RMX-SJ13 整備資料
2019.01.17 完全予備エンジン二台完成(エンジン②-4 と ⑥-3 )
延び延びになっていた二台の予備エンジンを完成させました。
ドライブシャフトのスプロケット取付溝が欠損したエンジン②-3と「走行3386㎞・5年間大切保管」のエンジン⑥-2のOHです。
なお、今回のOHで気付いたことは次の二点、是非確認しておいてください。
・ クランクシャフトの引き込みについて→→→2019.1.22 追記 クランクシャフト引き込みについての考察
・ シフトカムベアリングの取り付け方向について→→→★注3 : シフトカムベアリングの取り付け方向
-エンジン②-3 のOH-
・エンジン②-3の履歴・内容
・クランクケース内のベアリング状態
★排気バルブの状態/右側スペーサ(前から見て左)が左側スペーサより磨耗が大きく、スペーサ自体も左側の磨耗が大きくなる。
・入手した部品/1600円と新しい内容(エンジン②-4)
-エンジン⑥-2 のOH-
・エンジン⑥-2 の履歴
・各部の状態/クランク右オイルシール逆組みの影響
・入手した部品/4237円と新しい内容(エンジン⑥-3)
・余談
1.エンジン②-3 のOH
a.エンジン②-3 の履歴・内容
(近況)
正選手RMX②に載せていたR・Sクランクのもので、前後17インチにしてから燃費が悪くなりいろいろと検証したエンジンです。
エンジン⑤-3と代わる代わる「載せる→実走→降ろす→点検→また載せる」をやってきました。
結局、燃費悪化の原因は、エンジンにあるのではなく次のようなものだったと推測。
・ チェーンとスライダーが干渉していた。→対策 : 干渉除去
・ サイレンサーの抜けが悪かった。→対策 : ウール交換
・ キャブレター設定が悪かった。→対策 : 設定
・ 前後17インチ・前15/後43・アスファルトワイドオープンがパワーを効率よく引き出せなかった。→対策 : 後44に交換
そして、ギヤオイルが黒くなる原因もクランクシャフトオイルシールの劣化による混合気漏出などエンジン側にあるのではなく、
「クラッチデスクの滑り」と「ドライブプレートの劣化」にあると推測。→対策 : クラッチアウターの爪段差修正
また、「ギヤオイルの品質の低さ」も関係。→対策 : 銘柄グレードアップ
以上の対策により、燃費改善の気配があるので、もう一度燃費計測とギヤオイルの変化をチェックしてみようと予定。
(履歴)
1.エンジン②
・ RMX③のエンジン、RS型→→→こちら
・ 2013.03.19、分離給油で公道デビュー
・ 2014.9.23、クランク左ベアリング損傷発覚、クランクケース内オーバーホール→→→こちら の 2
2.エンジン②-2
・ 2016.04.19、排気バルブ損傷発覚、エンジン⑤のシリンダーをピストンごと移植→→→こちら
・ 2017.1、排気バルブ点検。欠け損傷なし。スペーサの片方だけエンジン⑥より。→→→こちら
・ RMX②に搭載
・ 2018.4.前後17インチで燃費が悪いためエンジン②-2をRMX②から降ろす。(代わりにエンジン⑤-3を載せる)→→→こちら
3.エンジン②-3-00
・ 2018.5.エンジン②-2点検→→→こちら
・ シリンダ・ピストン問題なし。
・ クラッチアウター爪に少々段差→RM250用に交換
・ ジェネレーターローターを割ったのでエポキシで修理。
・ クランク左右オイルシールを外側から新しいものに交換。
・ 排気バルブ(2016.04.エンジン①の排気バルブを付ける。2017.01.排気バルブ点検・清掃→こちら)
排気バルブ右室付近にサビび多い→NシリンダーにRSカバーを付けていた。→Nカバーに交換。
バルブ自体に問題なし→清掃。
※このときに一度RSシリンダーを使う→→→こちら
※これがエンジン②-3-00
4.エンジン②-3
・ 2018.5.エンジン⑤-3を載せたRMX②の燃費も悪いのでエンジン⑤-3を降ろしてRMX②に載せる。
・ このときにピストンを新しいものにし、シリンダー(元エンジン⑤/前エンジン②-2)に単品入手の排気バルブを取り付ける。
※これがエンジン②-3
・ エンジン②-3でも燃費が悪い→→→こちら
・ チェーンとチェーンスライダーの干渉→なくする。
・ サイレンサーウールの交換。
・ キャブレター設定の見直し。
・ 燃費はやや改善。
・ 2018.05~2018.06、RMX②で使用。
・ 2018.06.ドライブシャフト山の欠損が見つかりRMX②から降ろす。(代わりにエンジン⑤-4を載せる。)
(②-3の内容)
・ シリンダ : 元エンジン⑤のホーニングN (前エンジン②-2)
・ ピストン : 未使用ストック
・ ピストンリング : エンジン②-2
・ 排気バルブ : 最近入手したN型→→→こちら
・ クランク : エンジン②のRS
・ クランクケース : エンジン②のRS型(2018.5 にクランクオイルシールを外側から交換 )
・ クラッチ一式 ( RM250用 →→→こちら )
今回の目的は、ドライブシャフトの交換。 全分解なので、ついでにクランクシャフトのベアリングとオイルシールを交換。 |
交換するドライブギヤアッシはストックしてあったエンジン①のもの。 |
クランクケース右室は 2018.04 に外しているのできれいそのもの。※こちら |
クランクケース右側内部もきれいそのもの。 ベアリングはヘタレなくスムーズに動きます。 |
クランク室の焼け・カーボン付着はこの状態が普通でしょう。 |
クランクケース左側内部のベアリングも問題なし。 |
そうそう、この削れは左ベアリング損傷でできたもの。 RMXはクランクベアリングが二つや三つなくてもガンガン走ります。→→→こちら |
ベアリング交換は「念のため・どうせついでだから」のクランク左右ベアリングだけ。もちろんオイルシールも交換。
●●
・オイルがややネットリと付着しているだけです。 バルブの動きを阻害するものではありません。 取付後の走行が400㎞ですから。。 |
・スペーサ穴は、a.前後4.4㎜Φ/4.3㎜Φ と b.前後4.25㎜Φ/4.25㎜Φ。 ・SJ13の排気バルブスペーサは 右側スペーサ(前から見て左)が左側スペーサより磨耗が大きく、 スペーサ自体も左側の磨耗が大きくなる。 ・だから、「bを左側に、aを右側に」して、aの4.3㎜Φ側を左側(内側)にした。 |
ロアバルブの穴は、左側(前から見て右)が 横(前後・バルブ方向) 4.2㎜Φ/縦 4.1㎜Φ 、右側 横 4.2㎜Φ/縦 4.2~4.3㎜Φ。
驚いたのは、ロアバルブ外側の縦傷。
深い縦傷です。 いったいどこで付くのでしょうか? |
1000番のペーパーで段差を軽く取りました。 |
この排気バルブは単品で入手した「走行20000㎞弱」のものです。
きれいにして取り付けてから400㎞でなぜこんな傷が付くのだろう?
シリンダーに何か問題が生じたのだろうか?
単品入手したバルブの取付前の写真を捜しました。
すると…、
このときにすでに「縦傷・削れ」がありました。 そのときはこの傷について何も記述していないから見落としていたのでしょう。→こちら |
結局、 「この傷はもともとのものでエンジン②-3のシリンダーが原因ではない」 ということになりました。 |
たの排気バルブはエンジン⑥-3 に取り付けることにしました。
d.入手した部品
・クランクシャフト左右オイルシールはストック。
・プライマリードライブギヤスペーサOリング、ドライブシャフトオイルシール、キックシャフトオイルシール、シフトレバーオイルシール、キックアイドルギヤサークリップなどの小物もストック。
・入手したのはクランク左右ベアリングだけ。※NTN-63/28 (799円)×2
費用は1600円弱。
こちらが完成したエンジン②-4 。
( 内容 ) ・シリンダー(元エンジン②のRS型) ・排気バルブ(もとエンジン①のN型) ・ピストン(エンジン②-3のときに未使用ストックに) ・クランク(元エンジン②のRS型) ・腰下(元エンジン②のRS型) ※ドライブギヤ一式(エンジン①) ※クラッチ一式とデスク(エンジン②-3/RM250用) |
2.エンジン⑥-2 のOH
●●
こちらがOH前のエンジン⑥-2。 シリンダー周りはエンジン⑤-4に取られました。 オイルポンプは別保管。 実働テストはしていません。 |
シリンダスタッドボルトに赤サビ。 左側前後カラーは固着張り付き。 スタッドボルトのネジ部はワイヤブラシできれいになるけれど、 埋もれている部分がダメなら締めると抜けてくるのでリコイルが必要。 |
以前にクラッチカバーを開けているのでヘドロは取り除いてあります。 当時の状態は→→→こちら |
諸悪の根源はこのオイルシールの組み方。 何のための鋼板シールド? 油室はどちら?→→→こちら このように取り付けてしまった方はすぐに交換しましょう。 クランクケースを割らないでも、エンジンを降ろさないでも交換できます。 |
キックスターター、バネ、ワッシャに赤サビ。 この部分は高回転する訳ではないので、サビをとってそのまま使用。 排気バルブガバナギヤにもあちらこちらに赤サビ。 表面的なものなのでサビ取りをしてそのまま使用。 |
問題はプライマリードライブギヤとスペーサ。 | 「クランク右オイルシールに接する部分はきれいだから問題ない」とも言えますが、 エンジン動力を取り出す部分がこの赤サビでは精神的に良くない。 ストックのエンジン①のもの(写真左側に交換。 |
ウォーターポンプインペラはインペラ取り付けガスケットだけ交換。 メカニカルシールは問題なかったので、インペラ裏の樹脂リングを液体ガスケットで取り付け。 この作業は以前にやっていました。→→→こちら だから「同じ作業がやってあるな…」と感じたのか…。 |
メカニカルシールのシール部上端面は問題ないが、 シール部のサイドの凸凹が少々気になる。 これくらいなら、冷却水のクランクケースへの漏出を防げるでしょう。 |
樹脂リングの裏表はないから、平坦度合いが気になれば裏返して使う。 |
ジェネレーターも問題なし。 ステーターコイルもローターも程度良し。 ガンガン回しているとローターの内側にあるマグネットの端がすり切れてきます。 |
クランク左側も問題なさそう。 ベアリング損傷だとこちら側に金属粉が出てきます。→→→こちら |
★★22
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クランクケース左室に残っていたヘドロ状態の変質ギヤオイル。 エンジン保管ではギヤオイルを抜くのが常識。 |
あなたのRMXは前回のOHでクランク右オイルシールを正しい方向にしましたか? 『オートバイ屋サンにやってもらったから大丈夫!』 そのオートバイ屋サンに何気なく「取り付け方向」を聞いた方がいいですよ。 取り付け方向が逆だったら、もうこの状態になっているかも…。 |
ドライブシャフトギヤの4thドリブンギヤのシフトフォーク溝にサビ(写真上)。 ストックのもの(写真下・シフトフォーク溝5㎜)と交換。 |
カウンターシャフの2ndドライブギヤと4thドライブギヤにサビ(写真左) サビなしのカウンターシャフトギヤセット(写真右)と交換。 |
なお、シフトフォークの爪の厚さは、
長くて巾狭い : 4.7~4.65㎜、短くて巾狭い : 4.6~4.5㎜、長くて巾広い : 4.5~4.6㎜。
シフトカム関係はそのまま使用。
ベアリングの状態は?
クランクシャフト右ベアリングはスムーズでカッチリ感。これは交換してあるナ…。 カウンター右とシフトカム右はゴリゴリ感。 これは混合気漏出と変質オイルにによるベアリングやホルダーのサビ。 |
クランクシャフト左ベアリングもスムーズでカッチリ感。これも交換してある。 一番気になるのがドライブ左ベアリング。 ここは特別サイズのベアリング(規格より1㎜薄い)から純正部品で3000円超え。 しかし、ここもゴリゴリ感。 |
ゴリゴリ感のするこれらベアリングにパーツクリーナー やCRCを吹きつけて回していたら、ゴリゴリ感が気にならない状態に。
「ベアリングやホルダーのサビが取れて使える状態になったのだな…」と勝手に解釈。
これらのベアリング交換は次回OHに延期。
クランクシャフト右ベアリング孔に問題なし。 | 左右ベアリング孔にも問題なし。 ベアリング損傷は経験していない様子。 |
クランクコンロッドの小端内径 : 22.95㎜Φ/使用限度23.05㎜Φ。 数値に問題ないのでこのまま使用。 しかしピストンピンベアリングとのガタが少し気になりました。 ストックのエンジン①のクランクと比較してガタつく気がしましたが、 なにせ「走行 3386㎞」のエンジンですから…。 |
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どちらも「立ちごけ」しません。
クラッチハウジングはエンジン⑤-3より取り外し段差修正をしたもの。
これはもともとエンジン⑥のものでした。
こちらが出来上がったエンジン⑥-3
(内容) ・シリンダー(前エンジン②-3/元エンジン⑤のN型) ・排気バルブ(前エンジン②-3/単品入手バルブN型) ・ピストン(ストックのP7) ・ピストンリング(ストックのR7) ・シリンダーヘッド(前エンジン②-3) ・ヘッドガスケット(ストックの新品) ・クランク(エンジン⑥) ・腰下(エンジン⑥) ※カウンターシャフトギヤ一式(エンジン①) ※ドライブギヤの4thドリブンギヤ(エンジン①) ※プライマリードライブギヤとスペーサ(エンジン①) ※クラッチハウジング(エンジン⑥段差修正済み) |
シリンダースタッドボルトに嫌な予感
シリンダー取り付けで左前スタッドボルトが嫌な予感。 規定トルクでナットを締めるとそのまま締まっていく。 やっと、2山半で締めつけ終わり。 かろうじて「スタッドボルトの抜け」に耐えたようです。 |
他のボルトは?
こちらは左後。 規定トルクで 1.5 山。 |
こちらは右後。 規定トルクで 1 山弱。 |
これはシリンダースタッドボルトのリコイルが必要な状態。
リコイルには真っ直ぐにリコイル穴を開けなければならないのでボール番が必要。やはり…。
3.余談
a.修理・交換履歴はその都度更新必要
下の写真は出来上がったエンジン。
左側がエンジン⑥-3、右側がエンジン②-4
問題の端緒ははストックに排気バルブを組んだRSシリンダー(エンジン②)があったこと。
使える排気バルブはエンジン①のものと単品入手したもの。
この「RSシリンダーに組んである排気バルブ」はどちら?
細かい修理のときはいちいち修理履歴の更新をしていません。
この排気バルブがどちらかを知るために今までの頁を全部読み返しました。
結局、単品入手の排気バルブであることが判明。
「エンジンを触ったときには必ず履歴を更新しておかなければならない」と痛感しました。
b.予備エンジンが二台できたけれど…。
今回OHしたエンジン②-4 とエンジン⑥-3 はクラッチデスクとともにコンテナに入れて保管。
予備部品は別々に保管しておく方が便利です。
シリンダー、ピストン、排気バルブ、クラッチ関係、トランスミッション、クランクケースなど分けておけば必要なときにそのまま使えます。
しかし、エンジンとして組んでしまうと必要なときにそのエンジンから外さなければなりません。
ストックエンジンは現役エンジンが問題を起こしたときにすぐに載せ変えられるよう一台あれば充分です。
しかし、ストックエンジンが二台あるとなにか安心。
正選手のRMX②には完全丸車の控え選手が「OH済みエンジン③-2搭載のRMX③」と「OH済みエンジン④搭載のRMX④」の二台(実働テスト済み・書付き)。
そして、今回のOH済み完全エンジンが二台。
年齢は70歳まであと2年。
コースをガンガン走ることはないので、どう考えても「これで充分」。
それなのに毎日Yahooオークションで「RMX検索」。
人間の物欲には限りがありません。
つづく
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