SPnet 選任業務編
・2号業務別教育資料-道路交通法・車両の通行方法① / 「車が歩道を走る場合」
ここでは道交法17条について説明しています。道路横にあるコンビニに入る場合や出る場合です。
駐車場警備で車を入れる場合や出す場合に遭遇する場合です。徹底的に教育しておきましょう。
また、車道,道路,歩道,路側帯,路肩の区別も教えておきましょう。
その定義を忘れても「その区別がある」とういことを知っていれば、自分で条文を読むでしょう。
「道路工事のために通行禁止とされた道路も道路に該る」という裁判例があります。
この区域で警備員がスクレーパーに乗っているのを見かけましたが、免許がなければ無免許運転です。
「車は路肩を路側帯を走ってもよいか?」については裁判例が分かれます。警備員は「ダメダメ」誘導をしてはいけません。
何度も言いますが、以上については受講生に発見させることが必要です。
知識を伝えるだけでは講義は何の役にも立ちません。
★自動車が平気で歩道を走っている?(講義に興味を持たせるための導入)
・車道とは?(道交法2条3号)
★道路とは「一般交通の用に供するその他の場所」も含む(道交法2条1号)
★道路工事のため通行禁止とされた道路も道路に該る
・歩道とは(道交法2条2号)
・路側帯とは(道交法2条3の4号)
・路肩とは(道路構造令 1条12号)
★車が歩道を走ってよい場合と走り方(道交法17条1項・2項)
・車道の左側に路側帯と歩道がある場合、車は路側帯の直前で一時停止しさらに歩道の直前で一時停止しなければならないか?
・車道と歩道等の区別のない道路からコンビニに入る場合はどうするか?(道交法25条の2)
★車は路肩を走ってもよいか?(裁判例で分かれる)
・自転車以外の車両は自転車道を通ってはいけない。自転車は自転車道を通らなければならない(道交法17条3項)
・軽車両は路側帯を通ってもよい(道交法17条の2)
★実際の警備業務で起こること
1.車は車道・人は歩道
交通警備員は道交法で飯を食っているようなものです。この新任教育で道交法をもう一度確認しましょう。
皆さん、知っていますか?「車は車道を走らなければなりません」
『そんなこと幼稚園児の孫でも知っていますよ!』
安心しました。皆さんが知らないといけないので確認しただけです。では次にいきます。
受講生がザワザワ。『ここの警備会社は大丈夫かい?警備員の教育係があんなことを言っているよ‥。』
でも、皆さんは車で歩道を走っていますよ。
『オレ、やっぱりこの警備会社に入るのをやめるワ』
車道からコンビニの駐車場に入るのに、車で歩道を横切っていませんか?
『そんなの“ひっかけ”じゃないですか!』
警備員が“ひっかけ”にひっかかってどうするんですか!
「幼稚園児と同じレベル」で交通誘導をされたら、会社は潰れてしまいます。
皆さんも「他人の権利・正当な活動に不当に干渉した」として警備業法違反となりますヨ。
悪くすれば強要罪で犯罪者。相手から人権侵害で賠償請求をされますよ。
あなたたちはこれから道交法で飯を食うのですよ!
「立っているだけの警備員」では入る現場がありませんよ!
『こ、こ、コ・ワ・イ‥。やっぱり警備員になるのはやめようかな‥。』
2.車道と歩道
まず、車が通る車道と人が通る歩道について確認していきます。
a.車道とは?(道交法2条3号)
では、車道とはどんな道ですか?
『「車が通るために作られた道」ではいけないのですか‥。こんな答えを言ったら、また「それで道交法で食べていくつもりか!」と叱られそうですが‥。』
先ほどは「“ひっかけ”だ」と言ったから叱ったのです。
知らないことを正当化したから叱ったのです。
知らないことは知れば済みます。しかし、知らないことを正当化していては知ろうとしないでしょう?
確かに「車道とは車が通るために作られた道」です。
しかし、「道交法での車道」にはさらにいくつかの要件が加わります。
法律にはその法律で使う言葉(用語)の意味を定めた規定があります。これを「定義規定」といいます。
道交法2条が定義規定で、道交法で使う言葉の意味を定めています。
※道交法2条3号
「車道 車両の通行の用に供するため縁石線若しくはさくその他これに類する工作物又は道路標示によつて区画された道路の部分をいう。 」
つまり、車道とは、
・①車両の通行のために作られたもの
・②縁石線などの工作物や道路標示で区別されたもの
・③道路であるもの
①はOKですね。
②の工作物とは縁石線・ガードレール・植木などですね。
道路標示とは白線ですね。
③は要注意です。
●●
選任のための法律知識・
b.道路とは「一般交通の用に供するその他の場所」も含む(道交法2条1号)
イ.「一般交通の用に供するその他の場所」とは
道路とはなんでしょう。
『これも、道交法で定義されているのですね‥。』
その通りです。
※道交法2条1号
「道路 → 道路法‥2条1項に規定する道路、道路運送法 ‥2条8項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所をいう。」
・道路法2条1項の道路とは高速道路・国道・県道・市町村道、
・道路運送法2条8項の自動車道とは自動車専用道のことです。
これらが道路であることは一般常識でわかると思います。
・ここで注意しなければならないのは、「一般交通の用に供するその他の場所」も道路としていることです。
「一般交通の用に供するその他の場所」とは、「一般の者が自由に通れる場所」のことです。
私道であろうと、道のような形をしていなくてもかまいません。
「一般の者が自由に通れる場所」なら道路に該ります。
そのような場所では、道交法の目的である「そこでの危険を防止し、交通の安全と円滑を図る」必要があるからです。
たとえば、私道を皆に開放していれば、その私道は道交法の道路です。
道交法の規制を受けますから、私道の持ち主も道交法に反することはできません。
公園・境内・河川敷・海岸なども入ります。
二昔前は河川敷がバイクの練習場となっていました。
休日ともなると百台以上のバイクが土埃をあげていました。
私も小学生の息子とバイクを走らせていました。
ラジコンヘリコプターを飛ばす人、バイクに迷惑そうな顔をして散歩する人もいました。
この河川敷は道交法の道路に該ります。
息子は無免許運転で、私はナンバーの付いていないバイクを運転したことで道交法違反となります。
スーパーや病院の駐車場も道路です。
会社の駐車場・施設内は「特定の人だけが出入りする」ので道路ではありません。
このような場所(道路)に「車が通るために、工作物や白線で区別された部分」があれば、それは車道となります。
「あのう‥、質問です。』
遠慮なくどうぞ。
『工作物や白線で区別されていなければどうなるのですか?
たとえば、一般の人も一般の車も入れる大きな広場です。』
それは道路です。「歩道や車道の区別のない道路」と言います。
ロ.道路工事警備の場合に注意すること-道路工事のため通行禁止とされた道路も道路に該る
道路に該るとした裁判例でおもしろいものがありますので紹介します。
※東京高判 昭42.5.31 高刑集20・3・341 判時495・88
(事案)
・道路工事のため道路標識によって一般の通行が禁止された道路で大型特殊自動車(ロードローラー)を無免許で運転した。
(判旨要約)
「通行の禁止は、道路管理者が一定の場合に、道路の構造保全または交通の危険を防止するため、一時的に行う道路管理上の措置に過ぎないのであり、
むしろ、道路本来の目的効用を達成するための措置であって、それが道路たることを否定するものではない」
(※新実務道路交通法5頁)
(説明)
この裁判例によると、道路工事中の道路は、一般人が出入りできなくても道路なのです。
深夜、国道の片面を道路工事している場所に通りかかったことがあります。
もちろん、その片面は保安柵などの資機材で区別され多くの警備員が交通誘導をしていました。
片側通行で停止しているときに、工事現場の中を見て驚きました。
なんと、警備員が誘導棒をズボンの後ろポケットに入れて、スクレーパーを走らせていたのです。
警備員が警備以外の仕事をするのも大問題ですか、その警備員が大型特殊自動車の免許を持っていなければ無免許運転です。
注意してくださいね。
※参考(講義では省略)
検定教本では、「一般交通の用に供するその他の場所」を次のように説明しています。
・道の体裁をなしていなくても
・①それが一般交通の用に開放され
・②客観的に一般交通の用に使用されている状態にある場所」
警察庁は次のように説明しています。
「一般交通の用に供するその他の場所」とは、
・現実の交通の実態をとらえて「道路」とみなされるもので、私有地、公有地の別にかかわらず、また、一般に「道路」としての形態の有無にかかわらず、
・①不特定の人や車が自由に通行することができ、
・②現実に通行に使用されている場所をいう」
検定教本の②は警察庁の②をより正確に記述したものです。
②の要件の説明は新任教育として少々難しいのでしない方がよいでしょう。
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c.歩道とは(道交法2条2号)
次に歩道の定義を見てみましょう。
※道交法2条2号
「歩道 歩行者の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された道路の部分をいう。」
歩道とは、
・①歩行者が通行するために作られたもの
・②縁石線や縁石線に類する工作物によって区画されたもの
・③道路の部分
① → OKですね。
③ → いま説明しましたね。「一般人の通れる場所」も含みますね。
②に注意してください。
車道とは違って「縁石線などの工作物で分けられているもの」だけですね。
白線で分けられている場合は歩道ではありません。
d.路側帯とは(道交法2条3の4号)
白線で分けられているのは何と言うのでしたか?
『路側帯です!』
その通り!
これは駐車・停車の方法(47条)で出てきましたね。
道路の端に白線で分けられている部分ですね。
では、道交法の定義をみてみましょう。
※道交法2条3の4号
「路側帯 歩行者の通行の用に供し、又は車道の効用を保つため、
歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の道路の部分で、
道路標示によつて区画されたものをいう。」
誰か路側帯の要件を説明できますか?
『はいっ!分かりました!』
どうぞ。
・①目的 → 歩行者の通行、車道の効用を保つ
・②場所 → 歩道のない道路の端、歩道のない側の道路の端
・③形状 → 帯状
・④表示 → 道路標示
・この四つの要件を満たしているものが道交法での路側帯です。』
凄いですね!あなたは本当に警備員になるのは初めてですか?
『いやぁ‥。実は〇×〇×‥。』
そうだったのですか、それで‥。
①・③は問題ありませんね。④の道路標示とは白線のことですよ。
②をよく見てください。
「道路の歩道の設けられていない側‥に設けられた」となっています。
たとえば、道路の左側に歩道がある。
しかし、その歩道のとなり(右)に白線で区画された帯状の部分がある。(※道路の左側に歩道と白線で区画された帯状の部分がある。)
これは「路側帯ではない」ことになります。
e.路肩とは(道路構造令 1条12号)
この帯状の部分は“路肩”と言います。
路肩は道交法ではなく道路構造令に定められています。
道路構造令は「道路を新設し、又は改築する場合における道路の構造の一般的技術的基準を定める」政令です。
しっかりとした・安全な道路を造ってもらわないと困りますからね。
※道路構造令 1条12号
「路肩 → 道路の主要構造部を保護し、又は車道の効用を保つために、車道、歩道、自転車道又は自転車歩行者道に接続して設けられる帯状の道路の部分をいう。」
道路構造令では「どのくらいの幅の路肩を造らなければならないか」も指定しています。(8条)
f.歩道等
なお、歩道と路側帯を含めて歩道等といいます。
これは次に説明する道交法17条に出てきます。
●●
選任のための法律知識・
3.車が歩道を走ってよい場合(道交法17条1項・2項)
さあ、「車は車道を走る」の説明です。
道交法にこう書いてあります。
a.道交法17条1項・2項
※道交法17条(通行区分)1項・2項
「 車両は、歩道又は路側帯(以下この条において「歩道等」という。)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。
ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ない場合において歩道等を横断するとき、
又は第四十七条第三項若しくは第四十八条の規定により歩道等で停車し、若しくは駐車するため必要な限度において歩道等を通行するときは、この限りでない。
2.前項ただし書の場合において、車両は、歩道等に入る直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げないようにしなければならない。」
(罰則 第一項から第四項まで及び第六項については第百十九条第一項第二号の二)
法律の条文の書き方はややこしいですね。
しかし、皆さんはこの条文で飯を食っていくのです。ややこしくても理解しなければなりません。
今から、皆さんにやってもらう作業があります。
この条文から次のことを抜き出してください。
・①原則 → 車はどんな道路でどこを走らなければならないか
・②例外1 → どんな場合か
・③例外2 → どんな場合か
・③例外3 → どんな場合か
・④例外1~3の場合はどうしなければならないか
ここで教官は少し休憩。
では、詳しく説明していきます。皆さんが書き出したものをチェックしてくださいね。
①原則 → 車は「車道と歩道・路側帯がある道路」では「車道を走らなければならない」。
・車道が歩道や路側帯と分けられているなら車道を走るのは当然ですね。
・では「車道が歩道・路側帯と分けられていない場合」はどうしましょう?「車道と歩道・路側帯が区別されていない道路」の場合です。
区別されていないからどこが車道か分かりませんね。
この場合は、「車は道路の中央から左側の部分」を走り(道交法17条4項・5項)、人は道路の右側端を歩きます(道交法10条1項)。
いわゆる「対面通行」ですね。これらの規定については後で説明します。
②例外1
・道路外の場所に入ろうとするとき、出ようとするときは路側帯・歩道を横断してもよい。
コンビニやガソリンスタンドに出入りする場合ですね。講義の最初に誰かが『ひっかけだ!』と言った場合です。
『先生‥。もうそのことは言わないでください‥。』
根が意地悪なのでついつい言ってしまうのです。あまり気にしないでください。
歩道や路側帯を通らなければコンビニやガソリンスタンドに出入りできませんから、この例外は当然のことですね。
・しかし、「やむを得ない場合は」と絞りをかけています。
「歩道・路側帯を横断しなくてもコンビニやガソリンスタンドに出入りできる場合は歩道・路側帯を横断してはいけない」ということです。
どんな場合でしょうかね。
たとえば、コンビニが交差点の角にある。
今走っている道路には歩道・路側帯がある。しかし、交差点を曲がれば歩道・路側帯がない。
今走っている道路からコンビニに入ろうとはすると歩道を横断しなければならない、交差点を曲がってからコンビニに入ろうとすると歩道を横断しなくてもよい。
そんな場合は、交差点を曲がって歩道・路側帯のない方からコンビニに入りなさい。
そういう意味でしょう。
②例外2
・左側に路側帯があるときは路側帯に入って駐車・停車しなければならない(47条3項)場合です。
路側帯に入るためには路側帯を通らなければなりませんから、この例外も当然のことです。
「必要な限度で」という絞りがかかっています。不必要ならしてはいけない」のは当然のことです。
・③例外3
・道路標識で歩道・路側帯への駐車・停車が指定されているときはこれに従う(48条)の場合です。
これも当然ですね。
・④例外1~3の場合にどうしなければならないか(17条2項)
これは大切です。
・「歩道・路側帯に入る直前で一時停止すること」+「歩行者の通行を妨害しないこと」
・歩道・路側帯の直前で一時停止 → コンビニに入る時は車道で一時停止、コンビニから出る時はコンビニの駐車場で一時停止ですよ。
歩道や路側帯に入って一時停止したのでは道交法違反となります。
・歩道や路側帯に歩行者がいなくても一時停止ですよ。
踏切前の一時停止と同じですね。
コンビニ前の一時停止を取り締まれば国の収入は急増するでしょうね。
・一時停止するだけではだめです。さらに歩行者の通行を妨害してはいけません。
たとえば、コンビニに入るために歩道・路側帯で一時停止して車を動かし始めた。ちょうどそのときに歩道・路側帯を歩行者がやってきた。
こんな場合は歩道・路側帯上でさらに一時停止して歩行者を通さなければなりませんね。
・罰則があります。3月以下の懲役又は五万円以下の罰金
禁固刑以上の刑を受けた場合、出所してから5年間は警備員になれません。
執行猶予になっても執行猶予中は警備員になれません。
警備員である人は警備員を続けることはできません。コンビニに出入りする時には注意してください。
※参考(講義では省略)
17条1項但書の「必要な限度において」は「駐車だけの場合か停車の場合を含むか」は条文をどう読むかによって異なります。
「若しくは」の前に句点があるからです。
①「歩道等で停車する場合はこの限りでない」+「歩道等で駐車するために必要な限度において歩道等を通行する場合はこの限りでない」と読む。
②「歩道等で停車するため必要な限度において歩道等を通行する時はこの限りでない」+「歩道等で駐車するために必要な限度において歩道等を通行する場合はこの限りでない」と読む。
「若しくは」の前に句点がなければ②でしょう。句点があるので①の解釈が出てきます。
上では、この点に触れずごまかしています。
17条但書は「車両が路側帯・歩道を通行するのは例外的に認められているのだから、そのために必要な限度で路側帯・歩道を通行してもよい」という立法趣旨でしょう。
たとえば、
車を停車・駐車したい
→左側に路側帯がある
→路側帯に入って停車・駐車しなければならない
→停車・駐車するまで路側帯を走ってもよい
→渋滞しているからそこまで路側帯を走ってしまえ!
このような場合を防ぎたいのでしょう。
②と解釈するのが妥当ではないでしょうか。
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b.『.質問です!』
どうそ。
①車道の左側に路側帯と歩道がある場合、車は路側帯の直前で一時停止しさらに歩道の直前で一時停止しなければならないのですか?
よくある質問ですが、そんな場合は起こりません。
路側帯とは歩道のない道路側にある白線で区画された部分です。
歩道があればその部分は路側帯ではありません。それは路肩です。
車道の左側に路側帯と歩道が並んであることはあり得ません。
この場合は、歩道の直前で一時停止すればOKです。
②車道と歩道等の区別のない道路からコンビニに入る場合はどうするのですか?
これはあり得ますね。
この場合は道交法17条2項の対象外ですから、17条2項は適用されません。
しかし、道交法25条の2でこう定められています。
※道交法25条の2(横断等の禁止)
「車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。
2.車両は、道路標識等により横断、転回又は後退が禁止されている道路の部分においては、当該禁止された行為をしてはならない。」
(罰則 第一項については第百十九条第一項第二号の二 第二項については第百二十条第一項第四号、同条第二項)
1項がこの場合ですね。
たとえば、歩道や路側帯のない道路を車で走っていた、道路の左側のコンビニに入ろうとする。
向こうから道路の左端を歩行者がやって来た。
やって来る歩行者との距離にもよりますが、その歩行者が止まってコンビニに入る車を待たなければならないような状況では「歩行者‥の正常な交通を妨害するおそれがあるとぎ」に該るでしょう。
そんな状況なら一時停止して歩行者の通過を待たなければなりません。
しかし、歩行者がいなければ一時停止する必要はないでしょう。
③車は路肩を走ってもいいのですか?
例えば、ガードレールで仕切られた歩道の右側に白線で区別された路肩がある。
信号渋滞の場合ここをバイクが通って、渋滞をスイスイとすり抜けていきます。
この場合のことですね。
このバイクに腹を立てて車を路肩に入れてバイクを邪魔するのも同じですよ。
道交法17条には路肩はでてきません。
道交法で路肩が出てくるのは「高速道路・自動車専用道の交通方法」の部分です。
※道交法75条の3(危険防止等の措置)
「警察官は、道路の損壊、交通事故の発生その他の事情により高速自動車国道又は自動車専用道路‥において交通の危険が生じ、又は交通の混雑が生ずるおそれがある場合において、
当該道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るためやむを得ないと認めるときは、
必要な限度において、その現場に進行してくる自動車の通行を禁止し、若しくは制限し、
又はその現場にある自動車の運転者に対し、第十七条第一項及び道路法第四十七条第四項 の規定に基づく政令の規定にかかわらず路肩又は路側帯を通行すべきことを命じ、‥ることができる。」
(罰則 第百十九条第一項第十二号の二)
この規定を反対解釈すれば、高速道路・自動車専用道では路肩を通行してはいけないことになります。
高速道路や自動車専用道で「路肩走行禁止」の標識をみかけますね。
では、一般道ではどうなのでしょうか。
「歩道がある場合に、路肩が車道に該るかどうか」について裁判では解釈が分かれています。
・道交法上の車道であるとして、車の通行を道交法違反でないとしたもの(刑事・東京高裁昭和53年3月8日)
・道交法上の車道であるとして、車道の駐車禁止が路肩にも及ぶとしたもの(刑事・大阪高裁平成3年3月22日)
・道交法上の車道でないとして、ここを通行していて事故を起こした自動二輪に6割の過失を認めたもの(民事・大阪高裁平成14年1月25日)
裁判で分かれる問題に警備員はタッチしてはいけません。
歩道のない路側帯を走ってくる車(道交法17条違反)に「ダメダメの誘導」はよいにしても、
歩道のある路肩を走ってくる車(道交法17条に規定されていない場合で裁判例がわかれているので道交法違反かどうかハッキリしない)に「ダメダメの誘導」をしてはいけません。
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国産ではないけれど「いい味」。
※トライクの法的取り扱い
c.軽車両の例外
今までの説明は自動車を例にとりましたが、これらは車両すべてに対する規制です。
車両は自動車だけではありません、原動機付き自転車、軽車両(自転車・リヤカー・牛馬など)を含みます。
軽車両には特別の定めががあります。
・自転車以外の車両は自転車道を通ってはいけない。自転車は自転車道を通らなければならない
※道交法17条3項
「二輪又は三輪の自転車(側車付きのもの及び他の車両を牽引しているものを除く。)以外の車両は、自転車道を通行してはならない。
ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ないときは、自転車道を横断することができる。」
※道交法2条3号の3)
「自転車道 → 自転車の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された車道の部分をいう。」
※63条の3(自転車道の通行区分)
「車体の大きさ及び構造が内閣府令で定める基準に適合する二輪又は三輪の自転車で、他の車両を牽引していないもの(以下この節において「普通自転車」という。)は、
自転車道が設けられている道路においては、自転車道以外の車道を横断する場合及び道路の状況その他の事情によりやむを得ない場合を除き、自転車道を通行しなければならない。」
(罰則 第百二十一条第一項第五号)
※参考 道交法16条4項
「この章の規定の適用については、自転車道が設けられている道路における自転車道と自転車道以外の車道の部分とは、それぞれ一の車道とする。」
こんなことを持ち出すと受講生の頭が混乱します。自転車道は車道・歩道と別のものとして騙しておきましょう。
自転車道を通れるのは二輪自転車・三輪自転車だけです。
二輪自転車・三輪自転車でも横にサイドカーや後ろにリヤカーを付けていると自転車道を走れません。
リヤカーや牛馬など自転車以外の軽車両は自転車道を通れません。
歩行者も自転車道を通れません。
自転車道を通れる自転車は自転車道を通らなければなりません。
・軽車両は路側帯を通ってもよい。
※道交法17条の2(軽車両の路側帯通行)
「軽車両は、前条第一項の規定にかかわらず、著しく歩行者の通行を妨げることとなる場合を除き、
路側帯(軽車両の通行を禁止することを表示する道路標示によつて区画されたものを除く。)を通行することができる。
2.前項の場合において、軽車両は、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければならない。」
(罰則 第二項については第百二十一条第一項第五号)
軽車両には原動機がついていませんからスピードが遅くじゃまになるからでしょう。
歩行者の通行を妨げるような速度と方法で通行した場合は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金。
「路側帯を通行することができる」だから「路側帯を通行しても通行しなくてもかまいません。」
なお、「原付バイクや自動車に牽引されているリヤカーや故障車は軽車両になる」と説明しましたね。
しかし、道交法16条2項では「車両の通行方法については、これら軽車両もまとめて原付バイクや自動車として扱う」としています。
※道交法16条2項(通則)
「この章の規定の適用については、
自動車又は原動機付自転車により他の車両を牽引する場合における当該牽引される車両はその牽引する自動車又は原動機付自転車の一部とする。」
このような場合は軽車両でも路側帯を通れません。
4.実際の警備業務で起こること
私はフライドチキン屋さんの駐車場で交通誘導をしたことがあります。
クリスマスイブの駐車場は大変なことになります。
予約のお客さんは殺到する、駐車場は狭い。
チキン屋さんの駐車場に入るのも出るのも大渋滞。
まず、駐車場から車を出さなくてはなりません。
駐車場の前の道路が信号の近くなら、信号が赤になっているすきに駐車場から車を出します。
そのために、ついつい駐車場の前にある歩道を通行する歩行者を止めてしまいます。
しかし、これは道交法17条2項の「歩行者の通行を妨げないようにしなければならない」に反していることになります。
歩行者にお願いして歩行者が止まってくれても、警備業法15条の「個人の正当な活動に干渉した」ことになり警備業法違反となります。
また、駐車場から車を出すために本線道路を通行している車にお願いして止まってもらうこともします。
これも道交法25条の2や警備業法15条に反する行為です。
警備員が法律を忠実に守っていたのなら、顧客からクレームが出ます。
しかし、それが違法行為であると知っているのと知っていないのとでは大きな違いがあります。
違法行為であると知っていれば、おのずと控えめになるでしょうし、クレームを出した顧客を納得させることもできます。
2号警備員は道交法を熟知しなければならないのです。
5.新任警備員のためのワンポイント
①スーパーの駐車場も道路
②歩道は工作物で分けられている
③歩道のそばに路側帯はない
④車が駐車場に出入りする時は一時停車・歩行者優先
つづく。
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