RMX250-SJ13 整備資料
2015.05.20 もう一台のSJ13 その② エンジン・クランクケース分解/内部の状況・原因判明
RMX④のエンジン分解状況です。
ピストンロックの原因はクランクシャフト左ベアリングの損傷。
その他の部分はいたって健全。
クラッチやトランスミッションはきれいそのもの。
クランクシャフトベアリングとオイルシールの交換だけで復活できます。
★「オリジナルすぎる」各部
・チャンバー,キャブレター,オイルポンプ,排気バルブ,ピストン,シリンダ正常
★クランクケース上部にアルミ粉、ジェネレーター室にもアルミ粉
★クランクシャフト左ベアリング損傷が原因
・クランクケース内はきれい
1.まずはギヤオイル
ギヤオイルを見れば右クランクケース内の状況が判断できます。
出てきたオイルは入れ換えたばかりのオイルのように透明です。 ススが混ざっているから、走らせていたと考えられます。 白濁や変質がありませんから、右クランクケース内は健全なはずです。 オイルの量は900~950㏄。 規定量は650㏄だからこれは入れすぎ。 しかし、規定量をはるかにオーバーしていても、 ウォーターポンプのドレン孔からオイルが漏れていない。 だから、ウォーターポンプのオイルシールはOK。 このことからも右クランクケース内の健全さが推測されます。 |
2.このSJ はエンジンを降ろしていないの?
SJ13の分解や組立を何度もやっていると、「今までに分解・組立をしたかどうか、エンジンを降ろしたかどうか」が分かります。
『普通ならこんなところまで気にしないだろう!』という驚きや発見があるからです。
まずは…、
このカッチリ・スッキリとしたワイヤリング。必要最小限とはこのこと。
これはメーカーの仕業。
バイク屋さんでもここまでできません。
さらに、ワイヤーやハーネスをフレームに留めるタイラップは全て「繰り返し使用可」のもの。
このSJ、メーカー組立から一度も分解されていないのかも知れません。
さらに…。
ラジエターのフレームへの取付部を見てください。 リザーバタンクからのパイプがクランプで留められ、 水温スイッチからのコードがタイラップで留められています。 皆さん! 分解・組立をするときにここまでやっていますか? サービスマニュアルのワイヤリングでも説明されていませんよ! このクランプとタイラップ。パーツリストで調べるとちゃんとあるのです。 fig.11の№22と№16です。 タイラップはもちろん繰り返し使用可のもの。 「タイラップの先がピンと上を向いている」のなんか、これはメーカーですよ。 |
驚きはまだまだ。
エンジンマウントボルトにこんなボルトを使っていますか? シリンダーをフレームに留めるボルトは⑪。 クランクケースをフレームに留めるボルトは⑨。 ラジエターをフレームに留めるボルトは⑦。 ちなみに、排気バルブのシャフトを右側から留めるボルトも⑦。 この数字は「強度区分を示すもの」だとか。 要するに高強度のボルトなのでしょう。 素人はこんな使い分けなんかしないでしょう? あとで、左リヤウインカー不点滅の配線チェックをしたときにも驚き。 レギュレートレクチファイアとエアクリーナーボックスの後ろに配線がぎっしり。 これもマニュアルには書いてありません。 皆さん、適当に押し込んでいるでしょう? やはりこのSJは「分解なし」ですね。 |
3.なるほど、そうだったのか!
シュラウドをラジエターに取り付けるときに苦労していませんか? タンクへの取り付けビスを緩めて、シュラウドを引っ張って何とかネジ穴を合わせているでしょう? ラジエタールーバー(ラジエターの前に取り付ける羽根)は ラジエターの三カ所に差し込むようになっています。 一番上の差し込み口にはシュラウドを留める雌ねじが取り付けられています。 この一番上の差し込み口が内側に曲がっているのです。 『転倒して曲がったのじゃないの?』 プライヤーでまっすぐにしてはいけません。 これが正常状態のようです。 あっ、エキゾーストバルブのブリーザータンクがありませんネ。 エンジンを降ろしていないわりには、こんなところだけ“改造?”するのですね。 このタンクはストックがあったかナ…。 |
『ルーバー差込み口が内側に曲がっていると、ルーバーが差し込めないじゃない!』
ルーバーは写真の下側から差し込みます。 しかし、雌ネジがジャマをしてルーバーが差し込めません。 しかし、雌ねじを外すと差し込めるのです。 知っていました? 『そんなのメンドウじゃないの! 差し込み口をまっすぐにしておけば、 いちいち雌ねじを外さないでもルーバーを差し込めるじゃない!』 なるほど。 でも、この差し込み口が内側に曲がっているとシュラウドの取付がなぜか簡単ですよ。 ラジェター液に問題なし。 、 |
チャンパーは軽いものがスタッドボルトを使わずに差し込んでありました。 バネで留めるタイプなので、RMあたりから流用したのでしょう。 根元が曲がっていたので廃棄。 ストックしてある純正チャンバーを使います。 キャブレターも外から見た限りでは問題なし。 オイルポンプも正常。 オイルパイプグロメットが外されていない様子。 このオイルポンプは外されたことがないでしょう。 エキゾーストバルブの右カバーがなぜかN型のものではなく R・S型のものになっています。 |
※2019.10.追記・解説
このエンジンはR・S型のシリンダーが組んでありました。→→→こちら
N型とR・S型のカバーの違い→→→こちら
シリンダーが交換してあるのだから、エンジンを触っている。
もちろん、エンジンを降ろさないでシリンダーを交換すればラジェターは外さなくてもよいし、オイルポンプも外さない。
それにしても、「オリジナルすぎる」。
サンデーメカニックはここまでできない。
5.排気バルブ
シリンダーヘッド取り外し。
ヘッドにアルミの粉が少しついているだけで問題なし。
しかし、なぜアルミ粉?
ヘッドを外すときにスタッドボルトの一本が外れてくる。
しかし、「締めるときに外れる」のでないから問題なし。
ヒストンをのぞくと、排気バルブの所で止まったまま。
上から押して下がらない。
ピストンロックは排気バルブの折れ込み?
ピストンヘッドは黒いカーボンがついているだけで問題なし。
写真は撮り忘れ。
排気バルブは正常。
タールでドロドロ・コテコテではない。この程度ならいたって健全。
右側はきれいそのもの。
バルブを持ち上げてみる。
はちゃんと持ち上がります。
ピストンロックの原因は排気バルブの折れ込みではなし。
一安心。
もちろん、ピストンはロックしたまま。
●●
ピストンには通常の浅い線傷。 焼きつき痕や欠けなし。 RMX②/エンジン② や RMX③/エンジン③ のピストンよりも状態がいい。 こちらも問題なし。 ピストンピン径はノギス計測で18.0㎜Φ。使用限度は17.98㎜Φ。 新品のピストンピンをノギス計測しても18.0㎜Φ。 ピストンピンも問題なし。 ピストンベアリングも全く正常。 |
以上、腰上は全て正常。
ピストンロックの原因は腰下(クランクケース内)へ。
ピストンを外してみると、クランクケースの上部にアルミの粉が溜まっている。 これがピストンロックの原因なのでしょう。 クランクケース内のどこかが何かで削られている…。 |
7.これが問題のジェネレーター
コイル取付台にたくさんの傷。
取付ネジの+溝が潰れている。
なぜ、こんなところが削られるのだろう。
それより、ネジ頭が潰れたら、なぜ新しいネジを使わないのだろう?
コイルを外すとアルミの削り粉がたくさん。
この削り粉はクランクケース上部に溜まっていたのアルミ粉よりもすっと粗い。
ローター取り付け不良でコイル取り付け台を削ったのか?
確かに、コイル取り付け台は削られているが、それでもこれほどの削り粉は出ないだろう。
8.原因判明!
クランクケースを割ってみると…。
この金属片!
これだったのか!
『“あれ”でしょう?』 その通り! 『左側だったから、ギヤオイルは問題なかったのですネ。』 右側だったら、オイル上がりやオイルの白濁・変質がありますからネェ。 『SJ13 にこのトラブル多いですネ。』 全開・ガンガン走りの RMX②/エンジン②もそうでしたからネェ。 『N型のベアリングは右側より左側の方が大きいのにネ。』 |
そうです! 左クランクベアリングの損傷です。
この金属片はベアリング玉を押さえるホルダーがちぎれたものです。
アルミ粉はこの金属片がクランクケースのペアリング孔を削ったために出たもの。 『昨日までキックができたのに』、突然キックがロックしたのは、 この金属片がベアリングに挟まり、ベアリングをロックしたから。 ということは、クランクベアリング交換だけでエンジン再生! これは、ラッキー! |
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250㏄扱いでしょう。※要問合せ
クラッチもきれいです。
左側のジェネレーターとは別世界。
まさに、手つかず状態のガラパゴス。
右クランクケース内で取り替えなければならない部品はありません。 右クランクベアリングとオイルシールさえ交換すればOKです。 |
10.エンジン再生できます!
結局、エンジンロックの原因は左クランクベアリングの損傷。
左右のクランクベアリングとオイルシールを交換すればOK。
各部を詳しくチェックしてみないと分かりませんが、消耗部品代1万円くらいでいいでしょう。
ストック部品を使えばもっと安くなります。
この RMX④ は当たりでした。
「8万1千円で落札し、意味不明なクレームをつけて返品をした」前落札者さん、残念でしたネ。
次回は、各部品の状況と必要部品のチェックです。
RMX④は今月中に走り出させる予定。
つづく。
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