用語の基礎知識

1.犯罪の成立

犯罪が成立するためには次のことが必要です。
①その行為の外形が法律に定めた犯罪メニューに該ること。
②その行為の状況から見て、その行為が「悪いもの」であること。
③その行為者を非難できる場合であること。

①について
・犯罪メニューのことを犯罪の構成要件といいます。
・①はその構成要件に該るかどうかの判断だから構成要件該当性といいます。
・①は「その行為が犯罪になるかどうか」の最初の篩(ふるい)です。

②について
・「悪いものであるかどうか判断」を「違法性の判断」といいます。
・「違法性がない場合」として刑法は正当行為(35条),正当防衛(36条),緊急避難(37条)を定めていますが
   刑法に定められていない 自救行為も認められています。
   これらは「その行為の違法性をなくするもの」なので違法性阻却事由といいます。
・これが第二の篩で、「違法性の判断」といいます。

③について
・ここでは、行為者の責任能力(39条,41条),故意(38条),過失、適法行為の期待可能性が検討されます。
・故意では「人を熊だと思った」場合のような事実の錯誤や,
   「それが許されると思っていた」法律の錯誤,が問題とされます。
   事実の錯誤の場合は「故意なし」で、通常人なら錯誤しない場合が「過失」、
   法律の錯誤は「故意あり」とされます。→ こちら
・「適法行為の期待可能性」とは、
   「行為のときの具体的状況において、その違法行為をせずに、他の適法行為をすることが期待できること」。
   つまり、「そのときの状況において、通常人ならその違法行為をせずに、適法な行為をすると考えられる場合」は
   「適法行為の期待可能性あり」で「行為者は非難に値する」ので犯罪成立。
   「通常人でもその違法行為を行ってしまうと考えられる場合」は
   「適法行為の期待可能性なし」として「行為者は非難に値せず」犯罪不成立。
・これが最後の篩で「責任判断」といわれます。

① → ② → ③で残ったものが「犯罪」となります。
警備員の資格講習で「犯罪とは構成要件に該当する違法有責なもの」と説明されるのはこのことです。

犯罪には法律で定められた刑罰が課せられますが、法律で定められているのは「最大限の刑罰」です。
行為者に与えられる実際の刑罰は、動機,反省の度合い,更生の可能性,損害の填補,社会的制裁などを考慮してその範囲内で具体的に決められます。

※注意
以上の各要素をどこで説明するか、どの程度のものにするかは学説で細かく分かれています。
上の説明ではその点について「あやふやにしたり、ごまかしたり」しています。
背景には「犯罪とは何か、刑罰とは何を罰するものか、刑法とは何か」の対立があります。
これを究めようとすると一生では足りません。
これらの解明は大学の先生に任せて、警備員は深入りしないようにしましょう。

2.

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