●養子縁組届➀ 基礎知識

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2.養子縁組の効果

➀「養親と養子」=「親と嫡出子」

・養子は養親の嫡出子として地位を得ます(民法809条)。
・認知は「父親と子供の間に法律上の親子関係」を生じさせますが「非嫡出子」のままです。

嫡出子 → 同じ戸籍,同じ氏,相続権,扶養義務

・養子が未成年のときは養親の親権に復する(民法818条2項)
・養子は養親の氏を称する(民法810条)
・養子は養親の戸籍に入る。(戸籍法18条3項)
・養子と養親は相互に相続権を持つ(民法887条1項,889条1項)
・養子と養親は相互に親族的扶養義務を負う(877条1項)

・養子の氏が変わらない場合もあります(後述)。
・養子の戸籍は養親と別に新戸籍を作る場合、養子の戸籍に変動がない場合があります。(後述)

・民法809条(嫡出子の身分の取得)
「   養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。」

・民法810条(養子の氏)
「   養子は、養親の氏を称する。
      ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。」

・戸籍法18条
「   父母の氏を称する子は、父母の戸籍に入る。
   2 前項の場合を除く外、父の氏を称する子は、父の戸籍に入り、母の氏を称する子は、母の戸籍に入る。
   3 養子は、養親の戸籍に入る。」

・民法887条(子の相続権)
「  被相続人の子は、相続人となる。
   2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、
     又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、
      その者の子がこれを代襲して相続人となる。
      ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。」

・子とは嫡出のこと → 養子は嫡出子だから子 → 相続人となる。

・民法889条1項(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
「   次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、
      次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
   一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
   二 被相続人の兄弟姉妹」

・養子死亡の場合、養子に子がいなければ養親(親)が相続人となる。

・民法877条1項(扶養義務者)
「   直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」

➁「養親の血族」-「養子」に法定の血族関係が生じる。

「養親の血族」-「養子」に法定の血族関係が生じるが、
「養親」-「養子の血族」には法定の血族関係が生じない。

・養親と養子の間に法定の血族関係が生じるだけでなく、
   養親の血族と養子の間にも法定の血族関係が生じる。(民法727条)

・「養親の父」=「養子の祖父」。

・但し、養親と養子の血族の間には法定の血族関係は生じない。(民法Ⅳ.267頁)

・「養子の息子」≠「養親の孫」

・民法727条(縁組による親族関係の発生)
「 養子と養親及びその血族との間においては、
   養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。」

➂「養子」-「実親,実親の血族」との法定の血族関係は消えない

特別養子縁組ではこの法定血族関係が消える。

・普通養子縁組 → 実の親子関係は切れないで存続
・特別養子縁組 → 実の親子関係が切れる

・特別養子縁組については後述

➃他の者の養子になることもできる

・ある者の養子になった者が、別の者の養子になることができる。(転縁組)

・養子縁組の効果は「別の者の養子になることを妨げない」

・再度の縁組によってそれまでの縁組関係は解消しないので、
   養親子関係は二重に併存することになる。(民法Ⅳ 268頁)。

3.養子の氏と戸籍

ここが一番ややこしいところです。
氏を変更する場合が養子縁組の他に婚姻もあるからです。
また、戸籍は「夫婦(両親)と未婚の子」を単位としているため
養子が結婚している場合は養子夫婦を養親の戸籍に入れることができないからです。

(1)養子の氏

・養子縁組は法律上の親子関係を作るもの → 子供が生まれたときと同じ

a.養子は養親の氏を名乗る。(民法810条)

・しかし

・婚姻の場合も氏が変わる → 婚姻の氏変更と養子縁組の氏変更が衝突する

・調整

b.婚姻のときに氏を改めなかった者が養子になる → 養親の氏を名乗る
   → 配偶者も養親の氏を名乗る
(民法750条)。
c.婚姻のときに氏を改めた者が養子になる → 婚姻の氏変更が優先
   → 氏は変わらない。
(民法810条但書)

・民法750条(夫婦の氏)
「 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」

・民法810条(養子の氏)
「 養子は、養親の氏を称する。
   ただし、婚姻によって氏を改めた者については、
   婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。」

(2)養子の戸籍

・戸籍は「夫婦とその未婚の子」を単位とし、さらに「同一戸籍、同一氏」でなければならない。

・養子縁組は法律上の親子関係を作るもの → 子供が生まれたときと同じ
   → 養子は養親の戸籍に入る(戸籍法18条3項)

a.養親が「戸籍筆頭者orその配偶者」 → 養親の戸籍に入る。
b.養親が「戸籍筆頭者orその配偶者でない」 → 養親と養子で新しい戸籍を作る
(戸籍法17条)

・しかし

・養子に配偶者がいる場合は、戸籍の単位が「夫婦とその未婚の子」なので
   養子を配偶者と切り離して養親の戸籍に入れたり養親と新しい戸籍を作ったりすることはできない。
   養子と配偶者(養子夫婦)を養親の戸籍に入れたり養親と新しい戸籍を作ったりすることもできない。

・養子とその配偶者を養親とは別の戸籍にしなければならない。

・さらに「養子とその配偶者の氏が変わる場合と変わらない場合がある。

・「同一戸籍、同一氏」から

・「養子とその配偶者の氏が変わった場合」 → 養子とその配偶者(養子夫婦)で新しい戸籍を作る。
・「養子とその配偶者の変わらなかった場合」 → そのまま。

c.養子が婚姻の際に氏を改めなかった場合
   → 「養子とその配偶者」は養親の氏を名乗る
   → 「養子とその配偶者」は元の戸籍を出て新しい戸籍を作る。戸籍法20条)
d.養子が婚姻の際に氏を改めた場合
   → 「養子とその配偶者」の氏は変わらない
   → 「養子とその配偶者」の戸籍はそのまま(規定なし)

・戸籍法17条
「 戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者以外の者が
    これと同一の氏を称する子又は養子を有するに至つたときは、その者について新戸籍を編製する。」

・戸籍法18条
「 父母の氏を称する子は、父母の戸籍に入る。
  2 前項の場合を除く外、父の氏を称する子は、父の戸籍に入り、母の氏を称する子は、母の戸籍に入る。
  3 養子は、養親の戸籍に入る。」

・戸籍法19条
「   婚姻又は養子縁組によつて氏を改めた者が、離婚、離縁又は婚姻若しくは縁組の取消によつて、
      婚姻又は縁組前の氏に復するときは、婚姻又は縁組前の戸籍に入る。
      但し、その戸籍が既に除かれているとき、又はその者が新戸籍編製の申出をしたときは新戸籍を編製する。
   2 前項の規定は、民法第751条第1項の規定によつて婚姻前の氏に復する場合
      及び同法第791条第4項の規定によつて従前の氏に復する場合にこれを準用する。
   3 民法第767条第2項(同法第749条及び第771条において準用する場合を含む。)
      又は同法第806条第2項(同法第808条第2項において準用する場合を含む。)の規定によつて
      離婚若しくは婚姻の取消し又は離縁若しくは縁組の取消しの際に称していた氏を称する旨の届出が
      あつた場合において、
      その届出をした者を筆頭に記載した戸籍が編製されていないとき、
      又はその者を筆頭に記載した戸籍に在る者が他にあるときは、
      その届出をした者について新戸籍を編製する。」

・戸籍法20条
「   前2条の規定によって他の戸籍に入るべき者に配偶者があるときは、
      前2条の規定にかかわらず、その夫婦について新戸籍を編製する。」

・d(養親の氏を称しない養子の戸籍)については戸籍法に規定がない。
   → 氏に変更がなければ新戸籍を編製する必要はない
   → 戸籍に変動はない。そのまま。(戸籍の基礎知識.324頁)

養子の氏と戸籍の4パターン

以上のように養子の氏と戸籍には4パターンあります。
➀養子が養親の氏を名乗って養親の戸籍に入る。
➁養子が養親の氏を名乗って養親と新しい戸籍を作る。
➂養子とその配偶者が養親の氏を名乗って養子夫婦で新しい戸籍を作る。
➃養子ガ養親の氏を名乗らずに戸籍に変動がない。

この4パターンのどれに該るかを理解していないと、
養子縁組届の「左頁/入籍する戸籍または新しい戸籍」欄、
「右頁/養親の新しい本籍欄」の記載をチェックできません。。

具体的には
・「養親の現在の戸籍に入る」,「養親の新しい戸籍に入る」,「養子夫婦で新しい戸籍を作る」,
   「養子の戸籍に変動がない」のどれにレを記入するか?
・「新しい戸籍の筆頭者の氏名」は正しいか?( 養子夫婦で新しく戸籍を作る場合 → 氏が養親の氏に変わる)
・どういう場合に養親の新しい本籍欄を書くのか?

この4パターンの理解をするために例を上げます。

➀養子が養親の氏を名乗って養親の戸籍に入る

「川上誠(筆頭者),川上照子(妻),川上雪子(子)」
・「田中花子(筆頭者),田中一郎(子)」

・川上誠が田中花子を養子にする。(川上誠の配偶者・川上照子の同意必要)

・田中花子は川上花子になって川上誠の戸籍に入る。

・川上誠の戸籍  → 「川上誠(筆頭者・養父),川上照子(妻),川上雪子(子),川上花子(養女)」
・田中花子の戸籍 →「田中花子(筆頭者),田中一郎(子)」

〇左頁/入籍する戸籍または新しい本籍
・レ「養親の戸籍に入る」
・川上誠の戸籍,戸籍筆頭者/川上誠

〇左頁/届出人
・田中花子(届は受理されていない → まだ縁組は成立していない)

〇右頁/その他
・「この縁組に同意します。川上誠の妻・川上照子」

〇右頁/新しい本籍
・空欄

〇右頁/届出人
・川上誠

➁養子が養親の氏になって、養親と新しい戸籍をつくる

・「川上誠(筆頭者)、川上照子(妻),川上雪子(子)」
・「田中花子(筆頭者),田中一郎(子)」

・川上雪子が田中花子を養子にする。
・田中花子は川上花子になる。

・養親の川上雪子は「戸籍筆頭者orその配偶者」ではないので元の戸籍を出て新戸籍を作る。
   その養親(川上雪子)の新しい戸籍に養子・川上花子が入る。
   川上雪子が非嫡出子の川上花子を産んだ場合と同じ

・川上雪子と川上花子の新戸籍「川上雪子(筆頭者・養母),川上花子(養女)」
・川上雪子の元の戸籍 「川上誠(筆頭者)、川上照子(妻),川上雪子(子)」
・田中花子の元の戸籍 →「田中花子(筆頭者),田中一郎(子)」

〇左頁/入籍する戸籍または新しい本籍
・レ「養親の新しい戸籍に入る」
・新しい本籍 → 川上雪子の新しい本籍
   川上雪子の新しい本籍は元の本籍と地番は同じでもよいが、戸籍簿では元の本籍と区別される。
・新しい本籍の戸籍筆頭者 → 川上雪子

〇左頁/届出人
・田中花子

〇右頁/その他欄
・ 空欄

〇右頁/新しい本籍
・ 川上雪子の新しい本籍

〇右頁/届出人
・川上雪子

➂養子が養親の氏になるが、養親とは別に新しい戸籍をつくる。

・「川上誠(筆頭者),川上照子(妻),川上雪子(子)」
・「田中花子(筆頭者),田中太郎(夫),田中一郎(子)」

・川上誠が田中花子を養子にする。(川上誠と田中花子の各々の配偶者の同意あり)

・田中花子は川上花子になる (田中花子は婚姻のときに氏を改めなかった方)。

・田中太郎も川上太郎になる。
   田中太郎は「婚姻の際に妻の氏を称することに定めた」のだから、
   妻の氏が川上に変われば川上に変わり、川上太郎となる。(民法750条)

・川上花子と川上太郎で新戸籍を作る。(戸籍法20条)

・川上花子の新戸籍「川上花子(筆頭者・川上誠の養女),川上太郎(夫)」
・川上花子の元の戸籍「田中花子(筆頭者),田中太郎(夫),田中一郎(子)」
・川上誠の戸籍「川上誠(筆頭者・川上花子の養父),川上照子(妻),川上雪子(子)」

〇左頁/入籍する戸籍または新しい本籍
・レ「養子夫婦で新しい戸籍をつくる」
・新しい本籍 → 川上花子の新しい本籍
   川上花子(田中花子)の元の本籍と地番は同じでもよいが、戸籍簿では元の本籍と区別される。
・新しい本籍の戸籍筆頭者 → 川上花子(新しい本籍での氏名だから田中花子ではなく川上花子)

〇左頁/届出人
・田中花子(養子縁組届はまだ受理されていない → 縁組は成立していな → 田中花子)

〇右頁/その他
・「この養子縁組に同意する。養親/川上誠の妻・川上照子、養子/田中花子の夫田中太郎」

〇右頁/新しい本籍
・ 空欄

〇右頁/届出人
・川上誠

➂-2 こんな場合はどうか?

・「川上誠(筆頭者),川上照子(妻),川上雪子(子)」
・「田中花子(筆頭者),田中太郎(夫),田中一郎(子)」

・川上雪子が田中花子を養子にする。(田中花子の配偶者/田中太郎の同意あり)

・田中花子は婚姻の際に氏を改めなかった方 → 養親の氏になる → 川上花子
・田中花子の夫田中太郎も養親の氏になる → 川上太郎 (民法750条)

・川上花子と川上太郎で新戸籍を作る(戸籍法20条)

・川上花子の新戸籍「川上花子(筆頭者・川上雪子の養女),川上太郎(夫)」
・川上花子の元の戸籍「田中花子(筆頭者),田中太郎(夫),田中一郎(子)」

川上雪子の戸籍はどうなるか?

・川上雪子は「筆頭者orその配偶者でない」から戸籍法17条の適用を受ける。

・戸籍法17条
「 戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者以外の者が
    これと同一の氏を称する子又は養子を有するに至つたときは、その者について新戸籍を編製する。」

・川上雪子は同一の氏を称する養子川上花子を有するに至ったから、新戸籍を作る。

・しかし、養子・川上花子に配偶者・川上太郎がいるから川上雪子の新戸籍に入籍させられない。

・川上雪子だけの新戸籍になる。

・川上雪子の新しい戸籍「川上雪子(筆頭者・川上花子の養母)」
・川上雪子の元の戸籍「川上誠(筆頭者・川上花子の養父),川上照子(妻),川上雪子(子)」

〇左頁/入籍する戸籍または新しい本籍
・レ「養子夫婦で新しい戸籍をつくる」
・新しい本籍 → 川上花子の新しい本籍
   川上花子(田中花子)の元の本籍と地番は同じでもよいが、戸籍簿では元の本籍と区別される。
・新しい本籍の戸籍筆頭者 → 川上花子

〇左頁/届出人
・田中花子

〇右頁/その他
・「この養子縁組に同意する。養子/田中花子の夫田中太郎」

〇右頁/新しい本籍
・ 川上雪子の新しい本籍
・川上雪子の元の本籍と同じ地番でよいが、元の本籍とは別のものになる。

〇右頁/届出人
・川上雪子

➃養子が養親の氏にならず、戸籍も動かない

・田中花子と山田太郎が婚姻 → 「山田太郎(筆頭者),山田花子」

・山田一郎が生まれる

・山田花子の戸籍「山田太郎(筆頭者),山田花子(妻),山田一郎(子)」
・川上誠の戸籍「川上誠(筆頭者)」

・川上誠が山田花子を養子にする(山田花子の配偶者・山田太郎の同意あり)

・山田花子は「婚姻によって氏をあらためた者」だから、民法810条により
  「婚姻の際に定めた氏を称すべき間=山田太郎と婚姻中」は養親の氏(川上)にならず山田花子のまま。

●山田花子の戸籍はどうなるか?

・養親の氏を称しない養子の戸籍については戸籍法に規定がない。

・「氏に変更がなければ新戸籍を編製する必要はない」(戸籍の基礎知識.324頁)

・戸籍はそのまま、養子になったことが記載される。

・山田花子の戸籍「山田太郎(筆頭者),山田花子(妻・川上誠の養女),山田一郎(子)」
・川上誠の戸籍「川上誠(筆頭者・山田花子の養父)」

〇左頁/入籍する戸籍または新しい本籍
・レ「養子の戸籍に変動がない」
・入籍する戸籍・新しい本籍 → 空欄

〇左頁/届出人
・山田花子
  
〇右頁/その他
・「この養子縁組に同意する。養子/山田花子の夫山田太郎」

〇右頁/新しい本籍
・空欄

〇右頁/届出人
・川上誠

➃-2 こんな場合はどうなるか

・田中花子と山田太郎が婚姻 → 「山田太郎(筆頭者),山田花子」

・山田一郎が生まれる

・山田花子の戸籍「山田太郎(筆頭者),山田花子(妻),山田一郎(子)」
・川上誠の戸籍「川上誠(筆頭者),川上照子(妻),川上雪子(子)」」

・川上雪子が山田花子を養子にする。(山田花子の配偶者・山田太郎の同意あり)

・山田花子は「婚姻によって氏をあらためた者」だから、民法810条により
  「婚姻の際に定めた氏を称すべき間=山田太郎と婚姻中」は養親の氏(川上)にならず山田花子のまま。

・山田花子の戸籍はどうなるか?

・養親の氏を称しない養子の戸籍については戸籍法に規定がない。

・「氏に変更がなければ新戸籍を編製する必要はない」(戸籍の基礎知識.324頁)

・戸籍はそのまま。養子になったことが記載される。

・山田花子の戸籍「山田太郎(筆頭者),山田花子(妻・川上誠の養女),山田一郎(子)」

▲川上雪子の戸籍はどうなるか?(以下は当方の解釈です。)

・川上雪子は「筆頭者orその配偶者でない」から戸籍法17条の適用を受ける。

・戸籍法17条
「 戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者以外の者が
    これと同一の氏を称する子又は養子を有するに至つたときは、その者について新戸籍を編製する。」

・川上雪子の養子・山田花子は川上を名乗らないので、
   川上雪子は「同一の氏を称する養子を有するに至った」とは言えない。

・だから、新戸籍は作らず戸籍はそのまま。

・こう解すると「川上雪子が同じ氏を称する養子を取ったが、その養子に配偶者がいたため、
   養子夫婦で新戸籍、川上雪子で新戸籍を作ること」(➂-2)と整合性が取れないように思える。
   「養子をとったこと(子ができたこと)」は同じなのに扱いが違う。

・しかし、条文には「これと同一の氏を称する…養子を有するに至ったとき」と明示してある。
・また、これを条文の欠如だとしても「氏に変更がなければ新戸籍を編製する必要はない」(戸籍の基礎知識.324頁)

・養子縁組届の右頁/「新しいには本籍欄」には、
   「養親になる人が戸籍の筆頭者及びその配偶者でないときはここに新しい本籍を書いてください」とあるが、
   これは戸籍法17条を受けたものであり、「同一氏の養子を有した場合」のことである。


・川上雪子の元の戸籍「川上誠(筆頭者・川上花子の養父),川上照子(妻),川上雪子(子・山田花子の養母)」

〇左頁/入籍する戸籍または新しい本籍
・レ「養子の戸籍に変動がない」
・入籍する戸籍・新しい本籍 → 空欄

〇左頁/届出人
・山田花子

〇右頁/その他
・「この養子縁組に同意する。養子/山田花子の夫山田太郎」

〇右頁/新しい本籍
・空欄

〇右頁/届出人
・川上雪子

4.特別養子縁組(民法817条の2~民法817条の11)

・普通養子縁組は縁組後も「実親と子の関係」は切れない。
・特別養子縁組は縁組後に「実親と子の関係」が切れる。

・➀~➈ の要件が必要

➀ 縁組の成立
・養親の請求(民法817条の2)
・実父母の同意(民法817条の6)
・家庭裁判所の決定(民法817条の2)

➁監護期間
・養親となる者が養子となる者を6カ月以上の期間監護した状況を考慮して決める (民法817条の8)

➂養親の夫婦共同縁組
・養親は夫婦二人(民法817条の3)

➃年齢
・養親 → 25歳以上
   夫婦の一方が25歳以上でありもう一方が20歳以上なら可(817条の4)
・養子 → 原則として15歳未満(民法817条の5)

⑤実父母との親族関係
・終了する(民法817条の9)

⑥戸籍の表記
・父母欄 → 養父母一組の氏名(普通養子縁組 → 実父母と養父母の氏名)
・続柄欄 → 長男,長女など実子と同じ(普通養子縁組 → 養子,養女)
・身分事項欄 →民法817条の2と記載。養子縁組の記載なし(普通養子縁組 → 養子縁組の記載)

➆離縁
・離縁請求理由の限定、養子の利益のため特に必要があると認めるとき。
・養子、実父母又は検察官の請求により、・家庭裁判所が離縁させる。
・民法817条の10

➇離縁により実親との関係が復活(民法817条の11)

➈届
・家庭裁判所の許可(審判確定)から10日以内に届出(特別養子縁組届)
・許可審判書の謄本と確定証明書添付。

・実親の本籍地に養親の姓で養子を筆頭者とする単独戸籍が作られる。
・この戸籍の身分事項には
「出生 / 実父と実母の氏名」
「養子縁組  /  養父と養母の氏名、縁組日、元の戸籍、入籍する戸籍、審判確定」が記載される。

・養子はこの戸籍から出て養親の戸籍に入る。(養子の元の戸籍は除籍される)

・養親の戸籍では
「父母は養父母名で実父母名の記載無し」
「養子の記載なし」
「元の戸籍は新しく作った養子を筆頭者とする単独戸籍」
「民法817条の2による裁判確定日」が記載される。

・実子と同じような記載事項で養子であることは一見して分からないが、
  「民法817条の2による…」で特別養子縁組であることが分かる。

(例)
・「川上誠(筆頭者),川上照子(妻),川上雪子( 子・父/川上誠,母/川上照子 )」
・「田中花子(筆頭者),田中太郎(夫),田中一郎(子・父/田中太郎,母/田中花子)」

・川上誠と川上照子が田中一郎を特別養子縁組をする。

・実親の田中花子と田中太郎の本籍地に養親の氏で田中一郎の単独戸籍が作られる。

・田中一郎の元の戸籍「田中花子(筆頭者),田中太郎(夫),田中一郎(子 ・父/田中太郎,母/田中花子 )」
・田中一郎の新しい戸籍
「川上一郎(筆頭者,実父/田中太郎,実母/田中花子,養父/川上誠,養母/川上照子,縁組日,
   元の戸籍,入籍する戸籍,審判確定日)」

・川上一郎はこの戸籍から養親の川上誠の戸籍に入る。

・田中一郎の新しい戸籍「川上一郎(筆頭者)」 → 除籍
・川上誠の戸籍
「川上誠(筆頭者),川上照子(妻),川上雪子(子・父/川上誠,母/川上照子),
   川上一郎(子・父/川上誠,母/川上照子, 民法817条の2による裁判確定日 〇年〇月〇日」

※特別養子縁組届の記載例 → こちら

選任のための法律知識・

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