★この頁はこちらの続きです。
6年振りにこの公立学校の警備を受注しました。
前警備担当の最終日、引き継ぎにやって来ました。
「守衛のオッチャンワールド」を「施設警備」に戻してから6年間が経っています。
さてさてどうなっているでしょう。
①警備室のニコチン臭
警備室のドアを開けたとたんに鼻を突くニコチン臭。
施設内は全面禁煙。警備室内は火気厳禁。
机の前には報告書を書いている警備員。
私『タバコを吸っているの?』
警備員『警備室内は禁煙だよ!』
しかし、机の上には百円ライター。
そう言えば警備室の裏にはソファー。
なんのため?
ニコチン臭を消すために「タバコ消臭元ストロング」を5本セット。
二カ月かかりました。
②警備員の身なり
引き継ぎは閉場業務に同行。
内容は教職員と学生が帰った後の施設内点検と施錠。
以前と同じだけど変更されたことがあるといけないから一応。
その警備員の身なりは
・名札(身分章)なし、制帽なし。
・制服ズボンは私物のチェック柄。
・右手に懐中電灯と鍵束をジャラジャラ。左手はズボンのポケットに入れる。
・ヨレヨレのスニーカーの踵を踏んで「摺り足」で歩く。
・突き出た腹からチェックのズポンがずり落ちるので、ときどき立ち止まってズボンを上げる。
警備会社が違うからタメ口は仕方がないけれども、この身なりにこの動き。
これで施設警備員と言えるの?
だんだんと腹が立ってきたので、最後にどやしつけてやりました。
③施設内点検は窓を閉めるだけ?
施設内点検は「施設内の異状なしを確認し、開いている窓やドアを閉める」だけではありません。
「施設内を無人にする」ことが必要です。(入待ち・開き待ちの排除)
そのためには歯磨きチューブを押し出すように、
施設を上から順に1階の出口まで点検してこなければなりません。
作業を途中で止めてその場所から離れたら、
その場所から続きからやるのではなく、初めからやり直さなければなりません。
潜んでいる不審者が点検を終わった階(場所)に移動するからです。
これを全く理解していません。
閉場業務を早く終わらせて仮眠したいので教職員が退出する時刻前から閉場業務を始める。
あちらこちらから「帰るから閉めてください」との連絡が入る。
その度に一つの施設の閉場業務を中断して別の施設に向かう。
そして、戻ってきて中断したところから再開する。
彼にとっての閉場業務は「窓閉め・ドア閉め」だからこれで問題はないのです。
あれっ?窓のブラインドを一番上まで上げないの?
警備員『上の窓が開いていることはないからネ!』
これでは「窓閉め」も満足にできていません。
屋上への出入口は点検しなくてもいいの?
『ドアに鍵がかかっているからネ。この鍵で開けるんだよ!』
窓は誰でも自由に開けられるから屋上へは出入り自由なンだけど…。
これでは「ドア閉め」も充分にできていません。
④やたらと多い鍵
最後に鍵の引き継ぎ。
6年前よりやたらと多くなっています。
「あれも持とう、これも持っていれば便利だ。」
いちいち事務局のキーボックスに取りに行き戻すのが面倒だから。
しかし、警備員の携帯する鍵が多ければ多いほど、
警備員が襲われて鍵を奪われたときの被害が大きくなる。
だから、警備員の携帯する鍵は最小限。
必要が生じたときはその都度 事務局のキーボックスから取り出して戻す。
これが鉄則。
翌日事務局に話して携帯する鍵を半分にしてもらいました。
これでやっとキーケースに収まります。
それと、あの屋上のドアの鍵。
チェックしたら錠が変わって使えません。
あの警備員は使えない鍵を何年間も持っていたのです。
『鍵が使えるかどうかくらい点検しておかンかいッ!』
⑤業者の時間外出入り
業務引き継ぎから数日後。
仮眠中に警備室のドアを激しく叩く音。
時間は午前1時。
緊急事態かと思って警備室のドアを開けると、そこには食材搬入業者。
『食材を食堂に搬入するから食堂を開けてほしい!』とのこと。
『前の警備員さんは夜中のいつ来ても開けてくれた。』とか。
近隣の平穏維持のため、「22時~5時」は食材搬入を含め全ての作業が禁止。
それを現場の警備員が勝手に変えていたのです。
学校側はこのことをまったく知らなかった。
さっそく食材業者と食堂に「作業時間の厳守」を指示。
翌朝、顔を合わした清掃のオバチャンが、
『朝4時前に入ることや土日も入ることがあるから、また鍵をあけてネ。』
『いやいや、朝5時前の作業は禁止だし、土日は清掃の作業予定日じゃないでしょう?』
『前の警備員さんはいつでも気安く開けてくれたヨッ!』
学校側はこれも知らなかった。
当然、清掃業者に指示。
「作業予定日以外に入るときは作業届を出して学校側の許可をとる。
作業予定日でも作業時間外の作業は禁止。」
警備会社が警備員を教育していなかったのか、
現場の警備員が教育されたことを無視していたのか。
少なくとも、現場の警備員は「施設警備員」ではなく「守衛のオッチャン」だったことは確かです。
守衛のオッチャンは利用者の言われるがままに「決められたルール」を平気で変えてしまうのです。
⑥休日は全施設を終日開放!
短大だから休日でも教員が研究室にやって来る。
研究室は各施設に散らばっている。
警備員はやって来た教員の求めに応じてその施設を開錠し、教員が中から施錠する。
教員が施設から退出するときは警備に連絡して教員が出たあと警備員が施錠する。
前の警備員は、この「その都度開錠・施錠」が面倒くさいので
全施設を「終日開放」としていたのです。
これなら朝に全施設を開錠し、夜に全教員が帰ったあとに施錠するだけ。
教員は出入り自由で警備員も楽ちん。
いやいや、そんな問題ではありません。
「事件・事故を防ぐため、施設は必要なときに開けて必要がなくなればすぐに閉める」
そのために警備員が鍵を管理しているのです。
早速、学校と相談して「その都度開錠・施錠」に戻してもらいました。
今まで出入り自由だった教員は不満の様子。
最近やっと馴れてもらいました。
警備レベルを上げれば施設利用者の不便が増え、施設利用者の不便を減らせば警備レベルが下がる。
施設管理者は施設に生じるであろう事件・事故の危険性を考えてこの二つを調整する。
しかし、施設利用者の不便をなくしてしまえば警備そのものが必要なくなる。
警備が入れば施設利用者に何らかの不便が生じる。
警備自己流の守衛のオッチャンにはこんな当たり前のことが理解できません。
「施設利用者の不便がなくなってなぜ悪いの??」
もっとも、このオッチャンは「施設利用者の不便」ではなく「自分の不便」のためでしたが。
こんなオッチャンに鍵を預けていたら大変!
⑦その後
通常、このような業務受注では警備業者が変わっても現場の警備員は変わりません。
次の警備業者は前の警備業者から警備員をそのまま引き継いで雇います。
次の警備業者は新しい警備員に業務を教えなくてもいいし、
前の警備業者はその警備員に別の仕事を与えなくてもいいからです。
私もそのつもりでしたが「このレベルの警備」をやられたのではたまったものではありません。
ここまで来ると矯正するのも不可能です。
新人二人を採用して育てました。
私にどやしつけられたあの警備員、いや「守衛のオッチャン」は今どうしているのでしょうか?
どこかでまた「守衛のオッチャンワールド」をこしらえて棲息しているのかもしれません。
彼らの生命力は並大抵のものではありませんから。
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