SPnet 選任業務編



・警備員教育-新任教育・1号業務別教育の2日目レジュメ案





さて四話連続ドラマの最終日です。
今回は1号新任業務別教育の「不審者を発見した場合にとるべき措置に関すること」と
「その他当該警備業務を適正に実施するために必要な知識及び技能に関すること」のレジュメ案です。
「新任教育中の留意点」と「実地教育を組み込む場合の注意点」も書いておきました。
新任警備員は「きおつけ・敬礼・休め」もしっかりとできるようになり、制服姿も似合うようになりました。
本日で新任教育は終わりです。彼らのこれからを楽しみにして送り出しましょう。


「不審者を発見した場合にとるべき措置に関すること」レジュメ案
「その他当該警備業務を適正に実施するために必要な知識及び技能に関すること」レジュメ案
新任教育中の留意点
実地教育を組み込む場合の注意点

※2019年改正で警備員教育の教育期・教育時間数が変更されました。 → こちら
この頁の内容は以前の「新任教育は基本教育15時間・業務別教育15時間の合計30時間」
「現任教育は前期に基本教育3時間・業務別教育5時間の合計8時間、後期も同じ」の時のものです。

    

4「不審者を発見した場合にとるべき措置に関すること」(講義及び実技)・6時間~7時間



施設警備員は不審者・犯罪者に遭遇することが少なくありません。

「110番通報」しても警察官が到着するまでは警備員が対処しなければなりません。
そんな場合には「何ができるのか、何ができないのか」を知っていないと、臆して顧客を守れなかったり、やり過ぎて違法行為を行ったりしてしまいます。

施設警備員は犯罪者を逮捕する権限を顧客(施設側)から与えられていません。
その権限を与えられているのは特別な教育と訓練を受けた保安警備員です。

しかし、一般客・従業員が犯罪者を捕まえて警備員に引き渡すことがあります。
警察官が到着するまでのあいだ、警備員が犯罪者の身柄を引き受けなければなりません。
その時に、犯罪者の自傷・攻撃・逃亡がなされたり、警備員が違法行為・人権侵害を起こしたりする危険があります。
警備員は「何が起こりうるのか、何をするべきなのか、何ができるのか、何をしてはいけないのか」を知っていなければならないのです。

ただ、これらを適正にやるためには場数を踏まなければなりません。
しかし、「やれるやれない」は別にして、「知っているのと知っていない」のとでは大きな違いがあります。

これらに関する教育は保安警備員には行われますが、一般警備員には行われていないようです。
ぜひ、施設警備員の新任教育に採り入れることをお勧めします。

犯罪者を捕まえた後の事後処置は私服保安教本に詳しく書いてあります。
1号指導教育責任者は一読ください。
なお、以下で“実例”とは、ほとんどが私服保安教本の70事例です。


a.現行犯逮捕時にできること

・逮捕する時 → 実力を使って身体を拘束しそれを短時間継続すること。

  実力行使の程度・身体を拘束できる時間

・逮捕したあと → 警察官に引き渡すことだけしかできない。

  警備室へ連れて行くことも相手の同意が必要 → どのようにして説得するか。


b.同行のやり方

・逃がすな・捨てさせるな・怖がらせるな・世間の目に触れさせるな。

・逃げられたら誤認逮捕扱い → なぜ? 
・逃げた犯人が自殺したら大スキャンダル → なぜ?
・万引き犯人に商品を捨てられたら誤認逮捕扱い → なぜ?
・とにかく逃げようとする → 実例 
・70歳超の老婆でも若い警備員に大怪我をさせる → 実例。

・同行の際の警備員の位置
・人目を避けるルート
・安心させる方法


c.警備室での取扱

・犯人を座らせる位置

  どこか? → なぜか?
  実例 → 窓から逃げた犯人は‥。

・犯人の攻撃と自傷に注意

  何でも凶器になる。 → 机の上には何も置いておかない。
  常に犯人から目を離さない。
  実例 → 出刃包丁で切られた保安警備員
  実例 → 保安警備員の目の前で自殺を図った男。

・犯人の身柄確保から警察連絡までは30分

  なぜか? → 30分なら逮捕行為に含まれる。

・犯人の自由意思による(任意の)所持品検査

  目的は何か? → 凶器所持
※保安警備員は万引き犯を捕まえたあと、警察官到着までに被害商品のリストを作らなければならないので、被害商品の確認のためにも任意の所持品検査を行う。
※この任意の所持品検査は場数を踏んでいないと違法捜索・押収となる危険がある。施設警備員は「自分と犯人を守るための凶器発見」に止めておく必要がある。

  銃刀法で所持禁止の刃物はどんなものか?

  犯人に出させる。
  犯人が承諾しても犯人の荷物や体に手を振れない → 「承諾があるのにしてはいけない」のはなぜか?

・犯人の身元確認

  なぜ必要か → 警察官が事前に前歴照会をする → それによって警察官の処置法方法が違う。
  犯人が身分証明書・運転免許証を任意で出した時の注意点。
  犯人は嘘をいう → 実例

・犯人の盗った商品は犯人のもの(占有権がある)

  持ち出す時には犯人の同意が必要。
  警察官が到着するまで売り場に戻すな。

・必要以外のことは話すな

  人権侵害になった例

・犯人をトイレに行かせる時の注意点
・犯人を一人で帰すな

  なぜか?

・犯人が女性の場合は女性の立会いが必要

  『忙しいから女性従業員を行かせられない』という総務課長にどう言うか

・商品の買い取りについて

  盗られた物・盗った者・盗られた者の法律関係 → 買い取りは強制できない。
  警備員は買い取りに一切関わるな

※以上2時間程度。


d.実技(上記a~c)・タップリと時間をかける

・教官が犯人役になる。
・ポケットやバックの中に凶器を隠したり、警備員を挑発したり、逃げようとしたりして実際の警備室内を再現する。
・一度終わるたびに「どこが悪かったか」を考えさせる。
・だんだんと上手くなってくるので、本気で殴りかかったり自殺しようとしたりして受講生の危機意識を高める。
  現場は素人が手に負えるような甘いものではない。

時間があれば以下を説明する。


e.盗撮犯人の取扱

・盗撮は犯罪か?
・犯罪にならない場合 → 人格権侵害に対する正当防衛 → 何ができるのか?
・犯罪になる場合 → 迷惑行為防止条例 → 何ができるのか?

・被害者の確保を忘れるな。
・犯人が盗撮した画像を目の前で消去しても何もできない → なぜ?
・盗撮犯検挙の実例


f.のぞき・女子トイレ潜み込み

・軽犯罪法と迷惑行為防止条例の違い。
・女子トイレ潜み込みの対処方法 → 実例


g.恐喝・クレーマー

・実例
    





5.「その他当該警備業務を適正に実施するために必要な知識及び技能に関すること」(講義及び実技)・30分~1時間


何を教えてもこの項目に該当します。
業務別教育項目5項目のうち、1・2・3・4を10分ずつ話して、残り14時間20分を自分の警備員としての自慢話をしていてもこの項目に該ります。

ここでは、新任教育最後の締めくくりとして、警備員としての精神論を教えましょう。
社長に登場してもらって、話をしてもらうのもいいですね。

注意してほしいのは、この項目も「講義及び実技」であること。
最後に『きおつけ・敬礼!』で実技としましょうか‥。

あえてレジュメにしません。

    
6.その他の留意点


a.新任教育中の留意点


イ.受講生は制服着用・教官も制服着用

  制服は団体における各個人の意志を統一させるためのものです。
  会社への帰属意識を持たせ、警備員としての自覚を持たせることができます。

・教官も制服着用です。
  教官はどの受講生よりも制服が似合っていなければなりません。

・私服保安の場合はスーツ・ネクタイです。

  クールビズ・ウォームビズなど警備員には関係ありません。
  彼らがこれから入る現場は、もっと暑くて・うっとうしくて・寒いところです。

ロ.受講態度を徹底的に正す

・警備員の新任教育は訓練です。
・ぼんやり・居眠り・私語厳禁。
・お茶を飲むなどもってのほか。机の上にペットボトルを置くな!
・もちろん、ケイタイの電源は切らせましょう。

  あれ?
  受講生にビデオを観させて、教官が後ろで腕組みして居眠りしているよ! 

    
b.新任教育四日目(業務別教育二日目)を実地教育にする場合の注意点


業務別教育15時間のうち8時間までは実地教育を行うことが認められています。
業務別教育の一日目を7時間にして、そのあと現場で8時間教育するというのが一般的に行われています。

『座学よりも現場に入れた方が教育効果が上がるからね!』

それは指導教育責任者であるあなたの教え方が下手だからです。

新任教育と現場研修は別のものです。
新任教育は警備員としての心構え・姿勢を教え、基本知識・基本技術を習得させるものです。
実際の業務のやり方を教える現場研修とはその目的が違います。

また、ほとんどの場合、実地教育を担当するのは検定資格者・継続2年以上勤務者です。
彼らは現場実務を行っている警備員です。

彼らに実地教育を細かく行う時間的余裕がないので、新任教育四日目の受講生は“お荷物”となります。
『適当に8時間ブラブラしていてよ』で終わってしまいます。

だって…、『いつまでタダ飯を食わしているンだ!四日間もグタグタと能書きを教えているな!三日教育して一日で現場を教えろ!』と社長に言われますから…。

そうなのですか‥、上からそう言われたら従うしかないですね。
しかし、次の点に注意してください。

業務別教育二日目を実地教育にする場合、業務別教育一日目で「業務別教育の5項目すべて」を教えておく必要があります。

教育項目を上から ①,②,③ と教え、「あとは実地教育でね」と現場の隊員に任せても、現場で残り項目を教えられない場合があるからです。

現場の教育担当隊員が『適当に巡回していてよ』と放りぱなしにすれば、③の「巡回に関すること」を教えたことになりますが、④ と ⑤ は教育欠如となります。
現場で事件・事故が起こり、受講生もその対処応援で8時間費やせば、⑤の「業務を適正に実施するために必要な知識・技能」を教えたことになりますが、④ が教育欠如となります。
業務別教育一日目で全項目を教えておけば、実地教育がどの内容になっても教育欠如とはなりません。

『そんな、堅苦しいことを言わないでも‥。教育実施確認書なんか何とでも書けるじゃない‥。』

では、これだけは覚えておいてください。

・優れた隊員のいるところには、優れた選任がいる。
・優れた選任のいるところには、優れた社風とそれを守る経営者がいる。
・現場の隊員は、会社の本質をそのまま映し出している。


つづく。




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