SPnet 選任業務編
・新任教育・2号業務別教育資料・道路交通法 -歩行者・行列の通行方法
イベント会場の交通誘導で横断歩道を通らない歩行者に横断歩道を通るように誘導しました。
歩行者は横断歩道を通らなくても道交法の罰則はありません。ほどほどに。
祭りの警備で子供みこしの行列が車道の右端から歩道に移ったので、車道に戻るように誘導しました。
あとで、世話役から文句がでないでしょうか?
道路工事の片側通行の誘導。登校してくる児童がいたので両側の車を止めた。文句はでない?
道交法で要求されるような誘導をすればまず問題ありません。
クレームが来たら選任が顧客に道交法を説明して納得させてくれます。
しかし、道交法では罰則が定められていない義務規定のようなものもあります。
警備員は道交法で「何が、どれくらい認められているのか、禁止されているのか」を知らなければなりません。
ここでは道交法10条・11条・12条について説明しましたが、難しい内容ではありません。
実務経験で色付けするとよいでしょう。
・歩行者は右側端に寄って通行、歩道があるときは歩道(道交法10条)・罰則なし
・行列はどこを通るの?(道交法11条・道交法施行令7条)
★歩行者は横断歩道を通らなければならない(道交法12条他)・罰則なし
★片側通行で小学生が登校してきたら両方の車を止める?(道交法14条)・罰則なし
★道路での禁止行為(道交法76条)
※本頁で引用している図は一般に公開されている「警察庁交通局の交通規制基準」より引用。
0.始めに
.
道路工事では警備員は車と関わります。
警備員が歩行者と関わるのはイベント警備の場合です。
歩道があるのに歩道を通らない。
横断歩道を通らずに車道を横切る。
車の直前・直後を横断する。
歩行者の安全のために、それを制止しようものなら、 『警備員が何を偉そうに!』
文句を言ってくる歩行者には道交法のルールで説得しましょう。
道交法に従って誘導していれば文句を言われることはありません。
道交法に従わずに歩行者の勝手気ままを許していると、車の方から文句がでることになります。
警備員はすべての人の正当な活動を妨害してはなりません。
その誘導は道交法に反してはならいのです。
1.歩行者は右側端に寄って通行、歩道があるときは歩道(道交法10条)
これは道交法10条に定められています。詳しく見てみましょう。
※道交法10条(通行区分)
「歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という。)と車道の区別のない道路においては、
道路の右側端に寄つて通行しなければならない。
ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄つて通行することができる。
2.歩行者は、歩道等と車道の区別のある道路においては、次の各号に掲げる場合を除き、歩道等を通行しなければならない。
一.車道を横断するとき。
二.道路工事等のため歩道等を通行することができないとき、その他やむを得ないとき。
3.前項の規定により歩道を通行する歩行者は、第六十三条の四第二項に規定する普通自転車通行指定部分があるときは、
当該普通自転車通行指定部分をできるだけ避けて通行するように努めなければならない。」
※罰則なし
要するに、歩行者が通行しなければならない道路は、
①.歩行者の通行できる道路がある場合 → 歩行者用道路
・歩道がある場合、歩行者の通行に充分な巾のある路側帯がある場合。 → 歩道や路側帯を通行しなければならない。車道を通ってはいけない。
・車道を通っても良い場合 → 車道を横断するI場合とその部分が道路工事などで通れない場合だけ。
・車道の両側に歩道がなく、片側にしか歩道がない場合でも歩道を通行しなければならない。(新実務道路交通法54頁)
・自転車通行帯がある場合はそれをできるだけ避けて通行しなければならない。
②.歩行者の通行できる道路がない場合 → 道路の右側端
・車は左・人は右の対面通行です。
・「車は左」に対しては罰則がありますが、「人は右」に対しては罰則がありません。
・もちろん、道路工事などで右側端を通行できない場合は別です。
●●
選任のための法律知識・
2.行列はどこを通るの?(道交法11条・道交法施行令7条)
a.行列は二種類で通るところが違う
子供みこしの行列はどこを通ればよいのでしょう。
道交法では行列を二つに分類しています。
・道交法施行規則で定める行列 → 歩道を通ってはいけない。 → 車道の右側端を通る。(道交法11条1項)
・それ以外の行列。 → これは、歩道を通ってもよいし、車道の右側端を通ってもよい。(道交法11条2項)
もう少し詳しくみてみましょう。
※道交法11条(行列等の通行)
「学生生徒の隊列、葬列その他の行列(以下「行列」という。)及び歩行者の通行を妨げるおそれのある者で、政令で定めるものは、
前条第二項の規定にかかわらず、 歩道等と車道の区別のある道路においては、
車道をその右側端(自転車道が設けられている車道にあつては、自転車道以外の部分の右側端。次項において同じ。)に寄つて通行しなければならない。
2.前項の政令で定める行列以外の行列は、前条第二項の規定にかかわらず、歩道等と車道の区別のある道路において、車道を通行することができる。
この場合においては、車道の右側端に寄つて通行しなければならない。
3.警察官は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要があると認めるときは、
第一項の行列の指揮者に対し、
区間を定めて当該行列が道路又は車道の左側端(自転車道が設けられている車道にあつては、自転車道以外の部分の左側端)に寄つて通行すべきことを命ずることができる。」
(罰則 第一項については第百二十一条第一項第二号 第二項及び第三項については第百二十一条第一項第三号)
※道交法施行令7条(車道を通行する行列等)
「法第十一条第一項 の政令で定めるものは、次の各号に掲げるものとする。
一.銃砲(拳銃を除く。)を携帯した自衛隊(自衛隊法 第二条第一項 に規定する自衛隊をいう。以下同じ。)の行列(百人未満のものを除く。)
二.旗、のぼり等を携帯し、かつ、これらによつて気勢を張る行列(百人未満のものを除く。)
三.象、きりんその他大きな動物をひいている者又はその者の参加する行列」
・施行規則で定める行列(車道を通行しなければならない行列)は次の三つです。
・①鉄砲を持った100人以上の自衛隊員。
拳銃を腰に下げた1万人の自衛隊員はこの行列ではありません。
M16を持った1万人の警察官はこの行列ではありません。
・②旗やのぼりを持って、これらにより気勢を張る100人以上の行列
「気勢を張る」とは「仲間が集まって、意気盛んなところを見せる行為」とされています。
※公職選挙法第140条(気勢を張る行為の禁止)
「何人も、選挙運動のため、自動車を連ね又は隊伍を組んで往来する等によつて気勢を張る行為をすることができない。」
1万人のデモ行進でも旗やのぼりを持っていなければこの行列ではありません。
関が原に向かう三万人の徳川軍はこれに該ります。
・③きりんや象くらいの大きな動物を引いている者、またはその者が参加している行列
象を散歩させている人は行列ではありませんが、これに該ります。車道しか通れません。
像は大きいので、「鉄砲を持った100人以上の自衛隊員の行列」や「むしろ旗やクワを担いで気勢を上げる100人以上の農民の行列」と同じ扱いになります。
ちなみに、
a.馬を散歩させるために引いている者 → 歩行者 ※馬のたずなを持って人が歩いています。この馬は軽車両か?
b.馬に乗っている者 → 軽車両 ※乗馬している人がいます。この馬は軽車両か? → 車だが通行区分は道交法18条
c.象を散歩させるために引いている者 → 歩行者だが通行区分は道交法11条
歩道と車道の区別のある道路では、aは歩道、bは車道の左側端、cは車道の右側端を通らなければなりません。
検定二級のイジワル問題に出題されそうですね。
b.ゾンビ集団は行列ではない
なお、行列とは多数人が正しく列を作って歩くことですから、
指揮者がいること、多数人がその指揮に従っていること、正しく列を作っていることが必要だとされています。(新実務道路交通法54頁)
暴徒やゾンビ集団は行列ではありません。
もっとも、彼らに道交法は通用しません。
c.歩道と車道の区別のない道路では行列はすべて右側端
以上は、歩道と車道の区別のある道路の場合です。
歩道と車道の区別のない道路では、どんな行列でも道路の右側端を通らなければなりません。
※11条は10条2項の例外規定
また、デモ行進のように、行列が単なる多人数による道路の通行ではなく、意見発表・意思表明の手段である場合は、警察署長の道路使用許可が必要です。
この場合、警察署長は11条の通行区分を変更することができます。(大阪高決 昭43.6.15 判時524・13 新実務道路交通法378頁)
★★02
選任のための法律知識・
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3.歩行者は横断歩道を通らなければならない(道交法12条他)
『どこを横断しようが俺の勝手だろう!』
いえいえ、そうではありません。
歩行者が車道を横断する時は、
・近くに横断歩道があれば横断歩道を通らなければなりません。
・交差点を斜めに横断してはいけません。
・横断歩道のない場所では車の直前直後を横断してはいけません。
・ただし、罰則はありません。
警備員は道交法に従った誘導をしましょう。そうしないと車の方からクレームが出ます。
※道交法12条(横断の方法)
「歩行者は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の附近においては、その横断歩道によつて道路を横断しなければならない。
2.歩行者は、交差点において道路標識等により斜めに道路を横断することができることとされている場合を除き、斜めに道路を横断してはならない。」
(罰則なし)
・ここで、「横断歩道がある場所の付近」とは「20m~50m」と考えられています。(検定二級教本61頁)
・20~50mと巾があるのは道路状況や交通量が考慮されるからです。
・交通量が多く、歩行者が車道を横断するのが危険な場合は、横断歩道が少し遠くても横断歩道を渡らなければなりません。
・スクランブル交差点では交差点の斜め横断OKです。
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※画像は公開されている「警察庁交通局の交通規制基準」より引用
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斜め横断OK・時間指定あり |
斜め横断OK・終日 |
※道交法13条(横断の禁止の場所)
「歩行者は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。
ただし、横断歩道によつて道路を横断するとき、又は信号機の表示する信号若しくは警察官等の手信号等に従つて道路を横断するときは、この限りでない。
2.歩行者は、道路標識等によりその横断が禁止されている道路の部分においては、道路を横断してはならない。」
(罰則なし)
「横断歩道のない場所では車の直前直後を横断してはいけません」が、
・車両は動いているものだけでなく、止まっているものも含みます。
・直前・直後とは「危険な範囲」で車のスピードや見通せる範囲・道路の混雑状況によります。
だから、停車している車のすぐ前や後を歩行者が横断しようとする場合、これを制止する誘導は認められることになります。
その制止誘導をしないで歩行者が後続車と衝突すれば、警備員は責任を問われることになりますよ。
・もちろん、横断歩道を通ったり、信号や警察官の手信号に従ったりして車道を横断する時は車の直前・直後でもかまいません。
停止するのは車の方です。
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歩行者横断禁止の標識です。
※画像は公開されている「警察庁交通局の交通規制基準」より引用
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※道交法13条の2(歩行者用道路等の特例)
「歩行者用道路又はその構造上車両等が入ることができないこととなつている道路を通行する歩行者については、第十条から前条までの規定は、適用しない。」
車が入ってこられない道路では「歩行者の通行方法」は適用されません。
時間を区切って行われる歩行者天国や通学道路も含みます。
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※画像は公開されている「警察庁交通局の交通規制基準」より引用 |
歩行者用道路 |
すべての車両通行禁止 |
一部の車両だけ通行禁止 |
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車の入ってこない道路では、歩行者は車道を通っても、横断歩道を通らなくても、交差点を斜めに横断しても、止まっている車の直前直後を横断してもかまいません。
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選任のための法律知識・
4.片側通行で小学生が通学してきたら両方の車を止める(道交法14条)
・道路に面した場所で工事している場合もクレーン巻き上げを止めてください。
・車の運転手やクレーンのオペさんに文句を言われたら、道交法14条を説明しましょう。
・ただし罰則はありません。しかし、道交法で求められることをしないと警備業法15条に違反します。
※道交法14条(目が見えない者、幼児、高齢者等の保護)
「目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む。以下同じ。)は、道路を通行するときは、政令で定めるつえを携え、又は政令で定める盲導犬を連れていなければならない。
2.目が見えない者以外の者(耳が聞こえない者及び政令で定める程度の身体の障害のある者を除く。)は、
政令で定めるつえを携え、又は政令で定める用具を付けた犬を連れて道路を通行してはならない。
3.児童(六歳以上十三歳未満の者をいう。以下同じ。)若しくは幼児(六歳未満の者をいう。以下同じ。)を保護する責任のある者は、
交通のひんぱんな道路又は踏切若しくはその附近の道路において、
児童若しくは幼児に遊戯をさせ、又は自ら若しくはこれに代わる監護者が付き添わないで幼児を歩行させてはならない。
4.児童又は幼児が小学校又は幼稚園に通うため道路を通行している場合において、
誘導、合図その他適当な措置をとることが必要と認められる場所については、
警察官等その他その場所に居合わせた者は、
これらの措置をとることにより、児童又は幼児が安全に道路を通行することができるようにつとめなければならない。
5.高齢の歩行者、身体の障害のある歩行者その他の歩行者でその通行に支障のあるものが
道路を横断し、又は横断しようとしている場合において、
当該歩行者から申出があつたときその他必要があると認められるときは、
警察官等その他その場所に居合わせた者は、
誘導、合図その他適当な措置をとることにより、当該歩行者が安全に道路を横断することができるように努めなければならない。」
(罰則なし)
5.道路での禁止行為(道交法76条)
警備員をからかってくる悪ガキにも親切に道交法を説明しましょう。
リラックスタイムとして次の各号に該当する行為を受講生に考えさせてもいいでしょう。
例えば、
・走っている車の中からタバコを投げ捨てること → 5号 → 120条1項9号・5万円以下の罰金
・歩道の真ん中でウンチ座りをしている女子高生集団 → 2号 → 120条1項9号・5万円以下の罰金
ただし、道交法に反する行為を制止した場合でも警備業法15条違反となるので、常に警備員は見て見ぬふりをしましょう。
※道交法76条(禁止行為)
「何人も、信号機若しくは道路標識等又はこれらに類似する工作物若しくは物件をみだりに設置してはならない。
2.何人も、信号機又は道路標識等の効用を妨げるような工作物又は物件を設置してはならない。
3.何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない。
4.何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。
一.道路において、酒に酔つて交通の妨害となるような程度にふらつくこと。
二.道路において、交通の妨害となるような方法で寝そべり、すわり、しやがみ、又は立ちどまつていること。
三.交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること。
四.石、ガラスびん、金属片その他道路上の人若しくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げ、又は発射すること。
五.前号に掲げるもののほか、道路において進行中の車両等から物件を投げること。
六.道路において進行中の自動車、トロリーバス又は路面電車に飛び乗り、若しくはこれらから飛び降り、又はこれらに外からつかまること。
七.前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が、道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく交通の妨害となるおそれがあると認めて定めた行為」
(罰則 第一項及び第二項については第百十八条第一項第六号、第百二十三条 第三項については第百十九条第一項第十二号の四、第百二十三条、第四項については第百二十条第一項第九号)
つづく。
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