RMX-SJ13 整備資料
2017.03.13 エンジン⑤-3 完成
エンジン⑤を予備エンジンとして完成させました。
今回はクラッチアウターの爪段差を修復したので、その方法や結果を書きます。
「爪段差を削って爪の間隔が拡がったのに、プレートが入りにくくなる」という不思議な現象も解明します。
・予備の完全エンジン⑤-2 完成
・排気バルブの状態/バルブスペーサとスプリングをを新品に
・取り付けるエンジン⑥のクラッチアウター/プライマリードリブンギヤの爪段差修正
-エンジン⑤のクラッチアウター段差の修正-
★これだけある段差をすべて削って0.2㎜拡がるだけで問題はない
★爪の面角度を同じにして削る方法
★チョット削り過ぎたが測定値は「使用可」
★段差を削ったらプレートが入りにくくなった理由
・久しぶりに予備車/RMX③とRMX④のエンジンをかける
1.予備の完全エンジンが完成しました。
6千5百円のエンジン ( エンジン⑤-2 ) に 2万8千円のエンジン ( エンジン⑥ ) から必要部品を移植して完全エンジンが出来上がりました。
2万8千円エンジン/エンジン⑥から移植したのは ・クラッチハウジング一式 ( バネ,ボルト,ベアリング,スリーブ,ワッシャ含む ) ・ 排気バルブ ( ピン,シャフト,左側・右側部品はストックの程度の良いものに。 スペーサとバネは新品に ) ・ シリンダー,ピストン,ピストンピン,ピストンリング ( 当然、ピンクリップは新品 ) ・ シリンダーガスケット 6千5百円エンジン/エンジン②-2でそのまま使ったのは ・腰下一式 ・クラッチプレート、レリーズ、スラストベアリング ・シリンダーヘッド ・ヘッドカスケット ( エンジンを組むときに新品にしている ) ・なお、クラッチプレートは組んでありません。 クラッチプレートを圧着したままにしておくと、変質・劣化します。 ストックエンジンはオイルを抜いてクラッチプレートを取り外しておくようにしています。 ・オイルポンプも別保管です。 |
これが 1015円/個の排気バルブスペーサです。 「 在庫なし 」 になる前にストックしておくべきでしょう。 |
※排気バルブスペーサの役割については→→→こちら
バネはへたっていませんでしたが、念のためにストックしてあった新品を使いました。 右側の二本が新品バネです。 排気バルブシャフト、ピン、左側部品と右側部品はサビガ多かったので、 程度のよい中古ストック部品を使いました。 なお、ミドルバルブのボルトに中強度のネジロック、 さらに、バルブガイド側 ( 上側 ) をヤスリで少し削っておきました。 これは、この部分でバルブボートが削られているからです。 ミドルバルブのボルトがバルブポートに押しつけられれば、ミドルバルブの動きが阻害されます。 バルブが自由に動かなければ、バルブに余計な力がかかって各部を磨耗・損傷させることになります。 もちろん、効果があるかどうか分かりません。 ※排気バルブの動きについては→→→こちら |
●●
3.使用するエンジン⑥のプライマリードリブンギヤの段差修正
使用するクラッチハウジングはエンジン⑥のもの。
元々の段付き状態は、 「見てはっきりと判別できる」が、「指の腹で触ってかすかに感じる」程度で、 このまま使用可。 |
しかし、念のためにオイルストーンをそのまま使って少し擦っておきました。 |
・プライマリードリブンギヤの爪間隔/ドライブプレートがはまる部分 は外端で、 16.0、 16.1、 16.1、 16.1、 16.2、 16.1、 16.0、 16.1、 16.1、 16.0、 16.0、 16.1㎜。 ・これに組み付けるドライブプレートの 厚さ/爪巾は 3.0/16.0 ( 一番内側 ) 2.7/15.9、 2.7/15.8、 2.8/15.8、 2.9/15.9、 2.9/15.9、 2.9/15.9、 2.7/15.8㎜ ( 一番外側 ) ※使用限度 : 2.5/15.3㎜ ・一番外側のドライブデスクの爪巾が一番狭く磨耗している。 外側のドライブデスクに一番力がかかるのでしょう。 ・プライマリードリブンギヤの爪に段差がないので、ジャダースプリングも組み込みます。 |
念のために、ギヤ側の赤サビをサビジャックで黒サビ処理しました。 使用するエンジンならギヤオイル潤滑でサビが進行することはありませんが、 このエンジンはストックの静態保管なのでサビが進行する可能性があるからです。 ※もとの状態は→→→こちら |
4.6千5百円エンジン⑤のプライマリードリブンギヤの段差修正
a.この凸部を削って全て平らにしても爪間隔は0.2㎜くらいしか拡がらない
・これが、「 ジャダースプリングを取り付けると、クラッチを切っても半クラッチ状態になる 」 原因と思われる、エンジン⑤のプライマリードリブンギヤの爪段差。→→→こちら ・指で触ってはっきりと判る段差ですが、爪間の凹~凹を測定してみると、 その最大値は 16.2㎜。 ・爪先端の間隔/爪間の凸~凸=16.0㎜~16.1㎜ ( ※測定誤差あり ) ・だから、凸部を全部削って平らにしても、爪~爪は 0.2㎜くらいしか拡がらない。 ・ これに取り付けてあったドライブプレートの爪巾は 15.8㎜~15.9㎜。 ドライブプレートの使用限度はプレートの爪巾 : 15.3㎜。 だから、プライマリードリブンギヤの爪巾とプレートの爪巾の間に まだ 0.5㎜~0.6㎜のガタがあってもOKとなる。 それなら、ドリブンギヤの爪巾が凸部を削ることにより0.2㎜くらい拡がっても問題ないはず。 |
・使うのは上で使ったオイルストーン。 しかし、これではラチがあかない。 ・細かいヤスリで凸部をあらかた削っておいてから、仕上げにオイルストーンを使うのがよい。 ・注意しなければならないのは、 ヤスリでもオイルストーンでも 「 前の面角度を変えないこと 」。 ・爪の面角度が同じでないと、ドライブプレートの爪が ハウジングの爪に均一に引っかからなくなり、 ドリブンプレートとの圧着 ・ 切り離しに不具合が出るだろうし、 ドライブプレート爪の磨耗やハウジング爪段差生成が早められることにもなるでしょう。 ・面角度が同じであるかどうかは凹部の痕で判定できます。 凹部の痕がタテにきれいに並んでいれば、面角度は大きく変わっていないはず。※上記3の写真 このような理由から、段差削りは凹部の痕が残っているくらいにとどめておくべきでしょう。 |
c.どれくらい拡がったか
しかし、やりだすとどうしても熱がはいってしまいます。
仕上がりは、
・ここまで削る必要はありません。 凹凸が指の腹でさわってかすかに感じる程度なら プレートの切り離しに問題は生じません。 ・なにか、面角度が変わってしまったように見えます。 |
・「凹部痕が少し残っている」爪の状態です。 ・上記3の写真のように 「 凹部痕がきれいにならんでいるように 」 仕上げるべきでしょう。 |
ちょっと削りすぎた感もありますが、爪と爪の間隔を爪の先端で測定してみると、
16.3、 16.2、 16.3、 16.2、 16.1、 16.3、 16.2、 16.0、 16.0、 16.2、 16.2、 16.3㎜。※測定誤差あり
削る前の爪先端~爪先端の巾が16.0~16.1㎜。
削った後の爪先端~爪先端の巾に16.0㎜や16.1㎜があるのはおかしいが、測定方法による誤差もあるだろうし、爪先端まで削っていなければ16.0㎜ということにもなるでしょう。
当初目的は16.2㎜の 「 0.2㎜拡張 」、結果は最大で6.3㎜の 「 0.3㎜拡張 」。
やはり、少し削りすぎということになります。
このプライマリードリブンギヤにも赤サビが合ったので、念のために黒サビ処理をしておきました。→→→以前の状態
このドリブンギヤはエンジン⑥-2 に取り付けて使います。
通常、ドライブプレートは「 カタン 」 とプライマリードリブンギヤにはまります。 しかし、これが引っかかってはまらないのです。 左の写真では●の部分が引っかかっています。 ・「 そうか!この部分が削れていないのだな!」 と、●の部分をさらに削ってはいけません。 段差修正で爪は削られているので、爪と爪の間隔は “ 元の状態 ” より拡がっているのです。 だから、もとの状態で 「 カタン 」 と入ったものが、より拡がったのに入らないわけがないのです。 ・しかし、実際は引っかかって入らない。 その理由を考えてみました。 |
ドライブプレートの爪は12枚。30度間隔になっています。
プライマリードリブンの爪も同じく12枚で30度間隔。
段差修正でプライマリードリブンギヤの爪端をすべて同じだけ削れば、12枚の爪端は30度間隔になります。
しかし、削る量が同じでないので、12枚の爪端は30度より大きくなったり30度より小さくなったりします。
※爪の左端を1度分ずつ削れば、爪の左端は1度ずつ進み、爪の左端の間隔はすべて30度のまま。
しかし①の左端を1度削り、その次の②の左端を0.5度削り、その次の③の左端を1度削ると、①の左端~②の左端は29.5度、②左端~③左端は30.5度となる。
ドライブプレートをプライマリードリブンギヤにはめる場合、ドライブプレートの爪端をプライマリードリブンの爪端に当てて入れます。
ところが、ドライブプレートの爪端は30度間隔になっているのに、プライマリードリブンの爪端は30度間隔になっていない。
そこでひっかかるのです。
もちろん、均等に削れていなくても爪と爪の間隔は元の状態より拡がっているのだから、ドライブプレートがはまる場所はあります。
その場所がドライブプレートの爪端をプライマリードリブンの爪端に当てた場所にはないだけです。
ドライブプレートを動かしてやればその場所になりはまります。
このような場合、ドライブプレートを強く押し込んでやれば、ドライブプレートが自然と「はまる位置になって」はまります。
しかし、押し込むときにドライブプレートの爪を欠損してしまう危険もあります。
段差修正で全ての爪端を同じだけ削ればこの危険は避けられますが、同じだけ削るのは不可能です。
そこで、「ドライブプレートをはめるときの位置決めになる部分」つまり「プライマリードリブンの爪の上端から3~4㎜」はそのままにして削らないようにすることが必要です。
プライマリードリブンの爪高さはプレート合計の厚さより大きくなっています。
そうしないと、クラッチを切った場合にドライブプレートがプライマリードリブンの爪から外れるからです。
※SJのプレート厚合計は36.6㎜、プライマリードリブンの爪高さは41.5㎜。→→→ こちら
だから、爪の段差は上端の3~4㎜下から始まっているのです。
つまり、爪の上端から3~4㎜はドライブプレートが当たらないので、この部分をそのまま残しておいてもプレートの動きを邪魔しないのです。
言い換えれば、この部分を削らないでも「爪段差修正の効果」は変わらないのです。
これは段差未修正のSJのプライマリードリブンギヤです。 爪上端から実測 5㎜がドライブプレートが当たらない部分です。 ここを削っても意味はありません。 この部分はドライブプレートをはめるときの取っかかりとして残しておくことが必要です。 |
上端5㎜をこのように残しておけば、 ドライブプレートをはめるときに位置決めで苦労することはないでしょう。 上に述べたように「段差を元の平面に平行に削る」ことは難しいものです。 削ったあとに現れる●を目安にするのがよいでしょう。 ●の中心が爪巾の真ん中に並んだら良いはずです。 この写真の状態ではマダマダです。 |
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バランス能力が鍛えられるかも。
右が完全になった エンジン⑤-3。 左が不完全なエンジン⑥-2 。 エンジン⑥-2についてはクランクケース内のベアリングとオイルシールは交換必須。 しかし、これはどのエンジンでも同じこと。 このエンジンに不足しているのは、排気バルブとクラッチデスク。 クラッチデスクはまだ新品が入手できるので、程度の良い排気バルブさえ入手できれば もう一台ストックエンジンができあがることになります。 『 それでは Yahoo オークションで手頃な中古エンジンを…。 』 しかし、これではきりがありません。 現在、完全エンジンを載せた予備の完全丸車が二台、そして今回のエンジン。 年齢は60の半ばを越して、さすがに体にガタが出始めています。 「 予備 」 を心配するより 「 RMXに乗ることのできる時間 」 を心配した方がよさそうです。 ※結局、エンジン⑥-2を完全エンジンにしました。→→→こちら |
久しぶりに二台の完全丸車ストックのエンジンをかけてみました。
RMX③ ( 真ん中 ) は問題なく始動。
しかし、RMX④ ( 一番奥のエンジ色カウル ) はオーバーフロー。
キャブレターを開けてみるとフロートバルブが固着し、あちらこちらに青サビも。
キャブレター内のガソリンは抜いていますが、10カ月エンジンをかけないで放置しておくとこんな状態に。
キャブレター内をきれいにして、エンジン始動。
しかし、かかったエンジンは2~3秒で止まってしまう。
「 ガソリンが劣化しているのかな? 」 とキャップを開けると、タンク内に赤サビ。
灯油でタンク内を洗うと赤くなって出てくる。
それでキャブレター内のガソリンが変な臭いだったのだ…。
このタンクは2年前にサビ取りをしてきれいにしたもの。→→→こちら
当初はサビを防ぐためにガソリンを満タンにしていましたが、「 ガソリンを拝借 」 でいつのまにかリザーブだけとなっていたのです。
灯油で3回洗って新しいガソリンを入れたら、問題なくエンジンスタート。
チャンバーを程度のよいものに、サイレンサーは中古のリメッサに交換。
「 MJ/195、PJ/27.5、JN/6BGK7--最上段、AS/1.75回転戻し 」 の以前の設定で元気に走れました。
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しかし、再度のサビ取りは必須です。
「 完全丸車でストックする場合、クラッチプレートとキャブレターを外し、タンク内のサビに注意しなければならない 」 ようです。
というよりも、バイクを走らせないでストックしておくこと自体が間違い。
バイクは動かさないとドンドン不具合が出てくるのです。
バイクをコレクションしていても意味がない。
春からガンガン走らせて、ドンドン潰すことにしました。
つづく
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