SPnet 選任業務編


3.契約前書面・契約後書面-契約後書面を渡してなければ会社が潰れる   
※各書式のダウンロードは一番下の緑字の部分から



【1】制度趣旨-顧客保護


土木会社が土木工事を受注します。
警備員が必要なので警備会社の営業マンを呼びます。

会 『 ちょっとした土木工事をするンだけど、施主から交通誘導検定二級の警備員を要求されているんだ。二級資格者を頼むよ。 』
営 『 最近では施主もいろいろ注文をしてきますね。ちょっとした工事でも検定二級を要求しますから。
       ご心配なく。ウチの隊員はみんな実力者ばかりですから…。 』

土木会社の担当者は検定二級資格者を配置してくれるものと考えて契約する。

工事当日にやってきた警備員は検定二級を持っていなかった。

その工事の場所は検定資格者の配置義務がなかったが、施主が契約した仕事の仕様書には検定資格者配置が条件だった。
施主は契約違反となり、土木会社は施主から損害賠償を請求される。

土木会社が警備会社に文句を言う。
その営業マンは:
『 検定資格者を配置するとは言っていません。実力者といった筈です。勘違いしたのはそちらですよ。 』 と逃げてしまう。

このような営業トークから顧客を護るのが制度の目的です。


もともと契約は対等な立場で行われます。

契約内容を吟味するのはお互いの責任です。
相手がウソを言わない限り、自分が誤解してもそれは自分の責任です。相手に文句を言うことはできません。

しかし、専門的な業務に関する契約ではその業務に精通している方が有利になります。

そこで、契約をする前に契約内容を書面で明らかにしてその内容を確認させるのです。
実質的な対等性を実現するために契約対等の原則を修正しているのです。


この修正が大きくなると、買主が一方的に契約を取消せるようにしたり(クーリングオフ・特定商取引に関する法律)、、
損害賠償請求の挙証責任を請求される側に移したりします(製造物責任法・PL法)。

どれだけ修正するかは“力の差”によって違います。
警備業者と契約する相手方の“力の差”が今よりもっと大きくなれば、より以上の修正がなされるでしょう。

警備業者に課せられた 「契約内容を確認する書面を契約前に相手方に交付すること 」 (以下に書面交付義務)は、
探偵業・金融業・宅建業・貸金業などでも定められています。


警備業者に対する書面交付義務は平成17年の警備業法改正で定められたものです。
この改正では、顧客からの苦情処理に関する義務も定められました。

警備業法が制定されてから33年、警備業界が発展し顧客保護の必要性が大きくなってきたのでしょう。


【2】制度概要-契約前と契約後に書面を交付


警備業法で定める警備業者の書面交付は「契約する前」と「契約した後」の両方にしなければなりません。
この点、貸金業者の「契約した後の書面交付義務(貸金業法17条・罰則48条4号)」より厳しいものといえます。

書面に記載しなければならない項目も細かく定められています。

書面を交付しなかったり、記載しなければならない項目が欠けていたり、記載内容に嘘があったりすると100万円以下の罰金(警備業法57条4号)。
警備業法に違反して罰金となれば認定取消・警備業界から5年間追放となります。


警備業者にとっては命取りとなる書面交付義務ですが、今のところそれほど厳しく取り締まられていません。

新しい制度なので、「まず制度を浸透させよう」としているのでしょう。

しかし、取締はだんだんと強くなってくると思います。

『 契約前書面は渡すけれど、契約後書面なんか渡していないけど…。 』

ちょっと、チョット!そこの“選任”サン。
資格剥奪・5年間出入り禁止になりますよ!

もう一度「何が求められているのか」を確認してみましょう。


(参考)警察庁の方針

警備業法の一部を改正する法律(平成16年法律第50号)の附則に基づく検討結果(平成23年1月27日・警察庁生活安全局)

現状

・警備業務に関する苦情件数は書面交付義務が課せられた平成17年より増加している。
・苦情の内容は契約・解約に関するものが過半数。
・苦情はほとんどが個人消費者からのもので、ホームセキュリティ(機械警備業務)に関するものであると考えられる。
・ホームセキュリティ対象施設が急増しているので、それに伴い苦情が増えていると考えられる。
・苦情件数は増えているが契約件数に対する苦情の割合は減少傾向にあると考えられる。
※「一つの契約で1施設の機械警備を行う場合に比べ一つの契約で10施設の機械警備を行う場合では苦情の数は10倍になる。しかし、契約から生じた苦情は一つである」という意味か。

・警備業者のヒアリングでは「書面交付義務は依頼者保護の観点から必要不可欠で定着させなければならない」という意見があり警備業者に依頼者保護意識が高まっていると見受けられる。
※ヒアリングで「そんなものは無駄だ」という警備業者はいないでしょう…。

・書面交付義務違反は年々増加している。

検討結果

・書面交付義務は警備業者の依頼者保護に対する意識向上と不当な契約締結防止に一定の効果を上げている。
・現行制度を維持しつつこの制度を警備業者に更に浸透させるために公安委員会による警備業者の指導監督に努める必要がある。
・消費者が不良警備会社を選ばないように、行政処分(営業停止・認定取消)を受けた業者の情報を公表することを検討する。

詳細は→→こちら


【3】警備業法・警備業法施行規則に定められていること


1.契約前書面交付義務


警備業者は、警備業務の依頼者と警備業務を行う契約を締結しようとするときは、
  
当該契約を締結するまでに
  
内閣府令で定めるところにより 当該契約の概要について記載した書面をその者に交付しなければならない。」(警備業法19条1項)


契約前書面に記載しなければならない事項-内閣布令(警備業法施行規則33条)

1号~4号と機械警備の各々について記載事項が別々に定められていますが実質上は同じです。

一般で使われている契約前書面はこれらの項目をすべて含んでいます。
改めて確認する必要はないでしょうが、一度内容を見ておいた方がよいでしょう。。


なお、定められた項目に関することが書いてあればその様式は問いません。


(参考) 内閣布令で定められている契約前書面に記載する事項。(警備業法施行規則33条)


(機械警備以外の1号業務)

イ.警備業者の氏名又は名称、住所及び電話番号並びに法人にあつては代表者の氏名
ロ.警備業務を行う日及び時間帯
ハ.警備業務対象施設の名称及び所在地
ニ.警備業務に従事させる警備員の人数及び担当業務
ホ.警備業務に従事させる警備員が有する知識及び技能
ヘ.警備業務に従事させる警備員が用いる服装
ト.警備業務を実施するために使用する機器又は各種資機材
チ.警備業務対象施設の鍵の管理に関する事項
リ.警備業務対象施設における盗難等の事故発生時の措置
ヌ.報告の方法、頻度及び時期その他の警備業務の依頼者への報告に関する事項
ル.警備業務の対価その他の当該警備業務の依頼者が支払わなければならない金銭の額
ヲ.ルの金銭の支払の時期及び方法
ワ.警備業務を行う期間
カ.警備業務の再委託に関する事項
ヨ.免責に関する事項
タ.損害賠償の範囲、損害賠償額その他の損害賠償に関する事項
レ.契約の更新に関する事項
ソ.契約の変更に関する事項
ツ.契約の解除に関する事項
ネ.警備業務に係る苦情を受け付けるための窓口
ナ.特約があるときは、その内容


(2号業務)


イ.警備業務を行うこととする場所
ロ.警備業務を行うこととする場所における負傷等の事故発生時の措置
ハ.前号イ、ロ、ニからトまで及びヌからナまでに掲げる事項

※1号業務のハ(警備対象施設)・リ(盗難等の事故発生時の措置)はイ・ロで網羅されている。
※1号業務のチ(鍵の保管方法)は2号業務では関係ない。
※結局、記載内容は1号業務と同じ。


(3号業務)


イ.運搬されることとなる現金、貴金属、美術品等であつて、警備業務の対象とするもの
ロ.警備業務を行う路程
ハ.2以上の車両を使用して警備業務を行うときは、これらの車両の車列の編成
ニ.運搬されることとなる現金、貴金属、美術品等であつて、警備業務の対象とするものの管理に関する事項
ホ.運搬されることとなる現金、貴金属、美術品等であつて、警備業務の対象とするものに係る盗難等の事故発生時の措置
ヘ.第一号イ、ロ、ニからトまで及びヌからナまでに掲げる事項

※1号業務での記載内容のハ(警備対象施設)・チ(鍵の管理方法)・リ(盗難等の事故発生時の措置)が抜けているが、これはイ~ホで網羅されている。
※結局記載内容は1号業務と同じ。


(4号業務)

イ.警備業務の対象となる者の氏名及び住所又は居所
ロ.警備業務の対象となる者に対する危害が発生するおそれがあり、又は発生したときの措置
ハ.第一号イ、ロ、ニからトまで及びヌからナまでに掲げる事項

※これも結局1号業務の記載内容と同じ。


(機械警備業務)

イ.基地局及び待機所の所在地
ロ.盗難等の事故の発生に関する情報を感知する機器の設置場所及び種類その他警備業務用機械装置の概要
ハ.待機所から警備業務対象施設までの路程(当該路程を記載することが困難な事情があるときは、基地局において盗難等の事故の発生に関する情報を受信した場合にその受信の時から警備員が現場に到着する時までに通常要する時間)
ニ.送信機器の維持管理の方法
ホ.第一号イからナまでに掲げる事項

※これも1号業務の記載内容と実質上同じ。


2.契約後書面交付義務


警備業者は、警備業務を行う契約を締結したときは、
  
遅滞なく
  内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項について
   当該契約の内容を明らかにする書面を当該警備業務の依頼者に交付しなければならない。」(警備業法19条本文)

警備業者が警備契約をした時には「遅滞なく」一定の事項を記載した書面を顧客に渡さなければならないのです。



a.契約後書面はなぜ必要なのか


『質問です!』

どうぞ。

『契約前なら、誤解のないように「こういう契約をしますよ」という書面を渡してもらえば顧客は助かります。
しかし、契約をした後で「こんな契約をしましたよ」という書面を渡してもらっても意味がないンじゃないですか?』


契約書があれば契約後書面は必要ありません。
契約書で契約内容がはっきりとしていますから警備業者の不履行責任を問うことができます。

しかし契約書がなければ契約内容がはっきりとせず争いがおこります。
契約後書面は契約書を作らない場合に意味を持ちます。


『続けて質問です。』

さらに、どうぞ。(使う場面がちがいましたね…。)


『契約書を作らなくても契約前書面がありますから契約の内容ははっきりとしていますよ』


契約前書面は契約をする前の契約内容を確認する書面です。
実際の契約時に契約の内容が変更されることがあります。

この場合、警備業者は変更された契約内容について改めて契約前書面を交付しなければなりません。

警備業者がこの契約前書面をを交付しなかった場合、警備業者は警備業法違反となりますが契約は成立してしまいます。
契約はお互いの合意で成立するからです。

こうなると契約内容をはっきりと示すものがなくなってしまいます。
契約後書面はこのような場合に役立つのです。


契約後書面は契約書に代わるものなのです。
後で述べますが、法定の記載事項が記載されている契約書を渡せば契約後書面を交付したことになります。

警察庁も契約後書面交付義務につき、
合意された契約の内容を明確に記録して、後日に紛議が生じないように交付することとされた」と説明しています。



b.契約後書面に記載しなければならない事項


警備業法19条2項と警備業法施行規則34条に定められています。

各自、契約前書面と契約後書面の記載事項の違いを確認してください。


『あのう…。』

なんですか?

『選任といっても現場にも出なければなりません。結果だけ教えてくださいよ。』

あくまで、私のしたチェックですから間違っていても責任は持ちませんよ。

『もちろんです!』


契約前書面の記載事項と契約後書面の記載事項で異なる点は二つだけ、後は同じです。

契約後書面に記載しなくてよい事項は、 「警備業者の氏名・名称、住所、電話番号、代表者の氏名(法人の場合)」

もちろん記載してもかまいません。

契約後書面に記載しなければならない事項は「契約締結年月日」

要するに、
契約後書面=契約前書面+契約年月日 なのです。


なぜ、契約後書面の記載事項から警備業者の氏名・名称・住所・電話番号・代表者を外したのでしょう。

契約前書面に書かれているからでしょうか?
契約後書面他の文言から警備業者の名称などが分かるからでしょうか?
それとも、「契約後書面は契約書ではないんだよ」と言いたいからでしょうか?


『あのう…。』

なんですか?

『暇な時に条文をチェックしますので、参考として条文を上げてください。』

やめなさい、「法律の条文は、なぜここまでややこしいのか・回りくどいのか」と腹が立ちますよ。
腹が立ったので“参考”としても上げません。



3.契約前書面・契約後書面を交付する方法-渡すだけではダメです。


警備業法施行規則では書面を交付する方法も定められています。

「(契約前書面・契約後書面を)警備業務の依頼者に交付する場合は、
警備業務の依頼者に当該書面を十分に読むべき旨を告げて交付する方法
その他の警備業務の依頼者が確実に当該書面の記載内容を了知する方法により交付しなければならない。」(警備業法施行規則35条)


-例-

・顧客の郵便ポストに入れる。
・何も言わないで担当者に渡す。
・『 これは法律で定められている書面です。 』 と言って、担当者に渡す。
・『 法律で定められている文書です。形式的なものですよ、ハ・ハ・ハ。 』 と、警備業法を馬鹿にしながら担当者に渡す。
・『 これは契約内容ですからよく読んでおいてください。 』 と言って、担当者に渡す。
・『 今から読みます。 』 と、担当者の前で読んでから渡す。
・『 私の後に続いて読んでください。 』 と、担当者に朗読させる。
・『 後でテストします。 』と言ったあと、担当者に読ませてテストをする。

「ダメ・OK・不必要」は常識で判断してください。

単なる注意義務規定ですのでご心配なく。

一般に使用されている書面には 「 以上について確認しました。〇年〇月〇日  確認者氏名〇〇〇〇 」 という欄があります。
ここに担当者のサインをもらえばOKです。



4.契約前書面・契約後書面はメール送付・ウェブ掲示OK


契約前書面・契約後書面は、書面でなくてもそれに代わるものでもかまいません。

①CDやフラッシュメモリーに入れて渡す(警備業法施行規則36条1項2号)
②メールで送る(警備業法施行規則36条1項1号イ)
③ホームページからダウンロードできるようにする(警備業法施行規則36条1項1号ロ)


ただし、

a.契約の相手方(顧客)の事前承諾が必要(警備業法19条3項)
b.③による場合は「契約の相手方の承諾・不承諾を契約者がホームページに書き込めるようにする」(警備業法施行規則36条1項1号ロ・カッコ書き・警察庁解釈運用基準7-2-16)
c.相手方がプリントアウトできなければならない(警備業法施行規則36条2項)
d.①~③のどの方法を使い、どのファイル形式を使うかどのソフトを使うかについてを相手方に示し書面またはメールで承諾を得なければならない。(警備業法施行規則37条・警備業法施行令1条1項・警察庁解釈運用基準7-2-17)
e.dの承諾を得た場合でも、相手方の気が変わって「メールなどではダメ」と言ってきた場合はこの方法を使うことはできない。(警備業法施行令1条2項)

私の条文解釈が間違っているといけませんので、参考として条文原文を上げておきます。
解釈間違いがあれば指摘してください。

(参考)

警備業法19条3項
警備業者は、前二項の規定による書面の交付に代えて、
政令で定めるところにより、当該警備業務の依頼者の承諾を得て、
当該書面に記載すべき事項を
電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて内閣府令で定めるものにより提供することができる。
この場合において、当該警備業者は、当該書面を交付したものとみなす。」

警備業法施行規則36条
.法第19条第3項 の内閣府令で定める方法は、次に掲げるとおりとする。
電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの
イ.警備業者の使用に係る電子計算機と当該警備業務の依頼者の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、
   受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法
ロ.警備業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された法第19条第1項 又は第2項 の規定による書面に記載すべき事項を
   電気通信回線を通じて当該警備業務の依頼者の閲覧に供し、当該警備業務の依頼者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該事項を記録する方法
  (法第19条第3項 前段に規定する方法による提供を受ける旨の承諾又は受けない旨の申出をする場合にあつては、
    警備業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにその旨を記録する方法)
②.磁気ディスク、シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法により
   一定の事項を確実に記録しておくことができる物(以下「磁気ディスク等」という。)をもつて調製するファイルに
   法第19条第1項 又は第2項 の規定による書面に記載すべき事項を記録したものを交付する方法
2.前項に規定する方法は、当該警備業務の依頼者がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるものでなければならない。
3.第1項第1号の「電子情報処理組織」とは、
  警備業者の使用に係る電子計算機と、当該警備業務の依頼者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。

警備業法施行令(昭和五十七年十二月十日政令第三百八号)
「警備業者は、警備業法(以下「法」という。)第19条第3項の規定により同項に規定する事項を提供しようとするときは、
  内閣府令で定めるところにより、
  あらかじめ、当該警備業務の依頼者に対し、
  その用いる同項前段に規定する方法(以下この条において「電磁的方法」という。)の種類及び内容を示し、
  書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。
2.前項の規定による承諾を得た警備業者は、
  当該警備業務の依頼者から書面又は電磁的方法により電磁的方法による提供を受けない旨の申出があつたときは、
  当該警備業務の依頼者に対し、法第19条第3項に規定する事項の提供を電磁的方法によつてしてはならない。
  ただし、当該警備業務の依頼者が再び前項の規定による承諾をした場合は、この限りでない

警備業法施行規則37条
「警備業法施行令第1条第1項 の規定により示すべき方法の種類及び内容は、次に掲げる事項とする。
①前条第一項に規定する方法のうち警備業者が使用するもの
ファイルへの記録の方式


【4】契約前書面・契約後書面についての警察庁の解釈・運用基準


以上が警備業法・警備業法施行規則で求められている内容です。

しかし、これらの法令以外に実質的に拘束力を持つものがあります。

あの「警備員は60平方㎝以上のワッペンを上腕部と胸部に付けなければならない」としている警察庁の解釈・運用基準です。

ここでは「えっ?そうなの!」と思うようなことだけを紹介します。

詳しくは「警備業法等の解釈運用基準について・平成20年7月10日・大通達甲(生企)第5号・生活安全部長から各警察署長の第17」を見てください。



1.契約前書面・契約後書面はパンフレット・警備計画書・契約書などでも構わない(17-1-1)


会社案内・パンフレットには警備会社の名称・住所・代表者名が書いてあります。
警備計画書には警備の内容が書いてあります。
契約書には料金・支払方法・解約などが書いてあります。

これらの書面に書いてあることを合わせると「記載しなければならない事項の記載」になる場合は、
これらすべての書面を渡せば契約前書面を交付したことになります。

あちらこちらにアンダーラインを引いて渡すのでしょうか。
契約前書面を一枚作った方が簡単だと思いますが…。


・ 契約書を契約前書面の代わりにすることはできるか?


警察庁の解釈・運用基準17-1-1は「契約書を契約前書面の代わりにできる」と読めますがチョット疑問ですね。


契約前書面は契約をする前にその内容をはっきりとさせて、うっかり契約しないようにするものです。

契約は合意で成立し、契約書はその合意を確認するものです。
契約書にサインすることで契約が成立するのではありません。

契約書が契約前書面の代わりになれるはずはありません。


しかし、一般常識では 「 契約書にサインすることで契約が成立する 」 と考えられています。

この点から警察庁は 「 契約書を契約前書面の代わりにできる 」 と解釈しているのでしょうか?


法律の解釈論から言えば、「 契約書は契約前書面の代わりにならず、契約後書面の代わりになる 」 とする方が合理的でしょう。

「 警察庁の解釈・運用基準 」 の 「 解釈・運用基準 」 が必要ですね。

指導教育責任者現任講習やの立ち入りの時に質問してください。



2.「 記載しなければならない事項 」 で 「 契約内容に含まれていないもの 」 についても省略してはいけない(17-1-2)


法律で定められている 「 契約前書面・契約後書面に記載しなければならない事項 」 はすべて書かなければなりません。


契約前書面は 「 契約する内容を予め知らせるためのもの 」 、契約後書面は 「 契約した内容を形に残すためのもの 」 です。

だから、契約の内容にない事項は契約前書面・契約後書面に書かなくてもよいはずです。


しかし、契約書がなければ 「 契約の内容そのもの 」 が分かりません。

契約前書面・契約後書面の記載事項が欠けていても、それが 「 契約内容にあったものか、なかったものか 」 が分かりません。

そこで、 「 記載しなければならない事項を省略してはいけない 」 としているのです。


契約前書面・後書面の記載しなければならない事項で、契約に含まれていないものについては 「
契約内容に含まれず 」 と書かなければなりません。

上で 「 契約書を渡せば、契約後書面を交付しなくてもよい 」 と書きましたが、
それは 「 契約書に契約後書面記載事項がすべて書いてある場合 」 です。

契約後書面に記載しなければならない事項で、契約内容になくそれが契約書に書かれていない場合は、
契約書を渡しても契約後書面を交付したことにはなりません。


「契約前書面・契約後書面を交付しない ・ 記載しなければならない事項を欠いた契約前書面や契約後書面を交付した ・ 虚偽の契約前書面・契約後書面を交付した 」 場合は罰則の適用があります。(警備業法57条4号)

やはり、契約後書面を作って交付した方がよいですね。



3.警備業者が警備業者に再委託する場合は、警備業者から警備業者に契約前書面・契約後書面を交付しなければならない(17-1-3)


「A→受注→B警備会社→再委託→C警備会社」の場合、

B警備会社はAに対して契約前書面と契約後書面を交付する。
C警備会社はB警備会社に対して契約前書面と契約後書面を交付する。


警備会社から警備会社に再委託する場合、警備会社間で基本契約書が交わされています。
この契約書が契約前書面・契約後書面の代わりになりますから問題は生じないように思えます。

しかし、基本契約書は一般的なもので個別・具体的な契約内容を反映していません。
契約前書面と契約後書面は個別の契約について必要です。

ここはやはり、契約前書面・契約後書面を作って渡した方がよいでしょう。


警備会社から仕事をもらっている警備会社は要注意ですね。
警備業法をよく知っている競争相手から「チクられたら」会社は潰れてしまいます。



4.契約前書面と契約後書面の内容が同じでも契約後書面を交付しなければならない(17-1-4)


とにかく書面を二回渡さなければなりません。

ただし、契約前書面をコピーして契約後書面として交付しても構まいません。



5.記載しなければならない事項が「まだ決まっていない場合」はどうするか(17-2-1)


契約時に詳細を決める場合、契約したあと警備業務開始までに詳細を決める場合があります。

天候に左右される警備業務であれば前日になるまで警備業務をやるかどうかも分かりません。

まだ決まっていないのだから、契約前書面・契約後書面に書くことはできません。

契約後書面は「遅滞なく交付すればよい」から少々時間的余裕がありますが契約前書面では時間的余裕がありません。


そんな場合は 「 警備業務を実施するまでに協議して決定 」 とか 「 天候・交通事情により変更することがある 」 と書いてもよいとされています。

また、 「 〇月〇日~〇月〇日の間に実施する 」 とか 「 〇〇か〇〇のいずれかで実施する 」 と書いてもよいとされています。


しかし、このように書けるのは次の項目だけです。

・警備業務を行う日及び時間帯
・警備業務を行うこととする場所
・警備業務を行う路程
・待機所から警備業務対象施設までの路程

これ以外の事項については 「 警備業務を実施するまでに協議して決定 」 などとは書けません。

これを許せば、記載しなければならない事項すべてに 「 警備業務を実施する時までに決定 」 とか 「 協議による 」 と書けることになり、
契約前書面・契約後書面の目的を達することができなくなるからです。




6.知識及び技能についての記載(17-2-3)


「例えば、合格証明書の交付を受けていること、語学検定に合格していること、武道の段級位を有していること等をいう」

このように例示しているのは「具体的なものでなければならない」という意味でしょう。

契約前書面・契約後書面は契約の内容をはっきりとさせて顧客に誤解させないためのものですから、「どのようにでも解釈できる」記載では意味がありません。

「当該警備業務従事年数3年以上の者 」 ・ 「 当社において警備員新任教育の実地教育を行っている者 」 は具体的なのでOKでしょう。

しかし、 「 当該警備業務に精通している者 」 ・ 「 当該警備業務の経験豊富な者 」 ・ 「 当社において実力者と評価されている者 」 はどのようにでも解釈できるのでダメでしょう。

「 警備員検定二級合格者と同等の技能を有する者 」 と書くのもやめましょうネ。



7.「服装」とは「制服か私服か」(17-2-4)


制服の写真を入れる必要はないでしょう。

もちろん、写真を入れても何の問題もありません。



8.再委託する場合は実際に警備業務を行う警備業者の名称・住所などの記載が必要(17-2-8)


「 再委託に関する事項 」 には、 「 再委託できるかどうか 」 だけでなく、
「 再委託できる警備業務の範囲 」 ・ 「 実際の警備業務を行う警備業者の名称・住所・電話番号・代表者の氏名 」 も書かなければなりません。

「 一部を再委託する場合がある 」 とか 「 当社と同等の技能・実績を持つ警備業者に再委託する場合がある 」 という記載ではダメでしょう。

再委託に関する事項がまだ決まっていない場合でも、
「 同意があった場合には、同意があった警備業務の一部につき、同意があった警備業者に再委託する 」 と記載してはダメでしょう。
(上記5で未定事項が限定されています。)

契約内容は「できるだけ細かく・具体的に決める」ことが必要です。
なんでもかんでも「協議による」では契約の意味がありません。


【5】要するにこうすればよい


法律が好きなのでいろいろ書きましたが、結局次のようにすればよいでしょう。



1.一般に使われている契約前書面・契約後書面を使う


一般に使われている契約前書面には法令で定められている 「 記載しなければならない事項 」 が網羅されています。

記載内容が警察庁の解釈・運用基準ではダメでも、警察庁の解釈・運用基準は法令ではありません。
これに反しても警備業法違反とはなりません。

担当警察官から指摘されれば、それに従えば済みます。
警察庁の解釈・運用基準に反しても行政処分になることはないでしょう。


そもそも、契約前書面・契約後書面は 「 営業所に備えつけなければならない書類 」 ではありません。
立ち入りの時にチェックされることはないでしょう。

担当警察官が『契約前書面と契約後書面のコピーがあるでしょう。それを見せてよ。』と言っても、
『契約前書面と契約後書面は交付すればいいのでしょう?コピーなんかありませんよ!』と言えばOKです。

警備業法で警備業者に課せられている義務は「交付すること」なのですから。



2.契約後書面は必ず渡す


契約前書面と契約後書面は必ず交付しなければなりません。
交付しないと警備業法違反となります。


契約後書面を渡している警備会社は少ないでしょう。

契約書を作って渡せば契約後書面を渡したことになりますが、古くからの顧客や通年契約でないかぎり契約書を作らないのが一般です。

ここに“落とし穴”があります。


「 契約前書面や契約後書面の不備・不交付 」 が問題となるのは、顧客との間でトラブルが起こった場合です。

古くからの顧客や通年契約では顧客との意思疎通が充分なされています。

顧客とトラブルが起こっても表立った問題とはなりません。

表立った問題となっても契約書を交わしていますから、契約前書面・契約後書面不交付が問題となることばありません。


しかし、新規客や短期の仕事では注意しなければなりません。

お互いの意思疎通がなく契約書を交わしていないからです。

意思疎通が充分でないので、小さなトラブルが契約違反に発展することがあります。

さらに、顧客が腹いせに警備業法違反を指摘することがあります。

警備業法を知っている者がチョット入れ知恵すれば 「 契約後書面の交付がなかったこと 」 を警察に伝えるでしょう。

契約書がなければ「契約書で契約後書面の代わりにした」と逃げることはできません。


警察も 「 契約前書面・契約後書面で保護すべき顧客 」 の指摘を握りつぶすことはできません。

温情で握りつぶして、マスコミにでも漏れたら自分の首が飛ぶからです。

少なくとも行政処分をしなければなりません。


また、新規客・短期契約で問題が起こらなくても、競争相手の警備会社が 「 契約前書面・契約後書面不交付 」 を警察に伝える場合があります。

これは厄介です。

手の内をすべて知られているからです。


通常、契約内容は変わりませんから契約前書面と契約後書面の内容は同じです。
改めて契約後書面を作る必要はありません。

契約前書面に契約年月日を入れれば契約後書面になります。
それをコピーして、原本を顧客に渡し、コピーに確認サインをもらえばよいのです。

これだけのことで「警備業法違反」を避けられるのです。


警備業法のスペシャリストである選任は 「 少しの労苦を惜しめば、会社が潰れてしまう 」 と心に銘じていなければなりません。



3.契約前書面・契約後書面の一例


一般に使われている契約前書面を上げておきます。

SPnetの契約前書面ではありません。

あくまで参考です。

この書面を使って問題が生じてもSPnetは何の責任もとりません。
予めご了解ください。


契約後書面は契約前書面に「契約年月日」を入れればOKです。


・一般に使われている1号契約前書面の一例

・一般に使われている2号契約前書面の一例


・一般に使われている2号契約前書面の記載例


   
4.追記 2012.09.27


読者の方から次のような質問を受けました。

「契約前書面は、最初の一回のみで次からは電話や発注書で仕事を受ける 」 方法が行われています。
  契約前書面は一企業に対し最初の一回のみ交付すれば、次からの仕事を受注する時は交付する必要はないのでしょうか?」


契約前書面は、実際に契約する前にその内容を相手方に知らせて、相手方の思い違いがないようにするためのものです。
また、契約書を作らなかった場合に、契約の内容を残し後々の紛争を解決するためのものです。

だから、契約ごとに交付しなければなりません。
これが原則です。

次のような場合が問題になるでしょう。


①一個の契約から毎回の発注が生じる場合

たとえば、家屋新築工事現場で安全確認や交通誘導をする場合、工務店と警備会社で警備料金や支払方法などについて約束します。
この約束は口約束であろうと、書面に書いたものであろうと契約です。
その契約前に契約前書面を渡さなければなりません。

毎回の発注は、工事現場と工事日が決まってからなされますが、これは契約から生じるもので契約ではありません。

このような場合であれば、契約前書面は最初の一回だけでよいことになります。


②一個の契約か基本になるが、そのたびに内容が異なる場合

警備会社が警備会社を下請けにする場合、基本契約を結びます。
ここで、警備員一名の警備料金、支払方法、警備内容など主要な事項を取り決めます。

元請けは警備員が不足した場合に、この契約に基づき応援を頼みます。

基本契約を結ぶ前には契約前書面を交付しなければならないのは当然のことです。
しかし、毎回の応援発注は基本契約から生じるものでしょうか。

毎回の発注が①のように現場と警備日が変わるだけなら、それは基本契約から生じるものだといえるでしょう。
しかし、発注のたびに人員が大幅に変わったり、警備内容が大幅に変われば、基本契約をベースとする別の契約と考えなければならないでしょう。

たとえば、基本契約が次のようなものであるとします。

・警備内容 : スーパーの臨時駐車場警備
・警備場所 : 〇〇県内にある△△スーパーの駐車場
・警備員数 : 一日に10名まで
・警備時間 : 8時~17時、早出・残業の場合あり。
・警備料金 : 警備員1名13000円、早出残業の場合は法定割増料金
・発注 :警備前日の17時までに行う

これなら毎回の発注はこの契約から生じるものでしょう。


しかし、次のような基本契約はどうでしょうか?

・警備内容 : 交通誘導・雑踏警備、詳細は警備実施日の三日前までに通知
・警備員数 : 1名~100名。警備実施日の三日前までに通知。
・警備場所 : 警備実施bの三日前までに通知
・警備料金 : 8時間を基準として、警備員1名 : 12000円+法定割増料金。
・警備時間 : 三日前までに通知。
・資格者配置 : 必要なときは三日前までに通知

これでは契約の意味をなしませんが、ハイエナ営業を主とする警備会社はこんな契約をさせられるかもしれません。

この契約に基づいて行われる発注は別々の契約だと言わざるを得ないでしょう。

この場合は、発注ごとに契約前書面を交付しなければなりません。

では、基本契約についての契約前書面は交付しなければならないのでしょうか。
いかに包括的であれ、契約は契約です。
この基本契約についても契約前書面を交付しなければなりません。

ただし、契約前書面には、
警備業務を行う日及び時間帯 ・ 警備業務を行うこととする場所 ・ 警備業務を行う路程 ( 運搬警備) ・ 待機所から警備業務対象施設までの路程 ( 機械警備 ) 」 以外の事項については、
具体的に書かなければなりません。 ( 警察庁解釈・運用基準 17-2-1 ) 本頁【4】-5

上のような基本契約では契約前書面の書きようがありませんね。

ただし、警察庁の解釈運用基準は法律ではありません。
警察庁の解釈運用基準では書きようがなかったから、契約前書面を交付しなかったということは通用しません。

法律は「 内閣府令で定めるところにより 当該契約の概要について記載した書面をその者に交付しなければならない。」(警備業法19条1項) と要求しています。
契約前書面必要記載事項のすべてが 「 協議による。」 であっても、作成して交付しなければ警備業法違反となります。


③契約書を作る場合

契約前書面の精度趣旨と条文の文言から考えると、 「 契約書を作る場合でも契約前書面を交付しなければならない 」 と解するべきです。
※本頁【4】-1

ただし、警察庁の解釈運用基準では、契約書をつくれば契約前書面の交付は不要と解釈しているようです。( 解釈運用基準 17-1-1)

この立場にたてば、②のように基本契約が包括的で、発注のたびに契約が生じる場合でも、
発注のたびに契約書を作れば契約前書面の交付は必要ありません。

契約書は契約内容が文字にしてあればどんなところに書いてあっても契約書になります。
こごの発注書なら十分契約書になります。

発注者が発注書をファックスし、受注者が 「了解しました。〇〇警備 」と書いてファックスすれば契約書は完成です。
契約書を作ったのですから、契約前書面の交付も必要ありません。

このような場合も、契約前書面は最初の一回だけ 、あとは発注書だけでOKということになります。


④発注書を契約前書面にする場合

「契約書を作れば契約前書面の交付が不要 」とするのは警察庁の解釈にすぎません。

契約前書面の不交付により、行政処分を受けその処分を不服として処分取消しを求める場合、
裁判所が「契約書を作っても契約前書面を交付しなければならない 」 と解釈することも考えられます。

やはり、②の場合でも発注のたびに契約前書面を交付しておいたほうが安心です。

発注を受けるたびに契約前書面を交付するのは煩わしく思えますが、発注書を契約前書面とすることも可能です。

・発注書を契約前書面の記載事項をすべて網羅した書式にする。
・包括的な基本契約で決めた事項は予め印刷しておく。
・発注者が発注するときに、発注書の空欄を埋めて 受注者にファックスする。
・受注者がこのファックスに「 受諾しました 」 と書いてファックスすればそれで契約前書面交付完了。


契約前書面は法律で定められた項目に関することが書いてあればその様式は問いません。
書類の表題が契約前書面ではなく発注書であってもかまわないのです。




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