●養子縁組届➀ 基礎知識

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庁舎の宿日直業務は「施設警備というよりも庁舎業務の夜間窓口・休日窓口」というものです。
「施設内巡回による安全確認,閉場・開場」の他に「住民からの各種問い合わせ,道路障害対応,苦情対応や戸籍届の受理」を行います。
そして、後者の方に重点が置かれています。

『住民の皆様への行政サービスです。ここまでやります!24時間・365日いつでも戸籍届を受理します!』
と花火を打ち上げても、庁舎の職員がそれをやるのではありません。
それをやるのは「違法労働前提の安値で業務委託をした警備員」なのです。 → こちら

問題は戸籍届受理手続。
婚姻届,出生届,離婚届,死亡届のほか、
離婚の際に称していた氏を称する届,姻族関係修了届,認知届,入籍届,分籍届,転籍届,
養子縁組届,養子離縁届,不受理申出,不受理申出の取り下げ。

これらは郵便物のように「届出書を預かる」のではありません。
届出書の不備をチェックして正式な届出として「受理」するのです。
「受理」とはその届の効力を発生させる行為です。
警備員がその届出書を受け取ったときに婚姻,離婚,認知,養子縁組,養子離縁などが成立するのです。

戸籍係の職員なら経験もあるし、疑問が生じたら上司や管轄機関に訊ねることができます。
しかし、警備員は独りでそれを解決しなければならないのです。
『私は警備員だから難しいことは分かりません。庁舎が開いているときに来てください。』とは言えないのです。
届を持ってくる者には「その警備員は庁舎の職員」なのですから。

もちろん、各種届出書の記載例,確認点,チェックシートは用意されています。
しかし、それは婚姻,出生,死亡届まで。
離婚届から簡単になって、あとは各種届の記載例が一枚だけ。

ここでは各種届の中で「氏と戸籍が交錯する」養子縁組届を説明します。
宿日直業務を行っている警備員さんは手待ち時間に少しずつ読んでください。

今日の夜に養子縁組届を持ってくるかもしれませんから。

なお、条文(茶色字)は検証のためのものです。読み飛ばしてください。

また、当方は「旗振りと守衛の成れの果て」です。
間違いがあっても責任はとりません。すべて自己責任でお願いします。
「間違い指摘」や「質問」にも一切応じません。

1.養子縁組の成立要件

養子縁組が成立するには次の➀~➆が必要です。

➀縁組意思の合致
➁養親は20歳以上
➂養子が養親の尊属や年長者でないこと
➃後見人が被後見人を養子にするときは家庭裁判所の許可が必要
➄未成年者を養子にするには家庭裁判所の許可が必要
➅夫婦が未成年の養子を取る場合には夫婦共同縁組でなければならない。
   夫婦の一方が「成年の養子を取る場合,養子になる場合」は共同縁組は必要ないが配偶者の同意が必要。
➆養子と養親の届出が受理されること。

これをもう少し詳しく説明しましょう。

➀ 縁組意思の合致

〇意思能力があれば単独で縁組できる(民法799条)

・縁組は本人の意思決定に基づいてのみ有効に成立 → 代理に親しまない行為
・婚姻と同じです。

・民法799条(婚姻の規定の準用)
「   第738条及び第739条の規定は、縁組について準用する。」

・民法738条(成年被後見人の婚姻)
「   成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない。」


・民法739条(婚姻の届出)
「   婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
   2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、
      又はこれらの者から口頭で、しなければならない。」

〇「縁組意思の合致」の例外

15歳未満の者は法定代理人を介してのみ縁組できる(民法797条)。
   → 15歳未満の者は画一的に縁組意思能力を欠くとされる

〇法定代理人
・本人が未成年者の場合 → 親権者(民法818条)
・親権者がいないとき → 未成年後見人(民法第838条1号)
・本人が成年者の場合 → 成年後見人(民法8条)

・民法797条(15歳未満の者を養子とする縁組)
「   養子となる者が15歳未満であるときは、
      その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
   2 法定代理人が前項の承諾をするには、
      養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、
      その同意を得なければならない。
      養子となる者の父母で親権を停止されているものがあるときも、同様とする。」


●夫婦が縁組する場合で一方が意思表示できないときは他方が双方名義で縁組できる。(民法796条)

・民法796条(配偶者のある者の縁組)
「   配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。
      ただし、配偶者とともに縁組をする場合
      又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。」

➁ 養親となる者が20歳以上であること(民法792条)

・民法792条(養親となる者の年齢)
「   20歳に達した者は、養子をすることができる。」

➂ 尊属や年長者は養子にできない(民法793条)

・民法793条(尊属又は年長者を養子とすることの禁止)
「   尊属又は年長者は、これを養子とすることができない。」

➃ 後見人が被後見人を養子にするときは家庭裁判所の許可が必要(民法794条)

・被後見人の利益を守るため。

・民法794条(後見人が被後見人を養子とする縁組)
「   後見人が被後見人(未成年被後見人及び成年被後見人をいう。以下同じ。)を養子とするには、
      家庭裁判所の許可を得なければならない。
      後見人の任務が終了した後、まだその管理の計算が終わらない間も、同様とする。」

⑤ 未成年者を養子にするには家庭裁判所の許可が必要(民法798条)

ただし、自己または配偶者の直系卑属を養子にする場合は許可不要

・民法798条(未成年者を養子とする縁組)
「   未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
      ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。」

・養子となる者が15歳未満で法定代理人の承諾で縁組する場合(797条)
   養子となる者が15歳~18歳未満で自分の意思で縁組する場合
   のどちらも家庭裁判所の許可が必要。

・親が未成年の養子を食い物にしたり、親の都合で養子に出したりすることを防ぐため。

・家庭裁判所の許可があったときは縁組が成立するのではない。
   家庭裁判所の許可は成立要件の一つに過ぎない。
   縁組が成立するには届出が必要だし、他の要件を満たしていなければ成立しない。
   また、許可がなくても縁組届が受理されれば縁組は成立する。
   もちろん、「家庭裁判所の許可がないこと」は取消原因になる。

⑥ 夫婦共同縁組と配偶者の同意

〇法改正の経緯

・昭和62年(1987年)民法改正前は「夫婦が養子を取るにも、夫婦が養子になるにも」
   常に一緒(共同縁組)でなければならなかった。
   その目的は「家庭の秩序,配偶者間の平和を維持する」ため。
   但し、一方の配偶者が一方の子(嫡出子,非嫡出子)を養子にする場合は単独縁組でよかった。

・しかし、「夫婦が一緒になって未成年の養子を取る」ことには妥当性があるにしても、
   「夫婦が一緒になって養子になる」ことには妥当性がないと批判されていた。

・この点が考慮され次のように改正された
   「未成年の養子を取る場合には共同縁組」
   「それ以外は単独縁組ができるが配偶者の同意が必要」

・つまり

a.配偶者のある者が未成年の養子を取る場合 → 夫婦共同縁組(民795条)
b.配偶者のある者が成年の養子を取る場合 → 配偶者の同意があれば単独縁組(民796条)
c.配偶者のある者が養子になる場合 → 配偶者の同意があれば単独縁組(民法796条)
※bとc(同意+単独縁組)の場合でも共同縁組をすることができる。


これをもう少し詳しく説明しましょう。

a.配偶者のある者が未成年の養子を取る場合

イ.原則は配偶者と共に共同縁組(民法795条)
.配偶者の嫡出子を養子にする場合は単独縁組でも可
(民法795条但書)
    但し、配偶者の同意が必要
(民法796条)
    家庭裁判所の許可は不要
(民法798条)

〇嫡出子と非嫡出子と認知

・法律上の婚姻中に生まれた子 → 嫡出子 → 法律上の親子関係あり
・そうでない子 → 非嫡出子 → 法律上の親子関係なし。

・非嫡出子を父親が認知することによって法律上の親子関係ができる。
   但し、非嫡出子が嫡出子になるわけではない。

・嫡出子と非嫡出子の相続分には差がある。

・民法795条(配偶者のある者が未成年者を養子とする縁組)
「   配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。
      ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合
      又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。」

・民法796条(配偶者のある者の縁組)
「   配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。
      ただし、配偶者とともに縁組をする場合
      又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。」

・民法798条(未成年者を養子とする縁組)
「   未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
      ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。」

(例)

・田中花子と山田太郎が婚姻 → 「山田太郎(筆頭者),山田花子(妻)」

・山田一郎が生まれる(嫡出子)

・山田花子と山田太郎が離婚 → 山田花子は田中花子となり新戸籍を作る。

・田中花子の戸籍「田中花子(筆頭者)」
・山田太郎の戸籍「山田太郎(筆頭者)、山田花子(妻)山田一郎(子・未成年者)」

・田中花子が川上誠と婚姻 → 「川上誠(筆頭者),川上花子(妻)」

・川上誠が配偶者・川上花子の嫡出子・山田一郎(未成年者)を養子にする場合

・山田一郎は川上誠の配偶者・川上花子の嫡出子だから

・単独で縁組できる。(民法795条但書)
・配偶者・川上花子の同意が必要。(民法796条)
・家庭裁判所の許可不要(民法798条)
・15歳未満なら法定代理人が代諾しなければならない。

・川上誠が山田一郎(未成年者)と単独養子縁組

・山田一郎は川上一郎となり川上誠の籍に入る。

・川上誠の戸籍「川上誠(筆頭者,養親),川上花子(配偶者),川上一郎(養子)」
・川上一郎の元の戸籍「山田太郎(筆頭者)、山田花子(妻)山田一郎(子)」

〇もしこの子供が非嫡出子だったら川上花子と一緒に共同縁組をしなければならない。

・田中花子が非嫡出子・田中一郎を産む。 → 「田中花子(筆頭者),田中一郎(子)」

・田中花子が川上誠と婚姻 → 田中花子は自分の戸籍から出て川上誠の籍に入る。

・川上誠の戸籍「川上誠(筆頭者),川上花子(妻)」、
・田中花子の元の戸籍「田中花子(筆頭者),田中一郎(子・未成年者)」

・川上誠が田中一郎(未成年者)を養子にする場合は

・田中一郎が川上誠の配偶者・川上花子の非嫡出子だから

・配偶者・川上花子と一緒に共同縁組をしなければならない。
・ただし、田中一郎は川上花子の直系卑属だから家庭裁判所の許可は不要(民法798条)

・川上誠の戸籍「川上誠(筆頭者,養父),川上花子(養母),川上一郎(養子)」
・田中一郎の元の戸籍「田中花子(筆頭者),田中一郎(子)」 → 除籍

〇掘り下げ : ここで配偶者の嫡出子と非嫡出子を区別する理由は何か?

妻の連れ子(非嫡出子)を養子にする場合、夫の単独縁組であろうと夫と妻の共同縁組であろうと、
夫と「妻の非嫡出子」の間には法律上の親子関係ができる。

夫の単独縁組の場合は妻とその非嫡出子の間には養子縁組による法律上の親子関係はできないが、
母親と子は分娩という事実により法律上の親子関係が発生し、
母親の認知(民法779条)は不要とするのが通説判例。
だから、妻の非嫡出子は夫の単独縁組で夫(養父)との法律上の親子関係が、
母の分娩という事実で母(実母)との法律上の親子関係ができる。
そのため、非嫡出子の場合だけ夫婦共同縁組でなければならない理由がない。

しかし、これは夫が妻の生んだ非嫡出子を養子にする場合のこと。
妻が自分の生んだ非嫡出子を養子にする場合はどうだろう。

例えば、
・田中花子が非嫡出子・田中一郎を生んだ → 「田中花子(筆頭者),田中一郎(子)」

・田中花子が川上誠と婚姻
 → 「川上誠(筆頭者),川上花子(妻)」、「田中花子(筆頭者),田中一郎(子・未成年)」

・川上花子が単独で田中一郎を養子にする。 → 田中一郎は川上一郎となって同じ籍に入る。
 → 「川上誠(筆頭者),川上花子(妻・養母),川上一郎(養子)」

・川上一郎は実の父から認知されても非嫡出子であることには変わりがない。
  そこで、この養子縁組を機会に嫡出子としての地位を与えるために夫婦共同縁組としたのだろう。

嫡出子の場合は夫婦共同縁組でも単独縁組でもよい。

これは、その子がすでに嫡出子であるので実父との間に法律上の父子関係がある。
だから、養子縁組により父子関係を作り出す必要はないと考えたのだろう。

もし、「非嫡出子に対しても共同縁組を要しない」とすると、
子は養子縁組をしなかった親との関係では依然として非嫡出子ということになり、
子供の利益の観点から望ましくない。

「法律上の嫡出子を作り出す」養子縁組をする以上、
非嫡出子には両親の嫡出子としての身分を与えた方がよいとの判断による」民法Ⅳ.263頁

〇参考 : 自分の子を養子にすることは事実上することはなくても、法律上は可能。

養子の欠格事由に「自分の子」というものはないし、
民法798条は「自己の直系卑属を養子にすること」を認めている。

また、「配偶者の未成年の非嫡出子を夫婦共同縁組する」場合、
その子の母親は「自分の子を養子にする」ことになる。

・民法798条(未成年者を養子とする縁組)
「   未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
      ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。」

〇単独縁組ができる場合でも共同縁組をすることができる。(民法Ⅳ・263頁)

〇配偶者の同意を欠いた縁組届はどうなるか

・配偶者の同意を欠いた縁組届は受理されない(民法800条)が、 
   受理された場合にはその縁組が無効になるわけではなく、同意をしていない者から取消請求ができるだけ。
   更に、その縁組を知ってから6カ月を過ぎると取消請求ができなくなる。(民法806条の2)

・民法800条(縁組の届出の受理)
「   縁組の届出は、その縁組が第792条から前条までの規定その他の法令の規定に
      違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。」

・民法806条の2(配偶者の同意のない縁組等の取消し)
「   第796条の規定に違反した縁組は、縁組の同意をしていない者から、
      その取消しを家庭裁判所に請求することができる。
      ただし、その者が、縁組を知った後6箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。

   2 詐欺又は強迫によって第796条の同意をした者は、その縁組の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
      ただし、その者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後6箇月を経過し、
      又は追認をしたときは、この限りでない。」

b・c.配偶者のある者の一方が、成年の養子を取る場合・養子になる場合

イ.原則は配偶者の同意が必要(民法796条)
ロ.配偶者と共同縁組をする場合,配偶者が意思表示できないときは同意不要(民法796条但書)

・民法796条(配偶者のある者の縁組)
「 配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。
   ただし、配偶者とともに縁組をする場合
   又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。」

(例) 川上誠が田中一郎(成年者)を養子にする場合

・川上誠の戸籍「川上誠(筆頭者),川上照子(妻)」
・田中一郎の戸籍「田中太郎(筆頭者),田中一郎(子)」

〇川上誠が配偶者・川上照子の同意を得て単独縁組をする場合。

・川上誠の戸籍「川上誠(筆頭者,養親)、川上照子(妻)、川上一郎(養子)」
・田中一郎の元の戸籍 「田中太郎(筆頭者),田中一郎(子)」

・川上誠と川上一郎の間に法律上の親子関係(親-嫡出子)
・川上照子と川上一郎との間には法律上の親子関係なし。 

・ 川上誠が子(川上一郎)連れで田中照子と婚姻したのと同じような関係となる。

〇川上誠が川上照子と共に共同縁組をする場合(配偶者の同意不要 → 同意があるのと同じ)

・川上誠の戸籍「川上誠(筆頭者,養親)、川上照子(妻,養母)、川上一郎(養子)」
・田中一郎の元の戸籍「田中太郎(筆頭者),田中一郎(子)」

・川上誠,川上照子と川上一郎との間に法律上の親子関係(親-嫡出子)

・川上誠と川上照子の間に川上一郎が生まれたのと同じような関係となる。。

➆届出

〇届出をしなければ(届出が受理されなければ)養子縁組は成立しない。

〇届出人
・養子になる者が15歳以上のとき → 養子になる者と養親になる者

・養子欄と養親欄に届出人欄がある。

・養子になる者が15歳未満のとき → 養子になる者の法定代理人と養親となる者

・左頁の下の欄に法定代理人の届出人欄がある。

・民法799条(婚姻の規定の準用)
「   第738条及び第739条の規定は、縁組について準用する。」

・民法739条(婚姻の届出)
「   婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
   2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、
      又はこれらの者から口頭で、しなければならない。」

・民法738条(成年被後見人の婚姻)
「   成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない。」

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