RMX250-SJ13 整備資料
2014.12.06 エンジン③の ウォーターポンプの分解とオイルシール交換
組み上げたエンジン③の「ウォーターポンプの水抜き穴 ( オイル抜き穴 ) からのギヤオイル漏れる」ことの対策です。
ここではウォーターポンプ各部品の構成と働き、取り外しと取り付け方法を説明します。
メンテ後ギヤオイル漏れはなくなりました。
なお、エンジン③の右クランクケースはエンジン①のものを使いましたが、クラッチカバーはエンジン③のものを使っています。
今回の作業はエンジン③とエンジン①のウォーターポンプを分解し、程度のよい部品を使ってエンジン③のウォーターポンプを整備しました。
★エンジン③の以前の状態は→→→ こちら
★メカニカルシールの働き
★ウォーターポンプの構成部品
★ウォーターポンプ各部品の取り外し
・磨耗・損傷状態
★ウォーターポンプ各部品の取り付け
・ギヤオイル漏れがなくなる。
★メカニカルシールの点検②(別頁)
1.オイルシールとメカニカルシール
a.メカニカルシールの働き
・メカニカルシールとオイルシールです。 a・b:メカニカルシール・17470-46A00・1620円 ( SJ14と共通 ) c:オイルシール10×20×5 ・09283-10005・183円 (SJ14と共通 ) ※メカニカルシールはaとbの二つの部品から構成されています。 この他に必要なものは、 ・ポンプギヤを留めるサークリップ・08331-31086・54円 ( SJ14と共通 )、 ・インペラガスケット・09168-06025・86円 |
・aは a-1 ( ゴム台座 ) と a-2 ( 樹脂リング ) に 分かれます。 |
・a はインペラの裏側にすっぽりはまります。 | ・b はケースにはまります。 ※画像はエンジン③ |
・bにはバネがはめ込まれています。 ・このバネの力で b の 黒い樹脂部と インペラにはまった 白い樹脂リングaが密着します。 これにより、インペラ室内の冷却水が クランクケースに侵入することを防いでいます。 ・bは 上部樹脂部とバネと金属台座で構成されています。 台座がケースと接する部分には柔らかいシールがはまっています。 bの取り付け時には、さらにここにシール剤を塗ります。 ※指定シール剤:スリーボンド1215 |
インペラが回転するとメカニカルシール b の 上を インペラにはまった樹脂リング a が擦れあって回転します。
両方とも磨耗しますが、b の方がa より柔らかいので b の方がたくさん磨耗するでしょう。
a と b が磨耗しても、両者はバネで押しつけられますからシール効果は持続します。
しかし、完全に磨耗してしまえばシール効果がなくなり、冷却水はメカニカルシールから先に侵入していきます。
メカニカルシールの次にはオイルシールがありますが、この間にわずかな隙間がありドレン孔があります。
冷却水がメカニカルシールを突破してもこのドレン孔から外に排出されてしまいます。
b.ウォーターポンプ構成部品
・g:ウォーターポンプシャフト・ 17510-22D00・5832円 中央部にボールベアリングが二列。非常に高価な部品です。 ・gの右側(外側)に、 c/オイルシール→b/メカニカルシール→a・d/インペラ→e/ガスケット→ワッシャ→f/ボルト ※b,a+d,e,ワッシャ,fはケースの外側からはめます。 ※ e と f の間に入るワッシャは写真に写っていません。 ・gの左側 ( 内側 ) に、 h/ギヤ取り付けピン→i/ウォータードリブンギヤ→j/サークリップ 。 |
ここで、c/オイルシールはクランクケース内のギヤオイルを外に漏れさせないためのもの。
b/メカニカルシール,a/インペラ樹脂リング,e/ガスケット は冷却水をクランクケース内に漏れでないようにするためのもの。
・インペラをウォーターポンププライヤーで挟んで 取付ボルトを外します。(写真左) ボルトはそれほど固く締まっていませんから、 プライヤーで挟んだインペラが損傷することはありません。 ・インペラの両側にマイナスドライバーを差し込んで ドライバーをしたに押し、インペラを両方からこじ上げます。(写真右) ※画像はエンジン① |
b.シャフト取り外し
・まず、ケース内側のギヤを取り外し。(写真左) ・次に「外側から」ウォーターポンプシャフトを プラスチックハンマーで叩いて」取り外し。 ※ 内側から叩いてはいけません。段差があるので外れません。 ※シャフトの先にインペラボルトをはめること。 これをはめないとシャフト先端が簡単に変形してしまい、 インペラがはめられなくなる。 ※プラスチックハンマーでだめな場合はスチールハンマーで一撃。 ※画像左:エンジン③、画像右:エンジン① |
c.オイルシール取り外し
・オイルシールは「内側から内側へ」外す。 オイルシール止め(段差)があるので外側へは外れません。 マニュアルP11-6 の写真は「外側からTレンチの柄をオイルシール平坦部に当て、内側へ叩き外している」ものです。 ・内側からオイルシールリップ部に細いマイナスドライバーを差し込んでめくれば簡単に外れます。 ・オイルシール交換だけでメカニカルシールを交換しないのならここまで。 ※画像はRMX③ |
d.シャフト段差・オイルシール段差・メカニカルシール段差/取り外し方向
・内側から見た状態。 ・メカニカルシール ( b ) がはまった状態です。 ・①の段差でシャフトのベアリング部が止まります。 ・②の段差でオイルシールが止まります。 ・bは外側から嵌まっているメカニカルシールです。 ・③がオイルシールとメカニカルシールの間の隙間にある ドレン孔。 ※画像はRMX③ |
・外側から見た状態。 ・オイルシール/ cがはまった状態です。 ・メカニカルシールは外れています。 ・②がオイルシール段差、ここでオイルシールが止められます。 ・③がドレン孔。 ※画像はRMX① |
・外側から見た状態。 ・②のオイルシール段差には厚みがあります。 この厚みの部分にドレン孔があります。 ・メカニカルシールは②で止められます。 そして、②の厚みの分だけメカニカルシールと オイルシールに隙間ができます。 ・④はメカニカルシール台座のツバが当たる段差です。 ※画像はRMX① |
このように、シャフト,オイルシール,メカニカルシールにはそれを止める段差があります。
だから、これらは段差のない方向へしか外れません。
シャフトは内側へ、オイルシールも内側へ、メカニカルシールは外側へしか外れません。
また、これちをはめるときにはその打ち込み量を気にする必要はありません。
段差で止まりますから、止まるまで打ち込めばOKです。
e.メカニカルシール取り外し
・内側から 「 外径17㎜Φ 」 くらいのソケットを当てて外側へ叩き外します。 10Mディープソケットの取り付け口 ( 根元 ) がピッタリでした。 ・今回分解したのは RMX① と RMX② のウォーターポンプ。 エンジン①のメカニカルシールは その構造が分かりませんでしたので外側からプライヤーを使って台座を引き剥がしました。 エンジン③のメカニカルシールハ磨耗がなかったので外していません。 だから、この方法で本当に外せるのか、どの程度の打撃で外れるのか分かりません。 「今度外すときはこの方法でやろう」 という程度のものです。 ※画像はRMX③ |
・左画像は エンジン③、右画像は エンジン① ・左の方は磨耗がほとんどありませんが、 右の方は片減りし磨耗限界に近づいています。 こうなったら交換が必要ですネ。 ・エンジン①の右クラッチカバー オイルパイプ引き込み部が切り取られて 分離給油仕様では使えないので、 このメカニカルシールは交換しません。 ・左のエンジン③の方は交換せずにこのまま使います。 |
★メカニカルシールの点検についてはこちらを参照してください 。
シールの先端面の磨耗,変形,損傷だけチェックしたのではダメだということが判りました。★.
b.シャフト
・上が エンジン①のシャフト、下がエンジン③のシャフト。 ・二つとも同じ程度に見えますが、下のエンジン③のシャフトは使えません。 ベアリング部が錆びて損傷し、シャフトがガタガタになっています。 ・エンジン③はクランクシャフト右のオイルシール逆組みで、 クランクケース内のベアリングやギヤがサビサビ・ガリガリになっていました。 このシャフトも同じ被害を受けたようです。 ※詳しくは→→→ こちら ・上の エンジン①のシャフトはベアリング回転はスムーズで問題ありませんでした。 しかし、シャフト右側 ( インペラ側 ) は錆びてシャフトは表面が損傷していました。 写真のように錆びをおとして使うことにしました。( オイルシール部分を耐水ペーパーで磨くのを忘れた!) ・シャフト右側は冷却水の影響を受けるので損傷しやすいのでしょう。 このシャフトは 「 損傷しやすい部品 」 として新品パーツをストックしておく必要がありそうです。 |
・オイルシールは内側から指と爪で押し込めばOK。 段差で止まりますから、 押し込みすぎてドレン孔を塞ぐ心配はありません。 ・オイルシールの向きは 油室が内側なので凹が内側、平坦部が外側。 ・メカニカルシールは外側から ツバの部分に22Mソケットで打ち込む。 シール剤塗布。※スリーボンド1215 指定 ・メカニカルシールも段差で止まる。 段差は底部とツバ部の二つ。 打ち込みすぎ起こりません。 |
b.シャフト
・シャフト部分とオイルシールにグリスをお忘れなく。 ・内側から 17Mソケットを当てて打ち込み。 チョット待った! |
・ベアリングの打ち込みと同じです。 まず角ワッシャで初期打ち込みをしましょう。 ノギスで四方向の高さを測り、同じになったら打ち込みです。 |
・打ち込み量は気にする必要はありません。 段差で止まりますから止まるまで打ち込みましょう。 |
c.インペラ
・シャフトを取り外すときに シャフト頭を直接スチールハンマーで 叩いて変形させると苦労します。 ・ヤスリで削りすぎないように。 ある程度削ったら、 角ワッシャを縦に当てて叩いて入れましょう。 |
・インペラの取り付けにはガスケットとワッシャが必要。 ガスケットはゴムコーティング。 インペラ取り付け部からの冷却水侵入を防いでいます。 |
・ガスケットには裏表があります。 ・ゴム部が出っ張っている方がインペラ側、 平坦部がボルト側。 ・この写真では左側がインペラ側、右側がボルト側。 ……だと思います。 |
d.ウォータードリブンギヤ
・サークリップが小さいので拡げすぎないように。 ・シャフトにはめるのに必要な分だけ拡げて、 あとは爪で押し下げ プチン・プチン。 ・サークリップの方向は角が立っている方が外側(外れる側) しかし、このサークリップは 丸みがついている方が角が立っている様に見える。 丸みがついている方を外側にしたけど間違ったかな? ・ギヤの出っ張りは厚い方が下 ( 内側 ) そうしないと排気バルブガバナのギヤとかみ合いません。 |
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孫には こちら
・以前ならドレン孔からすぐにポタリポタリ。 しかし、ポタリの兆候なし。 ・一日たってもエンジン下はきれいなもの。 ・念のためギャオイルを抜いて総量チェック。 エンジンを温めずにそのまま抜きましたが ちゃんと900㏄+α ありました。 |
c.症状が出たら要チェック
ポンプシャフトは内側からオイルシール、外側からメカニカルシートではさまれています。
オイルシールとメカニカルシールの間には隙間があってここにドレン孔があります。
このドレン孔からギヤオイルが漏れればオイルシールすり減り、冷却水が漏れればメカニカルシールすり減り・バネ損傷。
どちらも「入れすぎた余分なものが排出された」というものではありません。
症状が出るにはそれ相応の原因があるのです。
作業はギヤオイルと冷却水を抜き、オイルポンプのパイプとチャンバーを外して右クランクケースカバーを外すだけ。
特殊工具は必要ありません。
部品代はオイルシールだけなら、オイルシール ( 183円 ) +サークリップ ( 54円 ) +インペラボルトガスケット ( 86円 )= 323円。
メカニカルシール ( 1620円 ) を加えても 2000円以内。
作業途中でシャフトのサビ腐食やベアリングの調子もチェックできます。
症状が出れば当然ですが、
症状が出ていなくても、クランクケース内のベアリングやオイルシールを交換するときは、
ついでにウォーターポンプを分解してメカニカルシール,シャフトを点検し、オイルシールを交換しておく方がよいでしょう。
あとでギヤオイル漏れがするようになり、オイルシール等の交換部品 323円のために高い送料を払うのは馬鹿らしいですからね。
つづく
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