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・2020.04.22.公契約条例の労働賃金下限額での入札とその実効性





毎年参加している「市内業者すべて指名・最低落札価格なし」の「津市警備業務調達」で、
仕様書に「津市公契約条例に係る労働報酬下限額の施行について」という頁がありました。
この調達では「労働者に支払う賃金の下限が決められている」とのこと。
公契約条例という言葉は初めてなので調べてみました。
公契約条例は「公共調達での安売り競争を防ぎ、受注者に法令を遵守させて労働環境を改善する」というもの。
そのために、労働賃金下限額の設定,労働基本台帳の提出,誓約書の提出,労働者への周知,立ち入り調査,是正命令
労働者からの違反申告,違反申告をした労働者の不利益取り扱いの禁止,法令違反に対する関係機関への通報などを定めています。
この労働賃金下限額で当方が参加する公共調達の必要経費を算出しました。
もちろん、法令順守なので有給休暇・厚生年金・健康保険も含めます。
さてさて、実際の落札価格はどうなったのでしょう?
そもそも、公共調達での安売り競争は「最低落札価格を設定していない」ことに起因しています。
最低落札価格を設定しなければ、公契約条例は単なる「責任逃れ」となってしまいます。
「補償のない休業要請」と同じです。
「仕事と賃金を保証されている行政の皆様」には「生きていくためにはどんなことをしても働かなければならない者」の痛みが分からないのでしょうか?
いやいや、分かっているからこそ「最低落札価格なし」なのでしょう。


津市公契約条例の内容
短期大学警備必要経費試算
最低落札価格を導入しない公契約条例は「責任逃れ」?



      
1.津市公契約条例の内容


毎年、情報収集のために市立短大警備業務委託(入札)に参加しています。
本年度の仕様書に「津市公契約条例に係る労働報酬下限額の施行について」という頁がありました。

内容は、
・労働者への賃金下限額(令和2年度は880円/時)以上の賃金を支払うこと。
・津市公契約条例の内容や賃金下限額を労働者に書面で説明すること。

要するに、「この仕事をやる労働者の最低賃金を決めたから、それに従って必要経費を計算して入札しなさい」ということ。
今まではなかった頁なので少し調べてみました。

津市では平29年12月21日に津市公契約条例(津市条例22号)が制定されました。
そして、それを実際に運用実施するために「津市公契約条例労働報酬下限額試行運用マニュアル」というものが作られいろいろな調査をしているようです。
本年度はその調査にこの短大警備業務委託が選ばれたということです。
津市公契約条例 ・ 津市公契約条例施行規則 ・ 津市公契約条例労働報酬下限額試行運用マニュアル 
津市公契約条例の手引き ・ 関係書類ダウンロード(津市ホームページ)


では、津市公契約条例の内容をみてみましょう。


第1条(目的)
「この条例は、公契約における事業者間の競争の激化、落札価格の下落等による労働者の賃金その他の労働環境の悪化が懸念されることに鑑み、
  公契約に係る基本方針並びに本市及び受注者等の責務を定め、
  並びにこれらに 基づく施策を実施することにより、
  労働者の労働環境の確保、優良な事業者 の育成及び地域経済の健全な発展を図り、
  もって労働者が労働意欲にあふれ、 かつ、住民が豊かで安心して暮らすことのできる地域社会を実現することを 目的とする。」

※公共調達での安売り競争で落札価格が下がり、そのしわ寄せで労働者の賃金低下・労働環境の悪化するのでそれをくい止める。
  なるほど、立派な目的ですがその安売り競争をさせているのは「最低落札価格なし」で競争させているあなた方なのですが…。


第3条(基本方針)
「公契約に係る基本方針は、次のとおりとする。
  ①労働者の適正な労働環境を確保すること。
  ②品質及び適正な履行を確保すること。
  ③入札及び契約の公正性、透明性及び競争性を確保すること。
  ④不正行為を防止すること。
  ⑤地域経済及び地域社会の健全な発展を図ること。」

※当たり前のことが羅列されています。引っかかるのは「競争生を確保すること」。だから、「最低落札価格なし」?


第4条(本市の責務)
「本市は、前条に定める基本方針に基づき、この条例の目的を達成するために必要な施策を講じなければならない。
  2.本市は、労働報酬下限額(受注者等が労働者に支払う報酬の下限とすべき額をいう。附則第2項において同じ。)を定めることについて検討しなければならない。
    この場合において、市長は、第15条第1項に規定する津市公契約審議会(以下「審議会」という。)その他市長が必要と認める者の意見を聴かなければならない。
  3.本市は、受注者等が労働者の適正な労働環境を確保し、及び公契約を適正に履行するために必要な措置を講じなければならない。
  4.本市は、公契約に関し説明責任を果たすとともに、不正行為を未然に防止し、
    並びに適正な契約行為及び履行が行われていることを明らかにするために、公契約に関する情報の公表に努めなければならない。
  5.本市は、公契約の性質及び目的を踏まえた適正な契約方法を選択しなければならない。
  6.本市は、公契約の適正な履行及び良好な品質を確保するため、取引の実例価格、需給の状況等を考慮し、
    予定価格、納期その他の契約条件が適切なものとなるよう努めなければならない。
  7.本市は、予算の適正かつ合理的な執行に留意するとともに、地域経済の健全な発展のため、
    公契約に係る業務等の重要性、緊急性及び効率性を考慮し、公契約の適正な発注に努めなければならない。

※2項が「津市公契約条例労働報酬下限額試行運用マニュアル」なのでしょう。
※どこかに「最低落札価格を設定して安売り競争を防止しなければならない」というようなことが書いてあるでしょうか? 見つけられませんが…。


第5条(受注者等の責務)
「受注者等は、関係法令及びこの条例の規定を遵守しなければならない。
  2.受注者等は、労働者の適正な労働環境の確保に努めなければならない。
  3.受注者等は、労働者と対等な労使関係を構築するとともに、下請契約等を締結しようとするときは、
    下請契約等の相手方と対等な立場における合意に基づいた適正な契約を行わなければならない。
  4.受注者等は、下請契約等の相手方を選定するとき、又は資材等を調達するときは、地域経済の発展に配慮し、
    本市の区域内に主たる事務所を有する事業者又は本市の区域内で生産された資材等を活用するよう努めなければならない。
  5.受注者等は、公契約に携わる者として、社会的な責任を自覚し、公契約を適正に履行しなければならない。
  6.受注者等は、第7条第1項の規定に基づき市長又は上下水道事業管理者(以下「市長等」という。)が
    行う報告の求め及び立入検査その他本市が実施する公契約に関する施策に協力しなければならない。」

※適正な労働環境を確保しなければならない、下請け泣かせをするな、下請け選定・資材調達は市内から、契約の適正な実施。
  みな、当たり前のことばかり。
  ここで言いたいのは、「市(発注側)が報告を求めたり立入検査をしたりする場合は協力しなければならない」ということ。

※なお、施行規則では遵守しなければならない法律として、わざわざ次のものを挙げています。

施行規則第8条(関係法令)
「 条例第9条第2項の規則で定める関係法令は、次に掲げる法令とする。
  ①健康保険法(大正11年法律第70号)
  ②労働基準法(昭和22年法律第49号)
  ③厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)
  ④下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号)
  ⑤最低賃金法(昭和34年法律第137号)
  ⑥中小企業退職金共済法(昭和34年法律第160号)
  ⑦労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)
  ⑧雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)
  ⑨雇用保険法(昭和49年法律第116号)
  ⑩労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)
  ⑪労働契約法(平成19年法律第128号)
  ⑫建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律(平成28年法律第111号)
  ⑬前各号に掲げる法律に基づく命令」

えっ?厚生年金や健康保険なし?基準法違反?最低賃金以下?
叩けばどんどん出るホコリ。
ペナルティは契約解除,指名停止。もっとコワイ「関係省庁への法令違反通報」。もっともっとコワイ「問題を起こしたときに行う公安委員会の臨時立ち入り」。
労働者からのチクリも奨励しています。
※労働者の皆様はまず こちら を確認しましょう。


第6条(誓約)
「受注者等は、自らが締結し、又は携わる公契約が規則で定める契約(以下「特定公契約」という。)に該当するときは、
  市長等に対し、労働者の適正な労働環境の確保に関し規則で定める事項(以下「誓約事項」という。)について誓約しなければならない。」

※特別の公契約では受注者は誓約書を出さなければなりません。
  警備業務はこの特定公契約に該ります。
  誓約書を出すのならそれに反したときにはペナルティがあります。


第7条(報告及び立入検査)
「 市長等は、この条例の規定又は誓約事項の遵守状況を確認するために 必要があると認めるときは、
  受注者等に必要な報告を求め、又はその職員 当該受注者等の事務所、事業所等に立ち入り、関係書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。」

※警備業法に定められている公安委員会の立ち入りと同じです。


第8条(是正措置)
「市長等は、受注者等がこの条例の規定又は誓約事項に違反していると 認めるときは、当該違反を速やかに是正するために必要な措置を講ずること を命じなければならない。
  2.受注者等は、前項の規定により違反を是正するために必要な措置を講ずる ことを命じられたときは、速やかに是正の措置を講じ、市長等に当該措置の 内容を報告しなければならない。」

※警備業法の指示処分のようなものです。
  当然、これに反すればペナルティがあります。


第9条(労働者の申出等)
「特定公契約に係る労働者は、受注者等がこの条例の規定又は誓約事項に違反している疑いがあると思料するときは、市長等にその旨を申し出ることができる。
  2.市長等は、前項の規定による申出(以下「違反申出」という。)の内容が、規則で定める関係法令に関する違反情報であるときは、
    必要に応じて関係機関へ通報するものとする。」

※警備員の皆様、雇用者が法令違反・公契約条例違反や誓約書違反をしているときは市に申し出ましょう。
  「申し出ることができる」とはそれによって不利益を受けないということです。それは次に規定されています。
  この申し出が法令違反であるときは、市(発注者)が関係機関に通報します。

  断続的労働の許可がない、最低賃金減額の許がない、健康保険・厚生年金に加入していない、有休休暇がない、労働契約(労働条件通知書)が渡されていないなどなど。
  すべて上記の法令違反。
  これを現場の警備員が市にチクったら、 是正命令。従わなければ契約解除・指名停止。
  しかし、もっと怖いのは「市から関係機関への通報」。
  これが公安委員会に知られると、「公安委員会が重箱の隅をつつくような臨時立ち入り」。


第11条(不利益取扱いの禁止)
「受注者等は、労働者が違反申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならない。」

※営業会議で社長に「有休のユを言ったらクビにしろッ!」とハッパをかけられた警備会社の中間管理職の方はいませんか?


第12条(労働者への周知)
「受注者等は、特定公契約に係る労働者に対し、次に掲げる事項を業務等が実施される現場の見やすい場所に掲示し、又は書面を交付する方法により周知しなければならない。
  ①当該特定公契約の名称
  ②受注者等の責務及び誓約事項
  ③違反申出に係る制度の概要及び第10条に規定する相談窓口の連絡先」

※現場の警備員が知らなければ意味がありませんからネ。


第13条(公契約の解除等)
「市長等は、受注者等が次の各号のいずれかに該当するときは、当該公契約の解除、受注者等の指名停止等必要な措置を採ることができる。
  ①第7条第1項の規定による報告を怠り、若しくは虚偽の報告をし、
    又は同項の規定による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に対して応答せず、若しくは虚偽の回答をしたとき。
  ②第8条第1項の規定による命令に従わないとき。
  ③第8条第2項の規定による報告を怠り、又は虚偽の報告をしたとき。
  ④前3号に掲げるもののほか、この条例の規定に違反したとき。
  ⑤誓約事項に違反したとき。
  2 前項の規定により公契約を解除した場合において、受注者等に損害が生じても、本市はその損害を賠償する責任を負わない。 」

※ペナルティは契約解除です。契約解除によってどんな霜害が生じようと市は関知しません。
  まあ、警備業法でも立ち入りを拒んだり、書類に虚偽記載をしたり、指示処分に反したりしたら営業停止か認定取り消しですからネ。


第14条(損害賠償)
「受注者等は、前条第1項の規定による公契約の解除によって本市に損害が生じたときは、その損害を賠償しなければならない。
  ただし、市長等がやむを得ない事由があると認めるときは、この限りでない。」

※但し書きがあるので、これは「チョット脅し」でしょう。


(附 則)
1 この条例は、平成30年4月1日から施行する。
2 労働報酬下限額については、第4条第2項の規定による検討を行い、その結果に基づいて、この条例の施行後5年以内に、必要な措置を講ずるものとする。

※そして、2020年度の労働報酬下限額が880円となったのです。
  あくまで試行ですから、もっと上がることもあります。(三重県の法定最低賃金は873円)
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2.短期大学宿日直警備の経費試算



この短期大学の警備は以前に2年間受注したことがあります。
その時に、詳細な業務マニュアルを作って学校側と次の警備会社に渡してあるのでそれが基本業務になっているはずです。
その業務マニュアルにより、令和2年度の労働報酬下限額・880円での必要経費を試算してみました。
前回に説明した「断続的労働とその賃金」をもう一度読み返してください。


a.平日の警備業務


(内容)

17時~翌8時30分・1ポスト・平日の宿直業務(15.5時間/930分)

①17時30分~18時 → 正門の安全確保(30分)
※17時40分/昼間部授業終了,17時50分/夜間部授業開始で学生の出入りが多い。

②19時10分~19時40分 → 巡回(30分)
※19時20分/夜間部1限目終了,19時30分/夜間部2限目開始

③22時~23時 → 閉場業務(60分)
※学生退出22時。施設ないの安全点検と施錠。

④4時45分~5時 → 開場業務(15分)
※食堂への資材搬入・清掃業者による作業のため正門と施設を開錠する。

⑤7時30分~8時25分 → 正門立哨(55分)
※教職員・学生登校の安全確保。近隣住民への安全アピール。

⑥雑務(30分)
※上記以外の雑務

(断続的労働の賃金計算)

・実労働時間 → 220分(3.67時間)
・手待ち時間 → 930-220=710分(11.83時間)
・所定労働時間 → 930分(15.5時間) ※1ポストの場合は「休憩時間なし」と扱われる。
・評価労働時間=実労働時間+手待ち時間×0.6=220分+710分×0.6=646分 → 10.77時間  ※手待ち時間の710分は60%評価で426分働いたことになる。
・1時間の評価労働時間=評価労働時間÷所定労働時間=646分÷930分=0.6946…≒0.70時間 ※小数点第3位以下切り上げ。
・深夜労働時間=1時間の評価労働時間×深夜労働時間×1.25= 0.7×7×1.25=6.125時間≒6.13時間
・通常労働時間=1時間の評価労働時間×通常労働時間×1=0.7×(15.5-7)時間×1=0.7×8.5×1=5.95時間
・労働時間合計=深夜労働時間+通常労働時間=6.13+5.95=12.08時間
・労働報酬下限額=880円/時間
労働賃金(日当)=880×12.08=10630.4円≒10631円
平均労働賃金(月額)→ 5月~翌3月(11カ月)の平日数=225日 → 10631×225=2291975円 → 217453円/月


b.休日の警備業務

(内容)

8時30分~翌8時30分・1ポスト・休日の日直・宿直業務(24時間・1440分)

①10時~10時30分 → 巡回(30分)

②15時~15時30分 → 巡回(30分)

③18時~18時30分 → 巡回(30分)

④20時~20時30分 → 最終巡回(30分)

⑤雑務(60分)
※教職員の施設内出入りに伴う開錠・施錠、郵便物受取・電話応対など。

⑥4時45分~5時 → 開場業務(15分)
※翌日が平日の場合

⑦7時30分~8時25分 → 正門立哨(55分)
※翌日が平日の場合


(断続的労働の賃金計算)

・実労働時間 → 250分(4時間10分)
・手待ち時間 → 1440-250=1190分
・所定労働時間 → 91440分(24時間) ※1ポストの場合は「休憩時間なし」と扱われる。
・評価労働時間=実労働時間+手待ち時間×0.6=250分+1190分×0.6=964分  ※手待ち時間の1190分は60%評価で714分働いたことになる。
・1時間の評価労働時間=評価労働時間÷所定労働時間=964÷1440=646分÷930分=0.669…≒0.67時間 ※小数点第3位以下切り上げ。
・深夜労働時間=1時間の評価労働時間×深夜労働時間×1.25= 0.67×7×1.25=5.8625時間≒5.87時間
・通常労働時間=1時間の評価労働時間×通常労働時間×1=0.67×(24-7)×1=0.67×17×1=11.39時間
・労働時間合計=深夜労働時間+通常労働時間=5.87+11.39=17.26時間
・労働報酬下限額=880円/時間
労働賃金(日当)=880×17.26=15189円
平均労働賃金(月額) → 5月~翌3月(11カ月)の平日数=110日 → 15189円×110÷11=151890円/月


c.必要経費(月額平均)


①労働賃金(月額)=平日平均労働賃金(月額)+休日平均労働賃金(月額)=217453円/月+151890円/月=369343円/月
②交通費・通信費・雑費=1000円/日×31日=31000円/月
③新任教育20時間×2名 → 880円×20時間×2名=35200円/年 → 2934円/月
④有給休暇10日×2名=平日日当×10日×2名=10631円×10日×2名=212620円/年 → 17719円/月
⑤労働保険料(雇用保険6/1000+労災保険3/1000) → 369343円/月×9/1000=3324円/月
⑥制服・装備品 → 30000円×2名=60000円/年 → 5000円/月
ここまでで、合計429320円/月。

次に社会保険料(健康保険・厚生年金)の試算
イ.月収の計算
・断続的労働では月に2日以上の休日が必要 → 2名の交互勤務の場合の平均労働日数=365÷12-2(日)
・平均日当=月額労働賃金÷2÷(365÷12)=369343÷2÷(365÷12)
・平均月収=平均日当×平均労働日数=369343÷2÷(365÷12)×(365÷12-2)≒172529円
ロ.健康保険料の事業主負担 ※料率表  こちら
・14等級・170000円 → 9826円/月
ハ.厚生年金の授業主負担
・14等級・170000円 → 15555円/月
・70歳以上は加入なし。
ニ.社会保険負担額
⑦70歳未満二名 → (9826+15555)×2=50762円
⑧70歳未満+70歳以上 → 9826×2+15555=35207円
⑨70歳以上二名 → 9826×2=19652円

これを加えると448972円~480082円。
これには、警備業者賠償責任保険料の値上がり分と利益が入っていません。
つまり、月額「45万円~48万円」以下で落札すると赤字になります。
今まで「厚生年金・健康保険なし」で問題がなかったとしても、今年は「法令順守・社会保険加入」が条件です。
この経費を見込んでおかないと大損することになります。

上の48万円に利益を1割見込めば「49.5万円~52.8万円」。
最低落札価格を設定するのなら50万円/月、予定価格は53万円/月。
予定価格が53万円以下だと、「警備業者を泣かせて、警備員を劣悪な労働環境におく」ことになります。
もし、入札参加者全員か月額53万円以上で入札して「予定価格オーバーで不調」となれば発注側(市)自体が公契約条例に従っていなことになるのです。

昨年度の落札価格は月額36万円程度。
さてさて、今年はいくらになるでしょうか?
4月27日(月)が入札なので追記します。
   ★★03      
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3.公契約条例は責任逃れ?


a.労働者が黙っていたらどうなるか?


賃金下限額の設定,立ち入り調査,労働者への周知,労働者の違反申告,是正指示、ペナルティは契約解除・指名停止。

しかし、実際に受注者がしなければならないのは「誓約書の提出」と労働者別の勤務時間や支払賃金を記載した「労働状況台帳の提出」。


※試行マニュアル

7 労働状況台帳
労働報酬下限額の試行にあたっては、受注者等において労働状況台帳を毎月作成し、本市が指定する期日に契約担当課に提出することになります。
当該台帳については、対象労働者の対象契約における就労状況を把握するためのものであることから、
調達契約課等において、対象労働者の就労状況の確認や、労働報酬額が基準額を下回っていないかの確認を行います。
当該台帳の作成は、事業者ごとに作成することとし、受注者はその責任において、受注関係者の台帳についてもとりまとめた上、契約担当課に提出してください。
なお、確認後の当該台帳については、調達契約課等において保存します。

①労働状況台帳の作成
受注者等は、毎月の報酬について、対象労働者の氏名、職種、労働時間等を記載した労働状況台帳を作成してください。
当該台帳については、数式が入力された本市指定の様式としますので、契約締結時、又は締結後に、
契約担当課から津市公契約条例労働状況台帳(様式1)の電子データをメール送信等の方法により受注者に配布しますので、
受注者は、配布された当該台帳の電子データを受注関係者に配布してください。

②労働状況台帳の提出
作成した台帳(受注関係者分を含む。)は、受注者が取りまとめて契約担当課へ提出してください。
なお、提出時期は、次のとおりとしますが、必要に応じて当該台帳の提出を求める場合もあります。

以下略


もちろん、「労働状況台帳」に虚偽の記載は許されませんが、労働者が黙っていたら分かりません。

70歳以上でも雇ってくれるのは警備会社だけ。
『仕事は市庁舎の宿直・日直。留守番みたいなものだよ。毎年ウチが落札しているから仕事はずっとあるよ。二人で交代でやってもらうよ。月15万円でいいね!
  悪いけど交通費はでないよ。それから国民保険でやってね。』

これに文句を言う老人がいるでしょうか?

『最低賃金以下だ!労基法違反だ!健康保険に加入してくれ!』と言えば、月に15万円の収入はなくなってしまうのです。

公契約条例では労働者による違反申告窓口を作って、違反申告をした労働者への不利益取り扱いを禁じていますが、
警備員の首をすげ替えるくらいなんとでもなります。
誰が「おそれながら…」と違反申告をするでしょうか?


b.最低落札価格を導入しなければ労働環境は改善しない


『賃金の最低額は880円/時だよ。法令違反は絶対にしないでね。守らないときは契約解除だよ!』とするのなら、なぜ最低落札価格を設定しないのでしょう。

もちろん、最低落札価格を設定しても事業者が法令に反する劣悪な賃金・労働環境を労働者に押しつけることはあります。
それは公契約条例による監視・是正でその事業者を管理すればよい。

しかし、最低落札価格を設定しなければ、事業者は自分と雇用している労働者の生活を護るために安売り競争をせざるを得なくなります。
そして、そのしわ寄せの大部分が労働者に及びます。
労働者は少しでも収入を得るためにそれを我慢して文句を言いません。
だから、いつまでたっても劣悪な労働環境は変わらないのです。

これはコロナ禍で外出自粛や休業を要請しても、それに対する補償をしないのと同じです。
働いて生活するために外出しなければならない者、自分と従業員の生活を護るために休業できない事業者がいるのです。
充分な補償のない外出自粛要請や休業要請は行政の「責任逃れ」でしかないのです。

公契約条例で法令順守や賃金下限額を定めて事業者を監視・規制しても、最低落札価格を設定しなければ実効性はありません。
そんな公契約条例は「責任逃れ」と言われても仕方がないでしょう。

行政に関わる者は、こんな「世の中の道理」が分からないのでしょうか?

いやいや充分に分かっているはずです。
分かっているから最低落札価格を導入しないのです。


・2020.04.27.追記-入札結果


コロナの「密です!」を避けるため、入札は各自提出となりました。
入札結果はFAXで送られてきました。

・指名業者数 : 30業者
・仕様書不受理 : 22業者
・仕様書受理後入札辞退 : 2業者
・入札業者数 : 6業者

・入札結果(月額)
①A.37.5万円(例年落札)
②B.38.0万円(例年2位)
③C.49.4万円(例年3位)
④D.50.0万円(例年同額)
⑤E.60.0万円
⑥F.68.0万円

例年Cがもう少しA・Bの額に近いのですが、本年は11万円以上高くなっています。
これは、公契約条例による法令順守・社会保険加入・有休休暇・病気療養手当・介護手当などの各種手当を考慮したからでしょう。

上の試算では、労働賃金(月額)=369343円/月≒37万円、なので、落札価格37.5万円なら人件費と労働保険料はまかなえます。
しかし、「交通費なし・手当なし・有休休暇なし」でも社会保険料事業者負担分は出ません。
落札業者は株式会社なので社会保険加入義務業者です。
現場に配置する警備員二名が70歳以上なら厚生年金に加入する必要はありませんが、それでも健康保険料事業者負担分の2万円/月は赤字になります。
二名が70歳になっていなければ5万円/月の赤字になります。
当然、まったく利益はでません。

もしかして、津市が最低落札価格を設定していないのは、
「利益なんか考えていない。損をしても地域貢献・恩返しのために公共施設の警備をしたい」という奉仕の精神を尊重するためのものなのかもしれません。
最低落札価格を設定しない公契約条例が「単なる責任逃れ」か「奉仕の精神を尊重するもの」なのかは、この一年の行政の対応で分かります。
この調達に対する津市の監督を注視していきましょう。。


つづく。





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