RMX-SJ13 整備資料




2017.01.05  28000円のSJ13 エンジンの検証


いつもの Yahooオークションで SJ13のエンジンを入手しました。

12月28日落札で、12月31日到着です。

早速、中身を見てみました。

暇な正月に格好の暇つぶしになりました。


 オークション説明文には
 「スズキRMX250(SJ13)・走行3.386kmの車体から取り外しました。
  5年前に実動車から取り外しましたが、現在動作の確認ができないので念のためジャンク品とさせていただきます。
  排気ポートをのぞいてもピストンに気になる傷はないようです。
  キックもおります。
  排気ポート、吸気ポート、ウオーターラインにはきちんと詰め物をして室内で保管していました。」


 まさか、「走行3386㎞のエンジン」はないでしょうが、「大当たり」もありえます。

 来年の運試しに入札することにしました。

 現在価格23500円を32000円で差したら、28000円で落札。
 入札者は私を含めて三名だけ。
 年末・年始は競争相手が少ないようです。

 送料はヤマト20㎏未満で1588円。
 かんたん決済で送金手数料ゼロ、合計29588円。

 ちょうど年末ジャンボ宝くじ100枚分。


今、RMXのエンジンは殆ど出品されません。SJ13ならなおさらです。

皆さんが欲しいのは「頻繁に定期的メンテをしないと壊れてしまう排気バルブ」。
部品供給なしの貴重品です。

もちろん、排気バルブだけの出品なとありませんから、
排気バルブを入手するためにはエンジンか車体を入手しなければなりません。


だいたい、エンジンの相場は3万円~4万円。
部品取り車体の相場は6万円~8万円。

もちろん、どちらも「排気バルブが健全」である保証はまったくありません。

「キック下ります」,「始動確認済み」,「アイドリング安定・吹け上がりOK」、「絶好調でガンガン走ります」などは一切関係なし。

RMXは排気バルブが「削られて、段々畑」になっていてもガンガン走ります。

ついでに、左側(マグネット側)ならクランクベアリングが2~3個無くなっていてもフルオープンで走れます。

だから、RMXのエンジンを入手するのは宝くじを買うことと同じなのです。

今まで入手したエンジンは「17000円エンジンのハズレ」・「6500円エンジンのアタリ」、勝率は50%。

ちなみに車体では「書なし・5万円の大当たり」・「書付き・6万円の当たり」・「書付き・4万円の大当たり」で全戦全勝です。

さて、今回は…。



1.「3386㎞のエンジン」が単体で出品される訳がない。


「3386㎞」と言えば「新車」です。

なぜ、そんな新車からエンジンを取り外して単品として出品するのでしょう?

こんな文言は常識的にまったく信用できません。

もちろん、出品者サンが「ウソを言っている」のではないでしょう。

「3386㎞走行の車体から取り外しました」という触れ込みのエンジンをスペアーとして高額で入手したのかもしれません。
「メーター読み3386㎞のSJ13」を購入しエンジンを他のエンジンに換装したのかも知れません。


届いたエンジンは J113-103711 のN形。

木製の専用台に載せてありました。

エンジンマウントボルトも全て揃い、スプロケットガードや排気バルブサイレンサー・ブリードホースも付属。
ギヤシフトレバーの先端が固定されているのには驚きました。

大切に保管してきたエンジンなのでしょう。


しかし、、エンジンの外観を見ただけで「3386㎞走行のエンジンでないこと」はすぐにわかります。

・シリンダーが黒色に塗装されていたようだ。。
・クランクケースの塗装があちらこちら剥げたり浮き上がったりしている。
・全体がくたびれている。

ここで「かすかな期待」は当たり前のようになくなりました。

とにかく中をみてみましょう。



2.ドライブスプロケット


 ドライブスプロケットは 13枚の社外品。※標準は15枚。

 しかもこの磨耗。

 もっとも、コースをガンガン攻めたら、3386㎞でもこれくらい磨耗するかもしれません。







3.ギヤオイルを見ればエンジンの健全度が判る


まず、ギヤオイルを抜いてみましょう。

 ギヤオイルは健康診断の血液検査と同じです。

 ギヤオイルを見ればクランクケース内の状態が判ります。

 出てきたのはドロドロの粘度なしの土色をしたオイル。

 しかも少ない。


 ギヤオイルがこの色だったら、シリンダーからの生ガス流入。

 原因は「クランク右ベアリング欠損」か「クランクオイルシール劣化・損傷」。

 排出オイルが少ないのはシリンダーへのギヤオイル吸い込み。

 この原因も「クランク右ベアリング欠損」か「オイルシール劣化・損傷」。

 まずはカウンターパンチをくらって膝にきました。

 いやいや、KOされなければいいのだから…。




4.キックアーム取り外しに1時間


それではクランクケースの右カバー(クラッチカバー)を外してみましょう。

まずはキックアームを取り外す…。

なんで、こんなに固いの!

 ヘキサ穴の角が潰れてレンチが引っかからなくなりました。

 ボルトは「固く締めれば固定力が強くなる」訳ではありません。

 また、頻繁に取り外すボルトに「固定用の最強度ネジロック」を塗るのはやめましょう。

 ネジロックを使うなら「取り外し可能の中強度」を。


 ドライヤーで温めたり、CRCを吹き込んだり。
 タガネで叩いたり、バイスプライヤーで挟んで回したり。

 「取り付け部を割るしかないか…」と覚悟したころ、ポンチと大ハンマーでやっと回ってくれました。


 ヘキサのツバ広ネジをタガネで叩いたりバイスプライヤーで掴むのをやりやすくするために、
 キックアームを取り付け部から取り外しました。
・通常はキックアームを取り付け部に取り付けたまま外します。

 取り付け部には「キックアームがカチッと納まる」ように、バネと二個のベアリングが入っています。
 これを無くさないようにしてください。
 ※ベアリングの代用品は→→→こちら

 グリス留めのOリングはちぎれてしまいました。
 このOリングはパーツ販売されていません。
 キックアームにはまるOリングで代用するしかないですネ。

 ヘキサのツバ広ネジは 09106-080998。




5.クランクケース右側の状態



a.またあの初歩的ミス!


クラッチカバーを外して『やっぱり…。』

土色のドロドロ変質オイルが流れだす。

そして各部に赤サビが…。

また「アレ」か…。

 原因は「クランクシャフト右オイルシールの逆組み」です。

 なぜこんな間違いをするのでしょう。

 このオイルシールは
 「クランクケース右室のギヤオイルがシリンダーの方に入っていかないようにする」ためのもの。

 オイルシールは油室側が凹。

 この場合、クランクケースの右室が油室だから、オイルシール凹部は外側向き。

 写真のように、スチール平坦面がこちらに向いていては逆なのです。
 スチール平坦面はクランク側。

 オイルシールの向きと打ち込み量については→→→こちら


クランク右側のオイルシールを逆に組むと、
ギヤオイルがシリンダーの方へ吸い込まれるだけではありません。
クランクケース右室にシリンダーから生ガスが流れ込んでくるのです。

ギヤオイルがシリンダーの方に吸い込まれるだけならギヤオイルが減るだけです。
その減り方もクランク右ベアリングが損傷した時のような急激なものではありません。
また、吸い込まれる量も少ないため白煙が多くなる程度で、エンジン回転数が上がらなかったり、サイレンサーからオイルを撒き散らしたりすることはありません。

※クランク右ベアリング損傷での症状→→→こちら
※クランク右オイルシール逆組みエンジンの状態→→→こちら


しかし、クランクケース右室にシリンダーから生ガスが流入すると大変なことになります。
生ガスがオイルを変質させるだけでなく、生ガスでクランクケース内の各部がサビてしまうのです。


なぜ、3386㎞走行のエンジンのクランク右オイルシールが逆組みしてあるのでしょう?

少し推測してみましょう。

オイルシールを交換しているのだからクランクベアリングも交換しています。
しかし、通常使用で3386㎞走行でクランクベアリングが破損することはありません。
だから、

・新車からコースをガンガン走り、3000㎞でクランクベアリングが破損して交換。
・オイルシールも交換したが逆に組んだため、ギヤオイルが変質し減るようになった。
・その後、386㎞走らせたが症状が変わらず原因が分からないので別のエンジンに取り替えて、このエンジンをスペアーとした。

もっとも、SJ13をコースで走らせるような人はメンテ知識も豊富なのでオイルシールを逆組みするようなことはしないでしょうが…。



b.幸い手遅れではなかった


赤サビが出るのはギヤオイルに浸かっていない部分。

 キックスタータ部分は一番サビが出やすい場所です。
 多分このギヤの裏側はサビサビです。
 この部分はギヤオイルに浸かっていないし、
 たまにしか動かさないので、ギヤオイルが潤滑してくることはないからです。
 ひどくなるとギヤ全体が赤サビでコーティングされたようになります。
プライマリードライブギヤやガバナはエンジンが動いている間は動いています。
 だから、ギヤオイルに浸かっていなくてもオイルが潤滑してくるのでサビが出にくくなります。
 もちろん、エンジンを動かさないで放置していればサビが進行します。


 これに対し、ギヤオイルに浸かっている部分には赤サビが発生しません。
 生ガス混入で変質したオイルでも防錆効果はあるのです。
 
クラッチレリーズピニオンもギヤオイルに浸かっていないので赤サビたっぷりです。
 なんと、この部分は取り外せるのです。※シャフト部分 : 23261-00820
 上下にベアリング、上部にオイルシールが付いているようです。


これらのサビはそれほど問題になりません。

ギヤやシャフトが厚いので、チョットやそっとのサビで使えなくなることはないからです。

しかし、次のサビは非常に危険です。

 プライマリードリブンギヤ(クラッチハウジングの下に付いているギヤ)のサビは危険です。
 このギヤはエンジンのパワーをプライマリードライブギヤから直接受け取ります。

 『ここも厚いギヤだから、少しくらいのサビでは大丈夫でしょう?』
 いやいや大丈夫ではではないのです。
 外してみればそれが理解できます。
ブツブツは汚れではありません。赤サビが盛り上がったものです。
 プライマリードリブンギヤ(大きいギヤ)とクラッチハウジング(アウター)は
 プレートと8本のリベットで固定されています。

 サビがリベット部分に達すると、
 ブライマリードリブンギヤとクラッチハウジングの固定が弱くなりガタが生じます。


少しくらいのガタなら「ニュートラルが出にくい」くらいで気になりません。

しかし、この部分には常に大きい力がかかるので、いつ何どきクラッチアウターがプライマリードリブンギヤから外れるかもしれません。
そうしたら、クランクケース右室内でクラッチハウジングが暴れ出すことになります。


幸いなことに、今回のサビは取り付け部まで進行していませんでした。

 「スクレーパー+サンドペーパー+ワイヤーブラシ+スチールウール」で
 大きなサビを削り落としました。

 また、スペーサとベアリングにサビは達していませんでした。
 
この程度なら、
 ギヤオイルが循環してくるので、リベット部にサビが達することはないでしょう。

 

今回のサビは初期状態だったので何とか生存できたのです。。

末期状態ではこんな状態になります→→→こちら(17000円エンジン)



c.クラッチの状態


私がエンジンを入手する場合、使いたい部品は第一に排気バルブ、第二にクラッチハウジング、第三がシリンダーやクランクケース、最後にクランクやジェネレーター。

これはエンジンテスト終了のオーバーホール済み6500円エンジンが、排気バルブが欠損し、クラッチハウジングに段付きがあるからです。

この二つが揃えば「完全なスペアーエンジン」が一台出来上がります。

だから「クラッチがどうなっているか」はとても気になることなのです。


 クラッチデスクは貼りついて使い物になりません。長期放置なら当然のこと。
 スプリングはサビているが、自由長 : 48.2㎜~48.5㎜で使用OK
※使用限度自由長 : 46.2㎜
 ドライブプレート(コルクデスク)は劣化して使用不能。
 念のため厚さを測ると 2.8㎜、使用限度が 2.5㎜だからまだ使えるかもしれません。
ドリブンプレート(アルミデスク)は付着したコルクを取ればなんとかなりそう。
 手前の一枚が付着物を削り落としたものです。
 しかし、このデスクは厚さより平坦度が必要※使用限度は定盤上で隙間の最大値 : 0.2㎜
 だから、使用不能。


 ジャダースプリング(凹)とスプリングシートはサビを取って使用可能。
 ジャダースプリングについては→→→こちら
 
ジャダースプリングの上にくるドライブプレート(T : 3)は劣化が少ないので使用できるでしょう。
※厚さ : 3.0㎜(ドライブプレートの使用限度 : 2.5㎜) 


「クラッチデスクが使える」とは最初から思っていません。

期待しているのはクラッチハウジングのアウター(プライマリードリブンギヤ)。

クラッチハウジングアウターの爪に段付きがあるとクラッチが切れなくなるからです。

この段付きは、削って平坦にしても一時しのぎですぐにまた段付きができてしまいます。

解決策は高価なクラッチハウジングアウターを新品にするしかないのです。→→→こちら


 段付きができやすいアウターの爪の前側(写真では後側)の状態です。
 ※左回転をするので、回転方向側を前側とします。
 段付きが見てはっきりと判別できますが、指の腹で触って「かすかに感じる」程度。
 これなら「このまま使用可能」です。
段付きができにくいアウターの爪の後側(写真では前側)の状態です。
 段付きが見て判別できますが、指の腹で触っても「感じない」状態です。
 もけちろん、「このままで使用可能」。


 クラッチインナー(クラッチスリーブハブ)の爪にはあまり段付きが生じません。

 これは、クラッチをつないだときに、アウターにかかっている力が、
 「アウター→ドライブデスク→オイル→ドリブンデスク→インナー」と伝わり、
 「ドライブデスクとドリブンデスクのオイルによる滑り」で軽減されるからです。

 また、デスクとインナーの噛み合っている溝の数が多いので、
 アウターに比べ一つの溝にかかる力も少なくなります。

 だから、この部分の段付きは通常は問題になることがありません。

 今回のエンジンのインナーも、かすかに当たった痕が付いているだけでまったく問題はありません。

 ブライマリードリブンギヤのベアリングとスペーサも問題なしだから
 クラッチハウジングはまるまる使えることになります。

 これだけで充分「1万円の価値」があります。




d.その他のもの


 その他の部品は全て使えます。

 分解していませんが、クランクケース左室内のトランスミッションもOKでしょう。

 クランクケース自体も問題ないでしょう。

 クランクもジェネレーターもOKでしょう。

 もちろん、ベアリング全交換とオイルシール全交換は必須です。


 これらについては手持ちがあり「必要な部品」ではありませんが、
 「全部で1万円」の価値でしょう。




6.排気バルブの状態



a.目視点検では「合格


まず、最初に見たのはこの部分です。

エンジンを入手する最大目的は排気バルブですからね。

 このくらいのヨゴレは「普通」です。
 バルブも問題なく上がります。
バルブに欠けはありません。まずは「合格点」。
※削られたバルブ→→→こちら


 「タールこてこて」で取り外しに苦労するのは「いつもの通り」。
 しかし、サビが多くシャフトも腐食している。
 「3386㎞走行後 5年間放置した」だけではこんなことにはならないけど…。
三枚のバルブがきれいなアーチを作っています。
 このバルブは「使用可能」です。一安心。




b.清掃後の点検で「問題あり」


次はタール除去後の詳細点検です。

 灯油に漬けてスチールウールで磨けばきれいになります。
 ブレート,シャフト,ボルトにサビが多いのが気になります。
三枚のバルブアーチに問題なし。


しかし…、

 ロアバルブシャフトとバルブスペーサの穴が磨耗して楕円形になっています。
 これはバルブ損傷の初期症状。※参照→→→こちら

 写真左側(前から見て右側バルブ)
 a.ロアバルブシャフト穴内径 :ヨコ(バルブ方向)/4.2㎜Φ,タテ/4.2㎜Φ
 ※表面の穴形状は楕円形になっていて表面ではヨコ/5.0㎜くらいに拡がっているが、
   穴内部はヨコ/4.2㎜Φになっている。
 b.カラー穴内径 : ヨコ(バルブ方向)/4.2㎜Φ・4.3㎜Φ,タテ/4.1㎜Φ

 写真右側(前から見て左側バルブ)
 c.ロアバルブシャフト穴内径 : ヨコ(バルブ方向)/4.2㎜Φ,タテ/4.2㎜Φ
 ※表面の穴形状は楕円形で表面では横/5.0㎜くらいに拡がっているが穴内径は4.2㎜Φ。
 d.カラー内径 : ヨコ(バルブ方向)/4.9㎜Φ・5.3㎜Φ,タテ/4.6㎜Φ

 ピン外径 : 4.0㎜Φ
 カラー : 内径/12.0㎜Φ,外径/18.0㎜Φ,厚さ/3.0㎜,長さ/13.2㎜
 ロアバルブシャフト外径/11.85㎜Φ

排気バルブにバルブピンを差し込むとこのようになります。

 スペーサの役割は、
 「排気バルブがそれ以上シリンダー内に突き出さないように」すること。
 スペーサがバルブガイド(写真の一番上のバルブ)に当たってバルブの下降を止めるのです。

 スペーサの穴が磨耗して楕円形に拡がり、バルブ方向の長さがながくなると、
 スペーサがバルブガイドに当たって止まっても、
 バルブがその分だけ下降し、シリンダー内に突き出します。

 これはロアバルブの穴が磨耗して楕円形に拡がった場合も同じです。

 排気バルブがシリンダー内に突き出すとピストンリングで削られてしまいます。
 そして、三枚のバルブがきれいなアーチを作ることができなくなって、
 その機能を充分に発揮することができなくなります。

 ※Mポジション(5500rpm~)でロアバルブとミドルバルブが重なってアーチを作る。
   Hポジション(6500rpm~)で三枚のバルブが重なってアーチを作る。

このバルブで言えば、
ロアバルブシャフト穴も磨耗・変形しているが、内径4.2㎜Φで0.1㎜程度のものなのでさほど問題にならないだろう。
しかし、カラー穴の変形は問題となる。

 右側バルブはカラーが0.1~0.2㎜拡がっているから、
 バルブ先端(ロアバルブ先端)がシリンダー内に最大0.2㎜突き出すことになる。
 当然、その部分は削られてしまう。
左側バルブはカラーが0.8~1.2㎜拡がっているから、
 バルブ先端(ロアバルブ先端)がシリンダー内に最大1.2㎜突き出すことになり、
 その部分が削られることになる。。

現在入手できるのはスペーサだけ。※部品番号 : 11263-29E00 / 1015円(個)

入手できるスペーサを新品にするのはもちろんですが、
スペーサ穴やロアバルブシャフト穴の磨耗によるバルブ突き出し対策として、スペーサの下に「内径/12.0㎜Φ・厚さ/0.5㎜~1.0㎜」のワッシャを入れることも考えられます。

もちろん、その分だけ各ポジションでのバルブリフト量が変わってくるので、早めに切り替わることになりますが、実際の使用上はそれほど問題にならないかもしれません。


結論としては「排気バルブはスペーサを新しくすれば使用可能」。

これだけでさらに「1万円の価値」。



c.シャフトやピンその他はストック部品を使えばOK


排気バルブシャフトとピンに腐食があります。

 一番上がストックの排気バルブシャフト、二番目が今回のエンジンのシャフト。
 三番目の左が今回の排気バルブピン、右がストックのピン。
 上が今回のエンジンの排気バルブピン、下がストックのピン。
3386㎞走行でピンがこれほど腐食するでしょうか?
※排気バルブピン : 11253-01B31




d.排気バルブ孔を磨くことは必須


ロアバルブシャフトやスペーサの穴が磨耗して楕円に変形するのは、排気バルブがスムーズに上下しないからです。

排気バルブはエンジンの回転数に応じてガバナより上げ下げの力を受けています。→→→こちら

これに応じて排気バルブがスムーズに上下しないと、ピンに伝わる振動でロアバルブシャフトやスペーサの穴が削られてしまうのです。

これを防ぐためにはシリンダーにあるバルブ孔をきれいにしておかなければなりません。

つまり、定期点検・定期清掃が必要なのです。

 これはバルブ孔の下側です。
 ここをきれいにしなければならないのはすぐに気づきます。
しかし、バルブ孔の上側や側面をきれいにしているでしょうか?
※写真は上下が逆転しています。写真の下側がバルブ孔の上側です。
 少なくとも、ロアバルブとミドルバルブが摺動する「2時位置~10時位置」の研磨は必須です。




7.シリンダとピストンの状態



a.ピストンの状態


全体に「爪に引っかかる縦傷」がありますが、これが通常の状態。

使用にはまったくもんだいないでしょう。

 ピストンの前側です。
 上から見て「10時位置」に深い縦傷が一本。
 ここは排気バルブ孔の左端に該ります。
ビストンの後側です。
 上から見て「5時位置」に深い縦傷が二本。
 ここは排気バルブ孔の右端に該ります。

10時位置と5時位置の深い縦傷は排気バルブの両外端がシリンダー内に出て付けたのかもしれません。

それなら、排気バルブ両外端を少し削っておく必要があるでしょう。

また、排気バルブ孔の両外端が原因かもしれません。

それなら、その部分の面取りも必要でしょう。

今回のシリンダーと排気バルブを転用する場合は、この二つを試してみようかと思っています。


 ピストンヘッドに欠けや損傷はありません。

 カーボンの付き方も健全です。

 もちろん、このままで「使用可」です。
クランクケース上部に金属粉ははありません。
※金属粉があって、クランク左ベアリングが損傷していた事例→→→こちら

 ただし、後部右(写真では左上)に当たり傷があります。
 ピストンの下端が当たったのでしょうか?
 そうだとすると、クランクベアリングが損傷してクランクが首を振っているのかもしれません。

 この点はクランクケースを割って見なければ分かりません。


ピストンピンとベアリングにヘタレはありません。

ピストンを下から覗くとキラキラしていて若さを感じます。

案外、「3386㎞走行」なのかもしれません。



b.シリンダーの状態


きれいな状態です。

爪に引っかかるような線傷はありません。

 シリンダー下から。
 右側の穴はエンジンオイル噴出孔。その上の二つの大きな穴が排気バルブ孔。
 エンジンオイル噴出孔がシリンダー前側の中心となるので、
 この部分を「上から見て12時位置」とします。

 「上から見て11時位置」(画像では5時位置)に爪に軽く引っかかる線傷が二本あります。
シリンダー下から。
 エンジンオイル噴出孔は画像では12時位置です。


 シリンダー上から。
 エンジンオイル噴出孔は画像では9時位置です。
 
シリンダー上から。
 シリンダー噴出孔は画像の3時位置です。

 画像の5時位置(上から見て2時30分位置)に深そうな線傷が映っています。
 この傷は爪にかすかに引っかかる程度の浅いものです。

もちろん、シリンダーはこのままで「使用可」です。

もっとも、使えるシリンダーは二個ありますが…。

なお、水色のシリンダーガスケットはゴムが残っている状態。

クランクベアリングを交換するときにこのガスケットを新しくして、それからシリンダーを外していないということなのか…。

 シリンダーヘッドに小さい点傷がたくさん付いています。
 こんな点傷は見たことがありません。
 もっと程度の良いヘッドのストックもありますが、このまま使ってみましょう。
シリンダー、ピストン、排気バルブをセットで転用します。

 もちろん、排気バルブスペーサは新品にします。

 中古部品でこれだけ揃えると2万円は下りません。




8.その他の状態



a.ウォーターポンプの状態


※基礎知識として→→→こちら と こちら

 インペラを取り外した状態です。
 インペラにはまっている樹脂リングの内側のゴムが劣化して剥がれ、
 ウォーターポンプシャフトとメカニカルシールの間に溜まっていました。

 メカニカルシールの上端面に片減りはありません。

インペラ側の樹脂リングは内側ゴムが劣化していますが、
 樹脂リング表面は平坦なので液体ガスケットを塗ってこのまま使用します。

 なお、この樹脂リングに裏表はありません。
 もし、磨耗して平坦でなくなっていたら裏返して使えばよいでしょう。


 クランクケース側からのウォーターポンプシャフトです。

 シャフトにガタはないようです。

 もちろん、このクラッチカバーを実際に使う場合は、
 ウォーターポンプシャフトを取り外し、オイルシールに当たる部分の研磨をしなければなりません。
 オイルシール交換も必須です。

 しかし、これはどんなクラッチカバーでも同じことです。

 ウォーターポンプについては合格点です。




b.オイルポンプの状態


 きれいで驚きました。

 パイプグロメットも外したことがないようです。

 もしかして、オイルポンプを付けたまま、混合油使用で動かしていたのかも知れません。

 もちろん「合格点」。




9.総括


さてさて、このエンジンは「当たり」だったのでしょうか「外れ」だったのでしょうか?


まずは、今回のエンジンから6500円エンジン(エンジン⑤-2→→→こちら)に移植する部品です。

 ①クラッチハウジングとスプリング他
 ②シリンダーとヘッド
 ③排気バルブ
 ④ピストンとピン,ベアリング

 購入しなければならないのは、
 ⑤排気バルブスペーサ
 ⑥シリンダーガスケット

 ヘッドガスケットはストックの新品を使用。

 これで完全なストックエンジンが
 一台完成することになります。

 排気バルブとクラッチハウジング
 の二つで「2万円」の価値。

 残りはストックと重なるが
 それ相応の価値はあるので
 これが「1万円」。

さらに、


 ・クランクケース
 ・オイルポンプ
 ・,ジェネレーター
 ・クランク
 ・インテークマニホールド
 ・リードバルブ
 ・キックアーム
 ・ギヤシフトアーム
 ・排気バルブのブリーダーライン

 これらはストックしているものと重なりますが
 相応の価値はあるでしょう。

 その価値は
 クラッチハウジング無いから
 全部で「1万円」程度。

 SJ13の腰下部がYahooオークションに
 1.5万円で出品され、
 ずっと落札されませんからネ。

 だから、今回のエンジンを全体として見れば、
 その価値は「4万円」程度。

 内訳は、
 必要なものが2万円分、
 不要なものが2万円分


だから、「外れ」ではありません。
ジャンボ宝くじを100枚買って、3万円当たったようなものです。

ジャンボ宝くじ100枚が「当たっていないこと」を調べるのには5分もかかりません。

このエンジンの検証で正月三が日の暇つぶしになったことを考えれば「トントン+α」でしょう。

今年の運試しの結果は「当たりもなく外れもなし」ということのようです。

「人生、“ハズレ”なければ合格点」です。


それはそうと、正選手RMX②の排気バルブをそろそろ点検しなければなりません。

点検だけすませるか、今回の部品で6500円エンジンを完成させて換装するか迷うところです。



つづく





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