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・公告されなかった三年契約・2.5憶円の競争入札 -「もうかる公共調達」 に絡むために必要なもの





三年契約の「SOIAS (ソーラス)条約に基づく重要国際埠頭警備」の調達。
毎回公告されていたのだけれど、今回は公告がない。
そこで発注側の港湾管理組合を尋ねたら、「既に参加締め切り」。
今回は「公告なしで港湾組合が参加業者を指名した」とか。
これが「もうかる公共調達」の仕組み。「公平性・透明性」を求めても「金のある者にしか金は集まらない」。
弱小警備業者さんは怒りの声を上げましょう。


公告されなかった重要国際埠頭警備調達
国外サイトで見つけた重要国際埠頭警備調達の入札説明書
なぜか「私のした質問」が「指名参加者からの質問と回答」に掲載されている
公共調達と公告の必要性-法律の規定
「もうかる公共調達」に絡むためには「それなりのもの」が必要


    
1.公告されなかった競争入札


a.重要国際埠頭警備


港の警備に “ SOIAS (ソーラス)条約 ”に基づく警備があります。

・その主な目的はテロ活動防止。
・内容は国際航海船舶への不審者の侵入・不審物の持ち込み防止。
・対象となるのは「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の維持等に関する法律 ( 平成16年・法31号 )」に規定する重要国際埠頭施設。
※国土交通省の説明 → こちら


b.調達方法


・発注は港湾管理者 → 小さい港は都道府県・大きい港は管理組合。
・管理組合が発注する場合でも、公告は管理組合管理者である都道府県知事。

当地の管理組合の調達は三年継続契約で入札は三年毎。
平成21・22・23年度がこの 3月31日で終了。本年が三年に一度の入札。

平成21・22・23年度分について、ある情報では、
「関係ある大手警備会社二社が入札参加。入札価格は一社が2億5千万円、もう一社が2億4千5百万円 」

通常「1月末に公告、入札説明書・仕様書の配付閲覧後、3月中旬に入札 」


c.『 もう、参加締め切りです。』


「こんな大きな調達は参加要件が厳しいだろう。しかし、もしかして‥。」とかすかな期待。

また情報集めのために管理組合HPの調達情報を昨年よりチェック。

しかし、1月下旬になっても公告がない。もちろん調達予定にも掲載されていない。


「本年度の調達はどうなっているのだろう?」と、1月26日(木)に管理組合を訪ねました。

契約担当者は、『 該当する業者さんには既に連絡しました。あとは入札待ちです。』

この調達は今まで「最低価格・一般競争入札」で市町村統一資格があれば参加できるのもの。
しかし、『 本年は管理組合の方から指名した 』とのこと。


担当者に「なぜ、公告されなかったのか 」を尋ねると、

担『 これまでの入札では參加者が非常に少なかったのです。
    三年に一度の公告では誰も見ませんからねぇ‥。
   公告に頼っていたのでは、「こんな公共調達・入札があること」が周知されないんです‥。
   そこで、今年は入札参加者を増やすために市町村統一資格名簿の中から參加者を選んで通知したのです。』

私『公告しなければ、よけい周知されないじゃないですか!』

担『それもそうですけれど‥、いろいろな方法を試してみようと思いまして‥。』

私『私の方へは “ 通知 ” が来ていません。今後のために指名選定基準を教えてください。』

担『 取扱商品・業務内容に「 警備-施設警備・巡回警備・機械警備 」で登録されていることです。』

私『私の方は「取扱商品で機械警備を上げていない」ので指名から外れたのですね。』

担『そうなりますね‥。これからは機械警備欄に “ レ ” を入れておいてください。』


私『機械警備って、どのような規模のものですか?』

担『港の施設内に監視センターを置いて、そこでカメラ・機器監視をしてもらいます。』

私『その監視センターは警備業者が施設外に設置するもので、異常信号を感知したときに警備業者の機動員が駆けつけるものですか?』

担『監視センターは施設内にあって警備業者の施設ではありません。異常発報時の対応は施設内に勤務している警備員がやります。』

私『それはローカルシステムで警備業法上の機械警備ではないですよ。』

担『警備業法上はそうでなくても‥、機械警備ですから‥。監視センターに機械警備業務管理者も置くことになっていますから‥。』

私『それは、発注側の資格者要求でしょう?
    警備業者は警備業法上の機械警備に該るかどうかで、で公安委員会への業種届けをするのですよ。
    警備業法上の機械警備に該当しなければ、統一資格申請の取扱商品で機械警備に “ レ ” を入れるわけはないじゃないですか。』

担『…それも含めまして、今後の参考にさせてもらいます…。』

私『ホームページでの契約内容の公表は平成22年度までで、前回の入札參加者と入札金額、落札者と落札金額が落札者を知る方法はないのですか?』

担『管理組合に申請してください。』

しかし、今回の配置と時間数は教えてくれました。

     
2.国外のサイトにあった入札説明書


「この警備を受注するためには何が必要なのか」
これは入札説明書や仕様書を見なければ分かりません。

今回調達の仕様書は入札参加者だけしか見ることはできません。
お声をかけてもらうには、「取扱商品として機械警備を上げるだけ」では不足でしょう。

ネット検索で平成18年度の公告と入札説明書を見つけました。
公告は平成18年1月30日・管理組合管理者三重県知事。

なぜ、日本のサイトにないものがここにあるのでしょう。→→→こちら
※ウイルスチェックは自己責任でお願いします。

これによると、

a.業務内容

・①.重要国際埠頭施設への入退場の出入り管理
・②.係留中の国際航海船舶への不正侵入防止
・③.重要国際埠頭施設への不審者・不審車両の侵入防止
・④.重要国際埠頭施設での保安事件発生時の関係者への通報、施設内の作業者の避難誘導

  教えてもらった隊員配置と時間数は、
・A.外国船入港時の24時間立哨・出入り管理 × 1P=276日
・B.施設内24時間巡回 × 1P=365日
・C.施設内基地局での24時間監視×1P=365日
※Aは ①・②、Bは ②・③、Cが ④の業務を行う。


b.資格者配置など

・①.施設警備 or 空港保安警備の検定二級以上者を24時間配置すること → 配置予定者として三名必要。
・②.施設内の基地局に機械警備業務管理者を選任すること。
・③.最大で同時に19名を指定場所に配備できること。


c.実績要件等


・平成7年度以降に港湾・空港・発電所又はこれらと同等の施設で常駐の警備員を配置した警備保安業務を誠実に行ったこと。
※平成18年度のものですから「過去10年間」の意味。

・入札保証金→入札金額の5/100以上、契約保証金→免除


d.質問の回答・異議申し立てなど


・入札説明書・仕様書の配付→平成18年1月30日~3月16日。
・参加申請書・添付書類提出→平成18年1月30日~2月10日、持参に限る。
・参加資格の確認結果→平成18年2月17日に通知。
・「参加資格なし」の通知に対する理由説明→通知を受領した日から7日以内に書面を持参して請求→説明請求期限の翌日から7日以内に書面で回答。
・仕様書等に対する質問→平成18年1月30日~3月7日に書面で提出。
・仕様書等に対する質問の回答→平成18年3月13日~3月16日・9時~17時、管理組合にて閲覧。

再委託に関することその他細部については仕様書を見ないと分かりません。
    ●●     
選任のための法律知識・








3.なぜか「私のした質問の回答」が「指名参加者からの質問と回答」に記載されている



後日、管理組合のホームページを見ると、指名參加者からの質問と回答が載せられていました。→→→こちら
平成18年度の入札説明書では、「質問に対する回答は入札一週間前に、管理組合で閲覧できるだけ」なのですが‥。
この管理組合はとても親切になったのですね。

あれっ?

質問回答の日付は、私が管理組合を訪問した1月26日ですよ。

わざわざ、最初に「平成24年1月17日付けで指名通知をしました‥」と書いてありますねぇ‥。

それに、機械警備に対する質問 ( 質問7・8 ) は私がしたものとよく似ていますよ。

前回の契約金額も書いてありますね ( 回答2 )。
管理組合に申請して21年度の落札・契約情報を教えてもらおうと思っていたのだけれど、その必要はありませんね。


・契約金額は三年間で 257250000円‥、2億5千7百25万円ですね。
・消費税をのぞくと、2億4千5百万円。
  未確認情報と同じです。
  なんとまぁ、きりが良い数字ですね。


契約保証金についても書いてあります( 回答1・2 )

・「契約金額2億5千7百25万円の10%以上」、つまり2千5百72万円が必要なのですね。
  これを三年間無利子で供託しておくのですね。

・契約保証金を免除される者もいますね。
  過去にこの仕事をやった警備会社と今やっている警備会社は、落札しても2千5百72万円の契約保証金は必要ないのですね。

・入札保証金はどうなっているのでしょう。
  平成18年度の入札説明書では入札金額の5%以上。
  なぜ、質問1には入札保証金が含まれていないのでしょうね。


しかし、質問回答の最初に契約保証金を持ってこられると どうしても“ ひがみ根性 ” が顔を出します。
『あんたに、二千六百万円を準備できるのかい?』と言われているように感じてしまいますネ。

『SPnetさん! いつもの元気はどうしたのですか? ここまで小馬鹿にされて黙っているのですか!“ 五分の魂”を見せてくださいよ!』

これは、これは読者様。まあまあ、押さえて押さえて。これが、資本主義の力関係なのです。


とにかく、三年先にこの仕事を新規業者が受注するためには次のものが必要です。

・①.過去10年間に港湾・空港・発電所等での施設常駐警備実績
・②.公安委員会に機械警備の届け出をして、統一資格申請での取扱商品に機械警備を加えること。
・③.継続雇用三カ月以上の施設検定2級者 or 空港保安検定2級者を三名確保。
・④.最大で同時に19名配備できる体制を準備
・⑤.入札保証金・契約保証金として現金3858万円を準備 (入札保証金の1286万円は入札が終われば返済されます。)

力を合わせて、準備に取りかかりませんか?
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4.公共調達と公告の必要性


資本主義の力関係を如実に表す指名競争入札ですが、法律の規定はどうなっているのでしょう。
次の ① と ② について法律をざっと見てみました。
詳しく検討したわけではありません。引用は自己責任でお願いします。

①.どういう場合に指名競争入札が行われるのか?
②.指名競争入札が行われる時に公告が必要か?


a.国の行う調達  -  会計法予算決算及び会計令


①.指名競争入札は例外-予定価格が低いものが指名競争入札

(会計法29条の三)
・原則として公告をして申し込みをさせることにより競争させる。
・例外として、次の場合に指名競争入札とする。
  イ.契約の性質・目的により、競争させる必要なないとき・競争させると不利なとき
  ロ.予定価格が少額であるとき

(予算決算及び会計令 94条6号)
  ・上記ロについて「工事または製造の請負、財産の売買及び物件の賃貸以外の契約は予定価格が200万円を超えないもの」。


②.「指名競争入札では公告が不要」と解釈できる

(会計法)
・74条→10日前の公告が必要(緊急時には5日前)
・97条2項→指名する者への通知
・98条→74条を準用→10日前の通知が必要
・指名競争契約を一般競争契約とは別の節に規定していることから、一般公告は不要であると解するのが妥当。


b.地方自治体の行う調達  -  地方自治法地方自治法施行令


①.指名競争入札の具体的基準なし

・地方自治法234条2項→「指名競争入札ができる場合を地方自治法施行令に委任」
・施行令267条→抽象的な基準
  イ.契約の性質目的が一般競争入札に適しないもの
  ロ.競争に加わるべき者の数が一般競争入札にする必要がないくらい少数の場合
  ハ.一般競争入札にしては不利になる場合

②.「指名競争入札では公告が不要」と解される

・施行令167条の六→一般競争入札の公告→「公告しなければならない」とだけ。
・施行令167条の七→指名競争入札參加者への連絡→「通知しなければならない」とだけ


c.三重県の行う調達  - 三重県会計規則


①.指名競争入札の基準なし

・63条→「契約締結権者は、指名競争入札により契約を締結しようとするときは」とだけ規定。
・73条→随意契約の場合には具体的基準を定める。
       予定価格100万円~250万円
       事前に契約の発注見通しを公表
       契約前に契約内容、契約相手方の決定方法・選定基準・申請方法を公表
       契約後に契約相手方の名称等を公表

②.「指名競争入札では公告が不要」と解され

・62条→「一般競争入札の場合は入札期日の10日前に公告」
・63条→指名競争入札の場合は入札期日の5日以内に連絡」
・61条→一般競争入札と指名競争入札を “ 競争入札 ” とし、62条で一般競争入札という言葉を使っている。


このように、国の調達では例外である指名競争入札が、地方にいくに従って発注者の意のままに行えます。
地方には地方の実情ややり方があるのでしょうね。

また、「指名競争入札の公告はしなくてもよい」のが法律上の建前
これでは国民に「どんな調達が行われるのか、どんな業者が入札にさんかするのか」が分かりません。
それらは契約後に公表されますが、国民がそれを事前に知ることも公共調達の公正・適正を担保するものでしょう。


なお、平成20年12月に総務省から 「 契約の適正な執行に関する行政評価・監視結果に基づく勧告 」が関係省庁に出されています。
「絵に描いた餅 」にならないことを期待しましょう。→→→こちら
     

5.「もうかる公共調達」に絡むためには「それなりのもの」が必要


この港には国の調達で3ポスト・一年契約の交通誘導業務委託があります。
もちろん公告されます。

しかし、前年度の落札金額は476万円。
単純に隊員実働時間数で割ると、一時間900円。
本年度の落札金額はもっと下がるでしょう。

この調達と重要国際埠頭警備調達では業務内容の質が大きく異なります。
この二つを一律に比較することはできません。
しかし、公共調達には、時間単価900円では落札できないものもあれば、「三年契約・2億5千万円」で「公告されずに密かに行われる」ものもあるのです。

「もうかる入札」に絡むためには「それなりのもの」が必要なのでしょう。


『実績・実力のない業者に、国民の大切な税金を使った仕事をさせるわけにはいかない。
  入札に参加させるものを選別したり、入札参加に要件をつけたりすることは当然だ。』

その通りです。

しかし、その選別基準・参加要件は具体的なものであり、事前に公表されていなければなりません。
そうでなければ、その調達に参加しようとする者はそのための準備ができません。
ましてや一般公告なしで入札をするのなら、その不透明さの理由を疑われても仕方がないでしょう。
「 発注者の自由裁量による指名」や「公告なしの指名競争入札」は、公共調達の公開性を害するだけでなく自由競争の理念に反することになるでしょう。

こう言ったところで現実が変わるわけではありません。
“お上”の耳には、「野良犬が腹をすかせて鳴いてるよ。泣いているのかな?」としか聞こえないでしょう。
しかし、言わないと腹の虫が収まりませんね。


つづく




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