RMX250-SJ13 整備資料



 2014.07.12  SJ13 クランクケースの分割 (練習)





クランクケース分割の練習として、エンジントラブルを起こしたエンジン①を分解しました。
必要な工具と入手した工具の評価と分解手順が書いてあります。
一番下に、分解手順の最新版を上げておきました。

1.クランクケースの分解組み立てに必要な道具
回り止め/必要
クランクケースセパレーター/必要
ベアリングプーラー/差し当たっては不要。必要になったときに検討
ギヤプーラー : 差し当たっては不要。必要になったときに検討
クランクシャフトインストーラー : 必要

2.クランクケースの分割手順
分割手順
コイル破損に注意
何を外せばよいのか
クランクケース接合ボルトの種類と位置(保存用)
分割手順まとめ(印刷用)


      
1.必要な工具


クランクケース分解・組立やベアリング引抜き・圧入に は “それ用”の工具が必要です。

必要なのは、回り留め,引抜き、挿入の工具です。

自作できそうですが、輸入工具なら安いので、買った方が時間節約になります。
今回準備したものの中で、どの工具が必要でどの工具が不要かを説明します。

なお、購入した工具は、一流メーカー品ではなく安価なものですから、強度,精度,耐久性は期待できません。

入手先は streight ( ストレート )

各工具については以下に説明します。

ペアリングの挿入には 「 叩く工具 」 しか見当たりませんでしたので自作しました。
これについては、ベアリング交換の頁で説明しています。

         



         【広告】09/04/01
整整備工具のSTRAIGHT
19-680/ユニバーサルホルダー19-691/クラッチホルダー
19-508/ クランクケースセパレーター19-8000/ベアリングプーラー
19-625/セパレーター19-509/クランクインストーラー

※注文前に、「工具サイズと対象物との適合」を必ず確認してください。不適合に関して当方は責任を負いません。


a.回り留め/必要

・上が ユニバーサルホルダー と呼ばれているもの。
・下が クラッチホルダー と呼ばれているものです。
・クラッチ分解の回り留めに使います。
・プライマリードライブギヤ(クランクシャフト右に付いているギヤ)の取り外しにも使います。
・トランスミッションのギヤを入れたりウエスをかませたりしても可能ですが、このツールが便利です。

★ストレートの商品なら→ 19-680 と 19-691

★使用箇所: ユニバーサルホルダー→ジェネレーターローター、  クラッチホルダー→クラッチハウジング、プライマリードライブギヤ
★必要度:必要

     
下は Webike のラインアップです。
SP武川 ユニバーサルホルダー
PROTOOLS ユニバーサルホルダー
KITACO ユニバーサルホルダー
KOWA(興和精機)ユニバーサルホルダー

値段の高いものはそれだけの品質だと思いますが、精密機器ではないので壊れなければ大丈夫です。



        
b.クランクケースセパレーター ( 引抜き・引き離し )/必ず必要


ストレートの 19-508

・b,b-2 を 引き抜く ( 引き離す ) ものに取り付けます。
・b,b-2 を e の腕にセット。
・c を e に取り付ける。 
・c の先端を引き離す相手に当てて、c をねじ込む。
・引き離す相手が押され、
  引き離すものが引っ張られて外れる。

★使用箇所:クランクケース左右の分割
★必要度:必ず必要
★問題点:脚ボルト ( b-2 ) の強度不足。曲がります。しかし、汎用ボルトで代用できそう。
★お勧め度:大


     
c.ベアリングプーラー ( 引抜き )/まずは不要。必要になったときに入手

       
①ストレートの 19-603  : お勧めできません。ストレートの19-8000 をお勧めします。

このベアリングプーラーは止まり穴に取り付けられているベアリングを引き抜くためのものです。

開放穴に取り付けられているベアリングはソケットを当てて叩けば外れます。
しかし、止まり穴に取り付けられているベアリングはこれができないのでこのプーラーを使います。

ベアリング内輪のテーパー部にツバを引っかけてベアリングを引き抜くようになっています。

もちろん、開放穴に取り付けられているベアリングもこのプーラーで引き抜けます。
しかし、ソケットを当てて叩いた方が早くて簡単です。

クランクケースで止まり穴に取り付けられているベアリングは、カウンターシャフト左,シフトカム左、排気バルブガバナ左右,ウォーターポンプギヤです。
RMX持病のクランクシャフト左右ベアリング損傷に対処するだけなら不要です。
必要になったときに入手すればよいでしょう。

・b( チャック) が ベアリングの内輪に引っかかります。
・aをbにねじ込むとbの先が拡がり、
  bのツバが内輪に引っかかります。
・より小さい内輪にはa-2 ,b-2を使います。
・bを内輪に引っかけたら、aをcにセットして引き上げます。
・d-2をヘキサレンチで押さえて供回りを防ぎ、dナットを締め込んで引き上げます。
・bのツバ はベアリング内輪の面取り ( テーパー ) 部に引っかかります。
   そのため、行き止まりにセットしてあるベアリングも引き抜けます。
・②,③のベアリングが止まり穴です。
・写真は説明のためにクランクシャフト左ベアリングにセットしました。
   このベアンリングは開放穴なので、外側からソケットを当てて叩けば外れます。


★19-603 欠点① :チャックがギリギリ

このセットでは、チャック ( b,b-2 ) は、8㎜Φ,10㎜Φ,12㎜Φ,15㎜Φ,17㎜Φ,20㎜Φ,25㎜Φ です。
このセットでは、内径 8㎜Φ~25㎜+α Φのベアリングを抜き取ることができます。

クランクケース内のベアリングで一番内径が大きいのが、クランク左の 28㎜Φ。
28㎜Φの内輪を 25㎜Φのチャックで引っかけるには、25㎜Φチャックの先端を大きく拡げなければなりません。
なんとか引っかけることができますが、30㎜Φより大きくなると引っかけることはできません。

大きい径のチャックは別売されていません。

だから、このセットより、30㎜Φ,32㎜Φのチャックがセットされているベアリングプーラーをお勧めします。→→→ 19-8000
内径 28㎜Φのベアリングに 30㎜Φのチャックは使えませんが、「 より大きなベアリングにも使える 」 という安心感が得られます。

f  は チャックに スライディングハンマーを付けて 叩いて引き抜くときに使う部品です。
スライディングハンマーは別売です。

30㎜Φ,32㎜Φ チャックが含まれているプーラーセットには スライディングハンマーも付いていますから やはりこちらですね。


★19-603の欠点② :ヤグラの脚の巾が狭い

クランクシャフト左 ( R・S型では左右 ) のベアリングは大きいので、ヤグラの脚がベアリング外輪ギリギリになります。
ベアリング引抜き中に脚がずれることもありますので、脚の位置に細心の注意が必要です。

また、ドライブシャフト左のベアリングはクランクシャフトのベアリングより小さいのですが、
プーラーの脚を置く場所が狭いのでベアリング外輪に当たってしまいます。
脚の内側を削ることが必要です。


★使用場所:止まり穴に入っているベアリング
★必要度:クランクシャフト、ドライブシャフトなど通り穴に入っているベアリングには不要。
★お勧め度:小


なお、プーラーで引っかけるにせよ ソケットを当てて叩くにせよ、ベアリングの内輪に力をかけた場合はベアリング精度が損なわれます。
ベアリングを再使用する場合はベアリング外輪に力をかけて外すしかありません。

もっとも、ベアリングの引っ掛かりや損傷はベアリングを取り付けたままでチェックできます。
ベアリングを外すときはベアリングを交換するときで再使用することはありません。
だから内輪に臆することなく力をかけて抜き取りましょう。

       

Webikeのラインアップです。
KN企画 ベアリングプーラーセット(8㎜Φ~30・32㎜Φ適合)
SANKEN ブラインドベアリングプーラーセット 11ピース(8㎜Φ~30㎜Φ適合)
SP武川 ブラインドベアリングプーラーセット(8㎜Φ~30・32㎜Φ適合)

30㎜Φ・32㎜Φ対応で「やぐら」のあるものがお勧めです。
なお、セット内容と対応するベアリング内径の種類についてはもう一度確認してください。
リンク間違いと適合サイズ間違いについては当方で責任は負いません。


        
②ストレートの 19-615 : 不要です。

クランクシャフトに残ったベアリングを外すのに入手しました。
※詳しい説明は→→→こちら

・セパレータープレートでベアリングを挟んで引き抜くようになっています。

・しかし、ベアリングがクランクシャフトに残った場合、フライホイールとベアリングの隙間は1㎜。
  この隙間にセパレータープレートを入れることはできません。
・食い込み部を削って食い込ませても、ボルトが短いのでベアリングをはさみつけることができません。

・「50~70㎜Φ対応」 といっても、それはベアリングの背後に充分な隙間があってベアリングを簡単にはさめる場合のことです。

・クランクシャフトに残ったベアリングを外すのにはまったく役に立ちません。

・★必要度:なし
・★お勧め度:なし


        
③ ストレートの 19-625 : 必要になったときに検討すればよい

大型のセパレータープレートです。
クランクシャフトに残ったベアリングを外すために入手しました。
※詳しい説明は→→→こちら

・プレートボルトが太くて長いので、ベアリングを強力にはさみつけても曲がることはありません。

・この大型セパレーターも、フライホイールとベアリングの間に差し込むためには食い込み部を削って広くすることが必要です。
・また、このセパレーターにセットする大型の二本爪プーラー( 150㎜以上  )が必要です。
  先に説明した19-615のやぐらでは小さいので役に立ちません。

・しかし、クランクシャフトに残ったベアリングはこれで引き抜けます。

・なお、ベアリングにグラインダーで溝を付けて二本爪を引っかけて抜く方法もあります。

★必要度:不明
★お勧め度:中


       
d.ギヤプーラー ( 引抜き )/必要なときに検討すればよい


ストレートの 19-1128

この工具はクランクケース分解,組立,ベアリング交換には必要ありません。

ギヤは簡単に外れます。
カウンターシャフトの 1st ギヤは しっかりとシャフトに圧入されていますが、ベアリングやオイルシール交換で このギヤを外す必要はありません。

今回は 右クランクベアリング損傷で 右クランクベアリングの内輪がクランクシャフトに貼りついたのでこの工具が必要になりました。

・三本爪を対象物にセットするのに相当手こずります。
・二本爪の方が作業はしやすいでしょう。
・安いですから、両方揃えておきましょう。
  ※二本爪75㎜  二本爪100㎜
・ベアリング内輪の溝は丸いので、爪が引っかかりません。
  グラインダーで削って爪を引っかけました。


★必要度:低
★お勧め度:150㎜以上の二本爪はあった方がよい

       
e.クランクシャフトインストーラー ( 挿入・引き入れ ) : 必ず必要

クランクシャフトをクランクケースに引き込むのに使います。

ストレートの 19-509 です。

・4600円の価値があるでしょうか? ・bがクランクシャフトにネジ留めされる。
・bはaでcに固定される。
・b/ M12 ・ P1.25 ( 細目 ) 、b-2 /M10 ・ P1.25 ( 細目 )。
・cをeにセットし、
  ナットdでcを引き上げ、クランクシャフトを引き込む。
・右側を引き込むには
  M10・P1.25(細目)の両ネジボルトが必要。
・クランクケースのスタッドボルトが使えます。

クランクシャフトは左側 ( ジェネレーター側 ) が♂ネジ / M12 ・ P1.25 ( 細目 ) 、右側 ( クラッチ側 ) が♀ネジ / M10 ・ P1.25 ( 細目 ) です。

この工具はクランクシャフト左側を左クランクケースに引き込む場合にはそのまま使えます。
しかし、右クランクシャフトを右クランクケースに引き込む場合は 右クランクシャフトと b-2 を 両ネジでつながなければなりません。

M10 ・ P1.25 ( 細目 )  の 短い両ネジボルト ?
ホームセンターにありますかねぇ?

心配ご無用。
シリンダーをクランクケースに留める四本のスタッドボルトがそれです。( 注. シリンダーヘッドを留めるスタッドボルトはM8ですから使えません。)→→→ こちら

このスタッドボルトは純正部品で 一本100円です。
クランクケース分割 ・ クランクベアリング交換をする場合は、注文部品の中にシリンダースタッドボルトを入れておきましょう。

★必要度:大
★お勧め度:大

          
4.クランクケース分割
    ●●     
選任のための法律知識・








a.分割手順

※尾鷲峠でエンジントラブルを起こしたエンジン①を分解します。

・右クランクケースカバーを外します。
・5種類 12本のボルトで留めてあります。
・右クランクのオイルシールが外れています。
・ベアリングも損傷しているようです。
・これならギヤオイルをシリンダーへ吸い込むはずです。
・付近から出てきたゴミです。
・バネはオイルシールのバネです。
・金属プレートはベアリングの玉押さえのようです。


・クラッチを分解します。回り留めはウエスを噛ませます。
・バネ押さえを外して、
  クラッチプレッシャーディスクを取り外します。
・ショックドライバーの先はソケットに取り替えられます。
・ただし、プレッシャデスクのボルトは
  ウエス+Tレンチで簡単に外れます。
・二種類のクラッチプレートが、
  くっついたり離れたりして力を伝えます。
・コルクの貼り付けてあるのが クラッチドライブプレート。
・アルミの方が クラッチドリブンプレート。


・外側がプライマリードリブンギヤ。
  コルクのドライブプレートと噛み合います。
・内側がクラッチスリーブハブ。
  アルミのドリブンプレートと噛み合います。
・ドライブプレートとドリブンプレートがくっつくと、
   外側と内側がつながります。
・スリーブハブを留めているナットには
  ロックワッシャが噛んでいます。
・ロックワッシャの爪を平らにしないとナットは外れません。
・このワッシャは使い捨てです。
  ※ 09167-22021/ワッシャ  
・ここで、回り留めにクラッチホルダーを使います。


・クラッチスリーブハブのギザギザに
  クワガタのキバを噛ませます。
・実際にはクランクケースを立てて、ホルダーを固定し
  『ウゥ~ン』と力をかけないと緩みません。
・左側のBがクラッチスリーブハブ。
・右側のAがプライマリードリブンギヤです。
・A のどこが “ギヤ” なのでしょうか?


・キックした力は、 ⑤→⑥→A⑦→①と伝わります。
・この場合はクラッチを介していませんが、
  クラッチがつながっていると
  トランスミッションまで回るので、
  クラッチを切る必要があります。

・⑥キックスターターアイドルギヤは
  ドライブシャフトにはまっていますが空回りするので、
  このギヤが回転してもドライブシャフトは回りません。

・⑧は①と噛み合い、排気バルブを作動させたり、
  ウォーターポンプとオイルポンプを作動させたりします。
・裏返すとギヤの意味が分かります。
・エンジンの力は
  ①のプライマリードライブギやから出力されます。
・①はA②と噛み合い、エンジンの力はAに伝えられます。
・B③は④と噛み合っています。
・クラッチプレートがくっつくとAとBがつながり、
  Aの力はBと④に伝えられます。
・クラッチがつながると、
  ①→A②→B③→④と力が伝わります。
・④に伝わった力はトランスミッションで変速されて
  ドライブギヤへ出力されます。


・プライマリードライブギヤを外します。
・これを外さないと
  クランク軸をクランクケースから外すことができません。
・またクワガタの出番です。
・このボルトはネジロック塗布指定です。
  外すときには150℃でネジロック解除が必要。
・オイルシールの奥のベアリングは玉押さえが損傷し、
  玉も少なくなっていました。
  これならギヤオイルはドンドン吸い込まれていきます。
・不思議なことにクランクケースのどこにも
  ベアリング玉はありませんでした。
・オイルシールは
  金属プレートの面が内側(左側)、凹部が外側です。
・一般にオイルシールは平らな方が外側ですが、
  クランクシャフト右逆です。
  これは、右側が油室になるからです。


・マグネットカバーを取り外して
  ローターとステータの取外しにかかります。
・ここでユニバーサルホルダー登場。
・ローターを押さえて、真ん中のナットを外します。
・ネジロック使用なのでエアーホットガンで解除します。
・ローターは簡単には外れません。
・クランクケースセパレーターで力任せ。突然ゴロッと外れます。
  コツはプーラーを回すレンチが固くなったときに、
  プラスチックハンマーでローターの溝下方向から軽くたたくこと。→→→こちら


なお、ローターを取り付ける場合は、ボルトにネジロック剤+ 900~1000㎏・㎝ です。

   
★コイル破損に注意

・セパレーターのネジをローターにねじ込むのですが…。
・ネジというと「最後まで締める」のが普通。
  その方がしっかり留まります。
  『 これ以上締まらないところまでしっかりねじ込もう。』
・しかし、ローターの下はステータ ( コイル ) です。
・ネジを最後まで締め込むと
  ネジの先がコイルに当たります。
・当然、コイルが損傷します。
・矢印の部分を損傷してしまいました。
・ステータ中心のクランク軸穴の外側から
  コイルまでは20㎜。
  ローター中心のクランク軸穴の外側から
  セパレータネジの外側までが 23㎜。
  セパレーターネジが 3㎜だけコイルにかかります。

★セパレーターネジは一杯に締め込まないで、ローターが軽く回るくらいで止める。( 一杯に締め込むとネジがステータに当たりローターが動かない )
     ネジを途中で止めても、最後まで一杯に締め込んでもネジがローターと噛み合っている長さは同じ。 


・ステータ(コイル)は
  矢印の二本のネジでクランクケースに留められています。
・コイルを取り付けたままだと、
  ショックドライバーがネジまで届きません。
・コイルを外してからショックドライバーを使います。
・これがステータとなります。
・エンジンから出ているカプラー線はここから出ています。
・ジェネレーター(ローターとステータ)を取り外さないと
  左右のクランクケースを留めている小ボルトが外せません。


・右クランクベアリング損傷でこのままクランクは外れました。

・クランクケースセパレーターで同様に行えるでしょう。

・本番のRMX③クランクケース分解のときに写真を撮ります。
・クランクケースを留めている
  4種類・13本の小ボルトを外して、
  左クランクケースを引き剥がします。
・ローターの取外しと違ってそれほど力は要りません。
・前(クランク軸側)の方が先に開き、
  後(ドライブシャフト側)が渋ります。
・プラスチックハンマーで渋る方をコツコツと叩いたり、
  先に開いた方を少し戻したり。
・最終的にはマイナスドライバーでコジましょう。
  但し、ガスケットが切れないように注意。


       
b.何を外せばいいのか



クランクケースはクランク軸とケース小ボルト で留められているだけです。

左クランクケースで外さなければならないのは、 クランク軸に留められているローター 、クランクケース小ボルトの何本かを隠しているステータ。
そして、クランクケースを留めているボルト。

では、右クランクケースからは何を取り外せばよいのでしょう。
右クランクケースにはいろいろなものが取り付けてあります。

絶対に外さなければならないのは、クランク軸についているプライマリードライブギヤ。

このプライマリードライブギやを外すためにはクラッチ 部分を外さなければなりません。

だから、右側から外さなければならないのは、クラッチとプライマリードライブギヤだけ。

ドライブシャフト右端に付いているキックスタータアイドルギヤや シフトカムをクランクケースに留めているギヤシフトドリブンギヤを外す必要はありません。
※写真ではキックスタータアイドルギヤを外したので、ドライブシャフトが左クランクケースにくっついて外れましたが、
   アイドルギヤを外さなければドライブシャフトが右クランクケースにくっついて外れるだけです。
※ギヤシフトドリブンギヤを外すと、シフトカムEが左クランクケースにくっついて外れるだけです。


しかし、余計なものがくっついているとクランクケース分割作業の邪魔になります。
ベアリング抜き取りや挿入のときにはクランクケースに何も付いていない方がやりやすいに決まっています。

だから、外せるものはぜんぶ外した方がよいでしょう。

ギヤシフトシャフト、キックスタータ、キックスタータアイドルギヤ、排気バルブギヤ全部外しましょう。

ギヤシフトドリブンギヤを外すと、中の小さい部品がバラけて組み直すのに苦労しますが、トランスミッションを組み直すときに外さなければなりません。
※写真のEを取り付けたまま、トランスミッションを組み直すことはできません。→→→ トランスミッションの組立手順

結局、「 何を外せばよいのか 」 の答えは 「 外せるものは全部外しましょう 」 となります。

クランクケースに付いているギヤはバラバラになりますので、次項の 「 トランスミッションの組立 」 を完全マスターしておかなければなりません。

     
c.クランク接合ボルトの種類とその位置


ボルトで留めるときは、ボルトを長さで分けておいてからボルト穴に入れていきましょう。

練習で分解と組み立てを何度もやるときは、次の画像を印刷しておくと便利です。

  ボルトは5種類 12本。

  a:一番短い ( 首下 30㎜ )×5本 
      ①,③,④,⑥,⑦

  b:二番目に短い ( 首下40㎜ )×1本 
      ⑤

  c:三番目に短い ( 首下45㎜ )×1本 
      ⑩

  d:二番目に長い ( 首下 55㎜)×3本 
     ②,⑧,⑨

  e:一番長い ( 首下85㎜ )×2本 
      ⑪,⑫ 


  ボルトは 4種類 13本

  a:一番短い ( 首下40㎜ )×5本 
     ①,②,⑤,⑫,⑬

  b:二番目に短い ( 首下50㎜ )×5本
     ⑥,⑦,⑨,⑨,⑪

  c:二番目に長い ( 首下55㎜ )×2本 
      ④,⑩

  d:一番長い ( 首下60㎜ )×1本 
      ③ 

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選任のための法律知識・









クランクケース分解手順(経験者用)


★取り外したパーツは関係するものをまとめて「チャック付きポリ袋」に入れておくこと。
★組み立てるときには構成部品が全部揃っているか確認すること。
★分解以前の状態の情報収集のために分解状況をデジカメに撮っておくこと
★ネジロック使用部分は緩める前にホットガンでロック解除をすること。(150℃必要)
※写真は使い回しです。内部の汚いものはクランクシャフト右オイルシールの逆組みで赤錆地獄となっていたエンジン⑥です。
※分解未経験の方はリンクの部分を全て読んでください。
※分解はそれほど神経質になる必要はありません。外れるものを外していけば分解できます。
    「全パラ状態」になっても、組み立て手順に各ギヤのサイズや各ワッシャのサイズが記載されています。
     ただし、ワッシャ類は専用設計となって汎用品で代替することはできません。付いていた小物は全てポリ袋に入れておかなければなりません。


1.クラッチカバー・クラッチを取り外す

 12本のボルト取り外し。
 長さが違うのでまとめて袋に入れておく。

 まずはクラッチ取り外し。


 ウエスで回り止めをして、
 スプリングボルトを緩め、
プレッシャデスク、スプリング、デスクを取り外し。。
  ロックワッシャを平らにする。  スリーブハブに回り止めをしてナットを緩める。

※クラッチ構成部品については→→→こちら
※ジャダースプリングについては→→→こちら
※クラッチベアリングのN(22.0㎜)とRS(21.8㎜)の互換性については→→→こちら
※プライマリードリブンギヤの爪段差修正については→→→こちら


2.クラッチ室の部品を全て取り外す。


a.シフトカムとプライマリードライブギヤ以外

 a : 排気バルブガバナ→※働き
 b : キックスタータ
 c : キックスタータアイドルギヤ
 d : ギヤシフトシャフト
 e : シフトカム
 f : プライマリードライブギヤ
 aの排気バルブガバナは抜くだけです。
 ※排気バルブガバナについて→→→こちら


 bのキックスタータギヤも
 差し込まれているバネを抜けば 簡単に外せます。
 一番内側にワッシャがあるのでお忘れなく。
 cのキックスタータアイドルギヤはサークリップ留めです。
  サークリップは痛んでいなくても常にNEWを。
 dのギヤシフトシャフトは抜くだけ。


b.シフトカムの取り外し

・ 印の皿ネジにはネジロックが塗ってあるので解除
 ・できるだけショックドライバーを使いましょう。
の部分を右手の親指と人指し指の爪で挟んで、
  上へ抜く。
・皿ネジサイズはM6×30とM6×15
・このピンにもネジロックが塗ってあるので解除。
・取り外しにはM12のディープソケットが必要。
・ピンが外れたらシフトカムストッパプレートを外す。
 
・シフトカムストッパを外す。
・ここにはネジロックは塗られていない。
・小さなワッシャがあるのでお忘れなく。
・シフトカムについては→→→こちら


c.プライマリードライブギヤの取り外し

・ギヤを固定してボルトを緩める。
・このボルトにはネジロックが塗布してある。 
・ギヤは引っ張れば外れる。
・ギヤの下にスペーサがあるので引き抜く。
・オイルシールは凹部がこちら向き(外側)。
・金属プレートの平坦面が見えていたら逆組み。 

※スペーサについて→→→こちら


3.ジェネレーターを取り外す


・カバー取り外し。
 
・回り止めをしてナットを外す。
・ナットはネジロック指定なので解除する。 
・セパレーターの脚ボルトのねじ込み過ぎ注意→こちら
※ローター取り外しの注意→→→こちら


・まずの三本を外してコイルが自由に動くようにする。。
はコイルが邪魔になってドライバーが届かない。
・コイルをずらせて土台を留めているネジを外す。
・ネジ山を痛めないようにショックドライバー使用。
・ 土台の両方のネジを外す。


4.右クランクケースを取り外し

・左クランクケースの接合ボルト13本を取り外し。
・チャック付きぼり袋に入れる。
・右クランクケースにセパレーターをセット。 ・プライマリードライブギヤ取り付けボルトを
  クランクシャフトにねじ込んでメスネジの損傷を防止する。


5.クランクケース内のギヤを取り外す

・ギヤはできるだけバラさないようにセットで外す。
・そのためにクランクケースを寝かす。
・二本のシフトフォークシャフトを抜く。
・前側からはシャフトとシフトフォーク(№3)を外す。
・後側からは上側のシフトフォーク(№1)を外す。
・シフトカムを外す。(抜くだけ)
※シフトフォークについては→→→こちら


・ドライブシャフトギヤの
   一番上のギヤ(1stドリブンギヤ)を外す。
・カウンターシャフトギヤをそのまま外す。 ・シフトフォーク(№2)を外す。
・残ったドライブシャフトギヤをそのまま外す。


6.クランクケース左側を外す



これが、エンジントラブルを起こしたエンジン①です。

クランクケース内の各部品はきれいなものでした。
「レース用」ということで技術のある人がしっかりとメンテナンスしていたと考えられます。


つづく。




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