●RMXのFキャリパを金属ピストンに

rmxブレーキキャリパピストン交換
選任のための法律知識・



オートバイ整備はその部分に不具合が生じなければやりません。
RMXについてはブレーキキャリパがそれ。
パッドの交換はするけれど、オイル漏れや引きずりがないので今まで一度も触ったことがありません。 → こちら
しかし、今回はその必要性が生じました。

1.欠けたキャリパピストン

問題はフロントキャリパのこのピストン。

ピストンが欠けています。

通常使用でこのようにはなりません。
それなりの原因があります。

その原因とは「いつも通りにピストンを引っ込めようとした」こと。

NSRのPGM修理と試走が終わったので、久しぶりにRMX。
リヤブレーキのパッドがギリギリにまで減っていたので交換。
ついでに、フロントも新しいものに。

しかし、当たりが出ていないせいかフロントホイールの動きが渋い。
「キャリパOHの必要はないけれど、ピストンくらいはキレイにしておこう」。
ピストンを出してブレーキフルードで清掃。
「このピストン黒いな…?」

「そんなことより、新しいパッドを取り付けて久しぶりのモタードだ!」
ピストンを引っ込めるために「いつも通りの方法」。
ウォータープライヤーでピストンとキャリパタンクを挟んで締め付ける。

『ガリッ』

「えっ?このピストンは金属じゃないの?」
同じ失敗をした方もいるのではいなでしょうか?
オフロードバイクのフロントキャリパピストンは樹脂製なのです。

樹脂製ピストンの利点はいろいろあるでしょうが、
「水や泥にさらされるから、金属では錆びる」からでしょう。

取り敢えず、控えのRMX④と「マスター,ホース,キャリパ一式」をそのまま交換。

2.中古キャリパの樹脂ピストンを使う

a.同型キャリパを入手

スズキの純正ピストンセットは
・59300-26840/ピストンシールキット/7590円
※「使用個数/1」なので(ピストン+オイルシール+ダストシール)×2

値段が高いので思いついたのが、
「同型の中古キャリパからビストンを外して使うのはどうだろうか?」
「キャリパがボロボロでも、樹脂ピストンだから錆や腐蝕がなく状態は良いはず。」

急ぎ入手したキャリパは、
・KX125から取外し/640円(写真左)
・TS125から取外し/1800円(写真右)

このピストンを外して使えばいいのです。

b.出品者さんとネットショップへの要望

Yahooオークションに出品されている中古キャリパはたくさんあります。
しかし、そのほとんどには「ピストン状態を示す写真」がありません。
写真は「ボロボロ・サビサビのパッドを付けたまま」が何枚も。ピストンがまったく見えません。

「そんなきたないパッドは外して捨てるだけ」なので写真なんか要らない。
「ピストンを半分くらい出せ」とは言わないけれど、せめて「ピストン上端面」を見せてください。
ピストンの上端面を見れば「欠け」や「樹脂か金属か」が分かります。
ピストンをまったく見せないで「引きずりあり・要OH」と説明されても「その程度」が推測できません。
それとも「ピストンを見せると都合の悪いこと」があるのでしょうか?

これは、自動巻き腕時計(機械式腕時計)の出品で、
裏蓋を外して中のムーブメント(機械)を見せないで「ノークレーム・ノーリターンです」と同じこと。
機械式時計の命はムーブメントで文字盤やケースは二の次。
「安物の汎用ムーブメントへの交換」や「オリジナル部品のすり替え」はすぐにできますからネ。
裏蓋を外してムーブメントの写真を撮るくらい大して手間はかからないでしょう?
いかに素人の取引だとはいえあまりにも無責任ではないでしょうか?

素人取引だけでなくネットショップさんにも同じ要望を。
ネットショップでは汎用のキャリパピストンが売られています。
しかし、説明には代表的な適合車種だけでピストンサイズが書いてない。
隣にメジャーを置いても実際のサイズがまったく分からない。
ピストンサイズが分からなければ「使えるかどうか」が分からない。

多分、ネットショップの担当さんはキャリパのOHをしたことがないのでしょう。
キャリパのOHをしたことがあれば「あっ、ピストン径とピストン長を書いておかなければ」と思うはず。

プラグを置いていないオートバックス、
チャラチャラした装飾品だけでホイールバランスウエイトを置いていない南海部品。 → こちら
それでも商売繁盛。
「三丁目の夕日」は遠い昔のこと。

c.外れなかったピストン

ピストンを外すのはいつもの方法。 → 4ポットキャリパのピストン四個を足踏みポンプで外す

こちらが自慢の「自作ズル」。

と言っても、
48円の「管用1/8ノズル」に「M10・細目/P1.25 ㎜」のネジを切っただけです。 → こちら

※スズキの場合、バンジョーボルトはフロントが細目/P1.0㎜,リヤが細目/P1.25 ㎜です。
   このノズルは細目/P1.25 ㎜のネジが切ってあるのでフロントキャリパには根元まで入りません。
   しかし、先端だけは食い込む(上の写真の程度)ので充分に役に立ちます。
   この 1/8ノズル の元々のネジは P0.9071㎜、
   ネジを切らないで P0.9071㎜ のまま使えば P1.0 ㎜ のネジ穴に半分くらい食い込みます。
※なお、KX125の方は P1.25 ㎜でした。
   同じキャリパでもオートバイメーカーや年式によってネジ仕様が異なるようです。

エアチャックが磨耗し空気が漏れるようになったら百均のエアチャックに交換してください。

今回は「シリンダーのフタ」を固定するのにCクランプを使いました。

写真では、外れたピストンの左シリンダーに 35 ㎜Φ 程度のゴム板を固定しています。

しかし、TS125・キャリパの方が一個だけ外れませんでした。

ピストンが5㎜くらい出たあと出渋ったので、ビストンをCクランプでいったん押し込み。
このときに少し斜めに入ったのでしょう。

金属ピストンとゴムシールでは金属が圧倒的に強いので、少しくらい斜めに入っても出てきます。
しかし、樹脂ピストンとゴムシールではそうはいかないようです。
シリコンオイル浸透、エアーホットガンでの温めも効果なし。
ピストン肉厚があり凹径が小さいのでピストンプライヤーは使えません。 → こちら
これはマスターシリンダーにつなげて油圧で抜くしかないでしょう。

それは宿題にして、取り敢えず外した3個のピストンの内の程度のよいものを使用。

※この外れなかったピストンは
   あとで、エアーホットガンを使い「これでもかこれでもか」と加熱したら空気圧で外れました。
※エアーホットガンはただの大型ドライヤーですが
   ネジロック解除やケーブルジョイント付け替えに重宝します。 →  こちら ・ こちら

●使用中のキャリパのピストンを外す場合

使用中のキャリパの場合、ピストンにフルードが潤滑しているので簡単に外れます。
しかし、外れにくい場合があるので「出渋る方を油圧で、簡単に出る方を空気圧で」外します。

まず、レバーを握ってピストンを少し出し、「出渋る方」と「出やすい方」を見つけます。

次に、「出やすい方」をクランプで止めて、「出渋る方」を油圧で外します。

「出渋る方」を外したあと、外した方のシリンダーにフタをして、
「出やすい方」を空気圧で外します。

d.出来上がり

●オイルシール,ダストシールの取り付け方向

(オイルシール)
一般にオイルシールの断面は長方形、シール溝は二段になっていて外側が深くなっています。
オイルシールはピストンによってシール溝に押し付けられ「内側が出っ張るように」変形します。
ピストンは出るときにこの出っ張りを押し、油圧が抜けると押した出っ張りに引き戻されます。 → こちら
シール溝が二段になっている場合はオイルシール断面は長方形で取り付け方向はありません。
このキャリパもシール溝が二段でオイルシール断面は長方形です。

ただ、外したオイルシールの断面は長方形ではなく台形になっています。
これはオイルシールがシール溝にずっと押し付けられて変形したものです。
「問題のなかったキャリパ」のオイルシールを再利用するときは、
「開いている方を外側」にすれば元の通りになります。

「今までと逆にしたら変形が戻って長持ちする」と考えて「開いている方を内側」にしてはいけません。
シールがいびつに変形してオイル漏れを起こします。
もっとも、シールを外した場合は「新品交換」が原則です。

(ダストシール)
ダストシールは一方の角が丸く、もう一方の角が尖っています(リップがあります)。
「リップ側が内側」だと思っていましたが、
このキャリパから外したダストシールは「リップ側が外側」になっていました。
「泥やゴミの進入を防ぐため」には「リップが外側」の方が効果的ですが…。

※今回は三個のキャリパからシールを外しましたが、
   「リップが内側」だと思っていたので、外したダストシールの方向は気にしていませんでした。
   しかし、確認のため三個目のキャリパのダストシールを見たらさリップが外側になっていました。
   三個とも「リップが外側」ではないので、「リップを外側にするか内側にするか」は自己責任で。

●キャリパピストンとシリンダーの使用限度(PJ12マニュアルP14-5)

・ピストン外径 → F/26.900~26.950 ㎜,R/30.130~30.180 ㎜
・シリンダ内径 → F/27.000~27.050 ㎜,R/30.230~30.280 ㎜

・測定が 1/100 ㎜なのでマイクロメーターが必要です。 → こちら
・シリンダ内径測定にはシリンダーゲージが必要です。 → こちらTeclok HP
   手持ちのシリンダーゲージの測定範囲は50 ㎜~150 ㎜だから測定できません。
   測定範囲が18 ㎜~35 ㎜のものが必要です。 → こちらこちらTeclckカタログ

測定技術も必要なので、通常ユーザーなら「オイル漏れしなければOK」と考えておきましょう。

●そのまま組み付け

今まで、何の不具合もなかった正選手RMX②のキャリパです。
オイルシール溝はきれいなもの。
※写真は「清掃をしていない」状態。ダストシールは外していません。

オイルシールとダストシールはそのまま使用。

ピストンとシリンダーにブレーキフルードを塗って、ピストンを押し込んで終了。

これで不具合が出るまで使ってみましょう。
もっとも、このキャリパを取り付けるのは「本年度の火入れ」が終わったRMX④。
来年の火入れまで出番はありません。 → こちら

3.樹脂ピストンは「新品にする」のが原則

a.樹脂ピストンは「錆びない」が「削られる」

取り外したピストンの状態です。

左側がシリンダー側、右側がパッド側、
写真の左下が元のキャリパのピストン、他の三つが上で外したピストン。

どれも、オイルシールに当たる部分に帯状の磨耗があります。
これは「汚れ」ではありません。
オイルシールで削られたものです。
この巾だけピストンが動いていたのでしょう。

『ゴムのオイルシールが樹脂を削るの?』
オイルシールを侮ってはいけません。相手が回転するものなら金属でも削ります。
ドライブシャフトオイルシールが金属スペーサを削るベアリング内輪も削ってしまう

ただし、こちらが元のキャリパの「欠けたピストン」の状態。

これだけ「擦れ傷」が付いています。(もちろん、表面的な擦れ傷で凹んではいません。)
しかし、ブレーキフルード漏れはありませんでした。
多分、この程度の擦り傷はフルードが埋めるからでしょう。

しかし、これは「付着した汚れ」ではなく「傷・損傷」です。
金属ピストンのように「磨いて元の状態にする」ことはできません。
使っていれば傷は深くなりフルード漏れを起こします。

このように、樹脂製ピストンは錆びないけれど削られます。
金属ピストンほど耐久性がないのです。
樹脂製ピストンを使っているキャリパのOHではシール交換だけでなくピストン交換が原則です。
「樹脂ピストンは錆びや腐蝕がないから、安い中古キャリパから外して使おう」などと考えてはいけません。
『そう考えたのは誰かなぁ~?』

b.ヤマハPLで樹脂ピストンを捜す

「樹脂ピストンを新品にする」としてもっと安いものはないのか?
同型のニッシンキャリパはスズキ以外でも使っています。
同じもの・互換性あるもので安いものがあるかもしれない。

ヤマハのパーツリストを調べてみると

①SJ13と同型のキャリパを使っている車種
・1991~1994・DT200WR(3XP1~3XP5)
・1991~1995・WR200 (4BF3)
・1999~2004・TTR225,TTR250
・1992・YZ250 (4DA3)

・キャリパ/3XP-2582T-00 → 取り扱いなし
・ピストンセット/3JD-W0057-00 → 取り扱いなし
・シールキット/3JD-W0047-00 → 在庫あり・1793円

②WR250R(2007~2017)
・キャリパ/3D7-2580T-00
・ピストン/5UN-W0057-00
・シールキット/3JD-W0047-00

③YZ250のピストンとシール
・1993~2002・ピストン/4EW-W0057-00 → 在庫あり・3311円
・1992~2007・シールキット/3JD-W0047-00 → 在庫あり・1793円

ピストンの部品番号は3JD,5UN,4EW と違ってもシールの部品番号は 3JD で同じ。
シールが同じならピストン径は同じ 。
③のピストン/4EW-W0057-00は ① つまりSJ13でも使える可能性あり。

ヤマハ純正部品でセットを組むのなら
・ピストン/4EW-W0057-00・3311円
・シール/3JD-W0047-00・1793円
・合計 5104円

もっとも、キャリパのシール溝が同じでないと「シールが同じだからピストン径が同じ」だとは言えません。
また、ピストン径が同じでもピストン長が同じでなければ使用上の不具合が出ます。
純正部品のピストンサイズはメーカーや販売店に問い合わせても教えてくれません。
「純正部品はその車種に使える部品」で「他車種への流用を予定していない」からです。
上記セットの「ピストン/4EW-W0057-00 が 27 ㎜Φ×27 ㎜なのか」は実際に入手してみなければ分かりません。

結局、スズキ純正・7590円で「確実と安心」を取るか、
ヤマハ純正・5104円で「不確実と新たな発見」を取るかの違いになります。
私はどうしても後者の方に惹かれます。

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