RMX250-SJ13 整備資料



 2016.04.29  TM30分離給油ニップルの修復 その②-外付けチェックバルブの取り付け





TM30から取り外したチェックボールの代わりになる外付けチェックバルブを取り付けました。
スズキ純正のスクーター用のチェックバルブが適合します。
作動圧も測定しましたが同じくらいです。
実際に取り付ける場合の注意点も書いてあります。


カワサキ 16087-1001 / 1069円 の寸法→使えない
スズキ 16910-41D00 / 1058円 と ヤマハ 5GD-13183-00 / 1123円 の寸法→使える
チェックバルブの作動圧/測定器具と測定値
外付けチェックバルブの取り付けの注意点
オイル吐出量が少ない?
余談1/チェックボールがなかったキャブレター
余談2/キャブレターの設定が変わった



1.入手したチェックバルブ


a.どれも1000円程度です


・ヤマハ 5GD-13183-00  1123円
  ※ヤマハ2stスクーター用(VINO-YJ50Rなど)「チェックバルブ」

・スズキ 16910-41D00  1058円
  ※ストリートマジック用「オイルホース№2チェックバルブ」

・カワサキ 16087-1001  1069円
  ※KDX用「CHECK VALVE」


     
b.カワサキのチェックバルブ/16087-1001 は適さず


・真鍮製でしっかりとした造りで耐久性がありそうです。
・右側から左側へ流れます。
・取り付け口が左右とも太いので、
  SJの内径2.0㎜Φパイプにそのまま取り付けられません。
・差込口変換アダプター(4→3)が必要です。→→→こちら(5→4) ・ こちら(4→2.5)
・なおこのチェックバルブは、出口(左側)が、外径/4.0㎜Φ、 長さ/8.8㎜ 。
・TM30のニップル筒は、内径/4.1㎜Φ、深さ/14.0㎜。このまま差し込めます。
・ただし、0.1㎜の隙間を埋めることとパイプ側の違径ニップルは必要になります。
・もっとも、ニップルがキャブレターから30㎜以上も突き出してしまいます。


     
c.ヤマハとスズキのチェックバルブが使える


二つともまったく同じものです。
スズキの方が54円安くなっています。

樹脂製でみるからに耐久性がなさそうです。
ただし、軽くて小さいのでオイルパイプの途中につけても何の問題も起こらないでしょう。

・差込口 : 凸/3.8㎜Φ~凹/3.3㎜、内径/1.3㎜Φ
・キャブレターニップル : 凸/3.0㎜Φ~凹/2.5㎜Φ、内径/1.3㎜Φ
・オイルパイプ内径 : 2.0㎜
・なんとか差し込むことはできるでしょう。
・ガソリンコックのシールでもそうでしたが、
  スズキとヤマハは共通部品が多そうです。

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2.チェックバルブ作動圧測定


a.測定器具


これらの外付けチェックバルブが寸法上「使える」としても、作動圧に違いはないのでしょうか?

TM30のチェックバルブと外付けチェックバルブの作動圧を測ってみなければなりません。

・「そう言えばどこかにあったなぁ…」
  ガレージの棚の上から「フロントフォーク空気圧調整用ポンプ」を見つけました。
  これを使ってチェクバルブの作動圧を測ってみます。

・a : フロントフォークの空気圧調整用ポンプ。
・b : ガソリンチューブ、3.0㎜Φ×6.0㎜Φ×50㎝ (10円/10㎝)
・c : フッ素チューブ、2.0㎜Φ×4.0㎜Φ×50㎝(67円/10㎝)
・d : ニップル修復に使った 2.0㎜Φ×3.0㎜Φの真鍮パイプ
※フッ素チューブを使ったのはホームセンターに内径2.0㎜Φのガソリンチューブがなかったから。
  モノタロウでも 内径2.0㎜Φのチューブはフッ素です。(1mで619円)→→→こちら


・ポンプのホースを抜いてガソリンチューブ(b)を付け、
  フッ素チューブを真鍮パイプでつなぐ。
・ガソリンチューブの内径と真鍮パイプの外径が同じだが、
  深く差し込めば空気漏れはなし。
目盛りは一昔前の ㎏/㎝2
・1㎏/㎝2=98.0065kpa(キロパスカル)≒98kpa
・なぜか「0~0.1」の間は4目盛り。
  0.1を基準にして1目盛り=0.02 とする。



b.測定結果


イ.TM30のチェックボール/3.92~7.84kpa or 4.9~9.8kpa


ゆっくり空気を送っていくと、入りが少し固くなって針が止まったあとに「スゥ~ッ」と空気が抜けます。

この針が少し止まった時の圧力を「作動開始圧力」、空気が「スゥ~ッ」と抜ける時の圧力を「最大圧力」としました。

「少し固くなった・針が止まった・バルブが開き始めるぞ」、これは感覚に左右されます。
また、空気を送る力の入れ加減で値が変わってきます。
だから、値は「おおよその目安」と考えなければなりません。

・RMX②に付けている「白煙を吐かない」N型用キャブレターです。
・だからチェックボール正常と考えます。
作動開始圧~最大圧=0.04~0.08㎏/㎝2=3.92~7.84kpa
・他のサイトの測定結果は 5.0~10kpa→→→こちら
・キャブレターを取り付けて計ったら、
  作動開始圧~最大圧=0.05~0.10弱㎏/㎝2=4.9~9.8kpa
・キャブレターを外しても取り付けても作動圧は変わらないと思いますが…。
・まあ、この違いは「測定誤差の範囲内」としてよいでしょう。
・左に上げた他サイトの5.0~10kpaは妥当な数字でしょう。



ロ.外付けチェックバルブ/どれも5.88~9.8kpa


・カワサキのチェックバルブ
  作動開始圧~最大圧=0.06~0.10㎏/㎝25.88~9.8kpa

・ヤマハのチェックバルブ
  作動開始圧~最大圧=0.06~0.10㎏/㎝25.88~9.8kpa

・スズキのチェックバルブ
  作動開始圧~最大圧=0.07~0.10弱㎏/㎝26.86~9.8kpa
  ※ヤマハのチェックバルブと同じものなのに、作動開始が少し固いようです。
    製品のバラツキかもしれません。

・測定誤差を考えると、どれも「0.06~0.10㎏/㎝25.88~9.8kpa」としてよいでしょう。

・キャブレターのチェックボールが「0.04~0.08㎏/㎝2」と低くなっていますが、
  「チェックバネが弱っているかも知れない」こと、
  「外付けチェックバルブが新品で一度もオイルが通っていない」こと、
  「流れるのがオイルと空気とでは作動圧が異なるかも知れない」ことから、
  「TM30の外付けチェックバルブとして使っても問題なし」と判定しました。



ハ.シリンダー側のチェックバルブ/0.05~0.10㎏/㎝2=4.9~9.8kpa


・ついでに、シリンダー側のチェックバルブを測定しました。
  作動開始圧~最大圧=0.05~0.10㎏/㎝2=4.9~9.8kpa
・これも外付けチェックバルブと同じ値です。

・だから、シリンダー側のチェックバルブ(16910-09C00)を
  キャブレターに直接取り付けるという方法も考えられます。
  もちろん、「どう取り付けるか」を解決しなければなりません。

・これはRS型シリンダーのチェックバルブ。
  ストックしているスタッドボルトリコイル済みのN型シリンダーは「作動圧ゼロ」
  チェックバルブが壊れています。

・エンジンオーバーホールのときは、チェックバルブのテストも必要です。

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4.取り付け


採用したのは、あちらこちらのサイトと同じように、スズキ・ヤマハの原付スクーター用チェックバルブ。

理由は、

・ そのまま取り付けられる。
・ 差込口の内径がSJニップルと同じ。
・ 50㏄用のチェックバルブだから作動しにくいことはないだろう。
・ 耐久性が心配だが消耗品だと思えばよい。


a.取り付けの実際



イ.オイルパイプが差し込みにくい


作業は、オイルパイプを一カ所切って、チェックバルブの両端を差し込むだけ。しかし、

・オイルパイプ : 内径/2.0㎜Φ、外径/4.5㎜Φ 。
・キャブレターのニップル(差込口) : 3.0㎜Φ/凸~2.5㎜Φ/凹
・チェックバルブの差込口 : 3.8㎜Φ/凸~3.3㎜Φ/凹

・つまり、内径2.0㎜Φのチューブを、いつも3.0㎜Φのニップルにはめるのに、
  これを 3.8㎜Φの差込口にはめるのです。
  オイルパイプは1.9倍に拡げられることになります。

・オイルパイプは、キャブレターニップルに抜き差ししている側は少し拡がっていますが、
  切断した側は正真正銘の2.0㎜Φです。
  これにはチョット手こずります。

・まず、パイプをドライヤーで温めて、3.0㎜Φ程度のもの(キタコニップルを使いました)を差し込む。
  しばらくたってからそれを抜き、パイプをドライヤーで温めてチェックバルブを差し込む。
  なんとか差し込めました。
  一旦差し込むと案外外れやすくなります。



ロ.オイルパイプの亀裂に注意

・ただし、こういう小さい傷や亀裂があると、先々大きくなってパイプが外れる危険があります。

・キャブレター側のオイルパイプは何度も抜き差しするので拡がっています。(2.5㎜Φ)
  この拡がった側に外付けチェックバルブを差し込むのが楽です。
  しかし、何度も抜き差しを繰り返してきた部分なので、このような傷や亀裂が付いています。
  これを 3.0㎜Φのキャブレターニップルにはめる分には亀裂が大きくならなくても、
  3.8㎜Φ の チェックバルブニップルにはめると亀裂が進んでしまう危険があります。

  そのため、
・キャブレターニップル側のパイプを差し込むときは、傷や亀裂部分を切り取って差し込む。
・傷や亀裂が発生しても、それを大きくしないように、差込口部分をタイラップで縛る。


・純正のオイルパイプクリップをはめることはできます。(写真のチェックバルブ左側)。、
  しかし、クリップが少し長く、差込口の凸部まで覆ってしまうので、
  抜け防止には効果的ではありません。

・チェクバルブの右側のようにタイラップで縛るか、短いクリップを使うかした方がよいでしょう。



ハ.チェックバルブの取り付け位置と取り付け方法

・チェックバルブを取り付ける場所は「二つのオイルパイプを留めるクランプの部分」にしました。
  「このクランプでチェックバルブも固定できる」と考えたからです。

・しかし、クランプが短くて、チェックバルブと太いオイルパイプの両方を留めることができません。
  クランプを長いものに換えるか、
  クランプの方向を「上から抱える」のではなく「下からすくう」ように変えておくことが必要です。
  左の写真ではクランプを長いものに換え、「下からすくう」ように取り付けてあります。
  しかし、「下からすくう」とクランプが長すぎて却って上手く留められません。
  「長いクランプに換える」か「下からすくえるように取り付ける」かはどちらか一方だけですね。

・ チェックバルブをクランプで留めないのなら、
  チェックバルブをクランプの後(キャブレター寄り)にして、
  クランプで二つのオイルパイプを留めるようにするとよいでしょう。


    
b.オイル吐出量が少ない?


作動圧が同じなのだから、オイル吐出量の方も問題ない。

試しに、混合油でエンジンをかけ、チェックバルブから出てくるオイルの量を測ってみました。

マニュアルには「オイルポンプの吐出量は2000rpmで2分間、3.2~4.0㏄」(P3-20)

しかし、チェクバルブにつないだオイルパイプから出てくるオイルは、10秒で1滴くらい。
出てくるオイルを2分間貯めましたが、容器の壁に貼りついて底に溜まっていない。

もっとも、この「2000rpm・2分間」というのは「オイルレバー全開の場合」のこと(P17-17)
そして、この中にはシリンダーに送られる分も含まれている。

しかし、それでも少なすぎる!


『大丈夫!オイルはキャブレターの負圧によってもっと吸い出されますから。』

吸い出そうにも、オイルポンプが送った分だけしか吸い出せないけど…。

大丈夫かなぁ…。


『私は作動圧を信じます。』

と言っても、この「外付けチェックバルブのキャブレター」は控え選手のRMX③に付けて、
ガンガン走らせる正選手のRMX②には「チェックボール正常のキャブレター」を付けますが…。

すべて自己責任です。

心配な方は混合油で走りましょう。


5.余談
   ★★35   
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a.その①  チェックボールが入っていなかったキャブレター


・これはRMX②にRS型エンジンを載せていたときに使っていたRS型用の29E02キャブレターです。
・ニップルが折れたのでボディだけN型用(29E00)を使っていました。

・このキャブレターは不調でした。
  何日が動かしていないと、始動後しばらく白煙モウモウ。
  エンジンが充分温まらないとアイドリングが安定しない。
  RMX③やRMX④は何カ月乗らなくても白煙は出ないし、アイドリングはすぐに安定します。

・『多分、チェックボールの不調だぞ…』
  チェックボールの作動圧を測ってみると、 やはり0.01~0.02㎏/㎝2  
  『これでは、乗らない間にオイルがキャブレターの中ににじみ出し、白煙モウモウだなあ…』

・チェックボールやバネの状態はどうなっているのかとニップル台を外してみると…。
  チェックボールとバネが入っていない!




・このキャブレターボディは、RMX①に付いていたN型用キャブレター。
・RMX①はバリバリレース仕様だったので、このニップルは塞がれていました。
・もちろん混合給油なので、分離給油このニップルは使いません。
  だからチェックボール機構を外す必要はありません。
  ニップル付近にも傷はまったくありませんでした。
・これは私が取り外したときのもの。
  どれだけ慎重に取り外してもこのくらいの傷がつきます。
  しかし、まったく傷がついていませんでした。
  ニップル台を外す特別な方法があるのでしょうか?
・そもそも、チェックボール機構をなぜ取り外したのでしょう?
・N型用キャブレターにはチェックボールが入っていないのでしょうか?
  いやいや、RMX②で使っているN型用にはしっかりと作動圧がかかります。
・もしかして、N型用の29E00と29E01 の内、
  「初期型の29E00の方はチェックボールなし」だったのでしょうか?


    
b.その②-これだけ変わるキャブレター設定


この外付けチェックバルブを取り付けたキャブレターのボディに29E00の中身を戻して完全な29E00にしました。

そして、それをRMX③/エンジン③に取り付け。

設定は、RMX②と同じ、MJ/195,PJ/27.5,JN/最上段,AS/1.75戻し。

RMX②とRMX③は同じN型エンジン、同じ純正エキパイ、同じリメッサのサイレンサー。

RMX③のエンジン始動。

ところが、アクセルを開けても回転がついてこない。
それでもアクセルをあおっていると、気が狂ったように回転が上がり続け、固まってしまってイグニッションを切ってもエンジンが止まらない。
なぜかアクセルをあおるとエンジンが止まる。

これはNSRにもあったキャブレター詰まりの症状。

しかし、29E00の中身を戻すときにキャブレターの中と部品はきれいにしてある。
詰まっている部分など考えられない。

また、控え選手で走らせていないのでエンジン③が不調になることはない。


一晩考えて、「まず標準設定に戻す」ことから。

MJ/195,PJ/35,JN/上から三段目、AS/1.5戻し。

エンジン始動。
あっけなく、エンジンの機嫌が治りました。


RMX②の「MJ/195,PJ/27.5,JN/最上段,AS/1.75戻し」はRS型エンジン②で煮詰めたもの。
しかし、エンジン②は排気バルブが壊れていた。
また、そのエンジンに付けていたRS用の29E02キャブレターは、このキャブレターのボディを付けていたのでチェックボールの作動不調。

いわば、その設定は「エンジンもキャブレターも正常でない場合」のもの。

だから、その設定が「エンジン正常、キャブレター正常」のRMX③に合わないのは納得できる。

納得できないのは、RMX②が「オーバーホール済みの6500円・N型エンジン③のテスト」でも「正常なN型エンジンを積んだ今でも」、その設定で元気に走っていること。
もちろんそのキャブレターはチェックボール正常作動のN型用。

不思議に思い、本日RMX②で165号を走りましたが設定変更の必要はまったくありませんでした。

案外、キャブレター自体の問題かもしれません。




久しぶりに黄色いSJが二台並びました。

手前が今回「外付けチェックバルブ」を付けたRMX③、第一控え選手です。
もう一度、オフを走らせてみたいものです。

向こう側がオンロード用・フロント17㏌の正選手RMX②
ホームグラウンドは165号線と42号線の尾鷲・熊野峠。
結構リキを入れて走っていますので、対向車の挨拶に応える余裕がありません。

一番調子のよい第二控え選手のRMX④は車庫から出さない“箱入り娘”。


写真の二台、エンジン,キャブレター,エキパイ,サイレンサー、そして、色まで同じなのにキャブレター設定が大きく違います。

また一つ宿題が増えました。


休日にすれ違うバイクはピッカピカ。

高そうなバイクにグラビアから抜け出たようなウェア、裕福そうな日本人。

手のかかる2サイクル。

体力・記憶力の低下と油汚れの爪。

チェックバルブは要チェック。

わずらわしければ混合で。

すべては、2サイクルをコースから公道に持ち込んだから。

どうせ手がかかるのなら、いっそのことレーサーで公道を走ったら?

車庫の奥にPJ12 かRJ16 がホコリをかぶっていませんか?

再生して走らせますよ!


つづく




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