●電動キックボード と トライク の法律的取り扱い

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4.トライクの法律的取り扱い

a.トライクとは

上で運送車両法では原動機付き自転車に該り道交法では自動車に該るミニカーを説明しましたが、
同じようなことがトライクという三輪にも生じています。

トライクというのは二輪のオートバイを三輪に改造したものです。

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このトライクは道交法では自動車,車両運送法では「側車付き二輪」として二輪車になります。
そのため免許や交通ルールは自動車、登録は二輪車となります。

b.道交法でのトライク

●トライクは二輪車でも側車付き二輪車でもない

道交法3条
自動車は、内閣府令で定める車体の大きさ及び構造並びに原動機の大きさを基準として、大型自動車、中型自動車、準中型自動車、普通自動車、大型特殊自動車、大型自動二輪車(側車付きのものを含む。以下同じ。)、普通自動二輪車(側車付きのものを含む。以下同じ。)及び小型特殊自動車に区分する。

道交法施行規則2条
・大型自動二輪車 → 総排気量が〇・四〇〇リットルを超え、又は定格出力が二〇・〇〇キロワットを超える原動機を有する二輪の自動車(側車付きのものを含む。)で、大型特殊自動車及び小型特殊自動車以外のもの
・普通自動二輪車 → 二輪の自動車(側車付きのものを含む。)で、大型特殊自動車、大型自動二輪車及び小型特殊自動車以外のもの

トライクは「二輪」ではない

では、トライクは「大型自動車,中型自動車,順中型自動車,普通自動車」に該るのか、
二輪の自動車(側車付きのものを含む)に該るのか?

ここで、「二輪」の自動車と表記されているので、
「三輪」であるトライクは「オート三輪」と同じく「二輪の自動車ではない」とされています。こちら

道交法施行規則2条は備考として
「車体の構造上その運転に係る走行の特性が二輪の自動車の運転に係る走行の特性に類似するものとして内閣総理大臣が指定する三輪の自動車については、二輪の自動車とみなして、この表を適用する。」
として、次に述べる「特定三輪車」を二輪の自動車とみなすとしています。
この反対解釈から「特定三輪車でないトライク」は「二輪の自動車ではないとしている」と解釈されます。

トライクは側車付き二輪車ではない

それではトライクは「側車付きの二輪の自動車」に該らないのでしょうか?

後述しますが、運送車両法では「トライクは側車付きオートバイ」に該るとしています。
道交法にこれを定めたものは見当たりません。

道交法は交通ルールを定めるものなので
「横に側車が付いたものが側車付き二輪車」これが二輪の限界。
「トライクはオート三輪と同じ」で「側車付き二輪車」ではない。
これで、解釈の問題が生じなかったのでしょう。
当時はトライクなどが出現していなかったのかもしれません。

トライクは二輪車として扱われない

このように道交法ではトライクは二輪車として扱われず、
その大きさに応じて「 大型自動車,中型自動車,準中型自動車,普通自動車 」として扱われます。
そのため

・ヘルメット着用義務なし。
・二輪免許ではなく該当の自動車免許が必要。
・またがり式のため運送車両法の保安基準でシートベルト不要 → シートベルト着用義務なし。

●特定三輪車-道交法で二輪車とみなされる三輪車

ヤマハが開発した多輪オートバイに「LMW=Leaning Multi Wheel」というものがあります。
「ころばないバイク」で「傾けてコーナーリングができるバイク」です。 → こちらこちら
この中で実際に発売されているのがトリシティとNIKEN。「前二輪+後一輪」の三輪です。

走行性・操縦性から、これを「トライクと同じ」と考えるのは無理があります。
そこで、道路運送車両法施行規則が改正され、道交法施行規則2条に「備考」が追加されました。

・道交法施行規則2条備考
「車体の構造上その運転に係る走行の特性が二輪の自動車の運転に係る走行の特性に類似するものとして
内閣総理大臣が指定する三輪の自動車については、二輪の自動車とみなして、この表を適用する。」

・内閣府告示第二百四十九号(平成21年6月22日)
「道路交通法施行規則第二条の表備考の規定に基づき、
車体の構造上その運転に係る走行の特性が二輪の自動車の運転に係る走行の特性に類似するものとして
内閣総理大臣が指定する三輪の自動車を次のように定める。

道路交通法施行規則第二条の表備考の内閣総理大臣が指定する三輪の自動車は
次に掲げるすべての要件を満たすものとする。
一、三個の車輪を備えていること。
二、車輪が車両中心線に対して左右対称の位置に配置されていること。
三、同一線上の車軸における車輪の接地中心点を通る直線の距離が四百六十ミリメートル未満であること。
四、車輪及び車体の一部又は全部を傾斜して旋回する構造を有すること。」

これらは道交法では二輪車となります。
この要件に満たさない次のようなもの二輪車として扱われません。
・前二輪+後二輪の四輪の LMW
・二輪の接地中心巾が460 ㎜以上のもの。

もっともヤマハは LMW を二輪車として開発しているので、
この基準を逃れる「自動車として扱われる LMW」を発売することはないでしょう。
しかし、「二輪接地中心巾460 ㎜以上」など軽くクリアーできるので
「普通免許で乗れて、ヘルメット不要」の「845㏄・NIKEN」を出せばおもしろいですね。

b.道路運送車両法でのトライク

●トライクは「側車付き二輪車」に該る

運送車両法でトライクは二輪車,側車付き二輪車,それ以外の自動車のどれに該るのでしょう?

この点は「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示・2005.06.01(こちら)」が定めています。

・2条
三.「三輪自動車」とは3個の車輪を備える自動車であって、次号のいずれかに該当する以外のもの
四.「側車付き二輪自動車」とは次のいずれかに該当するものをいう。
イ.直進状態において、同一直線上にある2個の車輪及びその側方に配置された1個(覆輪を含む)又は2個
   (二輪自動車の片側の側方に備えたものに限る)の車輪(以下「側車輪」という)を備えた自動車
ロ.またがり式の座席、ハンドルバー方式のかじ取装置及び3個の車輪を備え、
   かつ運転者席の側方が開放された自動車

この要件を満たすトライクは「三輪自動車」ではなく「側車付き二輪車」に該ります。
「またがり式」,「ハンドルバー方式」,「運転席の側方が開放」のどれかを書けば「三輪自動車」となります。

●側車付き二輪車の分類

このトライク(側車付き二輪車)は運送車両法でどのように取り扱われているのでしょう。

・運送車両法3条
この法律に規定する普通自動車、小型自動車、軽自動車、大型特殊自動車及び小型特殊自動車の別は、自動車の大きさ及び構造並びに原動機の種類及び総排気量又は定格出力を基準として国土交通省令で定める

・運送車両法施行規則2条
法第三条の普通自動車、小型自動車、軽自動車、大型特殊自動車及び小型特殊自動車の別は、別表第一に定めるところによる。

・別表第一
〇軽自動車
二輪自動車(側車付二輪自動車を含む。)以外の自動車及び被けん引自動車自動車の大きさが下欄に該当するもののうち大型特殊自動車及び小型特殊自動車以外のもの(内燃機関を原動機とする自動車にあつては、その総排気量が〇・六六〇リットル以下のものに限る。)
※例 : 660㏄以下の四輪自動車,三輪自動車

二輪自動車(側車付二輪自動車を含む。)で自動車の大きさが下欄に該当するもののうち大型特殊自動車及び小型特殊自動車以外のもの(内燃機関を原動機とする自動車にあつては、その総排気量が〇・二五〇リットル以下のものに限る。
※例 : 250㏄以下の二輪車,側車付き二輪自動車・トライク

〇小型自動車
四輪以上の自動車及び被引自動車で自動車の大きさが下欄に該当するもののうち軽自動車、大型特殊自動車及び小型特殊自動車以外のもの(内燃機関を原動機とする自動車(軽油を燃料とする自動車及び天然ガスのみを燃料とする自動車を除く。)にあつては、その総排気量が二・〇〇リットル以下のものに限る。)
※例 : 660~2000㏄の四輪自動車

二輪自動車(側車付二輪自動車を含む)及び三輪自動車で
軽自動車、大型特殊自動車及び小型特殊自動車以外のもの

※例 : 660~2000㏄ の三輪 ← 660㏄以下の三輪は軽自動車に入る
※例 : 250~2000㏄の二輪,側車付き二輪・トライク
←250㏄以下の二輪は軽自動車に入り、2000㏄超えの二輪車は普通自動車に入る。

〇普通自動車
小型自動車、軽自動車、大型特殊自動車及び小型特殊自動車以外の自動車
※例 : 2000㏄超えの四輪,三輪,二輪 → 2000㏄超えのトライクは普通自動車
← 車輪の数に言及無し。

つまり、トライクはその排気量により次のものとして登録されます。
・250㏄以下 → 軽二輪
・250㏄~2000㏄ → 小型二輪
・2000㏄超え → 普通自動車

●50㏄~125㏄のトライクはどうなるのか

運送車両法施行規則では原動機が125㏄以下,1.0kw以下のものを原動機付き自転車としています。

・1条
「道路運送車両法第二条第三項の総排気量又は定格出力は、左のとおりとする。
一.内燃機関を原動機とするものであつて、二輪を有するもの(側車付のものを除く)にあつては
   その総排気量は〇・一二五リツトル以下その他のものにあつては〇・〇五〇リツトル以下
二.内燃機関以外のものを原動機とするものであつて、二輪を有するもの(側車付のものを除く)にあつては
   その定格出力は一・〇〇キロワツト以下その他のものにあつては〇・六〇キロワツト以下
2.前項に規定する総排気量又は定格出力を有する原動機付自転車のうち、
   総排気量が〇・〇五〇リツトル以下又は定格出力が〇・六〇キロワツト以下のものを第一種原動機付自転車とし、
   その他のものを第二種原動機付自転車とする。」

この規定の中で50~125㏄,0.6~1.0kwのトライクはどれに該当するのでしょう?

運送車両法でトライクは「側車付き二輪車」として扱われていますから
「二輪を有するもの(側車付きのものを除く)」に該りません。

それなら、「その他のもの」に該るのでしょうか?
そうだとすると「50㏄以下,0.6kw以下」でなくてはならず
「50~125㏄,0.6~1.0kw のトライク」は認められないことになります。

しかし、実際に125㏄トライクは登録されています。

多分、次のように解釈されているのでしょう。
・「側車付のものを除く」の「側車」とは「サイドカー」のことで、
「側車付き二輪車」として分類されるトライクのことではない。
・「50~125㏄,0.6~1.0kw のサイドカー付き二輪車」は第二種原動機付き自転車ではないが、
「50~125㏄,0.6~1.0kw のトライク」は第二種原動機付き自転車に該る。

車両運送法施行規則が昭和26年。
「トライクが側車付き二輪車として二輪車に該る」と定めたのが2005年です。
当時の側車付き二輪車とは
「サイドカー付き陸王」や「材木屋さんのベンリイの横に付けた荷物車」だったのでしょう。
江戸川区も「サイドカー付きは二輪の軽自動車になります」と説明しています。 → こちら

ここでもう一度トライクを分類してみると次のようになります(車体寸法の制限除く)

①50㏄以下,0.6kw以下 → 第一種原動機付き自転車
②50~125㏄ ,0.6~ 1.0kw → 第二種原動機付き自転車
③250㏄以下 → 軽二輪自動車
④250㏄~2000㏄ → 小型二輪自動車
➄2000㏄超え → 普通自動車

●ミニカーとの区別

ミニカーとは
運送車両法では第一種原動機付き自転車に該るが、道交法では原動機付き自転車ではなく「自動車」に該るもの。
具体的に言えば、20㏄<排気量≦50㏄,0.25kw<出力≦0.6kw の
・一輪車
・ 車室があり、輪距50㎝以下の三輪・三輪以上
・ 車室の有無・形状に関わらず、輪距が50㎝を超える三輪・三輪以上

トライクとは運送車両法で二輪車に該るが、道交法では二輪車ではなく「自動車」に該るもの。

そこで、「 50㏄以下,0.6kw以下のトライク」とミニカーの範囲が重なります。
そして、「 50㏄以下,0.6kw以下のトライク の範囲」が「ミニカーの範囲」より広くなります。

「 50㏄以下,0.6kw以下のトライク」 でミニカーでないものを例示すればば
・「20㏄以下,0.25kw以下」のトライク
・車室がなく 輪距50㎝以下のトライク
・車室があるが左右が開放されている 輪距50㎝以下のトライク

しかし、これらは道交法で原動機付き自転車として「二輪」の扱いを受けます。
( 道交法2条10号,道交法施行規則1条の2 ,こちら)

そのためトライクについて次のように説明しなければなりません。
・トライクは運送車両法では「側車付き二輪」として「二輪車」に該る。
・トライクは道交法では「二輪車」には該らない。
・ただし、道交法2条10号で原動機付き自転車とされるものについては道交法でも「二輪車」に該る。

※以上は私の解釈ですからその真偽は不明です。

c.トライクまとめ

トライクは道交法では二輪車ではなく四輪車と同じ扱いなので、
・免許は四輪車と同じ
・ヘルメット不要。
・またがり式のものはシートベルト不要。
・制限速度は60㎞/h
・125㏄以下,1.0kw以下でも高速道路通行可。

しかし、運送車両法では二輪車と同じ扱いなので、
・二輪車登録で税金,強制保険料は二輪と同じ。
・車庫証明不要。
・250㏄以下は車検無し。

こちら

上のサイトが言うようにトライクは「バイクと車のいいとこ取り」と思えますが「悪いとこ取り」とも言えます。
・雨,風にさらされる。
・エアコンが効かない。
・積載量が少ない。
・事故のとき無防備。
という二輪車の悪いところと

・傾けられないのでコーナーがおもしろくない。
・切り返しが遅い。
・加速が悪い。
・場所をとる
という四輪車の悪いところ

さらに、
・四輪でなく三輪であるために走行安定性や旋回安定性が悪い
という三輪ならではの悪いところ。

これなら「ホンダのS660」か「ダイハツのCOPEN」の方がよいでしょう。

利点はただ一つ
「二輪免許がなくてもオートバイらしきものに乗れる」こと。
オートバイに乗っている者からはあまり魅力のあるものではありません。
試走コースの165号青山峠でもトライク集団を見かけますが「異質な光景」です。

まあ、250㏄以下なら車検がなく250㏄バイクと同じ維持費だし、車両価格も安いので
車庫に余裕があれば「面白半分で」程度でしょう。
ただし、注目されることは確かです。

トライクメーカー①トライクメーカー②トライクメーカー③おすすめトライク販売店

選任のための法律知識・

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