SPnet 選任業務編
・新任教育・2号業務別教育資料・道路交通法-「車は左を走る」の例外
今回は道交法17条4項・5項・6項の「車は左側を走るの例外」についての講義です。
こういう講義は説明しているだけでは面白くありません。「項目だけを板書してその内容を受講生に説明させる方法」を取りましょう。
たとえば、「車両の通行方法原則、例外1、例外2、例外3、例外4」を道交法17条4項~6項の条文から受講生に説明させます。
これだけで軽く1時間は必要です。休憩でいろいろなセンターライン規制・指示内容を予測させ、
最後に「自転車が歩道を走れるとき」を受講生に発表させたら全部で2時間はあっと言う間に過ぎてしまいます。
『質問です!』の部分は講師が受講生に考えさせましょう。
小児用の車(自転車)」は自転車ではなく(2条11号-2)歩行者なので(2条3項1号)なので歩道を走れるはずなのに、
道交法63条の4で「自転車が歩道を走れる場合に含めている」のはなぜでしょう。これを受講生に考えさせましょう。
講義は講師の話が主ではありません。受講生が話をするのが主なのです。
「どれだけ多くを受講生に考えさせ、どれだけ多くを受講生に話させるか」これが講師の力量になります。
※本頁の標識・標示のイラストは一般に公開されている「警察庁の規制基準」から引用しています。
新しい標識・標示が追加されるので更新してください。
・「車は道路の左側部分を走る」の例外(道交法17条4項~6項)
★いろいろなセンターラインと規制・指示内容
・罰則が17条5項の場合(右側部分にはみ出してもよい場合)を除外しているのは?
・車両は左側寄りを通行しなければならない(道交法18条)-罰則なし
・軽車両並進禁止(道交法19条)-罰則あり
★自転車が歩道を走れる場合
1.左側通行の例外
※道交法17条4項~6項(通行区分)
「4.車両は、道路(歩道等と車道の区別のある道路においては 車道 (以下第九節の二までにおいて同じ。)の中央
(軌道が道路の側端に寄つて設けられている場合においては当該道路の軌道敷を除いた部分の中央とし、
道路標識等による中央線が設けられているときはその中央線の設けられた道路の部分を中央とする。以下同じ。)
から左の部分(以下「左側部分」という。)を通行しなければならない。
5.車両は、次の各号に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、道路の中央から右の部分(以下「右側部分」という。)にその全部又は一部をはみ出して通行することができる。
この場合において、車両は、第一号に掲げる場合を除き、そのはみ出し方ができるだけ少なくなるようにしなければならない。
一.当該道路が一方通行(道路における車両の通行につき一定の方向にする通行が禁止されていることをいう。以下同じ。)となつているとき
二.当該道路の左側部分の幅員が当該車両の通行のため十分なものでないとき。
三.当該車両が道路の損壊、道路工事その他の障害のため当該道路の左側部分を通行することができないとき。
四.当該道路の左側部分の幅員が六メートルに満たない道路において、他の車両を追い越そうとするとき
(当該道路の右側部分を見とおすことができ、かつ、反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合に限るものとし、
道路標識等により追越しのため右側部分にはみ出して通行することが禁止されている場合を除く。)。
五.勾配の急な道路のまがりかど附近について、道路標識等により通行の方法が指定されている場合において、当該車両が当該指定に従い通行するとき。
6.車両は、安全地帯又は道路標識等により車両の通行の用に供しない部分であることが表示されているその他の道路の部分に入つてはならない。」
(罰則 第一項から第四項まで及び第六項については第百十九条第一項第二号の二)
法律の条文はややこしく書いてあるので何が何だか分からないでしょう。
初めに読む時はカッコの中を飛ばしてください。
a.原則-道路の中央から左側を走る(道交法17条4項)
4項は「車は道路の中央から左側を通行しなければならない」と言っているだけです。
『道路の中央ってどこ?』と言われるといけないので、カッコの中で“中央”について説明しているのです。
カッコの中は、
・道路にセンターラインが引いてあればそれが中央。
・センターラインがなければ、言葉どおり道路の真ん中になりますが、端っこに路面電車のレールがある場合はその部分を除いて考える。
・また、「“中央から左側”を“左側部分”と言うぞ」とこの法律で使う用語の意味も定めています。
問題ないでしょう。
・5項・6項は左側通行の例外です。
・5項では車道の中央から右側を走ってもよい場合、
・6項は車道の中央から左側でも入ってはいけない部分を定めています。
b.例外1 : 一方通行ではどこを走ってもよい(道交法17条5項1号)
17条5項は「車両は、第一号に掲げる場合を除き、そのはみ出し方ができるだけ少なくなるようにしなければならない」として1号の場合を除外しています。
1号の場合は2号~4号のように「そのはみ出し方ができるだけ少なくなるようにしなければならない」と定められていません。
これは、一方通行で対向車が来ないからです。
しかし、歩行者もいます。
車道と歩道等の区別があれば車道に歩行者はいませんが、車道と歩道等の区別がなければ歩行者もいます。
歩行者の安全を配慮するのは当然のことです。
※道交法70条(安全運転の義務)
「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、
他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」
(罰則 第百十九条第一項第九号、同条第二項)
c.例外2 : 道路の左側が充分な広さのないとき(道交法17条5項2号)
この場合は中央からはみ出さないと走れません。
ただし、はみ出しは「できるだけ少なくなるようにしなければならない」
例外だから当然のことです。
問題はありませんね。
d.例外3 : 道路の左側部分が壊れていたり、道路工事をしていたりして左側部分を通れないとき(道交法17条5項3号)
左側が走れないのなら右側を走るしかないですね。
この場合も「はみ出しはできるだけ少なくなるよう」にしなければなりません。
道路工事で交通誘導をしているときに、やって来る車がセンターラインをはみ出しても「ダメダメ」の誘導をしないでくださいね。
e.例外4 : 道路の左側が6m未満で、車を追い越すとき(道交法17条5項4号)
6mを「車二台が走れる巾」と考えているのでしょうね。
車一台分が3mあれば充分走れますからね。
cの「道路の左側が充分な広さがないとき」の“充分の広さ”については定められていませんが、この3mが基準になりそうですね。
もちろん、追い越し禁止の場合や追い越しが危険な場合はダメですから「但書」を置いています。 右側にはみ出してはいけない標識などがあるとき、右側部分を見通せることができないとき、対向車の通行を妨げるときはダメです。 |
・センターラインには黄線と白線があります。 ・二本線もあります。 ・各々意味がありますので少し説明します。 ・これは規制標示です。 |
||||||||||||
黄センターライン① | 黄センターライン② | 黄白センターライン |
イ.規制標識・標示と指示標識・標示
・標識とは表示板、標示とは道路に描かれた記号・文字です。
※道交法2条
.「十五道路標識 道路の交通に関し、規制又は指示を表示する標示板をいう。
十六.道路標示 道路の交通に関し、規制又は指示を表示する標示で、路面に描かれた道路鋲、ペイント、石等による線、記号又は文字をいう。」
・標識・標示には規制標識・標示と指示標識・標示があります。
・規制標識・標示 → 「交通の禁止・制限・指定を行う」もの。
・指示標識・標示 → 「特定の交通方法ができること、道交法上の決められた場所を示す」もの。
・簡単に言えば、「規制標識・標示はそれに従うことを命令するもの、指示標識・標示は教えてくれるもの」です。
道交法は、信号機・標識・標示の規格と意味を政令で定め、信号機・標識・標示によって交通規制をする権限を都道府県公安委員会に認めています
(道交法4条・施行令・道路標識区画線及び道路標示に関する命令)。
だから、信号機・標識・標示は道交法の規定に優先することになります。 → こちら
道交法のなかで「標識・標示で禁止している場合のほか」・「標識・標示で認められている場合は除く」としているのがそれです。
規制標識・標示に従わないと道交法違反となりますが、指示標識・標示に従わなくても道交法違反になる場合があります。
たとえば、踏切を通過する場合は踏切・停止線の直前で一旦停止しなければなりません(道交法33条)
踏切前に引かれている白い停止線は指示標示です。
「ここが踏切を通過する時に一時停止するところだよ」と教えているのです。
この白線を指示標示だからと無視すればれを無視すれば道交法33条違反となってしまいます。
ロ.黄色センターラインの意味
・黄色センターラインは規制標示です。
「追越しのために道路の右側部分にはみ出すことを禁止」しています。
・下の三つのセンターラインの内容は次のようになります。(道路標識区画線及び道路標示に関する命令・別表6-102)
・①と②は同じ意味です。 左側の車も右側の車も、 「追い越しのために道路の反対側にはみ出してはいけない」と規制しています。 ・③は左側は白線、右側は黄線です。 「左側の車は右側にはみ出してもよいが、 右側の車は左側にはみ出してはいけない」と規制しているのです。 |
||||||||||||
黄センターライン① | 黄センターライン② | 黄白センターライン |
・黄センターラインは「反対側へはみ出してはいけない」としているだけですから、はみ出さずに追い抜くことは違反ではありません。
・しかし、道交法30条は「交差点の手前30m以内はの進路変更・追越し・追い抜きを禁止しています。
交差点前に黄センターラインが引かれて居る場合、「はみ出さずに追い抜くこと、進路変更すること」は黄色センターラインの規制に反することはなくても道交法30条違反となります。
黄センターラインは「追越しのためにはみ出すことを禁止する」だけで、「交差点30m以内の進路変更・追い抜き・追越しを許した」ものではないからです。
ハ.白センターラインの意味
白センターラインは指示標示です。
「ここが道路の中央だよ」と示しているのです。
三本とも道路の中央を示していますがさらにもう一つのことを示しています。 ・①と②は「反対側にはみ出してはいけない道路部分である」こと、 ・③は「反対側にはみ出してもよい道路部分である」ことを教えています。 (道路標識区画線及び道路標示に関する命令・別表6-205) |
||||||||||||
白センターライン① | 白センターライン② | 白センターライン③ |
①のセンターラインは交差点の付近に引かれています。
道交法で交差点の手前30m以内は「進路変更・追越し・追い抜きを禁止」しています(30条)
追越しをするためには反対側にはみ出すことがあるでしょうから、「反対側へはみ出してはいけない部分なのだよ」と注意を促しているのです。
もちろん、黄センターラインの場合と同様、「はみ出さなければ進路変更・追い抜きが許される」わけではありません。
ニ.進路変更を規制するセンターライン
次は進路変更の規制標示です。右側の白線がセンターラインです。
・①ではどちらのレーンの車も進路変更をしてはいけません。 ・②は右車線の車は左車線に進路変更してはいけません。 左車線の車は右車線に進路変更してもかまいません。 ・右図のようになります。 ※道路標識・標示については「道路標識・区画線及び道路標示に関する命 令」で細かく定められいます。 → こちら |
||||||||||||
進路変更規制① | 進路変更規制② | 進路変更規制① | 進路変更規制② |
こんな道路標示もあります。。 もちろん、はみ出しはできるだけ少なくしなければなりません。 |
①・②は、「入ってはいけない」のだから「通過しても」いけません。 | ||||||||||||
①進入禁止部分 | ②安全地帯 | ③ この先安全地帯あり |
【広告】
50ccでミニカー
原動機付き自転車扱いです。
・a.自転車通行可の標識のあるとき ・b.自転車で車道を走るのが危険であるとされる者(児童・幼児・政令で定める身障者) ・c.車道の交通状況からみて車道を走るのが危険で歩道を走るのがやむを得ないとき。 ※車道と歩道の区別がある道路の場合、自転車は車道を走らなければなりません。 歩道を走るのは例外的な場合だと覚えておいてください。 |
||||||||||||
自転車と歩行者通行可 | 歩行者のみ通行可 |
なお、自転車道がある場合は自転車は自転車道を走らなければなりません。(道交法63条の3) 他の車両を牽引している自転車は自転車道を通れません。 |
||||||||||||
自転車並進可 | 自転車道 |
第十三節 自転車の交通方法の特例
・63条の3(自転車道の通行区分)
「車体の大きさ及び構造が内閣府令で定める基準に適合する二輪又は三輪の自転車で、他の車両を牽引していないもの(以下この節において「普通自転車」という。)は、
自転車道が設けられている道路においては、自転車道以外の車道を横断する場 合及び道路の状況その他の事情によりやむを得ない場合を除き、自転車道を通行しなければならない。
(罰則 第百二十一条第一項第五号)
前へ/車が歩道を走る場合 次へ/車が道路を横断する方法(25条・25条の2) 選任業務編目次へ 警備総索引 SPnet2.TOP SPnet SPnet番外