2023年1月にLA-GG3 ( 1500㏄・NA・4WD・MT ) から CBA-GH8 ( 2000㏄・ターボ・4WD・MT ) に乗り換えました。
GG3 に比べ GH8 のクラッチが重いので「ばくばく工房」のシリンダー内径拡大レリーズを試してみました。
取り付け・エア抜き,ミートポイントの調整,インプレッションについて書きます。
GH8 については最後に。
- レリーズ交換とエア抜き
- ミートポイントの調整
- 内径拡大レリーズと GH8 のインプレッション
1.レリーズ交換
a.ばくばく工房の内径拡大レリーズ
純正のクラッチレリーズの内径を拡大しそれに適合するピストンを入れたものです。 → こちら
リペアキット ( 交換ピストンセット ) もついでに入手しました。
純正レリーズを加工しているのでそのまま取り付けられます。
ピストン径刻印は純正ボディを使っているので「13/16(インチ)」となっていますが、
ピストン径ノギス実測で22.2㎜φありました。
純正ピストン=25.4㎜×13/16=20.6375㎜φ ( ノギス実測で20.5㎜φ )
22.2×22.2÷ ( 20.6×20.6 ) ≒1.16
ピストン面積が1.16倍になったのでレリーズピストンの作動力は1.16倍。
つまり「踏力が16%前後軽減」 ( 説明書 ) 。
ペダル側のマスターシリンダーは同じでクラッチ側シリンダーのピストン径が大きくなったので、
踏力は小さくなりますが、フルードの流量がたくさん必要となりペダルストロークが長くなります。
純正の「重いクラッチ」を4か月使ったあとの交換です。
b.インタークーラー取り外し
クラッチレリーズはインタークーラーの下にあるので、まずインタークーラーを取り外します。
・◯:M8×首下30㎜フランジ×2本
・a:取り付けボルト ( M8×首下30㎜フランジ ) ×2を外す。
・b:取り付けボルト ( M6×首下20㎜ ) ×2を外す。
・d:インタークーラー取り付け時に邪魔になるので外す。
この他にcの差し込み部のバンドを緩めます。
cを外すのはマイナスドライバーを差し込み、はめるときはシリコングリス塗布。
各ボルトの「取り付けトルク」を知ろうと「取り外しトルク」を測定しましたが、
「測定できるほどのトルク」ではありませんでした。
「取り付けトルク」を気にすることはないようです。
●注意
フィンは指で押しただけで簡単に潰れてしまいます。
できるだけフィン部に触らないようにして取り外します。
フィン部を潰した場合は細いマイナスドライバーで「起こして」修復。
c.レリーズ交換
●クラッチレリーズ
これがクラッチレリーズです。
油圧でクラッチシフターを押すようになっています。
◯はブリードスクリュー。ここからオイル ( クラッチフルード ) を排出します。
なお、オートバイのクラッチレリーズはこんな形です。 → こちら
どちらも「一室」の単純なものです。
油圧ラインです。
スタートはクラッチペダル側のマスターシリンダーです。
●レリーズ交換
古いレリーズ本体を取り外す前に、油圧パイプを外して新しいレリーズに取り付けます。
できるだけ油圧ラインからフルードを排出させないためです。
フルードが排出されればそれだけエアが入り込むからです。
バンジョー ( オイルパイプ取り付け部 ) の上下に新しいクラッシュワッシャを入れます。
※内径×外径×厚さ=10.3×16×1.1㎜
バンジョー取り外しトルク:150㎏・m程度 ( 200㎏・mもありませんでした )
この後、古いレリーズ本体を取り外します。
・取り付けボルト:M10×首下25㎜・フランジ
・取り外しトルク:「600㎏・m」程度。
d.エア抜き
●エア抜き
オイルラインに空気 ( エア ) が入ると空気が圧縮されるので油圧が減少します。
油圧を保つためには「オイルラインからエアを抜いてフルードだけにする」必要があります。
この作業を「エア抜き」と言います。
「エア抜き」は1ポットなら苦労しませんが、4ポットのブレーキキャリパーになると大変苦労します。
オートバイのサンデーメカニックは自分なりの方法を確立しています。
私の場合は「ピストン押し出し法」です。
このクラッチレリーズは1ポット ( 1シリンダー ) なので特別な方法は必要ありません。
●必要なもの
・内径4㎜φの透明ビニールチューブ ( 5㎜φではフルードスクリューを開け閉めしていると外れます。 )
・8㎜メガネ ( フルードスクリュー開け閉め用 )
・油差し ( フルード補給用 )
・広口瓶 ( 排出フルードを受ける容器・ジャム容器を使っています )
・ブレーキフルード DOT3
・浣腸器 ( シリンジ ) ※なくてもよいがあると楽。
●DOT3 と DOT4 ( JISでは BF3 と BF4 )
オートバイ整備で使うのはブレーキもクラッチも「DOT4」です。
ストックも DOT4 だけ。
しかし、GH8 ではクラッチもブレーキも「DOT3 指定」です。
DOT3 と DOT4 の違いは沸点と粘度で、DOT4 は DOT3 の上位品。
また、主成分は同じなので混ぜても問題ないとのこと。 → こちら,こちら
しかし「DOT3 ONLY」となっていれば DOT3 を使いたくなるのが人情。
早速、ホームセンターへ。
もちろん、車は使えませんのでオートバイで。
●エア抜き① レリーズ内のエアを抜く
「ペダル側マスターシリンダー ~ レリーズ」にはエアが入っていません。
エアが入っているのは「レリーズシリンダー」とバンジョー取り付け時に入った「レリーズ付近のパイプ」。
ばくばく工房の説明書では
・レリーズ本体を取り付けると、ブリードスクリューが最上部にならないのでエアが抜けにくい。
・レリーズ本体を取り付ける前に、ブリードスクリューを上にしてピストンを動かしてエアを抜く。
レリーズ内のエアを出口 ( ブリードスクリュー ) 付近に集めておいてピストンを動かして排出するためです。
ピストンを動かしてもフルードが抜けてこないので、シリンジで吸い出しました。
レリーズ本体を取り付けた後にシリンジで吸い出しても問題ないでしょう。
レリーズシリンダー内のエアが完全に抜けなくても、「エア抜き② 加圧してエア抜き」で抜けますから。
●レリーズ本体の取り付け
ちょっと迷います。
このままクラッチシフターを押すのでしょうか?
クラッチシフターなんか動くの?
心配ご無用。
クラッチシフターが動かなくてもレリーズピストンの方が動きます ( 縮まります ) 。
片方のボルトを仮止めして、
レリーズ本体を押し付けで、もう片方のボルトを差し込めばOK。
・取り付けボルト:M10×首下25㎜・フランジ
・取り外しトルク:600㎏・m程度。
●エア抜き② 加圧してエア抜き
オイルラインに圧力をかけて残ったエアーをブリードスクリューの付近に集めて排出します。
手順は
・クラッチペダルを10回くらい踏む。 ( 加圧してエアーをブリードスクリュー付近に集める )
↓
・クラッチペダルを踏んだままにする。 ( 加圧を保つ )
↓
・ブリードスクリューを開けて集まったエアーを排出。 ( フルードと一緒にエアが排出される )
↓
・ブリードスクリューを閉める。 ( エアを吸い込ませないため )
オートバイでは
・レバーを片手で10回くらい操作する。
↓
・レバーを片手で握ったまま、もう一方の手でブリードスクリューを開け閉めする。
オートバイはレバーとブリードスクリューが離れていなので、この作業が一人でできます。
しかし、車ではそうは行きません。
「クラッチペダルを踏んだままにしておく者」と「ブリードスクリューを開け閉めする者」の二人が必要です。
一人でやる場合は木片を使います。
・クラッチペダルを10回くらい踏む。
↓
・ペダルとシート位置調整レバーの間に木片を挟んで「ペダルを踏んだままの状態」にする。
( シートを前後して調整 )
↓
・ブリードスクリューを開け閉めする。
ブリードスクリューを開けるとオイルラインの圧が抜けるので、
ペダルの反力がなくなり木片がペダルから外れます。
このときペダルは奥に張り付いています。
このペダルを手で戻し、「カッタン、カッタン」と5~6回動かすと圧がかかってきます。
圧が十分にかかったら、足で10回程度踏んで木片を挟みブリードスクリューを開け閉めする。
これを繰り返します。
エア ( 気泡 ) が出なくなったら終了です。
●ポイント
・エアーが出るのは1回目と2回目くらい。
後は何回やっても同じで気泡は出ない。だいたい3回やればよいでしょう。
今回は1回目に「ブシューッ」と出て2回目は気泡なし。
・木片を挟んだまま1時間くらい放置しておくと「もう少し出る」場合があります。
オートバイではレバーを一晩縛っておきます。
・一度で「100 % のエア抜き」はできない。
オイルラインに細かい気泡が残っている場合があります。
時間が経つと、またクラッチ操作でオイルラインを加圧すると、
細かい気泡はマスタータンクの方に上がっていって自然に抜けたり、レリーズの方に集まったりします。
そのため、レリーズの方に集まったエアーを抜く必要があります。
今回は最初のエア抜きのあと200㎞走行し再度エア抜きをしました。
1回目 → 「シュッ」とほとんど気泡
2回目 → 気泡なし
30分くらい木片を挟んだままで3回目 → 少し気泡
4回目,5回目 → 気泡なし
・「100%のエア抜き」をしてもエアは入ってくる
レリーズシリンダーはフルードが漏れないようにオイルシールで気密性が保たれています。
しかし、ピストンが動くとシールの間からほんの少しずつエアーが吸い込まれます。
時間が経てばどうしてもレリーズシリンダーにエアーが入ってくるのです。
そのため、定期的にエア抜きが必要になります。
エアーはクラッチを操作するたびに押されてブリードスクリュー付近に集められています。
だから、簡単に抜けます。
作業はインタークーラーを外すだけ。1時間あれば十分です。
もっとも、クラッチなので、ラインに少しエアーが入っていてもペダル操作に違和感はないでしょう。
この点はブレーキと異なります。
●マスタータンクのオイルをUPPERまで入れて終了
もちろん、エア抜き作業中に補給しなければなりません。
LOWレベルより下がるとこちらからエアーが入ってしまいます。
タンクのフルードが減るのは「ブリードスクリューを開けたとき」よりペダルを「カッタン、カッタン」戻しているときです。
エア抜き作業中はUPPER以上に入れておきましょう。
作業が終了したらUPPERまで吸い出せばOK。
次は「ミートポイントの調整」です。