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・どんな警備業務をやるか・指導教育責任者の確保





警備業務は四種類、その警備業務の各々について、各営業所毎に指導教育責任者が必要です。
一人の者が他の業務の指導教育責任者を兼ねたり、他の営業所の指導教育責任者を兼ねたりすることもできますが制限があります。
自身が指導教育責任者資格をもっていれば問題ありませんが、持っていない場合は資格者を雇う必要があります。
その場合の注意点も書いておきます。


どんな警備業務をやるか決める
警備業務に応じた指導教育責任者の確保
指導教育責任者を雇う場合の注意

      
5.どんな警備業務をやるか・指導教育責任者の確保



a.「どんな警備業務をやるか」決める


警備業を始める場合、まず「何をやるか」を決めなければなりません。
警備業務は1号~4号までありますが、その範囲の境界はあいまいです。 ※参照「警備業務は4種類ある」

たとえば、
スーバーマーケットの駐車場警備でも、
開店オープンで人がたくさん集まる場合は雑踏警備、そうでない場合は交通誘導警備。
しかし、駐車場の中で盗難の防止をやる場合は施設警備です。

プール監視を警備業としてやるのなら施設警備ですが、幼児・身障者など特定の者を対象にしてその安全を守るのなら身辺警備。
「ここセ〇ム」のように対象者の所在確認をして要請があれば出動するのは機械警備ではなくて身辺警備。

「どんな警備態様がどの警備業種に当たるか」は最終的に公安委員会が決めます。

やろうとしている警備がどの警備業種に当たるかは、指導教育責任者と検定資格者の確保に関係してきます。
上のスーパーマーケットの駐車場警備では、それが施設警備に当たる場合なら1号の指導教育責任者資格が必要です。
雑踏警備と交通誘導警備に当たるのなら、どちらも2号の指導教育責任者資格でOKですが、雑踏警備に当たる場合は検定資格者が必要になります。

施設警備に当たるのに、「交通誘導警備だ」と思い込んで2号の指導教育責任者を確保し2号の業務届けをしていると、警備業法違反となります。
そして「罰金刑を受ければ、警備業界から5年間の追放」となります。

認定申請のときに「自分のやろうとしている警備業務がどの警備業種に当たるのか」をしっかりと確認しておく必要があります。

     
b.指導教育責任者の確保


自分が指導教育責任者資格を持っていれば問題はありませんが、持っていなければ資格者を確保しなければなりません。

警備業を始める場合、組織・事務所・制服・顧客・隊員 は必要ありませんが指導教育責任者は絶対に必要です。

指導教育責任者資格は警備員を4~5年やっている者ならほとんどが持っています。
また、指導教育責任者資格は警察OBなら持っています。
警部補より下のクラスなら退職する時に講習を受けてこの資格をもらいます。
警視クラスだとこの資格はもらえません。
元警視・元警察署長という肩書で再就職先がたくさんあるからです。

指導教育責任者資格の相場は「週休二日の8時~17時勤務」で20万円程度です。
もちろん、社会保険・有給休暇は必要です。

『えっ? 月に20万円もかかるのッ!非常勤で週一回出勤ではだめなの?』

確かに、隊員数が少なければそれで充分に選任業務をやれます。
問題はそれを公安委員会が認めるかどうかです。

これについて、「警察庁の警備業法解釈・運用基準」が出されています。
それによると、
「(選任する指導教育責任者は)その営業所に常勤して指導教育責任者の業務に従事できる状態にあることが必要である。
……他に職業を持っていて通常の営業時間にその営業所に勤務できない状態にある場合は認められない」(20-2-1を修正・加筆)

この運用基準では非常勤ではOKがでないでしょう。

ただし、認定の要件である「指導教育責任者を確保しているかどうかの判断」について警察庁の解釈・運用基準は、
「原則として、指導教育責任者として選任しようとする者の指導教育責任者資格者証の写しによる書面審査により判断する」としています。(9-1)
「常勤か非常勤か、勤務日数がどれくらいか、給料はいくらか」などを聞かれたり、雇用契約書を要求されたりすることはないでしょう。
認定申請のときに『指導教育責任者は非常勤ではだめなのですか?』などと聞かないかぎり、資格者証のコピーで書類審査OKで認定が下りるかもしれません。

しかし、解釈・運用基準が「常勤」である以上、いつかはその点を指摘され・常勤にするように指導されるでしょう。
そんな場合でも、「隊員数が少ないから・選任業務をしっかりやっているから」と、公安委員会を説得することはできるでしょう。
公安委員会を説得できてもお上から「あの警備会社には注意しなければならない」とマークされることになります。
マークされれば、些細な警備業法違反で「罰金→営業停止→警備業界からの追放」となる危険があります。
ここは、金がかかっても「常勤として雇う」方が無難でしょう。

資格を持っていない者が警備業をやる場合は出費がかさみます。
ただし、それは3年間の辛抱です。
3年経てば自分が指導教育責任者資格を取れるからです。

この点は指導教育責任者資格を持っている人も注意してください。
自分が選任指導教育責任者として雇われた場合、悪くすると「3年でお払い箱」になります。
3年毎に警備会社を変わるのは大変ですヨ。

     
c.指導教育責任者を雇う場合の注意


指導教育責任者資格を持っているだけで、選任業務をしたことのない者を雇うのは危険があります。
警備業法をしっかりと理解して書類作成を完璧にやれる者でないと「警備業者自身も警備業界から追放」になってしまいます。
各種届出・書類作成を間違った選任指導教育責任者は罰金・資格剥奪・警備業界から追放となります。
しかし、そんな者を選任していた警備業者も同じ責めを与えられます。  ※参照「両罰規定

指導教育責任者を雇う場合は選任業務の経験がある者にするか、
「月20万円で3年間資格を買った」と思って、選任業務の監督・チェックを他の者に依頼することが必要です。


なお、雇った指導教育責任者の通勤時間もチェックされます。
「非常勤で良いかどうかの問題」と同じで「選任としての実態を備えていなければならない」からです。
一般には「通勤1時間程度」とされていますが、隊員数によって異なるでしょう。
OKが出るか出ないかは、すべて公安委員会への説得にかかっています。

また、1号と2号の指導教育責任者資格を持っている者を雇うのがベストです。
施設警備だけしかやるつもりがなくても、顧客から「駐車場もやってよ」と注文されることがあります。
そんなとき、雇った指導教育責任者が2号の資格を持っていたら、すぐに業務追加届けをして顧客の注文に応じられます。
顧客の注文に応じられなければ『なんだ、アンタのところでは交通警備がやれないの?』と信用をなくしてしまいます。
ただし、1号・2号の資格を持っている者は「もう少し値段が高い」でしょう。

なににせよ、指導教育責任者資格を持っていない者が警備業を始めるのには金がかかるのです。


つづく。




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