RMX-SJ13 整備資料




2018.05.02  正選手RMX②の ギヤオイルが黒い  その② 


1.取り外したエンジンの状態と処置
ピストンとシリンダー
クラッチ
オイルシールの交換
ジェネレーターローター取り付け・取り外しの注意
排気バルブのガス抜き穴--N型とRS型の違い
排気バルブの状態
ドライブシャフト左オイルシールの交換とスペーサの打ち込み量

2.エンジン②-2 のギヤオイル黒化の原因



1.取り外したエンジンの状態と処置

     
a.ピストンとシリンダー


イ.きれいな状態

 クランクケース上面に金属粉はありません。

 ベアリングホルダーやベアリングが損傷した場合は
 この二つの穴から金属粉が吹き出し溜まります。→→→こちら  


 ピストンがいやにオイルで濡れています。
 レース用イグナイターにはオイルポンプの調整が必要なのでしょうか?
 正確に測っていませんが、オイル消費量がとても増えました。
 ヘッドきれいです。そのままの状態です。


 爪で触れば縦傷を感じますが、この程度なら問題ありません。

ピストンがきれいなので、多分新品ピストンを組んだと思うのですが、いつどのエンジンに組んだものかどうか覚えていません。

そこで、履歴を検証。

・ このエンジンの前身はレース仕様・混合給油のN型 ( エンジン① ) で、2012.2 に尾鷲・熊野の山中で右クランクベアリング破損→→→こちら
・ 2013.2、クランクベアリング破損をピストンの抱きつきと間違い、エンジン②のRS型のシリンダーに新品ピストンを組んでテスト。当然ピストンはガリガリに。→→→こちら
・ 2013.3、腰下ガ怪しいと腰下もエンジン②のRSに。( 2014.7、エンジン①の腰下分解、ここでベアリング損傷が分かる。→→→こちら )。→→→こちら
・ 2014.9、左クランクベアリング損傷が分かり腰下OH。シリンダーやピストンはそのまま。→→→こちら
・ 2016.2、新たに入手したエンジン⑤ ( N型 ) をOH。新品ピストンを組む。→→→こちら
・ 2016.4、排気バルブの損傷が分かり、エンジン⑤のシリンダーをピストンごと移植。→→→こちら
・ 2017.1、排気バルブ点検異常なし。→→→こちら

※結局、腰下はエンジン②のRS型で、OHは2014.9。腰上は新品エンジンを組んでOHしたN型エンジン⑤のものを2016.4に移植。
  ピストンは2016.4に新しくなっているのできれいなのです。


ロ.シリンダーの状態


このシリンダーはホーニング加工がしてあります。→→→こちら

 こちらは横面。
 交差した斜めの加工線 ( 縞 ) が付いています。
 こちらは前側の面。
 ピストンは前後に押しつけられるので、縦線 ( 縞 ) が付きます。
 ホーニング加工斜め縞の上からピストンの縦縞が付いているのが分かります。


このシリンダーで気になるのは排気バルブ孔の天井にある凹み。

 ヘッド側を下にしています。

 右側のバルブ孔の天井に 「 ミドルバルブの突起で削られた 」 と思われる凹みがあります。

 この凹み部分にはバルブガイドが当たり、バルブガイドは固定されて動かないので、
 この部分に引っかかることはありません。

 また、この凹み部分を含めバルブ孔の天井部分にはバルブガイドの曲面が当たるので
 この凹み部分からガス漏れがすることはないはずです。

 しかし、後で述べるように 
 「 このエンジンは 排気バルブ室に多くの排気ガスが流れ込んだようであること 」 から
 この凹みが気になります。


そこで、シリンダーは エンジン② のRS型を使うことにしました。

このシリンダーは、クランクシャフト右ベアリングを破損したエンジン①の換装用とし入手したもの。→→→こちら

当時はエンジン① の 「 クランクシャフト右ベアリングの破損 」 を知らずに、エンジン①の腰下にこのシリンダーを組んでテストしたので相応のダメージを受けたと思います。→→→こちら

しかし、「 エンジン②の腰下 + エンジン②のシリンダー 」 で 正選手RMX② に搭載して 2013.3~2016.4 の三年間、問題なく使ってきたシリンダーです。→→→こちら

2016.4 に排気バルブの損傷が分かって、スペアーとなりましたが実績のあるシリンダーです。→→→こちら

 排気バルブ孔の天井に凹みはありませんが、その当たりに傷があります。  シリンダー面はそれ相応の浅い縦傷が無数にあります。
 しかし、問題となるような大きな傷はありません。



    
b.クラッチの状態


 腰下は2014.9 に OH。
 3年半も酷使していますが、きれいです。
 クランクシャフトオイルシールの磨耗があり、クランク室から混合気が吹き込んでいるなら
 もっと悲惨な状態になっています。
 混合気吹き込みなら、このあたりに、泥のようになった変質オイルが溜まっているはずです。
 そんなものはありません。


 プライマリードリブンギヤもきれいで異常なしです。  ギヤ取付プレートの一部にサビがありましたが、これは通常使用によるもので問題ありません。


 ドライブデスク厚はジャダースプリング対応のデスクが 3.0㎜、あとの7枚は 2.8㎜でOK。
 ドリブンデスクもきれいで、ドライブデスクとの張り付き痕なし。
 ジャダースプリング入り。
 構成部品は全てきれいで良好。クラッチ滑りを起こしていた徴候なし。
 プライマリードリブンギヤの爪段差については、
 この写真では問題ある凸凹のようですが、
 実際は指の腹で触って 「 ああ、あるな 」 と凸凹を感じる程度。
 このくらいの凸凹ならデスク同士が離れることを邪魔せず、クラッチ滑りは起こらないでしょう。
 しかし、オイルストーンで修復しておくにこしたことはありません。


RSのクランクケースだから、RSのクラッチハウジングが一番なのですが、
試してみたいクラッチがあるので、そちらを使うことにしました。。

今年の正月に入手した 「 多分RM用のだろう 」 ガッチリクラッチです。→→→こちら

 爪の段差・ 凹凸 は上のものより軽いものです。  ドリブンプレートはずっしり重いスチールです。

しかし、試そうにも、このエンジンはスペアとなるのですから試しようがありません。



    
c.クランクシャフト右オイルシールとベアリング


イ.状態


 最初に外すのはプライマリードライブギヤ。
 ネジロックが使ってありますのでエアーホットガンで解除してください。
 プライマリードライブギヤの下にスペーサがあります。
 これははめてあるだけなので、プライヤーで挟んで抜きます。
 中にOリングが入っているので、指で簡単に抜くことはできません。
 オイルシールの主リップが当たるのはこのスペーサの外周です。


 オイルシールが磨耗してスペーサとのシールが甘くなると、
 クランク室から混合気が流れ込みます。
 もちろん、甘いか甘くないかは見ただけで分かりません。
 「 疑わしきはオイルシールの不利益に 」 です。
 今回は交換しませんでしたが、できればスペーサ内のOリングも新しくした方がよいでしょう。
 オイルシールの奥にあるのがベアリングです。
 オイルシールとベアリングの間にはすき間がありますから、
 そこに何かを入れてオイルシールをこじれば外れます。
 このとき、オイルシールの外周と接するオイルシール孔外周を傷つけないこと。
 この部分が傷つくと、オイルシールを新しくしてもそこから混合気が吹き込みます。
 写真では 「 挟んで外す 」 ように見えますが、そんなに簡単には外れません。
 写真は 「 プライヤーの下の部分でこじっている 」 様子です。
 どこかに 「 支点になるもの 」 を置いた方がよいでしょう。


 2~3箇所 「 こじれ 」 ば外れます。
 オイルシールプーラーという道具があります。→→→こちら ・ こちら
 あれば便利だから、「 送料無料枠用 」 に予定チェックしておきましょう。
 こちらは金属プレート面。
 この面が外側から見えていると 「 オイルシールの逆組 」 です。
 こじっているので、傷がついていますが、再使用しないので問題ありません。


 ベアリングホルダーは変色していますが、損傷はありません。

 ベアリング損傷は、まずペアリングを留めている金属ホルダーがちぎれ、
 次にベアリング玉が外れます。
 そして、飛び出したベアリングはクランクケースの中で消えてしまいます。

 オイルシールを交換するのならついでにベアリングも交換したほうが確実です。
 左右ベアリングの部品代は1500円~2000円です。

 しかし、ベアリングを交換するためにはクランクケースを割らなければなりません。
 ギヤ類をすべてばらし、また組み上げなければなりません。
 オイルシールたけならこの状態で外側からオイルシールを打ち込めば終わりです。
 ツライチを超えて打ち込んではいけません。

 左側オイルシールはジェネレータを外せばOKです。

 「 オイルシールの手持ちもあるし、今回はオイルシール交換だけにして様子を見ようかな…。」 と迷い、
 結局オイルシールだけを交換することにしました。
 
 「 オイルシール交換二回に対してベアリング交換一回 」 でよいでしょう。


 クランクケース右室の内部はきれいです。
 この状態からは ギヤオイル黒化 ・ 変質と増加の原因を
 「 クランクシャフト右オイルシールの磨耗による混合気吹き出し 」 とすることに無理があります。
 どこにも 病変は見当たりません。



ロ.クランクシャフトオイルシールの交換


( 右側オイルシール交換 )

 何度も言いますが、このプレート面は内側 ( クランク室側 ) になります。
 このプレート面が外側から見えていたら、取り付け方向が逆です。
 オイルシールはN型とRS型では異なります。
 オイルシールの上から大きい座金を当てて打ち込みます。
 オイルシール打ち込み具で使った座金を使います。→→→こちら
 クランクシャフト径が22㎜Φだから座金穴の内径 22.5㎜Φ のものが適合。
 事前に 「 座金がオイルシール孔の上端面まではまるかどうか 」 を確認。


 ベアリングと違って、初期打ち込みにそれほどこだわる必要はありません。
 座金を当てて少し打ち込み、出っ張り過ぎの部分を少し打ちめは初期打ち込みはOK。。
 座金をそのまま叩いても打ち込めますが、
 ここはおだやかに、座金の上にソケットを当てて、ハンマーで 「 コン、コン 」 と打ち込みました。
  RS型の右オイルシールは外径 52㎜,内径 38㎜ だから、一番良いのは50Mのソケット。
 そんな大きなソケットは持っていませんので、手持ち最大の 36Mソケットを使いました。
 ソケット取り付け穴からクランクシャフトを見て、
 オイルシール外縁に均等に力がかかるようにします。


 座金がオイルシール孔の上端で止まるので、
 どれだけ叩いてもオイルシール上端はオイルシール孔上端とツライチになります。
 しかし、実際はオイルシール上端がオイルシール孔上端より少し出ているように見えます。
 触ってみても出ているようですが、これでOKです。
 座金を上から当ててどれだけコンコンしてもゴンゴンしてもこれ以上入りません。


スペーサを差し込むときに、スペーサの長さを確認しておきましょう。

N型クランクとRS型クランクではスペーサの長さが違います。
N型 / 23.5㎜、RS型 / 22.5㎜ です。→→→こちら



( 左側オイルシール交換 )

 まず、ローターとコイルを外します。
 ジェネレーター室に金属粉はみあたりませんが、湿った汚れがあります。
 これはクランク室からの混合気侵入の痕跡でしょう。
 下側によごれが溜まっています。
 やはりオイルシールが磨耗しているのでしょう。
 金属粉があればベアリング損傷です。


 小さいオイルシールですから簡単に外せます。
 巾の狭いマイナスドライバーをシャフトの横からオイルシールリップ部に差し込み、
 そのまま ドライバーを左に回してやれば外れます。
 右側のようにどこかを支点にして 「 こじる 」 必要はありません。
 オイルシールはN型とRS型共通です。
 取り付け方向は平坦面が外側、凹面が内側。
 打ち込み量はオイルシール孔上端面とツライチ。
 オイルシールの打ち込み量はすべて 「 ツライチ 」 です。


 オイルシール打ち込みの前にジェネレーター室をきれいにしておきましょう。
 そうしておかないと、次回の点検で混合気侵入が判りません。

 オイルシールを打ち込んでからでもよいのですが、
 パーツクリーナーを吹きつけて清掃しますので、オイルシールが損傷します。
 右側と違い、打ち込みのときにオイルシールがクランクシャフトに直接当たるので、
 オイルシールリップ部にグリスを付ける必要があります。
 
指で押し込んでもはまりますが、
 押し込みすぎないようにやはり座金を当ててツライチに打ち込み。
 見た目は少し出ているようですがこれでOK。


以上のオイルシール交換はエンジを降ろさなくてもできます。

「 クランクシャフトオイルシールの交換はクラッチデスク交換と同じレベル 」 だと初めて知りました。


     
※ジェネレーターローター取り付け・取り外しの注意


( 取り付けの注意 )

コイルを取り付ける前に、クランクシャフトのピンの向きを変えておきましょう。

ピンにはローターの溝がはまりますが、この溝は 「 入口が浅く、出口が深い 」。形をしています。
だから、ピンを「 先が低く、元が高くなるように 」 しておくと、ピンが溝にスムーズに入ります。
ピンは溝に入った後、溝の形状に沿って  「 先が高く、元が浅く 」 なります。

もっとも、この調整をしないでもローターをはめることができます。
ローター取り付け穴はクランクシャフトより一回り大きくなっているので、
クランクシャフトのピン形状とローターの溝形状が合わなくても、ローターの溝にピンをはめることができます。
このとき、ローターはピンの方向にずれています。
その方向からハンマーでローターを叩いてやれば、ピンがローターの溝に適合してローターが真っ直ぐになります。


ピン調整はハンマーでコンコンと叩けば簡単にできますが、コイルを取り付けるとピン部分がコイルの奥になってこのコンコンがきません。
ピン調整はコイル取り付け前にやっておきましょう。


( 取り外しの注意 )

ローター取り外しのときに、プーラーで 「 固い、固~いっ 」 と引っ張っていると、突然 「 ボコッ 」 と外れるのは、
ローターの溝がピンを押さえつけて乗り越えるときに大きな力がかかるからです。

ローターが外れる直前にプーラーを回すレンチに大きな力がかかり、外れるとその力が開放されてレンチを持っている手をどこかに打ちつける危険があります。

プーラーを回すレンチが固くなり動かなくなったら、ローターを 「 溝の反対側方向から溝方向に向かって 」 プラスチックハンマーで軽く叩くと簡単に外れます。


あくまで、プーラーで引っ張ってローターの溝がピンを押しつけて乗り越えるときに叩かなければなりません。

 ローターをはめるときに、
 ローターを溝方向からプラスチックハンマーで叩いたら、
 それなら、外すときにも 
 「 最初からローターを溝の反対側からプラスチックハンマーで叩けば 」、
 ピン位置が 「 先が低いように 」 変わってローターが簡単に外れる。
 しかし、どれだけ叩いても、シャフト孔とシャフトとの隙間は変わりません。
 下から叩いてもピンに何の力も加わらないからです。
 ピン位置を換えるのなら、溝の方向から叩かなければなりません。
 しかし、最初から叩くことはお勧めしません。
 それは…。 


これは鉄ハンマーでガンカン叩いた結果です。

 コイルにマグネットが当たって割れてしまいました。
 ※エンジン⑤-3 の腰下。
 叩くのはプーラーで引っ張ってピンに力がかかっているときに 「 コン 」 だけ。
 レース仕様だったエンジン①のローターに交換しようとしたら、
 こちらは 「 マグネットは割れていないけれど角がガリガリ 」。
 割れたマグネットをエポキシ接着剤で留めることにしました。



     
d.排気バルブの状態


排気バルブで気になったのは二点。
 「 排気バルブ右室のガソリン汚れ 」 と 「 排気バルブシャフト部の固着 」


イ.排気バルブ室右側のガソリン汚れ


取り外したエンジンの排気バルブ右室の状態です。

 今まで、この部分がこのように汚れているのを見たことがありません。
 これはどう見ても 「 ガソリンによる変色 ・ サビ 」 です。
 上にいくほどひどくなっています。


 レバーを動かしていると、 「 あれっ? こんなところに穴があいている!」


 確かに穴があいています。  予備のシリンダーでもチェック。 確かに穴があります。
 しかし、RS型のシリンダーではこの穴はありません。



ロ.N型 と RS型 ではシリンダーが異なる


パーツリストで N型とRS型のシリンダーが異なることは知っていましたが、どこが違うのか分かりませんでした。
それがこの 「 排気バルブ室の右穴 」 だったのです。

 写真左が 穴のない RS型のシリンダーと排気バルブ右カバー。
 右が 穴のある N型のシリンダーと排気バルブ右カバー。


まずはN型のシリンダーから。

 上の穴は排気バルブシャフトの穴。
 下の穴が問題の穴です。
  『 左上にある穴と同じで、
    排気バルブ室に入り込んだ未燃焼ガスや排気ガスを外部に排出するための穴でしょう?』
 いえいえ、この穴には別の役割があります。


 このシリンダーに対応する右カバーにはガス抜き孔がありません。
 だから、排気バルブ室に入り込んだ未燃焼ガスや排気ガスは外に出ることができず、
 アクチュエーターロッド孔からクランクケース右室に行くしかないのです。
 しかし、クランクケース室は高温になって室圧が高くなっているので、そちらに行くことはできません。
 だから、この穴は排気バルブ室に入ったガスを外部に排出するためのものではないのです。
 この穴はクランクケース内の圧力を逃がすためのものです。
 クランクケースが高温となり中の気体が膨張して内部圧力が上がると
 シール類を損傷するので、膨張した気体を外部に抜く必要があります。
 クランクケース内の気体はこの穴を通って排気バルブ室に入り、
 排気バルブ室に進入してきたガスと一緒になって左穴から外へ出ていくのです。


次にRS型のシリンダー。

 右側にあるのは排気バルブシャフトの通る穴だけ。
 N型シリンダーにあったような穴はありません。
 排気バルブ室から見ても右側に穴がないことが判ります。
 もちろん、左上には排気バルブ室に入り込んだガスを抜くための穴があります。


 RS型では この穴を無くした代わりに排気バルブ右カバーにガス抜き穴を設けました。  クランクケースの膨張した気体をこのカバーの穴から直接外に出すようにしたのです。
 排気バルブ室のガス抜き通路とクランクケースのガス抜き通路を別々にしたのです。
 サービスマニュアルの RS型での変更点の記述うち、
 「 エキゾーストバルブ室とミッション室のブリーザーを分離独立 」 がこれに該ります。


だから、 「 右に穴のないRS型のシリンダーに、ガス抜き穴のないN型の右カバーを付ける 」 と問題が生じます。
クランクケース内の膨張した気体が抜けることができず、クランクケースの室圧を下げることができなくなるからです。

では、逆に 「 右に穴のあるN型のシリンダーに、ガス抜き穴のあるRS型の右カバーを付ける 」 とどうなるでしょうか?
今回降ろしチェックしたエンジン ②-2 が まさにその状態です。

クランクケース内の膨張した気体も排気バルブ室に進入したガスも、右カバーの穴と排気バルブ室の左穴の両方から出ることができます。
一見、排気効率が良くなっただけで問題がなさそうに思えますがどうでしょう。

 抜け道は通りやすい方が多用されます。

 クランクケース内の膨張した気体は
 「 いったん排気バルブ室に入って排気バルブ室の左穴から出る 」 より、
 「 直接右カバーの穴から出る 」 方が楽です。

 排気バルブ室に進入してきたガスは 
 「 左上穴から出ても、右下穴から出ても、通りやすさは同じ 」 ように思えますが、
 「 右下穴を通り右カバーの穴から出る 」 方が楽なのです。
 それは左上穴先には 排気バルブサイレンサー という関所があるからです。

 つまり、排気バルブ室に進入したガスは主に排気バルブ右室に入り右カバーから出ていくことになります。

 もちろん、このガスはクランクケース内の圧力に押されているので、クランクケースに入ることはありません。

 今回の 「 排気バルブ右室の汚れ ・ 赤サビ 」 はこのような理由で起こったのではないかと推測されます。


いったん取り付けたカバーを交換しました。

 「 ガス抜き口はあるに越したことはない 」 と、
 今回載せたN型シリンダーにも RS型の右カバーを付けましたが、また同じ症状が出そうです。
 早速、ガス抜き口のないN型の右カバーに取り替えました。
 ガス抜きホースは取り外すのが面倒なのでカバーに留めておきました。


    
ハ.排気バルブシャフト部分の固着


取り外した排気バルブを洗浄したものです。

一年前に点検・清掃していますので問題はありません。→→→こちら

気になったのはバルブシャフトアームがバルブシャフトから外れなかったこと。

 バルブシャフトアーム取り付けスクリューに塗ったネジロックが、
 シャフトアームとシャフトのすき間に入り込んでロックしたとも考えられますが、
 排気バルブ室へのガス侵入など別の原因があったのかもしれません。
 バルブピン,ストッパー,ストッパーネジもサビていました。
 この点は宿題となりました。
 写真の右側の 「 排気バルブ右室の部品 」 もすべてサビていました。
 やはり、排気バルブ室に入ったガスが右下穴から出たからでしょうか?


ロアバルブ穴の磨耗は、

 ・ ロアバルブ右横 : 外側 / 4.1㎜Φ、内側 / 4.15㎜Φ
 ・ ロアバルブ左横 : 外側 / 4.1㎜Φ、内側 / 4.15㎜Φ
 ・カラー横 : 4.2㎜Φ / 4.2㎜Φ、4.3㎜Φ / 4.6㎜Φ
 カラーもシャフトも内側が磨耗が大きいので、カラーは磨耗の少ない方を内側にして取り付け。
 バルブ自体に問題はありません。
 カラー穴磨耗によりカラー内部にバリが出て、
 ロアバルブシャフト部に入りづらくなっていました。
 カラーはロアバルブシャフトに入ってからも自由に動く方がよいだろうと、
 バリを取ってカラーがスムーズにはまるようにしておきました。

 一年前の点検では
 ・ロアバルブ横 : 4.2㎜Φ / 4.15㎜Φ ※バルブ左右不明。内側外側の両方計測なし。
 ・カラー横 : 4.15㎜Φ / 4.25㎜Φ、4.3㎜Φ / 4.4㎜Φで後者を別の磨耗の少ないものに交換。

計測状態がまったく同じでないので比較することはできませんが、カラーは確かに磨耗しているようです。


      
e.ドライブシャフト左カラーとオイルシール交換


以前のOHのときにオイルシールを打ち込みすぎました ( こちら ) ので交換しておきます。

 オイルシールの打ち込み量は 「 オイルシール孔上端面とツライチ 」 これが原則です。

 オイルシール孔上端面~ベアリング内輪=7㎜、 オイルシールの厚さ=6㎜ だから、
 ツライチでオイルシールとベアリング内輪の間に 1㎜ のすき間ができます。
 ※ こちら と こちら

 なんと、オイルシール上端面はオイルシール孔上端から 2㎜ も下がっていました。
 オイルシールはベアリング内輪に 1㎜ 削られたことになります。

 しかし、外したオイルシールの厚さは 6㎜。
 ということはオイルシールがベアリング内輪を 1㎜ 削ったのでしょうか?


 オイルシール取り外しにはドライバーを差し込むことができないので、スプリングフックを使用。
 引っかけて引っ張れば簡単に外れます。
 外すはIは再使用しないので色々なものが利用できます。
 ここでも、オイルシール孔の外縁を傷つけないことが必須です。


 ベアリング内輪がオイルシールに削られたのか光っています。
 それだけ、オイルシールがドライブシャフトの回転を邪魔していたことになりますが、
 回転力が大きいので問題にならないでしょう。
 スペーサにオイルシールによる段付きはありませんでした。
 表面の汚れを取って使います。
 Oリングは新品に。


 Oリング二本をスペーサに入れる。 ( ドライブシャフトにはめてもOK )
 スペーサ内部にグリスを付けてシャフトに差し込んで、22Mソケットを重ねて軽く叩く。
 オイルシールのリップ部にグリスを塗ってスペーサにはめる。
 打ち込みは座金でやりたいのですが、スペーサ外径が28㎜Φなので、
 そんな大きな穴の開いた座金がありません。
 だから、角座金を立てて、オイルシール孔外端面とオイルシールに当てて叩いて入れました。


ここで注意すべき点をひとつ。

 写真の黒線はベアリング内輪の外端面。

 a : ベアリング内輪面~スペーサ外端=9.7㎜。
    ・ スペーサ巾=9.3㎜
    ・ スペーサにOリングが入る部分=3.4㎜
    ・ Oリング線径=1.9㎜
    ・ Oリング二本を入れた場合Oリングがスペーサからはみ出る量=1.9×2-3.4=0.4㎜
    ・ スペーサをベアリング内輪に接するようにした場合の 「 内輪~スペーサ外端 」 =9.3+0.4=9.7㎜
 b : スプロケット厚さ=10㎜
 c : ドライブシャフト外端~スプロケット留めサークリップ溝の始まり=3.4㎜
 d : スプロケット留めサークリップ溝巾=1.6㎜
 e : ベアリング内輪~ドライブシャフト外端=24.5㎜

 つまり、ドライブシャフトに 「 Oリング二本入りのスペーサ と スプロケット 」 をはめた場合
 ドライブシャフト外端~スペーサ外端=e ( 24.5 ) -a ( 9.7 ) = 14.8㎜
 ドライブシャフト外端~スプロケット外端面=e ( 24.5 ) -a ( 9.7 ) - b ( 10.0 ) = 4.8㎜

 スプロケット外端面から出るサークリップ溝の量=4.8 - c ( 3.4 ) = 1.2㎜
 サークリップ厚さ=1.2㎜
 だから、計算上ではサークリップが溝にピッタリ ( ゆるくもなくきつくもなく ) 入ります。


しかし、実際はグリスが入るので

① スペーサを指で押し込んで、 「 シャフト外端~スペーサ外端=14㎜ 」。
② さらに軽く叩いて、「 シャフト外端~スペーサ外端=14.5㎜ 」※計算上14.8㎜なのでどれだけ叩いても14.8㎜以上にならない。

これにスプロケットをはめた場合の「 シャフト外端~スプロケット外端面 」 は、① : 14 - b ( 10 ) = 4.0㎜、② : 14.5 - b ( 10 ) = 4.5㎜。

そして、「 スプロケット外端面から出ているサークリップ溝の巾 」 は、① : 4.0 - c ( 3.4 ) =0.6㎜、② : 4.5 - c ( 3.4 ) = 1.1㎜。

「 サークリップを溝にはめる場合にスプロケットを押し込まなければならない量 」 は、① : 1.2 - 0.6 = 0.6㎜、② : 1.2 - 1.1 = 0.1㎜。


以上のように、スペーサを指で押し込んだ場合でも、スプロケットを取り付けるときにスプロケットを 0.6㎜ 押し込めばサークリップをはめることができます。

だから、スペーサをガンガン叩いて入れる必要はありません。
スペーサに22Mソケットを当てて叩くより、スプロケットを上からはめて押し込んだ方が良いかもしれません。



f.エンジン②-3 完成


 ・シリンダー ( エンジン②のRS型 )
 ・排気バルブ ( エンジン⑤に付けていたエンジン①のN型 )
 ・ピストン ・ ピストンリング ( エンジン⑤、2016.2 に新品 )
 クランク ・ クランクケース ( エンジン②よりRS型 )
 クラッチハウジング ( RM用 )
 
クランクシャフト左右オイルシールだけ交換
 ドライブシャフト左オイルシール類交換


取り付けたエンジン⑤-3 の 燃費が悪く シリンダーとピストンに問題がありそうなので、このエンジンの出番がすぐにやってくるかもしれません。



    
2.エンジン②-2 のギヤオイル黒化の原因


a.取り外したエンジンの状態から推測できること。

・ クランクケース右室の状況からは深刻な混合気吹き出しの病変は見られない。
・ N型のシリンダーにRS型の排気バルブ右カバーを付けたので、排気バルブ室に進入したガスが排気バルブ右室に多く入り変質 ・ サビを生じさせたが
   このガスがクランクケース右室に入ったとは考えられない。
・ クラッチにも問題はなく、デスク同士が異常に擦れあって以上磨耗を起こしたとは考えられない。

・ 考えられるのはクランクシャフトオイルシールの磨耗。

  これは、エンジン⑤-3 ( オイルシール交換から実走テストをして問題がなく、予備エンジンにしたもの ) を 500㎞程度テスト走行した結果、ギヤオイルの黒化が見られ、
  腰上が健全にも関わらず燃費悪化が顕著だったので、「 オイルシールを交換したからオイルシールに問題はない 」 と即断することはできない。→→→こちら

この点については、未使用ピストンを組んでクランクオイルシールを交換したエンジン②-4 を換装した結果をまつことにしました。



つづく



次へ    前へ     番外編目次にもどる    番外編top   万引きGメン実戦教本