時計・自動巻き 資料



・2012.09.13.TECHNOS 自動巻きの歩度調整





前回のSEIKO・オレンジモンスターの歩度調整に気をよくして、気になっていた時計の歩度調整をしていきます。
自動巻きの内部を触るのは初めての入門者です。
入門者以上の方の参考になるようなことはいっさい書いてありません。
使用するのは、びぶ朗 と スターグラフ です。
今回の調整はテクノス二つ。TECHNOS  TAM 606 と TECHNOS TGM 554 です。
どちらも、新品同様で「経年による油脂固着など」はなし、メーカー出荷時の調整が甘かったもの。
今回のトピックスは「時計形状による測定方法の注意」、「パルス検知棒がケースにしっかりと接触しない場合」です。
私と同じ「歩度調整初心者」の方の参考になると思います。


テクノス ①(TECHNOS  TAM 606) の歩度調整
テクノス ②(TECHNOS TGM 554) の歩度調整
時計形状による歩度測定での注意
これを注意するとこれだけの違いが出ます
初心者がする歩度測定時の留意点まとめ


    
1.テクノス ①(TECHNOS  TAM 606) の調整


a.時計名称など

 -TECHNOS  TAM 606-
・自動巻き10気圧防水
・手巻き機能 ・ 秒針停止機能あり
・シースルー スクリューバック
・ショップより新品購入
・購入当初から大幅に進むので使用せずワインディングマシーン保管。
・TECHNOS 刻印尾錠のオリジナル革ベルト。

 -調整前測定-
・文字盤上平置き → +117 秒/日
・三姿勢用ワインディングマシーン → 113 秒/日

・一日に2分くらい進みますので実用使用はできません。
・ただ「遅れる時計」と違って「進む時計」なので
  「寿命が近づいている」のではないでしょう。




b.ムーブメント


・緩急針の反対側が隠れているので、緩急針自体を触らなければなりません。
・秒針停止機能 ( ハック機能 ) があるので、テンプを止めて調整できます。
  ただし、裏蓋をあけたままリューズを引くとムーブメントがせりだすので要注意。
・6振動

・前回使用した目打ちの先を曲げて使用。
  緩急針の金色出っ張りに引っかけて動かします。
  力をかけやすくなりました。



c.調整前グラフ


イ.文字盤下 ロ. 12時下
・片振りなし。
・歩度も 114 秒/日 で、平置き 117 秒/日 とほぼ一致。
・片振りなし。
・文字盤下よりも やや進む。直線より外れる点は検知ミスでしょう。


ハ. 6時下 ニ. 9時下
・片振りなし。
・グラフ下の歩度数値は「12時下」の場合より大きいが、
  この歩度数値はその時々の値で平均値ではないので比較することはできない。
・「12時下」のグラフと比べて直線から外れる点がないのは、
  パルス検知棒と時計ケースの接触の良し悪しによるもの。
・片振りなし。
・各姿勢のなかで一番進む傾向あり。



d.調整


「片振りなし」・「姿勢差による傾向がほとんど同じ」なので、あれこれやってみる必要はありません。

緩急針を 二度調整した ( ヒゲ持ちに近づけた ) だけ。

あっけなく、良いグラフとなりました。

「経年により進み遅れ」ではなく、「メーカー出荷段階での調整がうまくされていなかた」だけでしょう。


e.調整後グラフ


a.文字盤下

b.12時下

・グラフはぐっと下がりました。
・「 文字盤上・下位置 」は日常使用の状態ではないので
  このグラフを水平になるように調整しても意味がありません。
  「やや上向き」に調整します。
・文字盤下よりやや上がり気味。
・乱れた点もありません。


c.6時下 d.9時下
・「12時下」と「6時下」が同じにならないところは興味深いです。
・「文字盤下」よりグラフは下がっています。
・「12時下」に近い傾きになっています。
・四姿勢の傾き度合いは、 ① 6時下 → ② 文字盤下 → ③ 9時下 → ④ 12時下
・精度は 「+10 秒 ~ 2 0秒 /日」くらいでしょう。



f.実際の歩度測定値


TECHNOS TAM 606
調整前 調整後
文字盤上平置 三姿勢WM 日常使用 文字盤上平置 三姿勢WM 日常使用
+117秒/日 +113秒/日    +9秒/12時間 +7秒/12時間   

※三姿勢WM(ワインディングマシーン) → 観覧車タイプのワインディングマシーンによる装着測定
・三姿勢WM歩度に一番近いのが 6時下
調整後の三姿勢WM歩度「12時間分」 → 24時間ならもう少しプラスが出るはず。
・「6時下」をもう少し下げて調整した方が良いかも知れない。
   ●●       
選任のための法律知識・








.テクノス ②(TECHNOS TGM 554) の調整


a.時計名称など


同じ型のテクノスがありましたので参考のために測定しました。

-TECHNOS TGM 554-
・自動巻き10気圧防水,手巻き機能,秒針停止機能,シースルー スクリューバック,・裏蓋シースルーは薄い紫色で
・新同品をコレクターから入手。
・精度は良い(文字盤上平置 →  +14 秒/日、三姿勢WM → +2秒/日)
  平置きに比べ三姿勢WMでの値が良いので再度測定 →  今度は +0秒/日


    

b.測定での注意


この時計の測定で歩度グラフが、垂直姿勢(6時下・12時下・9時下 ) で波うちました。

原因は 「 時計ケースとパルス検知棒がピッタリと接触していなかった 」 こと。

測定では次のことを注意しなければなりません。


イ.「検知棒にベゼルが当たっている」と正確な振動を検知できない

・この時計の回転ベゼルはケースよりも一回り大きくなっています。
・「文字盤上」でセットするとパルス検知棒にベゼルが当たってしまいます。
・回転ベゼルはケース本体に固定されていず、自由に動けるようになっています。
  時計の振動は回転ベゼルの動き(揺れ)を介して検知棒に伝えられます。
  その結果、時計の振動周期 (行きと戻りにかかる時間 )が
  検知棒に正確に伝わらないことになります。  
・文字盤を下にすると検知棒が時計ケースに直接当たります。
  こうすると時計の振動が時計ケースだけを介して直接伝わることになります。



ロ.「
垂直姿勢では検知棒と時計ケースの接触が緩む」ので正確な振動が検知されない


垂直姿勢ではプレスの重みで時計が浮き上がり、検知棒との接触が緩みます。
  時計が大きくケースが重い場合も同じです。
・写真は 3時下 ですが、9時下 ・ 12時下 ・ 6時下 でも同じです。
・垂直姿勢の場合は、時計が浮き上がらないような対策が必要です。
・最終的には時計をピックアップに縛りつける必要があるでしょう。

  ★★13     
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c.以前の測定グラフと再測定グラフ


「以上のことを注意せずに測定したグラフ」と、「以上のことを注意して測定したグラフ」はこれくらい違います。

テクノス青   水平姿勢 - 文字盤下
以前の測定グラフ ( 9時位置接触・文字盤下 ) 再測定グラフ ( 3時位置接触・文字盤下 )

 

テクノス青・12時下-60秒グラフ
以前の測定グラフ ( 9時位置接触・文字盤下 ) 再測定グラフ ( 3時位置接触・文字盤下 )


テクノス青・12時下 -300秒グラフ
以前の測定グラフ ( 9時位置接触・文字盤下 ) 再測定グラフ ( 3時位置接触・文字盤下 )


テクノス青・6時下 -60秒グラフ
以前の測定グラフ ( 9時位置接触・文字盤下 ) 再測定グラフ ( 3時位置接触・文字盤下 )


テクノス青   6時下 -120秒グラフ
以前の測定グラフ ( 9時位置接触・文字盤下 ) 再測定グラフ ( 3時位置接触・文字盤下 )


テクノス青 6時下 - 300秒グラフ
以前の測定グラフ ( 9時位置接触・文字盤下 ) 再測定グラフ ( 3時位置接触・文字盤下 )


テクノス青   9・3時下 -60秒グラフ
以前の測定グラフ 9時下( 9時位置接触・文字盤下 ) 再測定グラフ  3時下 ( 3時位置接触・文字盤下 )


テクノス青   9時・3時下 - 120秒グラフ
以前の測定グラフ  9時下 ( 9時位置接触・文字盤下 ) 再測定グラフ  3時下 ( 3時位置接触・文字盤下 )


    

3.測定時の留意点


今までの計測で体得した留意点です。


a. 直線が出ないときは 接触位置を変える

同じケースを使っている時計でも 3時位置接触 と 9時位置接触では違いが出ます。
文字盤上 と 文字盤下 でも違いが出ます。

まず直線を出さないことには始まりません。

水平姿勢で直線が出るように姿勢を変えることが必要です。

ただし、できるだけ文字盤下で直線が出るように工夫します。調整作業は文字盤下でするからです。


b.グラフが歪むのは検知棒との接触が緩んできたから


測定を続けていると、時計の重みでケースと検知棒との接触が緩んでくることがあります。

当然、グラフの形が変わってきます。

グラフの形が変わってきたら、検知棒との接触をチェックしなければなりません。


c. ある姿勢のときだけ片振りグラフになったら再チェック

片振りが出る場合は、その程度は異なりますがどの姿勢でも出ます。

ある姿勢だけに片振りが出た場合は、パルス検知が上手くできていないときです。

時計を疑う前に、測定方法を疑いましょう。


d. ケースが大きいとパルス検知が上手くできない

時計ケースの下に詰め物をして、検知棒に当たる時計ケースの部分をできるだけ大きくします。

どうしてもパルス検知ができないときは、生音で計測。.


つづく。




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