●電動キックボード と トライク の法律的取り扱い

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「電動キックボードの迷惑走行・違法走行」がマスコミで問題になっています。
2号の指教責から「その法的取り扱い」を新任教育で取り上げたいとの要望がありました。
現在のところ電動キックボードや電動スケートボードを公道で走らせるためには登録や運転免許の他に
道路運送車両法の定める保安基準(保安装備)を備えていなければなりません。
ワイドショーで取り上げられている「迷惑走行」は「違法走行」です。
ただ、「15㎞/h以下のものを自転車並に扱う」という法改正の動きがあります。
この法改正の動きがあるので警察は取り締まりや摘発を控えていることと思います。

教育で眠そうな新人警備員の興味を引くのにはよい題材です。
原付登録できるものかミニカー登録できるものを入手しておいて運転させるのもよいでしょう。
以下では道交法と運送車両法の定義がこみ入っています。
教える方は理解が必要ですが、講義では適当に割愛してください。

1.原動機付き自転車とミニカー

自動車に関する法令には道路交通法と道路運送車両法があります。
道路交通法は交通ルールや免許について定め、
道路運送車両法は登録,装備,検査について定めています。

※道路交通法第1条(目的)
「この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、
及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。」

※道路運送車両法第1条(この法律の目的)
「この法律は、道路運送車両に関し、所有権についての公証等を行い、
並びに安全性の確保及び公害の防止その他の環境の保全並びに整備についての技術の向上を図り、
併せて自動車の整備事業の健全な発達に資することにより、公共の福祉を増進することを目的とする。」

この目的の違いから同じものに対しても定める内容や範囲が異なります。
そこで道交法と車両運送法で別々に取り扱われるものが出てきます。

a. 道路交通法での原動機付き自転車と自動車

●道交法での原動機付き自転車

〇原動機付き自転車とは
内閣府令で定める大きさ以下の総排気量又は定格出力を有する原動機を用い、
かつ、レール又は架線によらないで運転する車であつて、
軽車両、身体障害者用の車椅子及び歩行補助車等以外のものをいう。」(2条10号)

〇内閣布令で定める排気量と出力(道交法施行規則1条の2)
「道路交通法 第二条第一項第十号 の内閣府令で定める大きさは、
二輪のもの及び内閣総理大臣が指定する三輪以上のものにあつては、
総排気量については0.05リツトル、定格出力については0.60キロワツトとし、
その他のものにあつては、総排気量については0.020リツトル、定格出力については0.25キロワツトとする。」

つまり原動機付き自転車とは、
①排気量50㏄以下・定格出力0.6kw 以下の二輪
②排気量50㏄以下・定格出力0.6kw 以下で内閣総理大臣が指定する三輪以上のもの
③排気量20㏄以下・定格出力0.25kw以下で①②以外のもの

〇「 内閣総理大臣が指定する三輪以上のもの 」(平成2年12月総理府告示48号)
※原文が見つからないためこちら

②a
・車室がない
・輪距50㎝以下( 輪距が二つ以上ある場合はその輪矩の中で最大のもの)
・三輪以上

②b
・車室があるが側面が構造上開放されている
・輪矩が50㎝以下
・三輪

結局、道交法での原動機付き自転車とは

・原動機を用い、レールや架線を使って走らず
・「自転車・身障者用車椅子・歩行補助車で政令の定めるもの」以外のもので
・次の規格を持つもの
①排気量50㏄以下・定格出力0.6kw 以下の二輪
②a排気量50㏄以下・定格出力0.6kw 以下で車室がなく、輪距50㎝以下の三輪以上
②b排気量50㏄以下・定格出力0.6kw 以下で車室があるが側面が開放され、輪距50㎝以下の三輪
③排気量20㏄以下・定格出力0.25kw以下で①,②a,②b以外のもの.

・③をもう少し説明すると
①以外 → 20㏄以下・0.25kw以下の一輪車
②a・b以外 → 20㏄以下・0.25kw以下で車室があり、輪距50㎝以下の三輪・三輪以上
②a・b以外
→ 車室の有無・形状に関わらず、輪距が50㎝を超える20㏄以下・0.25kw以下の三輪・三輪以上

道交法での自動車

・ 原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車であつて、
原動機付自転車、軽車両及び身体障害者用の車椅子並びに歩行補助車、
   小児用の車その他の小型の車で政令で定めるもの以外のもの(2条9号)

このように道交法では、
原動機を用いる車で「原動機付き自転車,シニアカーやアシスト自転車など(※)以外」を自動車といいます。
※道路交通法施行規則1条,1条の2の2,1条の3,1条の4
50㏄を超える二輪車(オートバイ)も自動車となります。

この自動車に含まれる二輪車の分類は
・400㏄~,20kw~ → 大型自動二輪車・側車付き含む(道交法施行規則2条)
・125㏄~400㏄,1.0kw~20kw → 普通自動二輪車・側車付き含む(道交法施行規則2条)
※「二輪の自動車で…大型自動二輪車…以外のもの」
・50㏄~125㏄,0.6kw~1.0kw → 小型自動二輪車(道交法施行規則別表第2)
※普通自動二輪車の中に小型自動二輪車を定めている。
※原動機付き自転車の出力が「~50㏄,~0.6kw」である。

b.道路運送車両法での原動機付き自転車と自動車

●運送車両法での原動機付き自転車

〇原動機付き自転車とは
国土交通省令で定める総排気量又は定格出力を有する原動機により
陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの
又はこれによりけん引して陸上を移動させることを目的として製作した用具をいう。」(2条3項)
※道交法のように「車」という要件がないことに注意。
※運送車両法では自動車,軽車両についても定めているがいずれも「車」という要件がない。(2条1項・2項)
※「陸上を移動させることを目的として作られた用具で軌道や架線を用いないもの」だから
   キャタピラやプロペラを付けたソリでもOKとなる。

〇国土交通省令で定める総排気量と定格出力(道路運送車両法施行規則1条1項)
・内燃機関125㏄以下の二輪・側車付きを除く(1号) → ~50㏄の二輪,50~125㏄の二輪
・内燃機関50㏄以下の二輪以外(1号)
・内燃機関以外の原動機で1.0kw以下の二輪(2号) → ~0.6kwの二輪,0.6~1.0kwの二輪
・内燃機関以外の原動機で0.6kw以下の二輪以外(2号)
※二輪以外 → 一輪車,三輪以上車。

〇原動機付き自転車の種別 (道路運送車両法施行規則1条2項)
・第一種原動機付き自転車 → 50㏄以下・0.6kw以下のもの → ~50㏄,~0.6kwの二輪・二輪以外
・第二種原動機付き自転車 → 50㏄~125㏄・0.6kw~1.0kwのもの → 二輪
※第二種原動機付き自転車は道交法では小型二輪車で原動機付き自転車ではない。

結局、運送車両法での第一種原動機付き自転車とは

① 排気量50㏄以下,定格出力0.6kw以下 の二輪
② 排気量50㏄以下,定格出力0.6kw以下 の二輪以外のもの

●運送車両方での自動車

原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの
又はこれによりけん引して陸上を移動させることを目的として製作した用具であつて、
次項に規定する原動機付自転車以外のものをいう。(2条2項)

cミニカー

以上のように「道交法の原動機付き自転車」と「運送車両法の第一種原動機付き自転車」の範囲が重なります。
そして、前者より後者の方が広くなっています。
そこで、運送車両法では「第一種原動機付き自転車に該る」が
道交法では「原動機付き自転車には該らず自動車に該る」ものが出てきます。

具体的に言えば、20㏄<排気量≦50㏄,0.25kw<出力≦0.6kw の
・一輪車
・ 車室があり、輪距50㎝以下の三輪・三輪以上
・ 車室の有無・形状に関わらず、輪距が50㎝を超える三輪・三輪以上

よく見られるもので言えば
・輪距60㎝を超える,20~50㏄,0.25~0.6kwの ゴーカート,三輪バギー,車室のある四輪車
・電動一輪車というのもありますが出力オーバーでここに該当しません。 → こちら(出力6.7kw)

これらは車両運送法では自動車ではなく第一種原動機付き自転車に該るので登録は原付と同じ扱い。
・水色ナンバー登録

しかし、道交法では原動機付き自転車には該らず自動車に該るので
・制限速度は60㎞/h
・普通免許が必要
・ヘルメット不要
・シートベルト着用 → またがり式は不要,座席式は必要
※説明
・シートベルト着用義務は運送車両法で定められたシートベルトについて(道路交通法71条の3)
・運送車両法では自動車についてシートベルトの装置が必要(運送車両法41条)とされていますが
   道路運送車両の保安基準では
「原動機付き自転車も二輪,またがり式の場合を除きシートベルトが必要」とされています。(保安基準66条の2)

これが、いわゆる「ミニカー登録車両」です。 → こちら

なお、「超小型モビリティ」というものありますがこれは軽自動車の中の種別です。 → こちら

※以上については一部 こちらを参考にしました。

2.電動キックボードやセグウエイの原付登録

電動キックボードやセグウエイは原付登録やミニカー登録をすれば公道を走れるのでしょうか?
以上から私なりの解釈をします。
実際に登録できなかったり違反キップを切られたりしても責任は負いません。
必ず、入手前に登録先や警察署に問い合わせてください。

a.出力,構造の制限

〇二輪の電動キックボード

・ 50㏄以下,0.6kw以下 → 原付登録
※ 排気量50㏄以下・定格出力0.6kw 以下の二輪

・セグウエイもここに入るはずです。

〇三輪以上の電動キックボート・電動スケートボード

・ 50㏄以下,0.6kw以下、輪距60㎝以下 → 原付登録
※ 排気量50㏄以下・定格出力0.6kw 以下で車室がなく、輪距50㎝以下の三輪以上

・20㏄以下,0.25kw以下で輪距60㎝超え → 原付登録
※ 車室の有無・形状に関わらず、輪距が50㎝を超える20㏄以下・0.25kw以下の三輪・三輪以上

・20㏄~50㏄,0.25kw~0.6kwで輪距60㎝超え → ミニカー登録
※ 車室の有無・形状に関わらず、輪距が50㎝を超える三輪・三輪以上

b.登録の制限

登録には「型式,原動機の型式,型式認定番号」の記載が必要です。
これらが実際の登録において「どこまで厳格に要求されるのか」は分かりませんが、
正規のメーカーの製品でない場合は登録できない可能性があります。

c.運送車両法の装備が必要

原付登録やミニカー登録をしてナンバーがもらえても
道路を走らせるためには運送車両法の求める装備(ライト,ウインカー,ホーン,ブレーキなど)が必要です。
(運送車両法44条,道路運送車両の保安基準59条~)

ブレーキのないセグウエイや電動スケートボードはここではねられることになります。

※課税標識(ナンバー)の意味は、
地方税の「課税登録済」であり、「道路走行可」の許可証ではありません。
公道を走行するためには、道路運送車両法の保安基準を満たす必要があります。 → 新初田市HP神奈川県警

d.出力0.6kwを超えるもの

運送車両法では「50㏄~125㏄,0.6kw~1.0kwの二輪」は第二種原動機付き自転車で 自動車ではありません。
登録は125㏄バイクと同じです。
また、、道交法では 「50㏄~125㏄,0.6kw~1.0kwの二輪」 は原動機付き自転車でなく自動車に該りますが
自動車の中の小型自動二輪なので二輪免許が必要です。

125㏄~,1.0kw~の二輪については
運送車両方では自動車ですが 250㏄バイク,250㏄超えバイクの登録。
道交法では自動車の中の普通二輪,大型二輪として普通二輪免許,大型二輪免許が必要です。

50㏄超え,0.6kw超えの四輪については運送車両法も道交法も四輪です。

結局、0.6kw超えの電動キックボードやスケートボードは二輪なら二輪車としての登録と免許、
四輪なら四輪車としての登録と免許が必要です。
※三輪については後述のトライクという分類があります。

ただし、登録に認定型式が必要であり保安基準を満たしていなければなりません。
ネットで売られているような「0.6kwを超える電動キックボード」は登録できないでしょうし、
登録できたとしても公道走行は違法となるでしょう。

3.ネットショップの商品から具体例

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a.高速電動キックボード

●85㎞/hの電動キックボード

モーター出力が5.6kwだから、出力だけで考えれば第二種原動機付き自転車の上の普通二輪です。
250㏄バイクとして登録が必要で、運転には自動二輪免許が必要です。
もっとも、型式で登録できず、登録できたとしても保安基準を満たせず公道走行はできないでしょう。
それより、このホイール径で85㎞/hでは「怖い恐い体験」となるでしょうネ。


●65㎞/hの電動キックボード

出力 2.0kw で 連続走行距離 80㎞だとか。
ライトやミラーなどの保安部品がついていませんからかえってすっきり。
どうせ、公道は走れませんからね。


●45㎞/hの電動キックボード

45㎞/hに下がりますが、出力1.0Kwですから第二種原動機付き自転車で125㏄バイク扱いです。
こちらは陸運局ではなく市役所での登録ですが、型式で登録できないでしょう。
登録できたとしても保安基準を満たさず公道を走ると違反キップを切られます。


●原付登録できる電動キックボード

0.5kwで保安部品も揃っているから「説明文」通り原付登録・公道走行できるでしょう。
ただし、最大速度が38㎞/hだから法律が変わっても自転車扱いとはなりません。


●こちらも原付登録できます。

0.5kw,40㎞/h

ただし、原付登録をしてナンバーを付けたら絶対に歩道は走れません。
警察は摘発しやすい電動キックボードを捕まえるのでその餌食になります。
もっとも、同じ原付なら走行性能,操安性,快適性,整備性の高い50㏄スクーターの方がよいでしょう。

その他の電動キックボードは → こちら

b.三輪電動キックボード

●ミニカー登録の三輪電動キックボード

モーター出力0.5kw,輪距51.5㎝。
保安部品も揃っているので多分「説明文通り」ミニカー登録できるでしょう。
普通免許が必要だけど「ヘルメットなし」が魅力です。
ただし、最高25㎞/hでは後からクラクションの嵐になります。


どうせクラクションの嵐なら「4st・50㏄」のこちらを
ミニカー登録できます。


●こちらはどうですか?
0.4kwで輪距は多分50㎝超え。ミニカー登録できるでしょう。
しかし、だんだんと若さがなくなってきましたネ。
これなら歩道を走れるシニアカーの方がいい。



●こちらは「若さ」だけど2.1kwで四輪だから自動車扱い。
保安部品なしだから、絶対に登録も公道走行もできません。

c.セグウェイ

その他セグウエイ

二輪ですから
「出力0.6kw以下」で
「運送車両法の保安基準(道路運送車両の保安基準59条~ )満たせば原付登録が可能な筈です。
ただし、不安定な乗車姿勢が「何らかの基準」引っかかるかもしれません。
また、二輪といっても横幅があるので輪距の制限がかかるかもしれません。

新しい乗り物であるので現行法が追いついていけません。

現在、最高速度を基準として小型電動車を分けようとする動きがあります。 → こちらこちら
ここでは最高速度15㎞/h以下なら
・運転免許不要,ヘルメット不要
・車道,路側帯,自転車専用レーンが走れる。
とほとんど自転車並の扱いになるようです。

セグウエイで公道を走るのはそれまで待ちましょう。


●この動きに合わせたのか「15㎞/h以下」という電動キックボードも売られています


出力が明示されていないので原付登録できるかどうか不明です。
15㎞/h以下の電動キックボードが自転車扱いになれば必要な装備も決まります。
また、色々な車種が発売されるだろうからそれまで待った方がよいでしょう。

選任のための法律知識・

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トライクの法的取り扱い




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