりますね。 そうです!Kinetic(キネティック) を巻けるのです。※注意 ・KIneticのローターは重いので、自動巻き用のワィンディングマシーンにかけても充電しません。 スイング式のワインディングマシーン ( 時のゆりかご ) で充電できるとのことで 試してみましたができませんでした。 ・この WIND-O-MAT は充電効果抜群。 2 秒運針 ” でも30分回せば ” 10秒 “ に。 “ 20秒 ” まではすぐに到達。 ちょっとしつこく回せば、“ 30秒 ” のフル充電!これは便利です! ※キネティックではボタンを押すと「どれだけ充電されているか」が分かるようになっています。 ボタンを押して秒針が30秒進めば、フル充電の6カ月分です。 |
※注意.キネティックについて
KInetic ( キネティック ) とは 「 電池交換不要のクォーツ時計 」 です。
この時計には自動巻きと同じようなローターが入っています。
腕の振りによってローターが回転し、この回転で発電し、充電池 ( キャパシタ ) に電気を蓄えるのです。
中身はクォーツですから、精度はクォーツ時計と同じです。
KInetic が開発された当時、時計用電池は 1年~2年しか持ちませんでした。
1~2年で電池交換しなくて済むように自分で発電し充電する時計が開発されたのです。
当時の電池交換は時計屋さんにしてもらっていましたからネ。
もちろん蓄電池にも寿命があり、交換しなければなりませんが10年くらいはOK。
当時は画期的な商品だったのでしょう。
その後、10年OKの時計用リチウム電池が開発され、KInetic はお役御免となりました。
リチウム電池は300円くらいなのに、充電池 ( キャパシタ ) はその10倍。
しかも、スーパーやホームセンターでは売られていない。
最近やっとYahooオークションで手に入れられるようになりました。
しかし、今でもなぜか根強い人気があるのです。
腕に着けていると、 『 シュカァー、 シュカァー 』 という “ かすかな振動 ” が伝わってきます ( というより、そんな感じがします )
。
それが 「 生きている時計 」 をイメージさせるからでしょうか ?
このKInetic はフル充電で 6 カ月くらい持ちます。
毎日使っていれば充電不足になることはありません。
しかし、何本も持っていると 「 出番が一年に一回 」 ということになります。
充電切れのKInetic を手で振ってフル充電するのは不可能に近いことです。
※現在ではリューズを手動で巻いて充電できる機種も作られています。メーカーがここまでこだわるのには人気があるからでしょう。
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・MTE の 自転・公転式ワインディングマシーンです。 ・交流モーター使用、プログラム付き。 ・右回り自転・右回り公転 と 左回り自転・左回り公転 を休止を挟んで繰り返します。 |
・回転スピードとプログラムは最小限で必要十分。時計にやさしく巻き上げます。 ・2年間入れっぱなしでもしっかりと巻けています。 ・オーバーホール済み・完全コレクション・スポーツマチックの保管用です。 |
・モーターで回転するのは真ん中のローター。 そのローターに四つのピンが付いています。 ・時計ホルダーはこのピンにはまります。 ピントホルダーのはめあいは弱く、ホルダーは自由に回ります。 ・真ん中のローターが回転すると、ピンもいっしょに回転子、 ホルダーを「コロコロ」と押していきます。 ・つまり、時計ホルダーは自転しながら真ん中のローターの回りを公転するのです。 真ん中のローターが逆回転すれば時計ホルダーの自転は逆方向になります。 ※2019.11.追記 ・非常に耐久性のあるモーターです。 もう10年間プログラムで連続運転していますが、動いています。 ホルダーの接触部のゴムが劣化すると空回りして自転がしっかりとしない場合があります。 そんなときは、セメダインスーパーXをシンナーに溶かしてゴム部に塗ってやれば開腹します。 →→こちら |
いつか紹介しますが、MTE には電池式の WATCH TUNER ( WTA ) というワインディングマシーンがあります。
これが、恐ろしく回転スピードが遅い。
思いついたように 「 ジ・ジ・ジ 」 と 一回転するだけ。
しかし、巻けるのです。
特に、40年選手のスポーツマチックに最適。
いろいろなワィンディングマシーンで巻けなかったのが “ 巻ける ” のです。
※ WTAについてのご注意
スイッチを入れると一回転しますが、そのあとスイッチを切ってスイッチを入れても回りません。
スイッチを入れても次の回転時刻にならないと回りません。
スイッチを切っても、プログラムがキャンセルされないようです。
これを知らないと 「 壊れているのではないか 」 と心配になります。
回転スピードは遅い、一回りしかしない、スイッチを入れても動かない。
スイッチをカチ・カチやっても 「 ウンともスンとも 」 言わない。
焦りますよねぇ。
そのうちに 「 ジ・ジ・ジ 」 。
『 あっ! やっと動いたな!惰性をつけて回してやれ! 』
こうすると、もう回らなくなります。壊れてしまったのです。
回転時に 「 外から力を加えて回転させる 」 と 回路に不具合が生じるのでしょうか。
壊してから、 『 粗悪品・故障品を出品したなッ!返金しないと “ 非常に悪い出品者 ” の評価をつけるぞ !』 と文句をつけないようにしましょう。
MTE は魔法の機械なのです。
さすがはドイツのクラフトマン・シップ !
※MTE のワインディングマシーンは→→→こちら
※部品供給もありそうですよ→→→→→こちら と こちら
つづく。
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