RMX-SJ13 シリンダースタッドボルト穴のリコイル作業

RMX250-SJ13 整備資料



2014.11.29  シリンダースタッドボルトのヘリサート加工





寒くなってくるとだんだんとバイクに乗るのが億劫になります。
『 そういえば、RMX③/エンジン③から外したシリンダーのヘリサートがまだだった。』

必要な工具は入手してあるのですが、スペアエンジンのさらにスペアシリンダーですからついつい後回しになってしまうのです。
※いままでの状況は→→→こちら
 
ここでは、必要な道具、タップの種類、インサートコイルのサイズ、リコイル作業の実際などを説明します。
ただ、スタッドボルトのかみ合いから冷却水が漏れます。
対策としてはスタッドボルトを取り付けるときにシール剤を塗ることでしょうが、検証はしていません。


ヘリサートとは
リコイルキットの内容
すぐれモノのパイロットタップ
シリンダーのスタッドボルト穴にパイロットタップは使える/タップはパイロットタップ+中タップ
コイルインサートの選定/インサートは 2.0D
タップホルダーのサイズ/呼び寸
リコイル作業の実際
冷却水漏れの原因と対策/未解決問題


1.ヘリサートとリコイル

      
a.ヘリサート


ヘリサートという英単語は見当たりません。
多分、「helical insert / らせん状の挿入物」 を縮めたものでしょう。

ヘリサートとは、雌ネジの山を潰した場合に、一回り大きな雌ネジを切り、ここに元の雌ネジと同じサイズのコイルを挿入して元の雌ネジを再現することです。

雌ネジを潰した場合、一回り大きい雌ネジを切り直して、元のボルトより一回り大きいボルトを使う方法があります。
しかし、元のボルトと同じサイズのボルトを使わなければならない場合は、雌ネジの方を元の状態に修復しなければなりません。

シリンダーヘッドを取り付けるシリンダーのスタッドボルトは 6本あり、これらで均等にヘッドを締めつけています。
6本すべてが同じサイズでないと均等に締めつけることができません。

また、スタッドボルト穴はシリンダーに開けられています。
この穴を拡張すればシリンダーの強度を下げてしまいます。

このような理由でスタッドボルトの雌ネジを潰した場合はヘリサート加工をしなければならないのです。

また、ヘリサートをするとねじ部にかかる力が均等になり、さらにコイルがステンレスなので耐久性が増します。

雌ネジがアルミでボルトがスチールの場合、取り外し取り付けの頻度が多いところはあらかじめヘリサートをして強度と耐久性を上げておいた方が良いことになります。

シリンダーやシリンダーヘッドはピストンリングやピストンを交換するときに取り外し取り付けをします。
さらにシリンダーヘッドはエンジンの積み下ろしのたびに取り外し取り付けをします。( この方が簡単なので私はヘッドを外します )

だから、シリンダースタッドボルト穴のヘリサートはマスターしておかなければならない整備項目なのです。
そして、その機会が与えられたことを喜ばなければならないのです。

やや「 甘いレモン 」ですね。

      
b.リコイルジャパンのリコイルキットの内容



ヘリサートの中でよく知られているのが リコイル です。→→→ メーカーHP 

リコイルは一番流通しているので、あとで消耗品をホームセンターなどで簡単に入手できます。

  入手したのは
  ①パイロットタップ付きリコイルキット M8×1.25 / 5573円  
  ②リコイルタップ♯3 (上げタップ)  M8×1.25 / 1890円 
  ③リコイルインサート M8-1.0D-1.25 ・ 10個入り / 463円

  ネットショップはどこも同じような値段です。
  どのショップでもリコイルジャパンから仕入れているからです。
  リコイルジャパンのものでない安価品もたくさん出回っていますが止めた方がよいでしょう。
  また、「M8リコイルタップ」とだけ表示して、「ピッチが 1.25 なのか 1.0 なのか」表示していないところもパスしましょう。
  そのショップには商品知識がないからです。


後述(2-c)のように、RMXの場合の最適組み合わせは
①.M8×1.25・パイロットタップ
②.M8×1.25・中タップ(♯2)
③.M8・2Dインサート
④.挿入具
⑤.折り取り具

③のインサートは、セットに入っていませんがホームセンターや工具ショップに常備されています。
セットは2種類。①のパイロットタップが入るものと、②の中タップが入るもの。
①の入るセットでは②を別に入手しなければならず、②の入るセットでは①を別に入手しなければなりません。
ネットショップではリコイルタップ各種を単体で揃えているところが少ないので、どうしても別々のネットショップで入手することになります。
あちらこちらのネットショップから買うと別々に送料がかかるので、ホームセンターでまとめて取り寄せてもらう方が安上がりかもしれません。

・ストレート → ,M8×1.25・パイロットタップ付きセットM8×1.25・中タップ(♯2タップ)付きセットM8×1.25・上げタップ(♯3タップ)
・ネジヤ → M8×1.25・パイロットタップ付きセット
M8×1.25・パイロットタップ ①M8×1.25・パイロットタップ ②


c.セットの内容

  a.挿入器具
  b.折り取り具
  c.パイロットタップ
  f.インサート 1.5D×15個
  以上が、キットの内容です。

  以下は単品購入です。
  d.上げタップ
    ※止まり穴用のタップです。
  e.インサート 2.0D×10個 / 588円(税別)
    ※近くのアストロで購入。
    ※すでに 6個使ってあります。
  f.インサート 1.0D×10個
    ※インサートの長さが分からないのついでに購入。

  ●●     
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2.タップをまっすぐ立てるために


道具と技術と経験がない者にとって、タップを真っ直ぐに立ててネジを切ることは不可能に近いことです。

これがラジエターやサイレンサーの取り付け部なら、少々斜めになっていても問題はありません。

しかし、相手はシリンダーヘッドを取り付けるスタッドボルト穴。
真っ直ぐにタップを立てないとスタッドボルトが垂直になりません。

しかも、素材はアルミ。
元穴 ( 下穴 ) があるとはいえ、簡単に斜めのネジ穴を作っていまいます。


a.すぐれもののパイロットタップ


真っ直ぐにタップを立てる方法として、ボール盤のチャックにタップを取り付けて手回しでネジを切る方法や ドリルガイド を使う方法があります。
しかし、ボール盤は欲しいけど持っていない、信頼性のありそうなドリルガイドは安いボール盤くらいの値段がする。

さすがは老舗のリコイル、ちゃんとパイロットタップというものを準備してくれています。

・ c が M8×1.25 リコイル用のパイロットタップ、d が M8×1.25 リコイル用タップです。
・ パイロットタップは前の部分が M8×1.25のドリル 、後の部分が M8より一回り大きいリコイル用ドリルになっています。
  このタップは前の部分が元穴にかみ合って進みますから、元穴の方向どおりにタップ立てができます。

・また、リコイルタップを立てるときには元穴のネジ部を取り除くために下穴 ( 8.3㎜Φ ) を開けることが必要ですが
  このタップでは不要です。損傷した元穴ににかみ合わせてネジを切っていけばよいのです。
  元穴のネジは損傷していますが山が完全になくなっているわけではありませんので充分かみ合います。

・なお、通常のリコイルタップには次の三種類があります。
  ①♯1:先タップ(リード8山),②♯2:中タップ(リード4山,③♯3:上げタップ(リード2山・止まり穴用)
・キット(セット)にはパイロットタップを組み合わせたものと中タップを組み合わせたものがあります。
  各タップは単体で購入できます。


      
b.シリンダーのスタッドボルト穴にパイロットタップが使える


パイロットタップはプラグ穴のように貫通している通り穴用のタップです。
しかし、シリンダースタッドボルトの穴は止まり穴。

パイロットタップが使えるでしょうか?

・パイロットタップの 先導部 ( M8 部分 ) は 10㎜・8山、
  それに続くリード部分が 5㎜・4山分。
  結局、先端から15㎜・12山は
  リコイル用のネジを切ることができません。

・スタッドボルトのネジ部は 14㎜・11山。
  そして、ボルト穴は止まり穴。
  これではまったく役に立ちません。 



c.シリンダースタッドボルトの穴は不完全な止まり穴


しかし、スタッドボルト穴は「出口が完全にふさがった止まり穴」ではありません。
通り穴の出口がシリンダーの出っ張りで半分ふさがれているだけです。

スタッドボルトが止まるのは、ボルト先端がどこかに当たったからではありません。
「ボルトネジ部の次にあるネジのない部分が雌ネジとかみ合わない」からです。

このシリンダーの出っ張りまでが 20㎜。、
ここまではパイロットタップをねじ込むことができるのです。

・先端から20㎜ならパイロットタップでもリコイル用ネジ山を 4山切ることができます。
  この4山に上げタップを食いつかせれば、真っ直ぐに上げタップを切ることができます。

・ただし、パイロットタップが作った4山の先は傾斜(テーパー ) がきつくなっています。
  これをリードが2山しかない上げタップで切るのは少々乱暴です。
  リードが 4山ある中タップを使った方がよいでしょう。

・タップは20㎜までねじ込めます。
  20㎜÷1.25=16山、スタッドボルトは11山。
  中タップを止まるまでねじ込んで、 16山 - リード 4山 = 12山。
  充分にスタッドボルトの雌ネジを作ることができます。

  お勧めは、上げタップより中タップですね。


       
3.インサートの選定


コイル状のインサートにはいろいろな巻き数 ( 長さ ) があります。

どれを使えばいいのか分からないので三種類入手しました。

・「D = ネジ径 」 だとか。
・M8用ですから 1.0D = 8㎜、1.5D = 12㎜、2.0D = 16㎜ になります。
  実際の長さは 1.0D = 約6㎜、1.5D =約9㎜   2.0D = 約13㎜ 

・「コイルは伸びるから…。」
  そうではありません。コイルインサートは縮んだままでコイルのピッチがボルトやタップのピッチと一致しています。
  結局、山数で適合サイズを選ぶということになります。

・1.0D = 5山、 1.5D = 7.5山、 2.0D = 10山
  スタッドボルトは 11山 だから 適合インサートは 2.0D となります。


      
4.タップフォルダを選ぶときの注意/タップホルダの“呼び寸”


タップフォルダにはサイズがあります。“呼び寸法”と表記されています。

この寸法は「 このフォルダは そのサイズのタップを取り付けて作業するのに適した強度と大きさですよ 」 という意味で、タップ取付部の大きさとは直接関係がありません

サイズ13 なら M13 までのタップ作業に、サイズ10 なら M10 までのタップ作業に適しているということです。

具体的な数値を上げてみましょう。

・①サイズ13㎜ / 取付部対辺長(正方形の一辺) ~10.3㎜
・②サイズ10㎜ / 取付部対辺長 ~9.2㎜
・③サイズ6㎜ / 取付部対辺長 ~6.4㎜

・ i / M10タップの取付部対辺長は5.4㎜
・j / M8 タップの取付部対辺長は 4.85㎜。

・③のタップホルダはサイズ6ですが、対辺長が「~6.4㎜」なので
  M10やM8 タップを取り付けることができます。
  もちろん、M10やM8のタップ作業に適してはいません。

・c の M8×1.25 パイロットタップの取付部対辺長は 6.2㎜
  d の M8×1.25 リコイルタップの取付部対辺長は 7.9㎜
  ドリル外形はともに 9.8㎜Φで M10タップと同じ。
  だから、サイズ10かサイズ13のフォルダが必要になります。

ここで注意しなければならないのは、「 リコイルタップは取付部対辺長が普通のタップに比べて大きい 」 ということです。

d も c も M10クラスのタップですが、取付部対辺長は M10タップよりずいぶん大きくなっています。

M8 のリコイルタップが、あるメーカーの 10サイズフォルダに取り付けられたからといって、他のメーカーの10サイズフォルダに取り付けられるとは限りません。
10サイズフォルダは M10タップが取り付けられればいいのだから 取付部対辺長が 5.4㎜あればよいのです。

特に、T字形フォルダはその構造上 取付部の寸法がぎりぎりになっています。

このメーカー (ライト精機) の 10サイズT字形フォルダは、取付部対辺長が M10タップが取り付けられる 5.4㎜ギリギリです。
もちろん、M8×1.25 のリコイルタップは取り付けられません。
  ★★05    
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5.リコイル作業の実際


※作業途中の写真はありません。 XPから替えた 8.1の操作ミスで デジカメのSDカードをフォーマットしてしまいました。


a.ポイントは慎重なタップ立て


予想どおり、パイロットタップで 4山切れた。

上げタップをこれにかみ合わせて…。

ちゃんと垂直になっているじゃない。

おおッ。13サイズのフォルダを使うと軽い軽い。
相手がアルミですからネ。

これなら方手回しで充分だ!

片手回しならシリンダーを横にしたほうが楽だな。

あれっ? 固くなったぞ。

そうか、切り粉がたまったんだ。

タップを戻して。切り粉を歯ブラシで落として。そうそう切削油も差しましょう。

固くなれば戻してまた回す。

完成、完成。

もう一度 タップをねじ込んでみましょう。

あらあら、タップホルダーが人指し指で回っていく。

リコイルタップOK。


潰したボルト穴は二個。

しかし、作業をやりやすくするためにスタッドボルトはすべて外してあります。

「ついでだから」と残りの四個もリコイルタップ。


b.コイルのインサートはあっと言う間に終了

・コイル先端が挿入具先端にある溝の中央にくるように
  ストッパを調整
・ストッパがネジ穴入り口に当たればそれ以上ねじ込めません。
・コイルを溝の前の方にセットすると挿入が甘くなります。
・逆にコイルを溝の後の方にセットすると
  挿入しすぎになります。
・挿入はスイスイと頼りないほど簡単。
・コイル終わりがタップ開始部分から 1/2~3/4ピッチ沈むようにする。
・スタッドボルトは首の部分が少し沈んだ方がよいから、
  一回転プラスして挿入完了。 
・折り取り具をコイルに差し込んで 「コン」と叩く。
 これでコイルのタングが折り取れます。
・折り取り具は磁石付き。
  折れたタングはくっついてきます。
 


挿入はコイルを縮める方向にねじ込んでいくから簡単だけれど、コイルを外そうと逆に回すとコイルが開いて外れません。

いったん、挿入したコイルを外すには コイルの最後を何かで引っかけて左 ( コイルの縮む方向 )に回してやればはずれます。
外すための抜き取り具もあります。

挿入具、折り取り具、 抜き取り具については精度が要求されませんから、リコイル純正のものでなくても安いコピー商品で充分でしょう。
※モノタロウの 挿入具   折り取り具    抜き取り具


c.出来上がりは


リコイルで出来上がった雌ネジにスタッドボルトを挿入してみると、
手回しで最後まで楽に入っていくものと、二重ナットとメガネレンチでやっと入っていくものかありました。

前者が正常で後者がリコイル不良でしょう。

リコイル不良の原因は下ネジがうまく切れなかったこと。

横着なタップ片手回しが災いしたのでしょう。

固くて入りにくいボルト穴を M8×1.25タップでネジ修正。

少し入りやすくなりました。


d.これで安心、すべてのリコイル完了


とにかく、六本のスタッドボルトが立ちました。

・六本とも真っ直ぐ立っているじゃないですか。

・これで少々締め付けトルクが大きくても
  ネジ山がもげることはありません。
  ピロリ菌と同じです。


しかし、シリンダーヘッドが 「 スコン 」 と入らない。

六本のスタッドボルトのうちの何本かが真っ直ぐに立っていないからでしょう。

固くてタップ修正をした穴のボルトが怪しい。

やはり、ヘリサートのポイントは慎重なタップ立て。

・何度かはめたり外したり。
・ヘッドのボルト穴が擦れて削れたのか
  少し揺するだけではまるようになりました。
・はまってしまえば問題はないでしょう。
・シリンダーとヘッドの隙間もありません。
・ガスケットなしの状態です。
・締め付けは規定トルクの下限で控えめに。
・リコイルしたから、もう怖がらなくてもいいのに。

 オイルポンプ、ラジエター、チャンバー、キャブレターをセット。シリンダーを交換するのに 結構時間がかかります。
   ●●      
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6.エンジンテストで冷却水漏れ


a.これは問題でしょう!


警備の土日祭日は忙しい。
三連休明けに試運転をしましょう。。

仕事に出かけるまえにちょっと見てみると、スタッドボルトの頭から冷却水が漏れている!

・六個とも漏れています。
・冷却水の通り道とスタッドボルト穴は隣り合わせ。
  しかし、シリンダーとヘッドがぴったり重なっていれば
  冷却水がスタッドボルト穴の方に出て行くことはない。

・冷却水が漏れるのはシリンダーとヘッドに隙間があるから。
・ガスケットにもヘッドにも問題はありません。
  このシリンダーに換える前は冷却水漏れなどなかったからです。

・このシリンダー自体にも問題はありません。
  クランクケースのベアリング交換をする前は、
 このシリンダーで冷却水漏れはなかったからです
・以前から変わった点はリコイルしたこと。
  だから冷却水漏れの原因はリコイル作業。

・スタッドボルトが六本とも真っ直ぐ立っていないから
  シリンダーとヘッドに隙間ができるのかな?

・増し締めしても冷却水漏れは止まらず。



b.「スコン」と「ガタ」が必要


連休明け。

・ガスケットを付けないでヘッドをセットし、ブラスチックハンマーで軽く叩いてなじませてからボルト締め。
  それでも、シリンダーとヘッドの接合部から漏れてきます。 ガスケットを付けても同じ。

・正常な (リコイルしていない) シリンダーはスタッドボルトにヘッドの穴を合わせて手を離せば 「スコン」と落ちる。
  そして、ヘッドは前後左右にガタつく ( 心配になるようなガダではなく、余裕を感じさせるガタ。0.5㎜くらいか。)
  この「スコン」と「ガタ」でシリンダーとヘッドはスタッドボルトに邪魔されないで重なるのでしょう。

・しかし、このシリンダーには「スコン」も「ガタ」もない。
  リコイル不良でスタッドボルトの何本かの位置がずれたり斜めになったりしているからかもしれない。
  それなら、ヘッドとシリンダーに「スコン」と「ガタ」を作ってやればよい。
 


リコイルやり直しはできないから、ヘッドのボルト穴を拡張。

・まずボルト穴を面取り。
  「スコン」はないが少しだけ「ガタ」ができる。
  冷却水漏れは緩和。

・今度は 8.5㎜Φのドリルでボルト穴をさらう。
  ボルト穴は 8.6㎜Φ。
  しかし、ハンドドリルが揺れるから穴は拡張される。
  これで「スコン」と「ガタ」が 7割程度に。

・ガスケットを付けてボルト締め。
  一日おいて様子を見ましょう。 



c.やはり漏れます。だから、もう少しスコンとガタを


期待半分、あきらめ半分。
やはり漏れあり。

・3時と9時のスタッドボルトナットから漏れています。
  エンジン前部が 12時位置。
 3時位置ボルトからの漏れが左の写真、
  9時位置ボルトからの漏れが右の写真。

・冷却水は緑色のラジエター液ではなくて水を使っています。
  ナットの上に一粒の涙。

・締めつけが緩いといけないので締め付けトルクをチェック。
 「 300㎏.㎝+α 」で適正。


ドリルアップしたヘッドのスタッドボルト穴は 穴径 8.8㎜Φ,面取り部外径 11~11.5㎜Φ。

円周方向のガタは充分にあるが、左右のガタが少ない。
3時位置のボルトの右側の余裕がない。

もう一度 8.6㎜Φドリルで、3時位置ボルト穴を重点的に他のボルト穴もさらう。

切り粉は出たけれど 穴の外径は 8.8㎜Φのまま。

「スコン」は改善され正常状態と同じに、「ガタ」は正常状態より少し大きく。


ガタが大きいとヘッドがシリンダーの真ん中に乗っかっているかが心配。

ヘッドはシリンダーよりも少し小さくなっています。
周囲に爪が引っかかること確認。
300㎏・㎝で慎重に取り付け。


d.「スコン」と「ガタ」は関係なかったのか?


もう期待していません。

もう一晩待ちません。

すぐにエンジン始動、即判定。

・11時,9時,7時のボルトナットからボタリ、ポタリ。
・圧がかかるとはっきり分かります。
・1秒にボタリ一回。
・このシリンダーとヘッドを
  スペアーエンジンに使うことはもう諦めましょう。
・再度 エンジン脱着・シリンダー交換。
・尾鷲峠でクランク右ベアリングが壊れた
  RMX①/エンジン①のシリンダーとヘッドを装着。
  エンジンを回しても漏れなどありません。

   ★★06      
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e.冷却水漏れの原因は?


必ず原因があるはずです。

それを探すのは今後の宿題にして、今は「怪しいな?」を上げることだけにしておきます。

・シリンダーの接合部は平坦です。
  ヘッドの接合部も平坦です。

・「スコン」と「ガタ」がある以上、
  二つの平坦面はそのまま重なります。
・さらにこの間にガスケットが入ります。
・だから、シリンダーとヘッドの接合に隙間はありません。

・隙間がなければ、冷却水穴から冷却水が漏れて、
  ヘッドのボルト穴から漏れ出すことはありません。、


怪しいのはシリンダーのスタッドボルト取り付け穴。
リコイルした雌ネジ穴です。

・この穴は冷却水穴と内部でつながっています。
 「冷却水穴の一部にネジが切ってある」ともいえます。

・スタッドボルトを取り付けないこの状態なら
  冷却水穴とまったく同じです。
・冷却水穴と内部でつながっているスタッドボルト穴には
  スタッドボルトがねじ込まれます。
  しかし、かみ合ったネジ部に隙間があると冷却水が漏れ出てきます。
  液体の漏出はネジのかみ合いだけでは防げません。
・もし、ネジのかみ合いだけで防げるのなら、
  冷却水やギヤオイルのドレンボルトにガスケットは不要です。
・スタッドボルトネジ部から漏れ出した冷却水は
  ボルトとヘッドボルト穴の隙間を通ってヘッド上部出口へ。

・出口はナットでフタをされていますから、
  ナットのネジ部を通って
  ボルト頭から漏れ出ることになります。


しかし、通常はこんな冷却水漏れは起こりません。
それはなぜでしょう。

もしかして、スタッドボルトとスタッドボルト穴の素材が違うからではないでしょうか?
スタッドボルトは硬いスチール、スタッドボルト穴は軟らかいアルミ。
硬いスチールの雄ネジが軟らかいアルミの雌ネジとかみ合うから、硬い方が軟らかい方に食い込んで密着し、冷却水漏れを防いでいるのではないでしょうか?

ところが、リコイルした場合、インサートはステンレスなので、スタッドボルト穴の雌ネジは硬いステンレス。
これに、硬いスチールのスタッドボルトの雄ネジがかみ合うと、硬いもの同士で食い込みがなく密着しない。
そこで冷却水がにじみ出してくるのではないのか?


この推測があたっていれば、スタッドボルトをシリンダーに取り付けるときにシール剤を使えば冷却水が漏れ出てくることはありません。

これを試してみたいと思いますが、少々エンジンの脱着に疲れました。
慣れたとはいえ、かるく4時間はかかります。

4時間は私の一日の自由時間のすべてです。

また、暇なときにやることにしましょう。


※2019.10.追記・解説
このシリンダーとヘッドは今まで使っていないので、上の推測が当たっているかどうかは分かりません。
ただし、PJ12マニュアルではスタッドボルトの取り付けにシール剤塗布が指定されています。
※ 指定シール剤:スリーボンド1207B/オーナーズマニュアルP6-1
 


・手前が 今回整備の「まるまる一台スペアー・SJ13」 です。
  書類付きですから、このままナンバー取得もできます。

・エンジンは中古単体で入手したN型(エンジン③) 。
  ただし、
・クランクケース内ベアリング、オイルシールは新品に、
・エンジン①より、
  クランクケース右,クラッチハウジング, シリンダー,
  シリンダーヘッド,ウォーターポンプシャフト、
  ウォータードリブンギヤ。
・エンジン内の半分以上が入れ代わっています。

・しかし、クランクの程度が良いためか、
  腰のあるシャープなエンジン音で、
  奥にある正選手のR型エンジン②よりパワーが出そうです。
  まあ、N方はR・S型と違い、
   クランクホイールにバランサーがついていませんからね。

・ただし、リヤショックはオイルがすべて抜けています。
  程度のよいリヤショックが入手できれば交換です。 


これで、「SJ13 のクランクケース分解と組立」はいったん終了です。

17000円で入手したエンジンにいろいろと手がかかりました。

しかし、それだけ工具と経験が増え整備範囲が拡がりました。

また、尾鷲峠でエンジントラブルを起こした RMX①については、
エンジントラブルの原因は「焼きつき」ではなく「右クランクベアリングの損傷」であることが判り、そのエンジンはまだまだ使えることが分かりました。

今回の「クランクケースの分解と組立」からはたくさんのものが得られたといえます。

上の写真真ん中の FJ と違い、RMX の解体部品は玉数が少なくなってきました。

車両価格もプレミア価格に突入。

そろそろ絶滅危惧種の仲間入り。

寂しいですね。


軽くて取り扱いが楽で身のこなしが素早い。
そして、ロケットのように加速する。
国内四メーカーが「KTMに負けない“おもしろバイク”を作ってくれること」」を期待しています。


つづく。




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