- 労働保険の基礎知識
- 届出書,提出先,添付書類,期限
- 届出書の書き方
- 退職したときの手続き
- 労働保険年度更新(次年度保険料の申告・納付・清算)
4.退職した時の手続き
退職した労働者は雇用保険の給付手続きをします。
そのために必要なのが離職票1と離職票2。
雇用者はこれを退職した者に交付しなければなりません。
この離職票1・2を得るためには次の書類が必要です。
・雇用保険被保険者資格喪失届
・雇用保険被保険者離職証明書
どちらも、退職の日の翌日から起算して10日以内に提出しなければなりません。
※雇用保険法7条・雇用保険法施行規則7条,罰則/雇用保険法83条
なお、退職者の給与所得・退職所得(退職金)の源泉徴収票を退職から一カ月以内に交付しなければなりません。
→ こちら
a.雇用保険被保険者資格喪失届
●用紙
雇用保険被保険者資格取得届の後に交付される書面(カード)の裏面がそれです。
●記載
必要事項を記載して提出すればOKです。
「記載する項目」が分からないときはハローワークの担当に聞きましょう。
担当の方も「間違いを修正するより楽」なので嫌がらずに教えてくれます。
●交付されるもの
・雇用保険被保険者離職票1/資格喪失確認通知書(被保険者通知用)
・雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(事業主通知用)
離職票1の方を退職者に送付します。
ハローワークの方で退職者に送付する分として離職票2と一緒にホチキス留めをしてくれます。
b.雇用保険被保険者離職証明書
●用紙
複写式のためダウンロードできません。
ハローワークでもらいます。書き方も説明してくれます。
●記載事項
退職者の住所,氏名,被保険者番号、退職理由。
事業者の事業所番号,所在地,名称,事業主名,支払った賃金など。
●交付されるもの
複写1頁目が事業主控え、2頁目がハローワーク用、3頁目が離職票2。
この3頁目(離職票2)が退職者に送付するものとなります。
●添付資料
記載内容を証明するために次のものが必要です。
・退職者の賃金台帳と労働者名簿
・退職者の出勤簿 or タイムカード
・退職願い
全てコピーでOK。確認した後返却されます。
●注意事項
・注意1.支払った給与は「雇用保険加入日~退職日」までの給与
前職を退職する前に後有給休暇をまとめて取り、その途中で働き始めることがあります。
そのような労働者の雇用保険被保険者資格取得届をするとハローワークの方で雇用保険を切り換えてくれます。
この場合、前職の退職日は有給休暇の最後の日。
前職の雇用保険被保険者資格喪失はその日、新しい雇用保険被保険者資格取得はその翌日です。
支払った給与は「新しい雇用保険被保険者資格取得日~退職日」に支払ったものです。
実際に支払った給与ではありません。
資格取得日は資格喪失届の右上に印字されています。
この期日以降の支払額を記載します。
・注意2.その期間に「支払った給与・支払う給与」を書く
賃金締め日が月末、賃金支払日が翌5日なら、12/31退職なら12月分の賃金はまだ支払われていません。
源泉徴収票ならこの賃金は含めません。
しかし、離職票2は失業給付額算定の基準になるのでこの未払い分も含めます。
・注意3.給与とは「労働の対価」
有休休暇は含みますが「有休休暇の買い上げ」は含みません。
支給総額から「労働の対価以外のもの」を差し引いた額です。
しかし、「何が計上されて何が計上されない」のかの判断が難しいので、
賃金台帳や給与明細を持参して担当に教えてもらいましょう。
担当もその方が効率的なので「手取り足取り」教えてくれます。
・注意4.離職の日以前の賃金支払状況等
⑧被保険者期間算定対象期間
・離職日から遡って1年間、1か月ごとに区切る。
・離職日が7月10日なら「6月10日~離職日」,「5月10日~6月9日」,「4月10日~5月9日」…。
と一年分。
⑨⑧の期間における賃金支払い基礎日数
・⑧で区切った1か月で働いた日数。
・宿日直業務のように暦をまたぐ場合は2日と数える。
・有休 ( 1有休=2労働日 ) は1日と数える。 ( この理由が不明 )
⑩賃金支払対象期間
・実際の締め日を基準にして離職日から遡って1年間、1か月ごとに区切る。
・離職日が7月10日で末締めなら、「7月1日~離職日」,「6月1日~6月30日」,「5月1日~5月30日」,「4月1日~4月30日」…。
・労働日数は⑨と同じ。
⑫賃金欄
・⑩の月毎に支払った賃金。
この部分はややこしいので賃金台帳を提示して教えてもらいましょう。
担当に賃金台帳を渡せば担当が計算して書いてくれます。
担当もその方が楽です。
・注意5.退職者の記名欄
雇用保険被保険者資格喪失届には離職者が記名する欄があります。
2頁目の⑮ / 「この証明書の記載内容は相違ないことを認めます」欄
2頁目の⑯ / 「離職者本人の判断(〇で囲む)」欄
この欄は本来退職した者が記名するべきですが、事業主や事務担当者が記名してもOKとされています。
わざわざ、退職者に用紙を送って記名してもらう必要はありません。
事業主や事務担当者が記名する場合は
・職名
・記名
押印は不要ですが、次に説明するように捨て印が必要なのでの場所に押印するために印鑑を持参してください。
・注意6.2ページ目欄外に捨て印を押す
上で「事業主や事務担当者が記名する場合に押印不要」ですが、
2頁目の左欄外に「捨て印」を要求されます。
理由を聞くと
「以前は、退職者記名欄に事業主や事務担当者が記名する場合に押印が必要だった。
しかし、自書記名の場合は押印不要になったので捨て印だけ押してもらっている」
捨て印は押印が不明な場合に対処するためのものだから、
「押印不要なのに捨て印が必要」というのはおかしなことです。
まあ、「押印文化の名残」なのでしょう。
※2023年7月の手続きでは「捨印不要」となりました。
・注意⑦「自己都合」と「会社都合」
退職する者から「退職理由を会社都合にして欲しい」という要望をたびたび受けます。
すぐに雇用保険給付がもらえるからでしょう。
事業主が「会社都合」だと言えばすんなりと会社都合になります。
しかし、それが事実に反していれば事業者が「雇用保険給付の不正受給」に加担したことになります。
詐欺罪の共同正犯になりますのでご注意ください。
しかし、退職者からの要望を一蹴するとあとあとのトラブルが起こることがあります。
退職者の中には「飛ぶ鳥後を引っ掻き回す」者がいるからです。
このような場合はハローワークの担当に判断してもらいましょう。
退職願いと雇用条件通知書を示し、退職に至った状況を説明し、「退職者が会社都合にして欲しいと言っているのでトラブルをさけるために判断して欲しい」と言えば担当が判断してくれます。
退職者にはそのことを説明しておきましょう。
不服があっても退職者とハローワークの問題になるだけです。
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