RMX-SJ13ホイールベアリング交換


RMX-SJ13 整備資料




2015.11.23 ホイールベアリング交換


RMX④のリヤホイールにガタがあるのを見つけました。

イノウエ・GP210を履かせたリヤホイールです。

このホイールは一番初めの「部品取り・レース仕様」RMXに付いていたものです。

その後、RMX①でスポーク全交換をし、モトクロスタイヤからGP210に変えました。

エンジン換装をしたRMX②ではアスファルトの上で酷使。今年の5月に控えのRMX④で予備役になるまで4年以上も頑張ってくれたものです。


この4年間は飛んだり跳ねたりしていませんが、
もともとの使用がハードであっただろうし、4年の使用でベアリングの交換時期が来たのでしょう。

RMX④は予備車両ですが、GP-210の「フロント21インチ・リヤ18インチ」がいつ必要になるかもしれません。
ホイールベアリングを交換しておくことにしました。


必要なベアリングの型番と仕様
「隙間」は「作る」のではなく「できる」
スペーサの役割と圧入量
圧入の実際
・圧入作業まとめ ( ここを印刷しておく )



   
1.準備するもの-ベアリングとオイルシール


スズキのベアリングを純正部品で入手すると驚くほど高価です。

ベアリングとOリングはモノタロウ。安くて『ビックリポン』です。


①後輪外側×2
・型番:6204 (外径/47㎜,内径/20㎜,巾/14㎜)
・シール:両側ゴムシール・接触型
・部品番号:08133-62047
・純正:KOYO-6204-2RS (409円)
・代替:NTN-6204-LLU (364円) ・ NSK-6204-DDU (359円) ・ NACHI-6204-2NSE (350円)

②後輪左内側×1
・型番:6004 (外径/42㎜,内径/20㎜,巾/12㎜)
・シール:片側ゴムシール・接触型
・部品番号:08123-60047
・純正:KOYO-6004-RS
・代替:NTN-6004-LU (349円)
※モノタロウでは KOYO,NSK,NACHIの片側ゴムシール・接触型は扱っていない。両側ゴムシール・接触型の片側シールを外すしかない。
  但し、ゴムシールといっても鋼板にゴムコーティングしたものであるので簡単に外れるかどうか分からない。
※両側ゴムシール・接触型:KOYO-6004-2RS,  NSK-6004-DDU,  NACHI-6004-2NSE

③前輪×2
・型番:6003 (外径/35㎜,内径/17㎜,巾/10㎜)
・シール:片側ゴムシール・接触型
・部品番号:08123-60037
・純正:NTN-6003-LU (324円)
・代替:NSK-6003-DU (446円)
※モノタロウではKOYO,NACHIの片側ゴムシール・接触型は扱っていない。両側ゴムシール・接触型の片側シールを外すしかない。
※両側ゴムシール・接触型:KOYO-6003-2RS,  NACHI-6003-2NSE


今回は全てNTNで統一しました。
在庫が豊富で、待たされませんからネ。
一台分の値段は、NTN-6204-LLU (364円)×2+NTN-6004-LU (349円)×1+NTN-6003-LU (324円)×2=1725円(税抜き)です。
10%OFFの日なら税金分+αが助かります。
二台分なら3000円を超えますから送料無料です。


オイルシールは純正部品で入手。

④後輪ハブオイルシール×2
・部品番号:09283-26019 (464円)
・刻印:KOYO・MHRA-26-47S
・サイズ:26×47×5

⑤前輪ハブオイルシール×1
・部品番号:09284-23001 (313円)
・サイズ:23×35×6

⑥後輪ハブサークリップ×2
・部品番号:08331-41478 (172円)
※通常のサークリップよりとても頑丈なので交換の必要はありません。
※念のために2個入手しましたが、写真には写っていません。

結局、前後ホイールベアリング交換に必要な部品第は 3000円程度になります。


次が取り外したベアリングとオイルシールです。

 ①L:リヤ・スプロケット側(左側)の外側ベアリング
 ・内輪にガタ。軸方向・円周方向にはっきりとしたガタがある。

 ②:リヤ・スプロケット側(左側)の内側ベアリング
 ・内輪にガタは感じない。サビなし。
 ・スムーズに回らないが、取り外すときに内輪を引っ張っているのでその影響もある。

 ①R:リヤ・デスク側(右側)ベアリング
 ・外輪と内輪にサビ。みるからに痛んでいる。
 ・外すときにベアリング部を叩いたので、まったく動かない。

 ③L・③R:フロント左右ベアリング
 ・フロントホイールにガタはなし。ベアリング型番確認のために取り外しただけ。
 ・ガタや引っかかりなし。
 ・ただし、取り外すときに内輪に力をかけたので、ベアリングだけ交換

 ④L・④R:リヤ・左右オイルシール
 ・痛み相応。
 ・そもそも、防塵・防水のためのもので、痛んでいてもそれほど支障はないだろう。

 ⑤:フロントオイルシール
 ・痛みなし。予備ホイールだからオイルシールは交換しない。このまま使う。




2.ベアリングの基礎知識


今回いろいろ収集した基礎知識を書き留めておきます。


a.金属シールドとゴムシール

ベアリングの外輪と内輪の間に、金属板(シールド板)や鋼板に合成ゴムを固着させたもの(シール板)を挟んだベアリングがあります。

その目的は防塵性,防水性を高めること。

防塵性・防水性は金属板よりゴムの方が優れています。

ホイールベアリングには防塵性・防水性が強く要求されるので、ゴムシール板でシールされたベアリングが使われます。


b.接触ゴムシール型と非接触ゴムシール型


 ゴムシールではシール板の一方は外輪の溝に固定され、もう一方は内輪の溝にはまります。

 左の写真ではaとbです。※写真はNTN-6004-LU

 このとき、シール板が内輪の溝に接触するものと接触しないものがあります。

 つまり、ゴムシール板がb溝に接触するものと接触しないものがあるのです。

 前者を接触型、後者を非接触型と呼びます。


 接触型は防塵性・防水性に優れますが、
 シール板が内輪に接触しているので、それだけベアリングの回転が妨げられます。
 非接触型はベアリングの回転を妨げませんが、防塵性・防水性が劣ります。

 バイクのホイールでは、回転性より防塵性・防水性が要求されるので
 接触型ゴムシールが使われるのが一般です。

 なお、金属板シールドはすべて非接触型です。

 ※技術的資料は→→→こちら



c.両側シールと片側シール


このゴムシールはベアリングの両側になされる場合と片側だけになされる場合があります。

前者を両側シール、後者を片側シールと呼びます。


d.接触型・非接触型を示す記号


シールが金属シールドかゴムシールかは一目で判ります。
しかし、ゴムシールが接触型か非接触型かは見た目で区別がつきません。

そこで、「接触型か非接触型か」を示す記号が用いられます。
この記号はベアリングメーカーによって異なります。

(片側接触型/両側接触型)

・NSK→ DU / DDU
・NTN→ LU / LLU
・KOYO→ RS / 2RS
・NACHI→ NSE / 2NSE

(片側非接触型/両側非接触型)

・NSK→ V / VV
・NTN→ LB / LLB
・KOYO→ RU / 2RU
・NACHI→ NKE / 2NKE


なお、片側シールも両側シールもシールに刻印されている記号は同じです。

例えば、SJ13のリヤホイール外側ベアリングは純正で KOYO の 6204-2RS (両側接触型ゴムシール)が付いています。
しかし、ベアリングのゴムシールに刻印されている記号は 6204-RS で、6204-2RS とは刻印されていません。
もう一方の側にも 6204-RS と刻印されているから、2RSなのです。

もちろん、ベアリングのパッケージには 6204-2RS と書いてありますが、ベアリングの片面を見る限り、それが片側シール(RS)なのか両側シール(2RS)なのかは分かりません。
片側シールなのか両側シールなのかは実際にベアリングを外してみなければ分からないのです。


e.部品番号との関係(推測)


部品番号とベアリング形状は一定の関係があり、部品番号からベアリング形状を判断することができます。

もう一度、ベアリング形状と部品番号をみてみましょう。

・後輪外側ベアリング:両側接触ゴムシール・6204番 → 08133-62047
・後輪左内側ベアリング:片側接触ゴムシール・6004番 → 08123-60047
・前輪ベアリング:片側接触ゴムシール・6003番 → 08123-60037

部品番号の後の数字列の初めから4桁がベアリングの型番、前の数字列の4桁目が「両側か片側か」を表しているようです。

08133なら「3=両側」、08123なら「2=片側」を表しているようです。


では、08113 ならどうでしょう?

4桁目の数字は1です。

3=両側」・「2=片側」なら「1=シールなし」でしょうか?

SJ13には08113の番号を持つ部品はありません。

しかし、パーツリストによるとRH250 (SJ11B)の前輪右ベアリングは 08113-62017、前輪左ベアリングは 08123-62017 です。

RH250は前輪右に「シールなしの6201番」、左に「片側シールの6201番」を使っているのでしょうか?


さらに、RH250の後輪ベアリングは 08143-62017 。

今度は、4桁目が「4」です。

3=両側」・「2=片側」・「1=シールなし」としたら「4」はどんなベアリングなのでしょうか?

だから、この推測は外れているかもしれません。


なお、SJ14の後輪ベアリングは左右の外側ベアリングも左の内側ベアリングも同じ、08133-60047 です。

6004番だから、SJ13の左内側ベアリングと大きさは同じです。
SJ13では外側に一回り大きい 6204番、内側に小さい 6004番を使っていますが、SJ14では外側も内側も小さい 6004番を使っていることになります。

また、SJ13の内側ベアリング・6004番は片側シールですが、SJ14の 6004番は部品番号が「08133」ですから「両側シール」だと推測できます。

とうぜん、接触型が使われているでしょうから、「両側ゴムシール・接触型の 6004番」でしょう。

NTN-6004-LLU か KOYO-6004-2RS が使われているでしょう。

もちろん、これは部品番号からの推測です。

「金属シールドかゴムシールか」、「接触型か非接触型か」、「両側シールか片側シールか」は実際にベアリングを外して判断してください。


   
3.マニュアルの記述にビクつくな


a.難しそうなマニュアル記述


ホイールベアリング交換についてマニュアルに次のようなことが書いてあります。(P13-1~P13-5)

・リヤは先に右側ベアリングをハブ段差に当たるまで圧入。
・次に左側の内側ベアリングと外側ベアリングを圧入。
・左側の内側ベアリングとハブ段差の間には隙間ができる。

・フロントは先に左側ベアリングをハブ段差に当たるまで圧入。
・次に右側ベアリングを圧入。
・右側ベアリングとハブ段差の間には隙間ができる。

そして、ごていねいに「ここに隙間」とイラスト説明。


エ~ッ!

なぜ、リヤは右から先に圧入し、フロントは左から先に圧入するの?

まあ、それは「その順番でやれば良い」のだから問題はないけれど、

「リヤ左側の内側ベアリングとハブ段差に隙間」・「フロント右側ベアリングとハブ段差に隙間」ってどれだけの隙間なの?

そもそも「何のために隙間をあける」の?


戸惑いますよネェ。

しかし、落ち着いてマニュアルを読んでみましょう。

マニュアルには「隙間を作れ」とは書いてありません。

「隙間が自然とできる」のです。

だから、「どれだけの隙間」と数字を挙げていないのです。

ベアリング圧入も「隙間をつくるための特別な方法」は必要ありません。

通常通り「抵抗を感じて止まるまで」圧入すればよいのです。

それで、隙間ができるのです。

その点を以下に説明します。

その前に、「リヤベアリングは右から先に、フロントベアリングは左から先に圧入する」理由を説明しましょう。


b.リヤは右から先に、フロントは左から先に圧入する理由


次に説明しますが、ハブ穴にはスペーサが入っています。

このスペーサは「ハブ段差~ハブ段差」より少し長く、ハブ段差から少し出るようになっています。

だから、先に圧入するベアリングはハブ段差で止まりますが、後から圧入するベアリングはこのスペーサで止められてハブ段差に達することができません。


ブレーキデスクが付いているのは、リヤでは右側、フロントでは左側です。

リヤの右側ベアリング・フロントの左側ベアリングを先に圧入するのは、このベアリングをハブ段差まで到達させるためです。

それは、ベアリングがハブ段差に到達してブレーキデスクのセンターが出るように設計してあるからです。

要するに、「ベアリングはデスク側から先に圧入する」ということです。


それでは、両側にブレーキデスクがある場合はどちら側から先に圧入するのでしょうか?

FJ1200のマニュアルでは「右側から」(P6-4)、NSRのマニュアルでも「右側から」(P12-9)。

それで、両側デスクのセンターが出るように設計してあるのでしょう。

    
c.スペーサとその働き


・ブレーキデスクのセンターを出すためにベアリングをデスク側から先に圧入する。

・デスク側のベアリングは段差で止まる。

・ハブ穴にはパイプ状のスペーサ※が入っている。

・このスペーサは「ハブ段差~ハブ段差」より少し長い。

・デスク側と反対側のベアリングを圧入する。

・ベアリングはスペーサのところで止められて段差ま達することができない。

・ベアリングと段差の間に隙間ができる。

※NSR/デスタンスカラー,FJ/スペーサ、RMX/ハブベアリングスペーサ
※以下ではハブベアリングスペーサorスペーサと記述。


このスペーサは何のためにあるのでしょう。

そして、なぜ「ハブ段差~ハブ段差」より少し長いのでしょう。

朝ドラのように「何で?」を自分なりに解決しないと先に進めません。

少し考えてみました。


(ベアリング内輪はアクスルシャフトに固定されていない)

 ベアリングが回転するためには、
 ベアリング外輪とベアリング内輪が別々に(独立して)固定されていなければなりません。
 
 ベアリング外輪はハブときつくはめ合いハブに固定されています。

 ベアリング内輪にはアクスルシャフトが挿入されます。

 ここで、アクスルシャフトがベアリング内輪ときつくはめ合い、
 ベアリング内輪がアクスルシャフトに固定されれば問題は生じません。

 しかし、アクスルシャフトは頻繁に抜き差ししなければならないので、
 ベアリング内輪より細く、ベアリング内輪に固定されません。

 このまま、ベアリング内輪を固定しないでおくと、
 ホイールが回転するとベアリング内輪がアクスルシャフトの周りをを回ってしまいます。

 つまり、ベアリング本体がシャフトの周りを回ってしまうのです。

 これではベアリングを付けた意味がありません。

 だからベアリング内輪をハブとは別のどこかに固定しなければならないのです。



(ベアリング内輪はどこに固定されているか?)


ベアリング内輪はどこに固定されているのでしょう?

ベアリング内輪は外側からカラー、内側からスペーサで挟まれ、アクスルシャフトが挿入されます。

アクスシャフトはアクスルナットがスイングアームを外側から締め付け、スイングアームに固定されます。

このとき「カラー+ベアリング内輪+スペーサ+ベアリング内輪+カラー」はスイングアームの内側に押しつけられスイングアームに固定されます。

つまり、ベアリング内輪はスイングアームに固定されているのです。


結局、スペーサは両側のカラーと一体になって、ベアリング内輪をスイングアームに固定するパイプになっているのです。


(スペーサは「段差~段差」より長い)


スペーサの長さと「段差~段差」が同じなら、カラーとスペーサでベリング内輪をしっかりと挟みつけることができません。

カラーとスペーサがベアリング内輪をしっかりと挟みつけ、「カラー+ベアリング内輪+スペーサ+ベアリング内輪+カラー」が一体とならなければ、
カラーをスイングアームに固定しても「ベアリング内輪をスイングアームに固定した」ことになりません。

スペーサの長さが「段差~段差」よりすこし長いのは、ベアリング内輪を挟みつけるための“締め代(しめしろ)”なのです。


(左外側ベアリングの位置でスペーサが内輪を押しつける力を調整する)

 右ベアリング(R)は外輪が右段差で止められるので動かすことはできません。

 スペーサは「左第2段差~右段差」より少し長いので、左第2段差から少し出っ張ります。
 そのため、左内側ベアリング(L2)と左第2段差の間には隙間ができます。

 また、「左第1段差~左第2段差」と「左内側ベアリング巾」が同じなので、
 左内側ベアリングも左第1段差から出っ張ります。
 このため、左外側ベアリング(L1)と左第一段差の間にも隙間ができます。

 つまり、L1もL2も段差との間にスペーサが出っ張った分だけ隙間ができ、
 この分だけ右に動かすことができるのです。

 ただし、L1の内輪はL2の内輪で、L2の内輪はスペーサで止められているので、
 右に動かすことができるのはL1・L2の外輪です。

 また、L1の外輪はL2の外輪とくっついているので、 L1の外輪を動かした分だけL2の外輪も動きます。

 L1を打ち込めば(L1を右に動かせば)、
 その力は「L1外輪→L2外輪→L2ベアリング列→L2内輪→スペーサ→R内輪」と伝わり、
 スペーサがL1・L2・Rの内輪を押す力が強くなります。

 このようにして、左外側ベアリングの位置でスペーサが内輪を押す力を調整しているのです。



(押しつけ過ぎに注意)

ここで注意しなければならないのは、スペーサが内輪を押していることです。

L1を打ち込みすぎると、L1・L2・Rの内輪と外輪のズレが許容範囲を超えて、ベアリングがスムーズに回転しません。
ベアリングがスムーズに回転しなければ、ベアリング列に許容値以上の力が加わり、ベアリング列破損の危険が生じます。

「スペーサとベアリング内輪の圧着力」と「ベアリングの内輪と外輪のズレ・回転性」をどのように調整するかが問題となります。

そして、最後は「どちらを優先するか」の選択になります。


※参考-測定値

・後輪スペーサ:外径/25.4㎜Φ、内径/20.8㎜Φ、長さ/97.5㎜
・後輪アクスルシャフト:外径/20㎜Φ
・後輪ハブ:左第2段差~右段差=96.5㎜
・スペーサ出っ張り量=隙間=1.0㎜程度

・前輪スペーサ:太い部分の外径/27㎜Φ、両端外径/24㎜Φ、内径/17.1㎜Φ、長さ/50.0㎜
・前輪アクスルシャフト:外径/16.9㎜
・前輪ハブ:段差~段差=49.0㎜
・スペーサ出っ張り量=1.0㎜程度。


d.圧入は通常通り


マニュアルが言う「隙間」はスペーサが左側ハブ段差より出っ張って生じる隙間です。

だから、「隙間をとれだけにするか」は考えなくてよいのです。

隙間はできた分だけでよいのです。


圧入は通常通りで「ベアリングがスペーサに当たって抵抗を感じるまで」。

しかし上で述べたように、圧入が甘いとスペーサが内輪に強く押しつけられず内輪の固定が甘くなります。

逆に圧入がキツイとスペーサが内輪を押しすぎて内輪と外輪にズレが生じベアリング回転が渋くなります。

これはクランクシャフトをクランクケースに引き込むときと同じです。


だから、ベアリングをある程度圧入したら、スペーサを確認。

スペーサにガタがあれば、ベアリングをもう少し圧入。

ベアリング内輪の回転が渋ければ、ベアリングを少し戻す。

「スペーサが左右ベアリングの内輪をしっかりと突っ張り」しかも「ベアリング内輪がスムーズに動く」ところがベスト位置。


なお、リヤ左側は内側ベアリングを圧入したあと、外側ベアリングを圧入します。

外側ベアリングは内側ベアリングを押します。

内側ベアリングをベスト位置にしても、外側ベアリングが内側ベアリングを押すので内側ベアリングは圧入しすぎとなります。

逆に外側ベアリングの圧入が甘ければ、それだけスペーサを押す力が弱くなり、スペーサがしっかりとつっぱり棒になりません。

だから、「内側ベアリングを適正位置に圧入してから外側ベアリングを圧入する」のではなく、
「内側ベアリングをある程度圧入して(スペーサにガタがある状態)から、外側ベアリングを圧入し、
外側ベアリングと内側ベアリングを一体化させた状態で圧入し、内側ベアリングを適正位置にする」方がよいでしょう。


※参考-ベアリングを外す前の状態(測定値)

後輪右側ベアリング/段差まで圧入:・ハブ外面~ベアリング=7.8㎜

後輪左内側ベアリング/スペーサを押すまで圧入:・ハブ外面~内側ベアリング=21.9㎜、・第一段差から見た目で 0.5㎜弱出ている。

後輪左外側ベアリング/内側ベアリングがスペーサを押すまで圧入:・ハブ外面~外側ベアリング=7.8㎜、・サークリップ溝下より見た目で1㎜弱下。

前輪左側ベアリング/段差まで圧入:・ハブ外面~ベアリング=6.3㎜

前輪右側ベアリング/スペーサを押すまで圧入:・ハブ外面~ベアリング=6.2㎜、・メーター突起上端~ベアリング=10㎜


    
4.ベアリンク圧入の実際


※数値はベアリング巾以外すべて測定値です。


a.後輪右側(デスク側)


・段差で止まるまで圧入。

覚えておく数字:段差深さ=21.6㎜、ベアリング厚=14㎜適正圧入目安=ハブ上面から7.6㎜

 ①新しいベアリングの初期打ち込み
 ・12時,3時,6時,9時のベアリング高さを均一にする。

 ②古いベアリングを上に重ねて一緒に圧入。
 ・ベアリングを外すときも入れるときも、ドライヤーで少し温めてやるとスムーズにできる。
 ・圧入シャフトが両側ナット留めの場合は供回りするので注意。
 ・供回りすれば、シャフトピッチが2㎜でも、ナット一回りで圧入2㎜にならない。
 ・圧入は軽く回していって抵抗を感じるまで。無理はしない。

 ★演習問題1
 ・新しいベアリングを初期打ち込みした。出ている部分は 7.6㎜。
 ・古いベアリングを上に重ねて圧入する場合、圧入ナットをあと何回転させればよいか?

 (答え)
 ・ベアリング厚=14㎜ → 初期打ち込み量=14-7.6=6.4㎜ → 残り圧入量=21.6-6.4=15.2㎜
 ・圧入ナットの回転数=15.2÷2=7.6回 → 7回転半したあと微調整。


 ③微調整
 ・古いベアリングを叩いて、出ている量を6.4㎜にする。
 新しいベアリング厚+古いベアリング厚-段差深さ=14+14-21.6=6.4

 ・段差で止まるので圧入し過ぎることはない。
 ・外輪を押しているので、内輪とのズレは生じない。
 ・上の「6.4㎜」はあまり気にしないでよい。

 ④古いベアリングを外す
 ・上から重ねて圧入した古いベアリングを外すためには、パイロットベアリングブーラーが必要です。
 ・足場を作ったり、ゲタを履かせたり。結構煩雑です。
 ・できるだけ大型のものを入手しましょう。
 ・もちろん、20㎜Φのベアリングが外せるものです。


④サークリップをはめる

 これで、ハブ上面~ベアリング外輪=7.8㎜です。

 サークリップを溝にはめると、サークリップが軽く回ります。


このサークリップは縮めてはめたり外したりするタイプですが、異常なまでに頑丈です。

“並のサークリッププライヤー”では はめ外しに必要な分だけ縮まりません。

外すときはサークリップブライヤーで一部を溝から外してマイナスドライバーでこじる、はめるときはサークリップブライヤーで一部をハブ穴に入れてマイナスドライバーで溝まで押しこむ。

もちろん、通常のサークリップのように外側・内側の区別があります。

面が丸まっている方が、エッジの角度が小さく外側になります。


b.後輪左(スプロケット側)内側ベアリング


・ある程度圧入したらそれで終わり。あとは、外側ベアリングと一緒に圧入。

・覚えておく数字:第1段差の深さ=22.3㎜、第2段差の深さ=12㎜、内側ベアリング厚=12㎜、外側ベアリング厚=14㎜、スペーサ出っ張り量=1.0㎜

 スペーサは第2段差より1.0㎜出っ張っているはずだが、測定困難。
 出っ張りがもう少し少ないように思える。

 ①内側ベアリングにグリスをなじませる。
 ・内側ベアリングは片側シールです。
 ・開放型や片側シールド・片側シールにはグリスが塗ってありません。
 ・グリスをたっぷりと塗って、内輪を回転させてグリスをなじませます。
 ・ベアリングのシール面が外側(左側)、開放面が内側(右側)です。

 ②内側ベアリングの初期打ち込み
 ・32Mソケットが外輪に合うので、32Mソケットを当てて初期打ち込み。
 ・12時,3時,6時,9時の出っ張り量(打ち込み量)は隙間が狭いのでノギスで測定できない。
   この四位置についてはハブ外面からベアリング外輪までの距離を測る。
 ・「ハブ外面~ベアリングが小」=「出っ張り量が大」=こちらを叩く。
 ・「ハブ外面~ベアリングが大」の位置を叩いてはいけません。

 ・初期打ち込みは頑張らなくてもよい。ハブ上面~ベアリング=15㎜程度でOK。


 ★演習問題2
 ・内側ベアリングを初期打ち込みした結果、ハブ上面~ベアリングまでが15㎜になった。
 ・内側ベアリングとスペーサとの間はどれだけか?

 (答え)
 ・第1段差の深さ=22.3㎜ →ベアリングの出っ張り量=22.3-15=7.3㎜ 
   → 初期打ち込み量=12-7.3=4.7㎜
 ・スペーサとベアリングの隙間=第2段差深さ-スペーサ出っ張り量-内側ベアリング打ち込み量
   =12-1-4.7=6.3㎜

 

★演習問題3
・内側ベアリングの限界圧入量を「ハブ外面~ベアリング」の距離で示せ。

 (答え)
・第1段差深さ+第2段差深さ-内側ベアリング厚-スペーサ出っ張り量=(22.3+12)-(12+1)=21.3㎜


内側ベアリングの初期打ち込みで、「ハブ上面~ベアリング」=20㎜以上打ち込まないこと。

「ハブ上面~ベアリング=21.3㎜」で内側ベアリングはスペーサと接してしまう。
そうなったら、微調整ができなくなる。


c.後輪左(スプロケット側)外側ベアリング


 ③外側ベアリングをハブ上面まで圧入
 ・もちろん初期打ち込み必要です。
 ・圧入器具のプレートがハブに当たるまで、数字を気にしないで圧入します。

 ★演習問題4
 ・演習問題2の状態(ハブ上面~内側ベアリング=15㎜)で、
   外側ベアリングと内側ベアリングはくっついているか?
   離れているならどれだけ離れているか?

 (答え)
 ・ハブ上面~内側ベアリング上面=15㎜
 ・ハブ上面~外側ベアリング下面=ベアリング巾=14㎜
 ・外側ベアリング下面~内側ベアリング上面=15-14=1㎜


 ④古いベアリングを重ねて圧入-古いベアリングの初期打ち込み
 ・初期打ち込みはどんな場合でも必要です。面倒くさがらずにやりましょう。
 ・写真の状態で、古いベアリングの出っ張り量は10㎜です。

 ★演習問題5
 ・外側ベアリングをハブ上面とツライチになるまで圧入したあと、
   古いベアリングを重ねて初期打ち込み。古いベアリングの出ている量が10㎜になった。
   古いベアリングをあとどれだけ圧入すれば内側ベアリングがスペーサとくっつくか?

 (答え)
 ・古いベアリングの圧入量=ベアリング巾-出っ張り量=14-10=4㎜
 ・外側ベアリングと内側ベアリングの隙間は1㎜だったから、二つのベアリングはくっついている。
 ・外側ベアリング上面~内側ベアリング下面=外側ベアリング巾+内側ベアリング巾=14+12=26㎜
 ・スペーサの出っ張り量=1㎜
 ・ハブ上面~第2段差下面=第1段差深さ+第2段差深さ=22.3+12=34.3㎜
 ・内側ベアリング下面~スペーサ
   =(ハブ上面~第2段差下面)-スペーサ出っ張り量
   -(外側ベアリング上面~内側ベアリング下面)-古いベアリング打ち込み量
   =34.3-1-26-4=3.3㎜
 ・ピッチ2㎜の圧入器具ならナット回転数=3.3÷2=1.65回転

 ⑤古いベアリングの圧入
 ・上の計算から圧入ナットを1.5回転回してスペーサの状態を見る。スペーサにガタツキあり。


 ⑥微調整
 ・スペーサのズレを防ぐため、アクスルシャフトを差し込んで、古いベアリングを叩く。
 ・ハンマーで直接叩いてもよいし、角ブレートを当てて叩いてもよい。
 ・フロントフォークのオイルシール打ち込みのように鉄パイプを使う必要はない。
 ・アクスルシャフトを抜けば、
   古いベアリングを外さないでもベアリング内輪はスペーサと一体になって回転します。
   スペーサがガタつかず、ベアリング内輪+スペーサがスムーズに回転するところに調整します。

 ★演習問題6
 ・内側ベアリングとスペーサがくっつくのは、
   古いベアリングの出ている量がどれだけになったときか?

 (答え)
 ・内側ベアリングとスペーサがくっつくのは、
  「古いベアリングの打ち込み量+外側ベアリング巾+内側ベアリング巾+スペーサ出っ張り量
    =ハブ上面~第2段差底」になったとき。
 ・古いベアリングの出っ張り量=Xとすると、上の関係式は
  (14-X)+14+12+1=22.3+12
 ・これから、X=6.7㎜

 ・古いベアリングの出っ張り量=6.7㎜を目安にしましょう。

 


 ⑦古いベアリングを外す

 ⑧ベアリングの動きが渋ければベアリングを少し抜く
 ・スペーサが突っ張り棒になって左右ベアリングの内輪を固定しています。
   内輪とスペーサは一緒になって回転します。
 ・内輪とスペーサの回転は結構固いです、内輪だけを動かしていると「圧入し過ぎ」と判断してしまいます。
 ・ハブ穴に両側から人指し指を入れて、タイヤを転がして確認しましょう。
   タイヤがスムーズに進んでいけばOKです。

 ・圧入し過ぎのときはベアリングを少し戻します。
 ・プーラーを引っかけるのは内側ベアリング下面です。
 ・戻すのはほんの少し30度未満。
 ・プーラーの爪を引っかけて拡げただけで、「パキッ」と音がしてベアリングが緩みます。

 ・適正位置にしたら、ハブ上面~ベアリング=7.8㎜になっていました。

 ⑨サークリップをはめる。
 ・方向があります。角がきつい方が外側です。
 ・面取りしてある方が角がきつくなっています。

 ⑩オイルシールをはめる
 ・押し込めばOK



d.前輪左側(デスク側)ベアリング


デスク側は止まるところまで圧入すればいいのですから、あまり気にする必要はありません。

まず、やることはベアリングの開放側からグリスを充填することです。

忘れるといけないので、最初に両方のベアリングについて行っておきましょう。

 (0.3㎜の余裕)

 ・ハブ段差の深さ=16.3㎜
 ・ベアリング巾(高さ)=10.0㎜
 ・オイルシール巾(高さ)は6.0㎜

 この段差にベアリングとオイルシールを入れて、0.3㎜残ります。
 ベアリングを底まで圧入して、オイルシールをハブ外面とツライチに入れるには、
 この0.3㎜の余裕が必要なのでしょう。

 ベアリングを段差底まで圧入すると、ハブ外面~ベアリング上面=16.3-10.0=6.3㎜

 これが目安になります。


(26Mソケットを当てて打ち込む)

 「ベアリングを初期打ち込み→古いベアリングを重ねて圧入→抵抗を感じて止まるまで。」

 26Mソケットで初期打ち込みをするついでに、最後まで打ち込んでみました。

 小さいベアリングだから簡単に打ち込めました。

 古いベアリングを重ねることも不要でした。


(ちゃんと入ったかな?)

 これで、ハブ上面~ベアリング上面まで 6.3㎜です。

 ただし、打ち込みは力が均一にかからないので、ベアリングが少し傾いて入っているかもしれません。

 これが気になるのなら、26Mソケットで「ダメ押し打ち込み」をやっておきましょう。

 凹部にベアリングを圧入する場合、外輪にどれだけ力をかけても問題はありません。

 「ダメ押し打ち込み「をやってもベアリングの動きが渋くなることはありません。


 『それでも…、やっぱり心配だなぁ…。』

 そんな心配性の方はやはり圧入具での圧入をお勧めします。

 古いベアリングを重ねて圧入しましょう。

 ただし…。


(圧入する場合の問題点)

 デスク側のベアリングを圧入するのですから、デスク側が「押し側」、反対側(メーターギヤ側)が「止め側」。

 押し側も止め側も角ワッシャを当てます。

 しかし、メーターギヤ側にはメーターギヤと噛み合う突起があります。

 この突起に角ワッシャを当てると不安定になります。

 この突起部分に何かを被せなければなりません。


 ハブの外径は43㎜Φだから内径44㎜Φ以上。
 高さは20㎜くらい必要です。

 フロントフォークのオイルシール打ち込み器具が使えるようです。

 この問題があるから、圧入ではなく打ち込みの方が良いでしょう。



e.前輪右側(メーターギヤ側)ベアリング


こちら側は隙間ができる側です。

完全を求めてはいけませんよ。


(突起上面~段差底=20.8㎜、スペーサは1㎜出っ張る)

 ・段差の深さ=17㎜
 ・突起の高さ=3.8㎜
 ・突起~段差底=20.8㎜

 ①スペーサを入れる。

 ・ハブ段差~ハブ段差=49㎜
 ・スペーサ長=50㎜
 ・スペーサの出っ張り量=1.0㎜

 指でスペーサを触ってみると、しっかりと1㎜くらい出ているのが分かります。


(突起部分を通過してハブ上面まで)

 ②新しいベアリングの初期打ち込み

 メーターギヤの突起が引っかかってベアリングが傾き、初期打ち込みができません。

 アクスルシャフトをデスク側から挿入し、
 古いベアリングを重ねて角ワッシャを当てて打ち込み、
 突起部分を通過させて、そのまま初期打ち込みをします。


(初期打ち込みは突起上面まで)

 二つの突起の上面とベアリングの上面が重なれば、初期打ち込みは均等になっています。

 重なっていなければ、重なるようにベアリング外輪を叩いて調整します。

 写真は重ねた古いベアリングを外した状態です。


(シャフト段差がベアリング内輪を押さないようにする)

 メーターギヤ側のベアリングを初期打ち込みする場合、
 アクスルシャフトをデスク側から挿入して行いますが、シャフトをそのまま突っ込んではいけません。

 そのままシャフトを入れると、シャフト段差がベアリング内輪に当たります。

 シャフト段差がベアリング内輪に当たったまま、向こうから(メーターギヤ側から)ベアリングを叩くと
 ベアリング内輪に力が加わり外輪とのズレが生じる危険があります。

 角ワッシャを当ててシャフト段差がベアリング内輪に当たらないようにしなければなりません。


(圧入量は圧入できるところまで?)

 ②圧入

 初期打ち込みのあと、新しいベアリングに26Mソケットを当てて打ち込んでもよいでしょうが、
 やはり、ここは圧入具でゆっくりと身長に圧入しましょう。

 古いベアリングを重ねて圧入します。

 ドライヤーでハブ段差を温めることをお忘れなく。


 ★ここで問題です。

 どこまで圧入すればよいのでしょうか?
 もちろん微調整前の圧入です。


 答えは 「圧入できるところまで


 えっ? えっ?


「圧入できるところまで」とは「古いベアリングの上に載せた角ワッシャがメーター突起に当たるまで」

これ以上は、圧入できませんからね。

角ワッシャが突起に当たったら、古いベアリングは突起上面とツライチ。

つまり、「突起上端から段差底」までに「古いベアリング,新しいベアリング,スペーサの出っ張っている部分」が収まっていることになります。

古いベアリング高さ+新しいベアリング高さ+スペーサ出っ張り量=10.0+10.0+1.0=21.0㎜。

突起上面~段差底=20.8㎜、

だから、これでスペーサを0.2㎜だけ押した状態になっているのです。

しかし、実際にはこの状態でもスペーサは充分に内輪を突っ張っていません。

この状態から微調整に入るのが一番よいでしょう。


圧入は「重ねた古いベアリングが突起上面とツライチになるまで」と覚えておきましょう。

迷うことなく、角ワッシャが突起に当たるまで圧入しましょう。


(微調整でデスク側のベアリングが押し戻されないための対策)

 ③微調整

 微調整はスペーサがずれないようにアクスルシャフトを挿入して行います。

 デスク側からアクスルシャフトを入れますが、
 初期打ち込みのときと違って角ワッシャとベアリングの間に古いベアリングを入れます。

 この状態でデスク側を下にして、メーターギヤ側のベアリングを叩いて入れるのです。

 これは、メーターギヤ側のベアリングか叩かれるとスペーサを押し、
 スペーサがデスク側のベアリングを押してしまうことを防ぐためのものです。

 デスク側のベアリングは段差底に達していなければデスクのセンターがでませんからね。

 実際にそのようなことは起こらないでしょうが、念のための対策です。


(これは入れすぎ)

 調整の基準は
 ・スペーサにガタがあればベアリングをもう少し入れる。
 ・ベアリングの動きが渋くなったら入れすぎだから少し戻す。
 ・ベアリング内輪とスペーサが一体となって、しかもスムーズに回転するところで止める。

 しかし、
 ベアリング内輪とスペーサが一体となって動いても、
 「左右のベアリング内輪が別々に動くようではスペーサの突っ張りが甘い」といえる。

 問題は、どの程度の一体性で良しとするか。

 左右ベアリングが完全に一体となって動く状態では固すぎます。

 写真は、古いベアリング上面が突起テーパー部の下に来ています。

 突起テーパー部は0.5㎜あります。
 
 突起上面とツライチで、すでにスペーサは0.2㎜押されています。

 だから、この状態ではスペーサは0.7㎜押されていることになります。

 ここまでくると、ベアリングの動きは固くなります。


(ある程度妥協する)

 完全を求めてはいけません。

 ある程度妥協することが必要です。

 スペーサの突っ張りが少しくらい緩くても事故は起こりません。

 スペーサの突っ張りが強ければ、走っている内に適切な位置に戻るかもしれません。

 0.05㎜未満の調整です。適当に切り上げましょう。


 『これで、ハブ上面からベアリングまで何㎜?』

 あっ!測定することを忘れました。

 数字は挙げられませんが適正位置です。



( 少し甘くてもアクスルナットで適正位置になる)

デスク側のベアリング内輪はカラーで押しつけられます。

メーター側のベアリングはどうなっているのでしょう?

 メーター突起を除いたツバ深さは6.0㎜。  メータかみ合いから出っ張っているカラーは 6.5㎜。
 メーター側ベアリング内輪もこのカラーで押しつけられます。


つまり、両側のベアリングはカラーとメーターカラーに挟まれて、アクスルナットで500~800㎏・㎝で締めつけられます。

だから、ベアリングの圧入が甘くてもアクスルを締めるときに適正位置になります。



以上、要するに次のようにすればよい。( 以下を印刷して実際の作業に当たってください。)

   


★ SJ13 ホイールベアリング打ち込み要領まとめ ★


(準備)

※古いベアリングのサイズを確認 : 後輪外側左右/14㎜厚、前輪左右/10㎜厚

※新しいベアンリングとオイルシールの確認

・後輪右 ( デスク側 ) / 型番:6204 (外径/47㎜,内径/20㎜,巾/14㎜)、両側ゴムシール
・部品番号:08133-62047
・純正:KOYO-6204-2RS 代替:NTN-6204-LLU / NSK-6204-DDU / NACHI-6204-2NSE 

・後輪左 ( スプロケット側 ) 内側 / 型番:6004 (外径/42㎜,内径/20㎜,巾/12㎜、片側ゴムシール
・部品番号:08123-60047
・純正:KOYO-6004-RS 代替:NTN-6004-LU 

・後輪左外側 / 後輪デスク側と同じ

・前輪左右 / 型番:6003 (外径/35㎜,内径/17㎜,巾/10㎜)、片側ゴムシール
・部品番号:08123-60037
・純正:NTN-6003-LU 代替:NSK-6003-DU 

・後輪ハブオイルシール×2 : 部品番号 / 09283-26019、 刻印 / KOYO・MHRA-26-47S、 サイズ / 26×47×5

・前輪ハブオイルシール×1 : 部品番号 / 09284-23001、 サイズ / 23×35×6

※片側シールドベアリングの開放面にグリスを塗り込む。


(後輪)

a.デスク側

①新しいベアリングの初期打ち込み。

②古いベアリングを重ねて圧入、止まるまで。(段差底で止まる)

③古いベアリングを叩いて出っ張り量を6.4㎜にする。
※数値 : ハブ上面~ハブ段差=21.6㎜、ベアリング厚=14㎜、重ねたベアリングの出っ張り量=14×2-21.6=6.4㎜。

④古いベアリングを外す。

⑤ハブ上面~圧入したベアリング=7.6㎜を確認

⑥サークリップをはめる。
※スプロケット側ベアリングをはめた後でもよい。
※チェック : クリップは軽く回るか?

⑦スペーサを入れる

b.スプロケット側

①内側ベアリングに32Mソケットを当てて初期打ち込み、ハブ上面~ベアリング上端=15㎜くらいでOK。あとは外側ベアリングを重ねて一緒に圧入。
※限界値:ハブ上面~ベアリング=21.3㎜ ( 内側ベアリングとスペーサーがくっつく)

②外側ベアリングの初期打ち込み

③外側ベアリングを圧入プレートがハブ上端に当たるまで圧入
※①の状態 ( ハブ上面~内側ベアリング=15㎜ ) なら、外側ベアリングと内側ベアリングの隙間は1㎜でくっついていない

④古いベアリングを重ねる。
⑤古いベアリングの初期打ち込み。

⑥古いベアリングと外側ベアリングと内側ベアリングを一緒に圧入。
※基準値 : ( 6.7㎜-初期打ち込みでの古いベアリングの出っ張り量 ) ÷ 2 回転。
※重ねたベアリングの出っ張り量=6.7㎜で外側ベアリング+内側ベアリング+スペーサがくっつく。
※圧入具のピッチ=2㎜/回

⑦アクスルシャフトを差し込んで、重ねたベアリングを叩いて微調整。
※デスク側にプレート不要。プレートを付けるとデスク側のベアリングを押さえられない。
※基準 : スペーサがガタつかず、スペーサーと両側のベアリング内輪が一体となって回転する程度。ややきつめでよい。

⑧古いベアリングを外す。
※基準値 : ハブ上端~外側ベアリング上端=7.3㎜+α ( 7.3㎜でスペーサーとくっつく。+αが押し込み量。だいたい7.8㎜くらいになる。)
⑨回転が固いときは外側ベアリングをプーラーで少し戻す。1/4回転で0.5㎜戻るから、1/4回転では戻し過ぎ。1/8回転=45度以内を目安にする。

⑩サークリップをはめる。


(前輪)

d.デスク側

①26Mソケットを当てて、そのまま打ち込む。止まるところまで。(段差底で止まる)
※小さいベアリングだから、圧入の必要はない。
※段差でベアリングの外輪が止まるから打ち込み過ぎはないし、ソケットは外輪に当たっているので内輪とのズレもない。
※基準値:ハブ上面~ベアリング=6.3㎜

e.メーターギヤ側

①デスク側から、アクスルシャフトにプレートを挟んで通し、新しいベアリンク,その上に古いベアリングをセット。
②重ねた古いベアリングを叩いて新しいベアリングの初期打ち込み。新しいベアリングが突起とツライチになるまで。
③アクスルシャフトを抜く。

④デスク側に古いベアリングを叩いていれる。
⑤圧入具を差し込んで、メーター側の古いベアリングを重ねたまま圧入。止まるところまで。(プレートが突起に当たって止まる)
※これでスペーサを0.2㎜押した状態になっている。

⑥圧入具を外しアクスルを差し込んで、メーター側の古いベアリングを叩いて微調整。
※突起テーパー部が0.5㎜あり、すでに0.2㎜押し込まれているので、古いベアリングの上端がテーパー部の中央が限界。
※少し叩けばよい。

⑦デスク側の古いベアリングとメーター側の古いベアリングを外す。

※微調整の基準:「左右ベアリングの内輪とスペーサが一体となって回り」かつ「ハブ両側から指を入れて、ホイール(タイヤ)を転がしたときにスムーズに回転する」こと。
※微調整に際しては上で述べた「スペーサの役割・働き」を充分理解しておくこと。




5.その他


a.圧入・取り外し器具


クランクケースのベアリング圧入のときに作ったものです。→→→ こちら

 フロントはネジ下110㎜のM16ボルトが使えますが、リヤは200㎜以上必要です。

 ステンレス・寸切りボルト・285㎜ (477円) を使いましたが、スチールなら90円くらいです。

 別にスチールでも構いません。

 ソケットは、
 ・26M:前輪ベアリング・6003番打ち込み用(外輪とピッタリでハブ穴に入る)
 ・22M:後輪外側ベアリング・6204番取り外し用(内輪とピッタリ)
 ・16M:前輪ベアリング・6003番取り外し用(内輪とピッタリ)※写真には写っていません。

 パイロットベアリングプーラーについては上で説明しました。

 



b.いつまでたっても…


 RMX④ (右)のリヤホイールのガタは完全になくなりました。

 しかし、控え選手であることに変わりはありません。

 『いつまで、車庫の端っこで待っていればいいんだ!』

 まあまあ、隣の正選手RMX②より調子のよいことは知っていますから…。

 「玉子焼きを最初に食べるか、最後に食べるか」の違いですよ。
 ※これの分かる人はソロソロ 北の湖さん。

 それはそうと、チェーン張りやプレーキパッド交換でアクスルシャフトを抜いたとき
 シャフトにグリスを塗ってはめていますか?

 今回気づいたことなのですが、
 ホイール(ハブ)が回っても、回転するのはベアリング外輪で、内輪ではありません。
 もちろん、ベアリング内輪と一体になっているスペーサも回転しません。

 だから、アクスルシャフトにグリスを塗る必要はないのです。

 そもそも、アクスルシャフトはベアリング内輪,スペーサ,カラー,オイルシールのどれにもくっついていません。
 シャフトにグリスを塗っても無意味なのです。
 挿入しやすくするため、サビ止めのためなら別ですが。



つづく




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