RMX250-SJ13 整備資料
2014.09.15 SJ13クランクケース組立時の注意-クラッチ、シフトカムギヤ、キックスタータ他
クランクケースのトランスミッションを組んで、左右のクランクケースを接合したら、クランクケース右質の組み上げです。
シフトカムドリブンギヤ、キックスタータ、クラッチハウジングを組みます。
ここでは、その際の細かい注意を書きます。
・クラッチデスクはドライブ×8枚+ドリブン×7枚だが、SJ13はドライブ×(7枚+1枚)+ドリブン×7枚
★ジャダースプリングの働きと取り付け方向・デスクの組み方
★ジャダースプリング② (別頁)
★ドライブプレートとドリブンプレートの裏表と取り付け方向
・ドライブプレート外端の凹み
★ロックワッシャの曲げ方
★クラッチスプリングボルトの締め方
★クラッチハブの空回りの原因
★SJ13とSJ14のクラッチ部品の互換性
★21.8㎜ベアリングと22.0㎜ベアリングの互換性(別頁)
★シフトカムストッパ、ストッパプレート、ドリブンギヤピンの取り付け
★シフトカムドリブンギヤピンを取り付けるにはディープソケットが必要。整備性のよい六角頭のピンもある。ギヤの取り付け手順
★シフトカムドリブンギヤの取り付け。取り付けネジサイズ
★キックスタータ取付時の注意
★クランクケース接合ピンをマウントボルト穴に入れてしまう。マウントボルトの代替汎用品とピボットシャフトワッシャの代替汎用品
.
1.クラッチ組立時の注意
a.クラッチデスクは何枚?
イ.クラッチの動きのまとめ
a が コルクの貼ってあるクラッチドライブプレート、b がアルミ製のクラッチドリブンプレート。
a は プライマリードリブンギヤ( クラッチアウター ) にはまり、エンジンからの回転が入力される。
b は クラッチスリーブハブ ( クラッチセンター ) にはまり、その回転をカウンターシャフトに出力する。
a と b は 6本のクラッチスプリング( f ) を介して、クラッチプレッシャプレート( g) に押し付けられている。
エンジンの回転力は
プライマリードリブンギヤ ( クラッチアウター ) → ドライブプレート→ドリブンプレート→クラッチスリーブハブ ( クラッチセンター
)
→カウンターシャフト→トランスミッション→ドライブギヤ と伝わっていく。
クラッチレリーズ ( h ) はプレッシャプレート ( g ) を外側へ引っ張るようになっている。
レリーズによってプレッシャプレートガ外側へ引っ張られると、
押し縮められていたバネ ( f ) が伸びて、ドライブプレートとドリブンプレートの押し付けが緩み、エンジン側とトランスミッション側の力伝達が切断される。
ロ.ドライブプレートは 7枚+1枚
ドライブプレート ( a ) の名前を確認するためにパーツリストを見ると…、
ドライブプレート( a ) の必要数が 7枚。
おかしいですねぇ、
ドライブプレートはドリブンプレートより一枚多いから、ドリブンプレートが 7枚ならドライブプレートは 8枚のはず。
外したドライブプレートも 8枚ありますヨ…。
外したプレートをよく見ると、巾の狭いプレートが一枚ある。( 上の写真で c ) 。
・左側の巾の広いプレートが 7枚、 ・右側の巾の狭いプレートが 1枚。 |
・それぞれ刻印が違います。 | ・こちらのグループは刻印の区別なし。 ・巾の広い方の突起には切欠き、巾の狭い方には切欠きなし。 |
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パーツリストでは
a / 21441-07A02 / クラッチドライブプレート
c / 21441-16710 / クラッチドライブプレートT:3
つまり、SJ13のドライブプレートは a ×7 + c ×1 の 合計 8枚。
この巾の狭いドライブプレートは 次ぎに述べるジャダースプリング ( d ) に対応しているプレートです。
レーサーにばジャダースプリングがありませんから、このような狭い巾のプレートはありません。
PJ 12 では、a ×8 と b×7 になっています。
※a と b は SJ13 と 同じ。
尾鷲峠でエンジントラブルを起こした RMX ① ( レース仕様 ) は
ジャダースプリング ( d ) とスプリングシート ( e ) を外して、 a×8
+b×7 になっていました。
20年前、2サイクル・CR125 をさわっていた私には一つ知識が増えました。
★★35
これで「もの」になるようなら
「65 か 85」にステップアップ。
b.ジャダースプリングの働きと取付方向
イ.ジャダースプリングの働きと取り付け方向
上でふれたように、これもレーサーにはありません。
最初の写真で、d が ジャダースプリング ( ウエーブワッシャ ) 、e が ウエーブワッシャシート
です。
d は 凹形に反っています。
e は 平らです。
このウエーブワッシャ ( ジャダースプリング ) は「 ドライブプレートとドリブンプレートが急激につながるのを和らげるもの 」 だとか。
そして 「 急激な動力伝達による部品の損傷や伝達ロス ( ジャダー現象 ) を防いでいる 」 とか。
※ジャダー / judder / (機械などが) 激しく振動する
ウエーブワッシャは 上に反っている方 ( 凹面 ) を 外側 ( プレッシャプレート側・プレートを入れる場合なら上側
) にして組みます。
多分、この“反り” が クラッチプレートの圧着と切り離しの力を少し吸収しているのでしょう。
クラッチをつなげる場合は、
クラッチレバーを放す ( クラッチをつなげる ) → クラッチスプリングの力でドライブプレートとドリブンプレートが上から押し付けられる
→ この上から押し付ける力をウエーブワッシャが少し吸収する → 力が吸収された分だけ穏やかにクラッチがつながる。
クラッチを切る場合は、
クラッチレバーを握る ( クラッチを切る ) → 縮んでいたクラッチスプリングが伸ばされてドライブプレートとドリブンプレートの圧着力が弱まる
( スプリングの上からの押し付け力が弱まる ) → ウエーブワッシャが下からプレートを押し上げてプレートの圧着力を少しプラスする。
→ プレートの圧着力がプラスされた分だけ穏やかにクラッチが切れる。
ウエーブワッシャはドライブプレートとドリブンプレートが押し付けられたり離されたりするときにダンパーの働きをしている。
素人考えですがこんなところでしょう。
ロ.デスクを取り付ける順番
下から ( 内側・トランスミッション側 ) から、
・e ( ウエーブワッシャシート )
↓
・d ( ウエーブワッシャ/凹面上)
↓
・c ( 巾の狭いドライブプレート )
↓
・b ( ドリブンプレート )
↓
・a ( ドライブプレート )
↓
・……
↓
・ a ( ドライブプレート )
c.ドライブレート と ドリブンプレート の裏表
ドライブプレート ( a ) は裏表なし。
ドリブンプレート ( b ) は裏表あり。
・表 : 角に丸みのある方
・裏 : 角が立っている方
指の腹で触れば分かります。エッジが立っている方が裏です。
「裏面を内側 ( トランスミッション側 )、表面を外側 ( プレッシャープレート側 ) にして組む」
このような説明が多く見られます。
しかし、表面を内側にして裏面を外側にしても構わないでしょう。
この 丸みとエッジはプレス等の作業工程で生じたもので、わざわざ片方だけを面取りしもう一方の角を立てたものでばないでしょう。
大切なのは同じ方向に組むこと。
ドリブンプレートの角に丸みがある方と角が立っている方では、ドライブプレートに対する摩擦力・磨耗力が違います。
ドライブプレートは一番上と一番下のプレートを除き、ドリブンプレートに挟まれます。
ドリブンプレートの向きが同じなら、ドライププレートはみな同じように磨耗しますが、
ドリブンプレートの向きがバラバラだと、各ドライブレーとの磨耗にばらつきが出ます。
ドライブプレートの磨耗にばらつきが出れば圧着力にばらつきが出て、全体としてスムーズな圧着・切り離しが阻害されるのでしょう。
あっ!これも素人考えですから鵜呑みにしないでくださいネ。
今回は、常識的に 「 表面を外側、裏面を内側 」 で組みました。
どちらのプレートもギヤオイルを塗って組むのをお忘れなく。
少量で充分です。( CR125 サービスマニュアル )
オイル漬けにする必要はありません。
このオイルの働きについての分かりやすい説明は →→→ こちら
d.ドライブプレート外端の凹(切欠き)は何のため?
ドライブプレートに三カ所・120度ごとに切欠きがあります。(下右の写真の白矢印の三カ所)
この切欠きは製造過程で生じたものではありません。
わざわざ付けたものだから何か役割があるはずです。
どう組むのが正しいのでしょうか?
・直感的には 「 切欠きが揃うように組む 」 でしょう。 しかし、その根拠は? ・CR を触っていたころに、何かのメンテ本に 「ドライブプレートは30度ずらせて組むこと 」と書いてありました。 ・試しに切欠きを30度づつずらせて組みました。(右の写真) ・やはり、切欠きが揃っている方が正解っぽいですね。 ・この切欠きの役割と正確な組み方は宿題です。* |
次の写真はレース仕様のRMX①から取り外したドライブプレートです。
ジャダースプリングや巾の狭いドライブプレートをなくし、同じ巾のドライブプレート 8枚の構成です。
・このドライブプレートには 120度ごとの切欠きがありません。 なぜでしょう? 切欠きはジャダースプリングのように 一般ユーザーの使い勝手をよくするための者なのでしょうか? ・この 8枚のプレートに三種類の刻印。 07A-FP8×5枚,FP4×1枚,FP3×2枚。 この刻印はなに? 組み方があるの? もう一つ宿題が増えました。 |
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※ドライブプレート厚:使用限度 2.5㎜
★★01
国産ではないけれど「いい味」。
※トライクの法的取り扱い
e.ロックワッシャをどう曲げる?
ちょっと戸惑います。
・マイナスドライバーでめくる。→クラッチインナー ( クラッチハブ ) がじゃまでドライバーを差し込めません。
・ちいさなくぎ抜きを打ち込んでめくる。→わざわざそのために小さなくぎ抜きを買いますか?
・ウォーターポンププライヤーではさめば簡単にできます。 ・このロックワッシャは常備パーツです。 ・クランクシャフト右のオイルシールは ケースを分割しないでも外側から交換できますが、 クラッチアウター(ドリブンギヤ)を外さなければなりません。 当然、新しいロックワッシャが必要になります。 ・クラッチデスク交換だけならロックワッシャは不要です。 |
・スプリングボルトを食いつかせるときに ソケットを当てて上から押し込んではいけません。 バネの力に逆らって押し込むとボルトが斜めに入り、 ハブの雌ネジを痛めます。 ・左手の親指と人指し指をワッシャに当ててバネを押さえ、 ボルトを自由にしてからソケットを当てて雌ネジに食いつかせます。 ・ボルトに番号をつける。 ・六本のボルトを対角に均等に行き止まりまで締める。 ・仕上げに、行き止まりから 90~100㎏・㎝で締める。 ・仕上げのトルク締めは一気に 90~100㎏・㎝で一度だけ。 ・確認のために再度トルク締めをすると締めすぎる。 |
★注意/クラッチハブの空回り
クラッチのボルト締めをするときは、ドリブンギヤ ( クラッチインナー ) が 空回りしないようにドライブギヤにウエスを噛ませています。
しかし、仕上げのスプリングボルト締めで、プレッシャプレート ( それにボルト留めされているクラッチハブ ) が空回りすることがあります。
ドリブンギヤは空回りしないのに、プレッシャープレート/クラッチハブが空回りしてスプリングボルトが締められない状態です。
スプリングボルトを締めれば、クラッチデスク ( ドライブプレートとドリブンプレート ) は圧着され、クラッチハブ( インナー ) と
ドリブンギヤ ( アウター ) は固定されます。
つまりクラッチがつながった状態になるので、クラッチハブが空回りすることはありません。
・空回りの原因は、プレッシャープレートの突起が クラッチハブの溝とうまく噛み合っていないからです。 ・プレッシャープレートガうまく噛み合っていないと プレッシャプレートがデスクを均等に押し付けることができず クラッチデスク同士が滑るのです。 ・スプリングボルト締めでハブが空回りしたときは、 ボルトを外してプレッシャープレートをハブの上に乗せ、 円周方向に動かして 「カタン 」とはめ込みましょう。 |
※スプリング長 : 使用限度 46.2㎜
g.クラッチの互換性 - SJ13 N型,SJ13 R・S型,SJ14
・クラッチスリーブハブは共通→部品番号 21410-28C01
・プレッシャーデスクも共通→部品番号 21462-26C00
・ベアリングスペーサ、ワッシャ、ロックワッシャ、ナット、バネ、レリーズは共通
・ドライブデスクは 共通 ※但し SJ13 N型,SJ13 R・S型,SJ14 T型
・ドリブンデスクの部品番号は異なるが互換性はあるでしょう。SJ13/21451-28C30 ( T:1.6)、SJ14/21451-28C31
( T:1.6 )
・ウェーブワッシャ,ウェーブワッシャシートは共通
・ウェーブワッシャの上にくる細いドライブデスクの分非番号はことなるが互換性はあるでしょう。→SJ13/21441-16710 , SJ14/21441-16711
※
異なるのはプライマリードリブンギヤとベアリング。
SJ13 N型/21200-28C32、09263-29007 ( 29×34×22 )、SJ13 R・S型,SJ14/21200-28C51、09263-29006
( 29×34×21.8 )
ただし、ドリブンギヤとベアリングをセットで使えば互換性ありそう。
なお、ベアリングについては使用しても問題はないと解釈しています。→→→21.8㎜ベアリングと22.0㎜ベアリングの互換性、
●●
・つまり、 ・左クランクケースにクランクシャフト引き込み。 ・左クランクケースにトランスミッションを組み込む。 ・右クランクケースにクランクシャフト引き込み。 ・左右のクランクケースを結合。 ・ここまでが終わり、今から、クラッチやキックスタータなど クランク右側室を組み立てる段階です。 ・シフトカムはすでに向こう側(左側)から ベアリングに差し込まれています。 |
a.シフトカムストッパ、ストッパプレート、ドリブンギヤピンの取り付け/先にストッパを取り付ける
・まず シフトカムストッパを取り付けます。 ・サービスマニュアルの手順と異なりますが、 先に取り付けた方が楽です。 ・ストッパが自由に動くか確認。 取付ボルトをどれだけ強く締めてもストッパは動きます。 |
・シフトカムストッパプレートで ストッパを押し戻すようにして、 シフトカムと接合します。 ・ストッパを先に取り付けておかないと、 この作業がやりにくいのです。 |
・シフトカムドリブンギヤピンで プレートとシフトカムを結合。 ・このピンを取り付けるのに M12のディープソケットが必要です。 |
b.ドリブンギヤピンを締めるためのディープソケットと整備性のよいヘキサ頭のピン
・このピンには二種類があります。 ・①は レース仕様の RMX①に付いていたもの。 ②は SJ 13 ・ SJ 14 の純正です。 |
・①はヘキサ穴が空いています。 ・②はディープソケット対応になっています。 ・ |
・①はヘキサレンチで締められます。 ・②はディーソケットが必要です。 ・ディープソケットA は TONE-4D-12L ホームセンターで 1124円。 ・ディープソケットBはモノタロウの 六角穴-12Mで 279円。 |
・ピン②には 12M のボルト頭が22㎜奥まって付いています。 ・TONE も モノタロウ も 22㎜は簡単にクリアー。 |
・しかし、TONE は 噛み合い部分が浅く、 ボルトシャフトを突っ込む穴が 10㎜Φ。 ・ピンのシャフトも 10㎜Φ。 ・当然、ピンのシャフトはTONEのシャフト穴に入りません。 |
・だから、TONEはソケットがボルト頭部分まで届きません。 ・モロタロウは噛み合い部分が長いので簡単に届きます。 ・TONEの方は高価な分だけ手が込んでいる。 それがアダになりました。 ・なお、このピンにはネジロック必要です。 |
もちろん、これは TONE のディープソケットが悪いわけではありません。
ピンが 10㎜Φであることが問題なのです。
しかし、このピンに関しては 1124円の TONEば使えません。279円のモノタロウを使いましょう。
ホームセンターで購入する場合は、このピンを持っていって実際にディープソケットが届くかどうか確認しましょう。
そもそも、なぜ整備性のよいヘキサ頭のピンでばないのでしょうか?
強度や耐久性の問題でしょうか?
となると、ヘキサ頭のピンは RM の部品なのかもしれません。
※PJ のピンは SJ と部品番号が同じだから、ヘキサ頭ではありません。
c.シフトカムドリブンギヤの取付
シフトカムドリブンギヤを組み立てたあとの手順です。
シフトカムドリブンギヤの組み立てについては→→→こちら
左側がシフトカムドリブンギヤ、右側がギヤシフトボールリフタ。
ギヤにリフタをはめてから、シフトカムストッパプレートのピンにはめる。そして、リフタをケースにネジ留めする。
まずは、ギヤとリフタをはめることから。
これが、知恵の輪。
やり方の一例。
①左手の親指と中指の爪でギヤのプレート ( ● ) を下からつまんで押さえる。
②右手でリフタを持つ。
③リフタ A部分を ギヤB部分の下に当てて、時計方向に回してはめる。
④リフタがギヤにはまったら、右手の親指と人指し指の爪で上からギヤのプレート部( ○ ) をつまむ。( 下の写真 )
⑤ギヤのプレート部をつまんだまま、ストッパプレートのピンにはめる。
⑥リフタを皿ネジでケースに留める ( ネジロック必要)
・リフタを留める皿ネジは純正が M6×12 と M6×30 ( 写真の下側 )。 これを汎用の M6×15 と M6×30 のステンレスに換えておきましょう。10円~15円です。 ・ついでに、ベアリング押さえの なべネジ M6×10、 アクチュエータを取り付ける皿ネジ M5×10 もついでに入手しましょう。 ・これらのネジについてもネジロック処理です。 ・なお、皿ネジの全長は皿の上部からの長さです。 |
・この部品の名前はキックスタータ。 ・キックスタータのポンチマークはここです。 |
・もう一つのポンチマークは キックスタータシャフトにあります。 ・ギヤ(キックスタータドライブギヤ ) は サークリップで留まっています。 分解する必要はありません。 |
・こうなればOKです。 |
b.キックスタータの出っ張りをスタータストッパに当ててスプリングにテンションをかけてセットする。
・あとはスプリングとワッシャを入れて。 | ・この穴にセットするだけ。 ・金具(キックスタータガイド,キックスタータストッパ ) は そのまま |
・スタータの突起がスタータストッパに当たると、 シャフトのスプリング穴は11時位置。 スプリングの腕は10時位置。 ここから、スプリングの腕を右に回して、 2時位置の穴にセットする。 |
スタータの突起がストッパに当たっていない状態で、スプリングに何のテンションもかけないでセットするとキックが戻りません。
それだけでなく、キック作動でピストンを動かすことができません。ピストンが途中で止まってしまいます。
この失敗に気づいたのは、クランクケースを組み上げてピストンとシリンダーを組んだ後です。
ピストンの動きを確認するためにキックアームを動かして、ピストンが途中で止まって 『 ?、?、? 』
もう一度、クランクケースカバーを外さなければなりませんでした。
※この部分の記述は「RMXベアリング交換中の青森の読者サン」の質問で2015.11.12に改定しました。
記述はこの読者さんの表現を使わせてもらっています。
改定前は「スプリングを右に一回りさせる」と説明していました。
それは次のような状況からのものだったのでしょう。、
・キックギヤを組むときに、スタータの突起がストッパに当たっていなかった。
・ストッパに当たっていない状態(スプリングに何のテンションもかかっていない状態)でスプリングの腕を2時位置の穴にセットした。
・クランクケースを組み上げたあと、キックアームを動かして「キックが戻らないこと、ピストンが途中で止まってしまうこと」に気づいた。
・スプリングを右に一回りさせ(スタータの突起がストッパに当たり)、10時位置からスプリングにテンションがかかり2時位置の穴にセットした。
スタータの突起がストッパに当たっていれば、誰でも「10時位置のスプリングの腕を右に回して2時位置の穴にセットする」でしょう。
そして、何の問題も起きません。
私は突起をストッパに当てなかったために、「スプリングを右に一回りさせなければならない」というコツを見つけたと錯覚したようです。
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50ccでミニカー
原動機付き自転車扱いです。
RMX③のエンジン組み立て時のことです。 キックスタータのリターンバネの取付間違いでケースカバーを開け、 排気バルブのスラストニードルベアリングの方向間違いでまたケースカバーを開ける。 さあ、エンジンをフレームに載せましょう。 フレームへのマウントボルトはシリンダーヘッドが一カ所、クランクケースが二カ所。 ところが、クランクケース前部取付部にボルトを入れると途中で引っかかる。(赤矢印の穴) 『 ケース結合がわずかにずれたのかな?』 とボルトをコンコン。 『えっ? 何かが詰まっている!』 そうです、クランクケースを接合する、ノックピンがこの穴に入っていたのです。 |
a はノックピンを入れる穴、b はマウントボルトが通る穴です。 ノックピンは外径が 9㎜Φ、クランクケースの他のボルト穴には入れられないけれどこの穴には入ってしまうのです。 そして、b は 通り穴。 ノックピンは a 穴に入ったときのように頭を出すことはありません。 b 穴に入り込んだノックピンは アッカンベェ~をして身を潜めていたのです。 『なんで、そんな穴にノックピンを入れたの?』 なぜでしょうかねぇ。試しに入れてみたのでしょうね。 対策は一つ。 クランクケースを結合する前に、この穴にノックピンが入ってことを確認すること。 |
「えっ!もう一度クランクケース分割?」
まさか、そんなことはしません。
なんとか、このピンを押し出せばいいのです。
しかし、ピンはステンレスで穴はアルミ。
ピンが入っていることに気づくまでに、取付ボルトでゴンゴン叩いてピンを穴に食いつかせてしまったらしい。
もう、ドリルでピンを削るしかありません。
アルミの取付穴が拡がるのは覚悟の上です。
次の写真のcが出てきたピンの残骸です。
dは純正の取付ボルトです。頭がゆがむほど叩いてもピンを押し出すことができませんでした。
このボルトについては寸法ピッタリの汎用ボルト e がありました。 e:ステン M8 六角中ボルト P1.25 M8×110㎜ @143円。 f :ステン M8 フランジ @ 58円 また、 g は 純正のスイングアームピボットシャフトのワッシャです。/外径 30㎜Φ×内径 17㎜Φ×厚 2.5㎜。 ※ピボットシャフト径 17㎜Φ、シャフトが納まる穴径 37㎜Φ。 h は M16ワッシャ。外径 32㎜Φ×内径 17㎜Φ×厚 2.5㎜ @ 13円。代替品です。 |
つづく
前へ/排気バルブガバナのスラストニードルベアリングの取付方向 次へ/分解・組み立てをしたエンジン③ の状況 目次へ SPnet番外TOP SPnet SPnet2