SPnet 開業偏
・ワッペン(標章)を作る
制服に付けるワッペン(標章)を作成しました。
公安委員会が要求するものは「片方の上腕部に一枚、胸部に一枚」、「警備業者の名前が入っていること」、「一枚の面積が60平方センチ以上」。
これらを満たせばデザインは自由です。
もちろん、制服と同様「警察官・海上保安官」のワッペンと似ているものはダメです。
当初、自分でいろいろと考えましたが、結局はワッペン屋さんにデザインしてもらいました。
製作費用も書いてあります。
・自分で試作-形と面積、字体、デザイン
・ワッペン屋さんにデザイン依頼・作製費用
1.イメージの作成(2011.03.29)
a.警備業とワッペン
警備業をやるためにはいろいろな装備品が必要です。
施設警備なら、制服・制帽、キーケース、警棒、無線機、ハンドライト、刻時計など。
交通誘導なら、さらに防寒服、雨カッパ、発光ベスト、誘導灯、ヘルメット、アポロキャップ、安全靴など。
装備品がいらないのは私服保安だけです。
警備員の装備品はすべて大手の制服屋サンで調達できます。
装備品の中で一番重要なのがワッペンです。
私服保安とはボディガード以外の警備員は、胸と上腕部に各一枚ワッペンをつけています。
正式には「標章」といいます。
警備員のワッペンは本来「警察官等と警備員を区別するためのもの」ですが、
警備員の会社への帰属意識を高め警備員全体の統制を図るために非常に役立ちます。
また、会社の宣伝にもなります。
ワッペンは警備会社の顔であり、創業の精神を現すものなのです。
地方都市の警備員講習会に行くと、いろいろなワッペンを目にします。
きらびやかなもの、粗末なもの、図柄が他の警備会社と同じで名前だけが違うものもあります。
ワッペンも大手制服屋さんが手配してくれます。
しかし、種類が少なく「自分の色」にピッタリなものはありません。
もちろん、オリジナルのデザインもしてくれますが、それが専門ではないので割高となります。
今回は、ネットで調べたワッペン屋さんに見積依頼をしました。
b.イメージを決める
まず、ワッペンのイメージを決めなければなりません。
形・図柄・色を決めます。
形は「盾・かぶら・楕円・円・丸い三角形」など。
外国の警察や軍隊で使われているのが盾型です。
形を選ぶ時に注意しなければならないのは「面積が60平方㎝以上」という警察庁の指導です。
尖った形を選ぶと全体に大きなワッペンにしなければなりません。
たとえば、円なら直径8.7㎝以上でないと「60平方㎝」をクリアーできません。
正三角形なら一辺が11.7㎝以上となります。
ワッペンの見た目が大きいとどこか滑稽です。
また、「上腕部だけでなく胸にもつける」ことも考えなければなりません。
盾型は腕につけてさまになりますが、これを胸にもつけるとヘンテコリンです。
・図柄は「龍・獅子・鷲・鷹・フクロウ・鳩・翼・剣・鍵」など。 「安心と安全をどのように護るか」を表現しなければなりません。 ・色は制服とマッチしていなければなりません。 企業カラーが使われます。 ・SPnetのワッペンは「上腕部が盾型・胸部が長方形」としました。 ・また、上腕部ワッペンを印象づけるため胸部ワッペンは図柄なしにしました。 ・図柄は獅子。 ・色はオーソドックスな濃紺ベースにエンジ。 これがイメージです。 |
c.字体を決める
字体は標準字体を使えば安くなります。
標準字体といっても100種類くらいありますのでご心配なく。
上のイメージの字体は「Beilevue DReg」。
これは標準字体ではありません。
標準字体の中からよく似た字体を捜しました。
ここで、注意しなければならないのは文字を実際に配置してみること。
標準字体の中から気に入ったものを切り貼りして「SPnet」を作ってみました。
・実際に配置してみると字体の感じが違います。 ・イメージの「Beilevue DReg」に似たのは一列目の三行目です。 しかし、「上品すぎてワッペン向き」ではありません。 三列目・一行目を使うことにしました。 |
d.形を決める
さあ、「60平方㎝」との戦いです。
・盾型は先が尖っているので、それだけ面積が少なくなる。 ・そこで、ワッペンベースを大きくして 図柄をイメージに近づけることにしました。 ワッペンペースが濃紺で制服が濃紺なら、ワッペンペースは目立たない。 少し離れればイメージ通りのワッペンに見えます。 ・赤枠がワッペンペースで面積は61.85平方㎝。 ・9個の角に丸みをつけるから、この分の面積減を考えても60平方㎝をクリアー。 ・赤枠より5㎜程度内側の青枠の中に図柄を配置する。 ・寸法が見えにくいので→こちら参照 |
胸部ワッペンは長方形で図柄なし。
これは簡単。
・赤枠がワッペンペースで60平方㎝。 ・青枠は赤枠より左右1㎝・上下5㎜内側。 ・青枠内に「SPnet」を配置。 ・色はワッペン生地が制服色と同じ濃紺。 ・「SPnet」はエンジに金線で縁取り。 ・「獅子」はエンジ。 ・飾りの枝葉と上部枠囲いは金色。 |
結局、次のような感じになります。
・「SPnet」には金色の縁取りがつきます。
・上腕部ワッペンの「SPnet」上の囲み線は金色になり、ワッペンベースに沿わせるためにもう少し形が変わります。
・上腕部ワッペンの「飾り枝葉」は、ワッペンペースに沿わせるためにもう少しカーブが緩やかになります。
・「SPnet」と「獅子」の大きさはバランスをとるために少し変わるでしょう。
これを基に実際のデザインを決めてもらいます。
「顧客の背中を護る」力強さと控えめさがよく表現されていると思いませんか?
初回は50set注文。
●●
・長方形のワッペンは右胸、盾型ワッペンは左上腕部。 ・左胸には階級章(3種)と身分証明書。 ・アポロキャップ「赤獅子」は一般隊員用。 ・アポロキャップ「金獅子」は資格者用。 ・制服は濃紺上下。 ・モール・ネクタイなし。 ※モールは警察官の拳銃吊りのマネで実際には役に立ちません。 ※ネクタイは格闘時に掴まれるので危険です。 ※警笛はステンレスチェーンで吊ります。 ・施設警備での制帽は「警察官の使っている略帽」を予定しています。 |
c.ワッペン仕樣と作成費用
①長方形ワッペン(胸部ワッペン):110㎜×55㎜。
②盾型ワッペン(上腕部ワッペン):80㎜×100㎜
生地:クロス・濃紺
縁かがり:濃紺
縁処理:ヒートカット
裏処理:マジックテープ加工
作成枚数:50セット(①×50・②×50)
デザイン作成料(初回のみ)×2:10000円
刺繍版代(初回のみ)×2:10000円
①
・ワッペン代:500円×50=25000円
・マジックテープ加工代:350円×50=17500円
②
・ワッペン代:700円×50=35000円
・マジックテープ加工代:350円×50=17500円
銀行振込での割引5%。
総額117300円、隊員一人あたり2346円。
なお、製作枚数が多くなればもっと安くなります。
制服はどれも似たりよったり。
警備会社が主張できるのは仕事ぶり以外にワッペンしかありません。
他県の講習会に参加して『あれっ?ウチのワッペンと同じだね!』と言われないように、とことんこだわってみましょう。
d.刺繍アポロキャップの作成費用
刺繍はワッペンと同じデザインなので版代は無料。
色糸変えはサービスです。
製作個数が多くなれば刺繍加工代はもっと安くなります。
今回は、取り敢えず「赤獅子・15個」・「金獅子・5個」の20個を注文しました。
①アポロキャップ代金:1120円×20個=22400円(20%off)
②刺繍加工代金:900円×20個=18000円
税込み合計:42420円
銀行振込による前金割引5%
支払い合計:40400円=
アポロキャップ一個あたり2020円です。
制服屋さんの既製刺繍入りのアポロキャップより安いです。
お勧めです。
なお、実際に刺繍作成した画像(必要なら実物サンプル)も送ってくれます。
このあたりに「プロ意識」を感じます。
今回お世話になったワッペン屋さんはこちらです。 |
※2019.12.追記・解説
これらのワッペンやアポロは、施設警備をやっていた初めの3~4年間使いました。
現在では私服保安だけしかやっていませんので、「SPnetコレクション」となってしまいました。
今、思うのは「警備員の服装を警察官の服装に似せる必要はない」ということです。
警備員を見て「お巡りさん」だと思うのは三歳まで。
世間では、どれだけ「警察官に似た格好」をしても「警備員は警備員」なのです。
だから「警察官に似せた警備員」は滑稽なものなのです。
SPnetの上腕部ワッペンを警察官のワッペンに似せて「盾型でできるだけ小さく」したことが悔やまれます。
胸部ワッペンと同じ長方形で良かったのです。
制服自体も警察官の制服に似せる必要はないのです。
ワークマンの作業服上下に「警備会社の名前だけ入った長方形のワッペン」、そしてアポロをかぶれば充分です。
色は上下濃紺か黒。夏場は水色の半袖に濃紺のズボン。
そろそろ「脱警察官もどき」でしょう。
つづく。
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